マーソ(5619)23年12月期は大規模接種等サービスの縮小により減収減益へ
人間ドック・健診予約の「MRSO.jp」の運営を起点にDX実装サービスを提供
23年12月期は大規模接種等サービスの縮小により減収減益へ
業種:情報・通信業
アナリスト:藤野敬太
◆ 予防医療施設や自治体向けにヘルスケアDX実装サービスを提供
マーソ(以下、同社)は、WEB予約システムを中心に、予防医療施設や自治体向けにヘルスケアDXを実装するサービスを提供している。前身はゴルフ場向けのWEB予約等のシステムを提供する三和システム(茨城県ひたちなか市)の医療事業部で、サービス展開を加速させるために分社化により15年2月に同社が設立された。
創業当初より人間ドック・健診の予約プラットフォーム「MRSO.jp(マーソドットジェーピー)」を運営し、同時に予約管理に関する顧客の業務効率化に資するDXの実装を進めてきた。この実績が買われ、新型コロナウイルス感染症ワクチンのWEB接種予約システムを提供する案件を受託し、21/12期から22/12期にかけて業績を大きく伸ばした。
同社の事業はヘルステック事業の単一セグメントだが、売上高はサービス別に3つに区分されている(図表1)。このうちの大規模接種等サービスが新型コロナウイルス感染症対策のためのワクチン接種案件によるもので、多くの大規模接種が23年3月までに終了しているため、大規模接種等サービスの売上構成比は低下している。
◆ HCPF(ヘルスケアプラットフォーム)サービス
HCPFサービスは、人間ドック・健診の予約プラットフォーム「MRSO.jp」を提供するサービスである。「MRSO.jp」上で、受診者は人間ドック・健診のメニューを比較、検討し、予約を行うことができる。受診者にとって「MRSO.jp」は医療施設の比較検討ができるというメリットがあり、医療施設としては、顧客となりうる受診者にアプローチできるというマーケティング面でのメリットが得られる。
掲載医療施設数は22/12期末時点で1,326施設であり、国内首位の掲載数となっている(図表2)。
◆ DXサービス(1):医療施設向け
同社のDXサービスは、医療施設向けと、行政向けに分類される。
医療施設向けDXサービスは、人間ドック、健診WEB予約システム「MRS」を提供するサービスである。「MRS」は医療施設のホームページに設置され、ホームページ上で予約を受け付けるとともに、顧客管理や受診管理も行うことができる。「MRS」を利用することにより、医療施設は、予約に関する業務の効率化を図るとともに、24時間予約受付等によって受診機会の拡大を図ることができる。
また、予約情報は「MRSO.jp」と連動できるようになっており、「MRSO.jp」を利用する医療施設には原則として「MRS」も提供される。両方を利用することにより、医療施設としては、「MRSO.jp」経由、医療施設の自前のホームページ経由の両方の経路からの予約を一括で管理することができるようになる。
「MRSO.jp」経由及び「MRS」が設置された医療施設の自前ホームページ経由での予約取扱高は21/12期6,453百万円、22/12期9,925百万円となった(図表2)。
◆ DXサービス(2):行政向け
主に地方自治体が対象となる行政向けDXサービスは、主に3系統ある。
(1)市町村が実施する住民健診WEB予約システム「MRSO住民健診」
(2)ワクチン接種に関するWEB予約サービス「MRSOワクチン」
(3)ヘルスケア領域以外の行政実務全般に関するDXサービスの提供
「MRSO住民健診」は、市町村が実施する特定健診や特定保健指導の受診のための予約システムである。市町村にとっては職員の予約管理業務の負荷軽減というメリットが、地域住民にとっては24時間予約ができるといった利便性の向上というメリットが得られるシステムとなっている。
「MRSOワクチン」は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種向けのWEB予約システムとして始まった。22年10月よりインフルエンザ予防接種との同時接種が可能になったことに伴い、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種以外への用途拡大が進んでいる。そのため、新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種規模が縮小しても、契約アカウント数は大きく減少していない(図表3)。
ヘルスケア領域以外のDXサービスは、「MRSO住民健診」及び「MRSOワクチン」のサービス提供を通じて関係を構築した地方自治体からの要望によって開発及び提供を開始したものである。行政サービス全般の各種申請手続きに利用できる「MRSOフォーム」、行政WEB予約システム「MRSOご予約」といったサービスの提供が既に始まっている。
◆ 大規模接種等サービス
国、都道府県、企業や大学等の職域を中心に、大規模接種会場及び職域接種会場にて利用されるワクチン接種WEB予約システムを提供するサービスである。新型コロナウイルス感染症対策の一環で21年以降に実施された大規模接種及び職域接種に対応するサービスであるため、多くの大規模接種が23年3月までに終了したのに伴い、23年12月期第3四半期には、売上高及び期末契約アカウント数がともにゼロとなった(図表4)。
◆ 収益構造
HCPFサービスとDXサービスについて、同社の収益には、成果報酬型のものと定額報酬型のものがある。
成果報酬型の売上には以下の2つがある。
(1)HCPFサービスにおいて、受診者が「MRSO.jp」経由で予約し、実際に医療施設で受診した場合に、受診金額に応じて医療施設から支払われるサービス利用料
(2)DXサービスにおいて、医療施設向けWEB予約システム「MRS」の利用に対し、受診金額に応じて医療施設から支払われるサービス利用料
定額報酬型の売上には以下の2つがある。
(1)HCPFサービスにおいて、医療施設が「MRSO.jp」上で広告を掲載した場合に、医療施設から支払われる月額定額の広告掲載料
(2)DXサービスにおいて、行政向けDXサービスの利用規模に応じた月額のサービス利用料
大規模接種等サービスを除いた同社の売上高に占める成果報酬型売上の構成比は21/12期以降、6割を超えている(図表5)。