トリドリ(9337) 広告主とインフルエンサーのマッチングプラットフォームtoridori baseを運営

2022/12/23

インフルエンサーマーケティングサービスを開発・提供
先広告主とインフルエンサーのマッチングプラットフォームtoridori baseを運営

業種: サービス業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ インフルエンス・プラットフォーム事業を展開
トリドリ(以下、同社)はインフルエンサー注1と企業をマッチングするインフルエンサーマーケティングプラットフォームであるtoridori baseを始めとしたインフルエンサーマーケティングサービスやインフルエンサーサポートサービスを開発・提供している(図表1)。

同社は16年に設立されたが、設立当初はインフルエンサーに特化した成果報酬型広告サービス(現toridori ad)を行っていた。その後サービスの幅を拡大し、18年4月に、現在同社が注力する中小企業や個人事業主とインフルエンサーをマッチングするtoridori baseを開始した。

◆ toridori base(インフルエンサーマーケティングプラットフォームサービス)
同社の顧客企業(個人事業主も含む)がインフルエンサーに直接PR投稿を依頼できるマーケティングプラットフォームで、顧客企業側のアプリはtoridori marketing、インフルエンサー側のアプリはtoridori baseとして運営している(このレポートでは、両者をまとめてtoridori baseとする)。

このプラットフォームを利用すると、個人店から大規模事業者といった幅広い顧客がインフルエンサーに対してPR投稿を簡単に依頼できる。特に、ノウハウの不足や資金面での制約からインフルエンサーを起用したマーケティングを行うことが難しかった個人事業主や中小企業でも手軽に利用できる仕組みを提供している。

一方、インフルエンサーは常時1,000件以上掲載されている案件の中から希望する案件に立候補することができる。採用されたインフルエンサーは、PR対象となる商品やサービスを無料で体験することができ、体験後に自身のInstagram、TikTok、YouTubeなどのSNSでレビューを投稿する。この無料体験型に加え、報奨金のある投稿報酬型の案件もある。22年9月末時点での登録インフルエンサー数は約35,000人に及んでいる。

同社はインフルエンサーの中でもマイクロインフルエンサー注2を中心にSNS活動の支援や収益機会を提供している。顧客企業はシステム上で直接、インフルエンサーとのやり取りを完結できるため、ミドル・メガインフルエンサー注3によるPR手段と比較して費用を低く抑えられる。加えて、マイクロインフルエンサーは投稿に対しての反応状況を表すエンゲージメント率とPRの到達率を示すリーチ率のバランスが良く、広告の効果が出やすいとされており、コストパフォーマンスの良いPR手段とされている。

同社のサービスは飲食、美容、通販、レジャー、観光業界などの中小事業者を中心に幅広い業種の企業に活用されている。toridori baseのサービスは18年4月から開始されたが、21年ごろより顧客企業数の増加が顕著となり、22/12期第3四半期では顧客企業数(四半期中に売上のあった先)は2,296社に達した(図表2)。

toridori baseの主な収益は顧客企業から受け取る月額利用料やインフルエンサーの採用に応じた従量課金である。一方、インフルエンサーに対しては無償でサービスを提供している。機能追加といった提供サービスの充実に伴い、アップセルやクロスセルが出来てきていることや認知度を上げるために無料で提供していたサービスを有料化したことなどにより、同社がKPIとして重視している顧客当たり四半期売上総利益は順調に上昇してきている。

◆ toridori ad(成果報酬型広告サービス)
toridori adは、マイクロ・ミドルインフルエンサーを中心としたインフルエンサーに特化した成果報酬型広告サービスで、顧客企業が登録インフルエンサーを直接募集できるマーケティングプラットフォームである。

案件に採用されたインフルエンサーはPR対象となる商品やサービスを利用し、SNSアカウントでレビューを投稿する。その投稿に掲載されたリンクを経由しての商品やサービスの購入、資料請求、会員登録といった成果件数に応じた報酬が同社に支払われ、そこから一定の手数料を差し引いた残りの金額がインフルエンサーに支払われる。

◆ toridori promotion(タイアップ広告サービス)
顧客企業からのPR投稿の依頼を受けて、依頼案件の内容に適したインフルエンサーに広告案件を紹介するというキャスティングを行っている。インフルエンサーはPR対象の商品やサービスを無料で利用し、そのレビューをSNSアカウントに投稿する。

成果報酬型と異なり、固定の広告料が支払われるタイプの広告サービスで、キャスティングされるのはミドル・メガインフルエンサーが多い。また、依頼案件の多くがTikTokやYouTubeなどの単価の高い動画投稿である。

◆ toridori made(ブランド運営支援)
インフルエンサーが自身のブランドを立ち上げ、商品を販売したいというニーズに応えるためのサービスで、21年7月に買収したGIVINが運営している。同社グループはインフルエンサーからの依頼により、アパレルやコスメなどの商品を中心にオリジナルブランドを立ち上げ、インフルエンサーと共同でブランドの育成・運営を行う。

22年4月からはオリジナルブランドだけではなく、マイクロインフルエンサーが選定したものを中心に、海外のアパレルを扱うセレクトブランドショップの運営を開始した。9月にはこれを発展させる形で、主としてマイクロインフルエンサーが選定した商品を同社グループが買い付け、販売するECショップの運営を開始した

◆ toridori studio(SNSコンサルティングサービス)
YouTubeの企画や映像制作、その他の各種SNSに関する一連の業務を同社が受託し、インフルエンサーの活動を支援するものである。同社の収益としては、YouTubeの再生回数に連動してインフルエンサーが受け取るアドセンス収益の一部を同社が受け取るというレベニューシェアと依頼者から受け取るYouTube動画の制作支援に対する報酬の二通りがある。

◆ 上昇する注力サービスtoridori baseの収益貢献度
同社はtoridori madeを除いた4サービスについては、インフルエンサーへの報酬を控除した金額を売上高として計上している。各事業の22/12期第3四半期累計期間の売上総利益の構成比は、toridori baseが31.7%、toridori adが32.2%、toridori promotionが16.6%、toridori madeが13.9%、toridori studioが5.7%であった(図表3)

売上総利益を四半期毎に見てみると、toridori baseの売上総利益並びに構成比が急速に拡大しており、22/12期第3四半期にはそれまでの稼ぎ頭であったtoridori adを上回った。toridori baseが同社の中長期的な企業価値向上の鍵を握ると同社は認識し、注力しているが、その事業戦略が順調に進展しているものと思われる

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。