Recovery International<9214> 西東京を中心にドミナント展開中

2022/02/14

在宅療養生活を支える看護士やリハビリ職による訪問看護サービスを提供
西東京を中心にドミナント展開中

業種: サービス業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 在宅療養生活を支える訪問看護サービスを提供
Recovery International(以下、同社)は、利用者の自宅などに訪問し、病気や障害に応じた看護を24 時間365 日行う訪問看護サービス事業を行っている。医師の指示書に基づき、病院と同じような医療処置や自宅で最期を迎えたいという希望に沿った看護を提供している。

21/12 期末時点で、東京都新宿区、兵庫県西宮市、高知県南国市、沖縄県那覇市の各地に訪問看護ステーションを合計4 事業所、従たる事業所を東京都に10 事業所、高知県高知市に1 事業所を運営している。事業所数は19/12 期末11 事業所、20/12 期末11 事業所と横ばいであったが、21/12 期末は15 事業所と事業所の開設に積極的になっている。事業所の人員配置は、看護師6 名、理学療法士などのリハビリ職5 名の11 名体制注1 と、業界の平均よりは多い人員数を基本としている。

東京都の事業所は西部エリア(東村山市、西東京市、小平市、渋谷区、大田区、中野区に各1 カ所、杉並区、練馬区に各2 カ所)に集中しており、ドミナント展開を基本としている。20/12 期からは最適な訪問効率を確保できるエリアを定め、訪問看護の受託の可否を決定しており、移動時間の短縮と1看護師当たりの訪問件数の増加を実現している。

また、クラウドによる利用者情報の管理や引き継ぎの連携を徹底することにより、各事業所や各看護師などが単独ではなく、事業所相互や看護師相互が連携しながら、利用者をサポートする体制ができあがっている。結果、看護師の退職による利用者への影響を軽減できることや、看護士間や事業所間の業務の平準化やバックアップ体制の充実につながっている。

◆ 訪問看護サービスの仕組み
看護には健康状態の観察、病状悪化の防止・回復、リハビリテーション、床ずれの処置や服薬の管理・指導、点滴、注射、カテーテルの交換などの医療処置、主治医、薬剤師、ケアマネージャー注2 との連携などが含まれる。訪問看護サービスは、自費での利用もあるが、多くは医療保険制度や介護保険制度が適用され、利用者の主治医の指示書に基づき提供されている。

年齢や疾患の状況、要支援・要介護認定を受けているかいないかなどにより、医療保険、介護保険のどちらを利用するかが決まるが、同社の得る収入は同一サービスであれば変わらない。同社の売上構成割合は大半が保険適用サービスである(図表1)。

保険適用が多いことから、各都道府県の国民健康保険団体連合会が主な販売先となる。21/12 期第3 四半期累計期間における最大の売上先は、同社の事業所が多いことから、東京都国民健康保険団体連合会となり総販売実績の52.0%を占めている。また、高知県では比較的シェアが高いこともあり、高知県国民健康保険団体連合会が同じく10.0%を占めている。

◆ 費用の大半は人件費
同社の費用の大半は看護師などの人件費が占めている。売上原価明細書が開示されている20/12 期について見てみると、売上高に占める売上原価の割合は61.9%であるが、労務費だけ取り出してみても60.2%を占めている(売上原価の97.4%)。上場時に同社が公表した「事業計画及び成長可能性に関する説明事項」によれば、販売費及び一般管理費(以下、販管費)に含まれる人件費と合わせて、人件費全体では売上比で71.6%に達している。その他は現場通勤費、訪問交通費といった移動に関する費用で、合計で売上比1.4%(売上原価の2.2%)となっている。

販管費の中で、人件費以外に目立つ費用としては、採用関係費が挙げられ、20/12 期では売上高の5.8%に達している。看護ステーション開設には常勤換算で2.5 人以上の保健師、看護師、准看護師などの看護職員が必要であるが、同社は従たる事業所においても、看護師6 人、理学療法士、作業療法士などのリハビリ職5 人の合計11 人という比較的多い人員数を基本としている。21/12 期の4 事業所の開設に続き22/12 期も4 事業所、23/12期には7 事業所の開設を予定していることから、今後も人件費や採用関係費は増加が予想される。

◆ 売上高拡大に向けて延べ訪問件数などを重視
訪問看護サービスの売上高は、「延べ訪問件数×訪問1 件当たりの単価」となるが単価は保険制度により決められており、同社が左右できるものではない。そのため延べ訪問件数とその母数となる延べ介入利用者数の増加を重視している。延べ訪問件数の増加には看護師などの増加が不可欠となるため、採用を増やすとともに事業所の開設を継続的に行うことが重要となる。

延べ訪問件数、延べ介入利用者数、訪問看護要員数は順調に増加している(図表2)。ただし、同社が事業所数を本格的に拡大し始めたのは21/12期からとなり、訪問看護要員を先行的に確保する必要があることや、評価するには十分な期間のデータ揃っていないため、同社の拡大策が適切なものかどうかの評価については、これらの重要経営指標の今後の推移を注視する必要がある。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。