Arent(5254) 開発プロダクトを顧客企業と共同販売する”事業化”まで手掛けることが特徴

2023/04/03

建設・プラント業界に特化した DX コンサルティング及び開発を展開
開発プロダクトを顧客企業と共同販売する”事業化”まで手掛けることが特徴

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野敬太

◆ 建設・プラント業界に特化したDXコンサルティング・開発を展開
Arent(以下、同社)は、建設業界及びプラントエンジニアリング業界に特化したDXに関するコンサルティング、システム開発、プロダクト販売を行っている。建設・プラント業界のエンジニアが持つナレッジをブラックボックスにせずにデジタル化することに需要を見出し、事業を展開している。最大の特徴は、プロジェクトを通じて作り上げたソリューションを顧客企業と共同でプロダクト化し、顧客企業の同業他社に販売していく点にある。

同社の事業は、DX化に向けたコンサルティングやプロダクト開発を行う「プロダクト共創開発」、開発したプロダクトを顧客企業とともに外販する「共創プロダクト販売」、同社単独で開発したプロダクトを販売する「自社プロダクト」の3つのセグメントに区分されている(図表1)。売上高、利益ともプロダクト共創開発セグメントが中心となっている。

◆ プロダクト共創開発セグメント
プロダクト共創開発セグメントでは、建設業界及びプラントエンジニアリング業界の企業を対象に、DX化支援のためのコンサルティング及びシステム開発を行っており、同社の連結売上高のほとんどを占めている。また、規模は小さいながら、日清紡ホールディングス(3105東証プライム)との合弁の連結子会社VestOneの売上高、利益も同セグメントに含まれている。

同社は、建設・プラント業界におけるBIM注1/SaaS化されていない非効率な業務が残るニッチ領域に焦点を当て、業務効率化、生産性向上のためのDX化プロジェクトを実行する。

プロジェクトは進捗に応じて、以下の3フェーズに分けられる。

(1) コンサルティングからPoC注2やプロトタイプを作成するフェーズ(約3カ月)
(2) MVP注3等のプロダクト構築までの本開発のフェーズ(約2年)
(3)プロダクト初期リリース後の継続開発のフェーズ

同社の開発はアジャイル型の開発手法をベースとしており、工程が進むにつれて開発が大規模化、安定化し、プロジェクトが積み上がっていく。そのため、時が経つにつれて収益が拡大していくビジネスモデルとなっている。なお、本開発のフェーズから継続開発のフェーズに移行する率は57%、継続開発のフェーズへの移行後は年50百万円~数億円規模の開発が続くことになる。22年12月末時点でのプロジェクト数は15件で、本開発~継続開発のプロジェクト継続期間は37.8カ月である(図表2)。

◆ 共創プロダクト販売セグメント
共創プロダクト販売セグメントでは、プロダクト共創開発セグメントにて作り上げたソリューションを顧客企業と共同でプロダクト化し、外販している。現時点では、持分法適用関連会社PlantStreamの事業が該当する。

PlantStreamは千代田化工建設(6366東証スタンダード)と同社が50%ずつ保有する合弁会社で、プラント設計における膨大な配管作業を自動的に行う「PlantStreamⓇ」をライセンス販売している。元々は、千代田化工建設が抱えていた配管設計の課題を解消するために18年8月からプロダクト共創開発のプロジェクトとして進められてきたが、開発したプロダクトを外販するために、20年7月に合弁会社設立に至った。

「PlantStreamⓇ」のライセンス販売の動向を示すARR注4は時を追うごとに拡大している(図表3)。しかし、減価償却費負担が重く、当期純損失の状況が続いている。そのため、PlantStreamの損益は、同社の連結業績には、持分法による投資損失として営業外費用に計上されている。

◆ 自社プロダクト
自社プロダクトは、顧客企業と共同で展開する共創プロダクト販売とは異なり、主に建設業界向けに、自社で開発したソフトウェアのライセンス販売を行っているセグメントである。22年4月にリリースした「LightningBIM自動配筋」のライセンス販売が該当する。

「LightningBIM自動配筋」は、米国Autodeskが提供するBIMツール「Revit」の機能追加のためのプロダクトで、手作業が一般的だった鉄筋納まり検討工数を従来比90%削減を実現するものである。

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。