エコナビスタ(5585) 主力の高齢者施設向け「「ライフリズムナビ+Dr.」の導入拡大ペースに注目

2023/08/08

睡眠データ解析技術で社会課題解決のためのソリューションを提供
主力の高齢者施設向け「「ライフリズムナビ+Dr.」の導入拡大ペースに注目

業種:情報・通信業
アナリスト:藤野敬太

◆ 睡眠データ解析技術で社会課題解決型ソリューションを提供
エコナビスタ(以下、同社)は、センサー・フュージョン注1技術と睡眠データ解析技術を活用して健康状態推移予測AIの開発を行うとともに、AIを実装したサービスを通じた社会課題解決型ソリューションを提供する企業である。

同社は、現取締役会長で睡眠と疲労医学研究の第一人者である梶本修身氏により09年に設立された。当初は研究開発主体でホームコントロールシステム注2の導入等を行っていたが、早くから睡眠データに着目し、睡眠の状況を可視化するセンサーの開発を続けていた。14年に高齢者見守りサービスとその発展形の「ライフリズムナビ」を、16年に睡眠センサーを含む各種センサーと予測AIをパッケージ化してクラウドサービスとして提供する「ライフリズムナビ+Dr.(プラスドクター)」を開始した。「ライフリズムナビ+Dr.」は、介護人材の不足という課題を抱える高齢者施設向けのDX支援を行うもので、現在の同社の主力サービスとなっている。

同社はライフリズムナビ事業の単一セグメントだが、売上高は、ライフリズムナビ事業と受託研究開発事業に区分されている(図表1)。現在、経営資源を集約させて注力しているライフリズムナビ事業の売上構成比が9割を超えてきている。

◆ 「ライフリズムナビ+Dr.」(1): システムの特徴
ライフリズムナビ事業では、「ライフリズムナビ+Dr.」と「ライフリズムナビ+HOME.」を提供しているが、現在は「ライフリズムナビ+Dr.」の収益が大半を占めている。

「ライフリズムナビ+Dr.」は高齢者施設向けSaaS型見守りシステムである。高齢者のベッド及びその周辺に設置された、睡眠センサーである「ライフリズムナビSleepSensor」を始めとする各種センサーや各種計測器等が、睡眠データやバイタルデータ、環境データ等のビッグデータを収集し、クラウド上に蓄積していく。蓄積されたデータは同社独自の解析技術により即時に処理され、その結果は、リアルタイムで施設スタッフが持つ各種端末に表示される。

このシステムにより、施設スタッフは24時間、高齢者の様子を把握することができ、状態確認業務を減らすことができる。また、他社が提供する介護記録システムとAPI連携することで、データが自動記録されるようになり、施設スタッフによる入力作業も減らすことができる。このように、「ライフリズムナビ+Dr.」を導入することで、高齢者施設の業務が効率化される。

さらに、蓄積されたデータと独自の睡眠解析技術をもとに構築される予測AIが同社の強力な武器となっている。予測AIは、各種データから、高齢者施設利用者に起きうることを予測することで、ケアの精度を上げることに貢献している。既に「疲労回復度予測AI」、「認知症予測AI」、「予後/余命予測AI」は特許取得済みで、「回復度予測AI」は「ライフリズムナビ+Dr.」に実装済みとなっている。また今後、「介護予防予測AI」や「生活習慣病予測AI」の開発を検討していくとしている。

◆ 「ライフリズムナビ+Dr.」(2): 販売
「ライフリズムナビ+Dr.」の顧客である高齢者施設に対する販売経路は、同社からの直接販売と、代理店経由の間接販売がある。

直接販売の場合、多くの施設を有する高齢者施設運営企業の1施設にまず導入することが多い。導入後のサポートでは、システム活用方法の伝授に留まらず、顧客の業務見直しやケアプランとの連携を進め、IoT情報集積に基づいた科学的介護ができる段階まで同社のスタッフが伴走する。こうしたカスタマーサクセスを提供し、業務効率化の成果を出すことにより、同一企業の他施設への導入につなげていく。こうした同一企業の他施設への導入を同社では「新規リピート」と称し、導入数増加の原動力としている。

間接販売を担う主な代理店としては、大塚商会(4768東証プライム)、キヤノンシステムアンドサポート(東京都港区)、内田洋行(8057東証プライム)、ワイズマン(岩手県盛岡市)等が挙げられる。

「ライフリズムナビ+Dr.」は順調に導入が進み、累計導入数は22/10期末5,101床、23/10期第2四半期末8,212床となっている(図表2)。また、22/10期末の累計導入床数の約67%が直接販売、約33%が間接販売となっている。

◆ 「ライフリズムナビ+Dr.」(3): 収益構造
「ライフリズムナビ+Dr.」の収益は、(1)システム導入時のセンサー等のハードウェアの販売、(2)ベッド1床当たりの月額利用料の2つで構成される。

特徴的なのは、ハードウェアの販売だけでも利益が確保できている点である。ハードウェアには保守サービスの料金はかからず、導入から1年内に故障した場合は無償交換となるが、2年目以降は有償交換となる。なお、センサー類の使用期間は5年とされており、使用し続けることでセンサーの精度が低下することもあり、使用期間経過後は、ハードウェアの交換が勧められる。そのため、既存の契約については、おおよそ5年に1度のペースで更新需要が顕在化することになる。

また、クラウドの利用に対しては、ベッド1床ごとに月額利用料が課金される。まだ規模は小さいが、ストック型収益であるため、業績の安定に寄与し始めている。22/10期のライフリズムナビ事業売上高に占める月額利用料の割合は7.4%である(図表3)。

◆ 「ライフリズムナビ+HOME」
「ライフリズムナビ+Dr.」が高齢者施設向けであるのに対し、「ライフリズムナビ+HOME」は一般家庭向け見守りサービスである。21年2月に事業パートナーである東京ガス(9531東証プライム)がサービサーとして展開している。

◆ 受託研究開発
ライフリズムナビ事業のソリューションは介護業界以外にも応用できると同社は考えており、複数の企業(パートナー)と検討を進めている。同社の受託研究開発の収益は、将来の事業化に向けた検証の過程でパートナーから受託した案件によるものである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。