ヤプリ<4168> アプリ運営プラットフォームをクラウド型で提供

2021/01/08

プログラミング不要でスマートフォンアプリの開発・運用・分析ができるアプ
リ運営プラットフォームをクラウド型で提供

業種: 情報・通信業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ アプリ運営プラットフォーム事業を展開
ヤプリ(以下、同社)は、アプリ開発技術が無くても、プログラミング不要でネイティブアプリ注1を開発・管理できるクラウド型のアプリ運営プラットフォーム(以下、Yappliシステム)の企画・開発・販売する事業を行っている。

Yappliシステムでは、プログラミング不要でありながら、スクラッチ開発注2に見劣りしない40以上の機能を搭載している。代表的な機能としては、プッシュ配信機能やポイントカード機能などがある(図表1)。

従来のアプリ開発では、iOSとAndroidの2つの異なるプログラミング言語を用いて行うスクラッチ開発が主流のため、Webの開発よりも多くの手間とコストがかかる傾向にある。また、慢性的にアプリエンジニアが不足していることで開発リソース確保が困難なことや、継続的な運用管理とアップデートに係る運営コスト等も、アプリ開発を行う企業にとっての課題になっている。

Yappliシステムは、企業が抱える上記のようなアプリ開発・運用における多くの課題をSaaS注3型のアプリ開発プラットフォームの提供により解決している。Yappliシステムがあれば、顧客企業にアプリ開発技術がなくても、ドラッグ・アンド・ドロップなど直感的な操作でデザインの設計、変更、機能の登録、プッシュ通知の送信などといったネイティブアプリの開発・運用が、iOSとAndroidの2つオペレーティングシステムについて同時に可能となる。

Yappliシステムの主な収入源は、導入時に同社が提供する初期制作サポートへの対価である初期制作収入、Yappliシステム利用料及び保守運営料として毎月受け取る月額利用料である。月額利用料は、ベース利用料金と有料オプション機能やプッシュ通知を受信できる端末数に応じた従量課金方式により加算される追加料金で構成される。料金はプランによって異なり、初期制作収入で280~360万円、月額利用料のベース利用料金は20~70万円、追加料金は1機能10万円からである。

◆ 顧客構成と顧客獲得経路
Yappliシステムの顧客は用途によって企業のマーケティング部門とコーポレート部門に分かれ、それぞれに対して「Yappli for Marketing」と「Yappli for Company」というパッケージを提供している。売上高構成は、「Yappli for Marketing」が約8割、「Yappli for Company」が約2割である。

「Yappli for Marketing」は、実店舗やEC店舗への集客・販売支援、消費者のロイヤリティ向上に向けた、プッシュ通知やクーポン、ポイントカード、GPSによる店舗へのナビなどの機能を提供している。顧客の業態としては、衣服、雑貨、日用品を扱うブランド、EC事業者や小売事業者、外食チェーンなどが多い。

「Yappli for Company」は、社内報、従業員教育ツール、採用・総務・IRなどのバックオフィス業務の電子化に向けた、電子書籍や埋め込み動画、認証などの機能を提供している。顧客の業態としては、従業員個人にPCが支給されていない、全国に多くの拠点を持つ外食チェーンや、家電量販店などの小売業が多い。

同社の顧客の企業規模は、5割以上が従業員300人以上の企業、8割以上が従業員50人以上の企業であり、中堅企業や大企業が顧客の中心である。

Yappli システムがリリースされた13 年2 月から3 年程度は、大企業のアプリ 導入は限定的だったこともあり、現在の顧客層よりも規模の小さい中小企業 をターゲットにしていた。その後、大企業のアプリ導入の流れを踏まえて、タ ーゲットを大企業にシフトした。同社によると、個人オーナーが意思決定す る中小企業と比較して、中堅・大企業は意思決定者への接触が難しく、社 内調整・稟議が必要なため導入までの時間はかかるものの、導入後はユー ザー数が大きく高単価が見込め、解約リスクも相対的に低いようである。

顧客獲得の経路は、Web やイベントなどを通した顧客からの問い合わせに対応するプル型営業が多いようである。アプリ導入にあたって外部委託を検討する企業が、複数の事業者を比較検討するなかで、同社へ問合せが来るようである。

中堅・大手企業の顧客はアプリ開発・運用の委託先として、システムインテグレーターと同社のようなノーコード開発プラットフォームを比較検討するケースが多い。カスタマイズニーズが強く、予算やリソースに余裕がある企業はスクラッチ開発を行うシステムインテグレーターを選択する。ノーコードアプリ開発プラットフォームを選択する際は、機能の充実性と費用のバランスから、同社を選ぶことが多い様である。

Yappli システムは機能性・利便性等が評価され、契約アプリ件数及び累計アプリダウンロード数は増加傾向にあり、20 年9 月末時点で、契約アプリ数は527 件、累計アプリダウンロード数は65 百万ダウンロードとなっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。