ビートレンド<4020> 新型コロナウイルス禍の影響はあるが、主力サービス拡販による成長に期待
外食や小売等の実店舗を持つ企業を対象に CRM サービス「betrend」を提供
新型コロナウイルス禍の影響はあるが、主力サービス拡販による成長に期待
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ BtoC 型企業に特化した CRM プラットフォーム「betrend」を提供
ビートレンド(以下、同社)は、CRM ソフトウェアプラットフォーム「betrend(ビ ートレンド)」を開発、提供する企業である。「betrend」は、顧客管理ツール及 び顧客とのコミュニケーションツールを、月額利用料をベースとした SaaS 型 のクラウドサービスとして提供しており、不特定多数の個人顧客を持つ BtoC 型の企業を対象としている。
同社は、betrend 事業の単一セグメントだが、売上高は CRM サービス、カス タマイズサービス、その他サービスに分類される。収益特性で区分すると、 CRM サービスは解約されない限り翌期も継続的な売上高になるリカーリン グレベニューであり、カスタマイズサービスとその他サービスは売上高計上 が 1 回限りのワンショットレベニューである。リカーリングレベニューの特性を 持つ売上高の構成比が 19/12 期で 75.8%、20/12 期第 3 四半期累計期間で 77.7%と高い水準にあり、収益基盤の安定性につながっている(図表 1)。
◆ 「betrend」の 2 つのサービス
「betrend」には 2 種類のサービスがある。ひとつは、顧客管理ツールとメール 配信サービスを合わせて提供する「スマート CRM サービス」であり、もうひと つは、「スマート CRM サービス」が持つ諸機能のうち、メール配信と葉書等 のダイレクトメール(DM)配信の機能に特化した「メールマーケティングサー ビス」である。近年は、「スマート CRM サービス」の年間経常収益注の拡大と 「メールマーケティングサービス」の年間経常収益の縮小が続いている(図 表 2)。
◆ CRM サービス(1)~「スマート CRM サービス」
「スマート CRM サービス」は、消費者を対象とした実店舗を多店舗展開する 企業に特化した顧客管理サービスである。顧客企業の業種は、外食、小売、 サービス業であり、現在は、2,000 店舗以下をチェーン展開している企業を 主な対象としている。
「スマート CRM サービス」の最大の特徴は、個人ユーザーの会員情報、行 動履歴、購買履歴をひとつのデータベースで統合管理する顧客情報管理 の機能と、メール配信をはじめ、ショートメッセージサービス(SMS)、プッシュ 通知、音声自動送受信、スマート DM等の情報送受信の諸機能をプラットフ ォームサービスとして一括提供できることである。一括提供により、情報送受 信サービスを複数使用することによるデータ散逸のリスクが低減することや、データ連携がスムーズとなって顧客企業と個人ユーザーとの間のコミュニケ ーションの効果の最大化を図ることが可能となる。
「スマート CRM サービス」は 19/12 期末時点で 124 社、20/12 期第 3 四半期 末時点で 147 社に導入されており、1 社当たり年間経常収益も増加傾向が 続いている(図表 3)。また、スマート CRM サービスを通じて管理されている 消費者数(利用会員数)は、19/12 期末時点で 1,503 万人、20/12 期第 3 四 半期末時点で 1,715 万人となっている。
◆ CRM サービス(2)~「メールマーケティングサービス」
「メールマーケティングサービス」は、「スマート CRM サービス」が持つ情報 送受信機能のうち、メール配信とスマート DM に限定したサービスである。 導入企業の業種は外食や小売に限定されず、金融機関、学校、官公庁、 自治体、エンターテイメントサービス等多岐にわたる。
「メールマーケティングサービス」は 19/12 期末時点で 540 社、20/12 期第 3 四半期末時点で 488 社に導入されており、1 社当たり年間経常収益はほぼ 横ばいで推移しながらも契約企業数の減少傾向が続いている(図表 4)。こ れはメールマガジンを多用してきた顧客企業が、LINE や SMS 等を活用し たマーケティングにシフトする傾向が続いてきたためである。
◆ CRM サービス以外
カスタマイズサービスは、導入企業が持つ他のシステムと「betrend」を連携さ せたり、導入企業のニーズに合わせてシステム構築をしたりする場合に発生 する。
その他サービスは、「betrend」の周辺サービスである。「betrend」での DM 配 信に関連して DM や会員カード等を印刷納品・郵送するサービスや、ネット 通販を支援するフルフィルメントサービス、決済会社と接続連携するサービ ス等が該当する。
◆ 収益構造
「betrend」の利用に対する顧客企業から得られる収益は、(1)月単位で継続 的に収受できるリカーリングレベニュー、(2)主に初期導入時のカスタマイズ 開発費を中心としたワンショットレベニューに大別される。
リカーリングレベニューは、基本料金、会員数等に応じた従量課金、オプシ ョンサービスのうち月額利用料で構成される。基本料金は、年間契約の場 合、「スマート CRM サービス」は月額 6 万円(カスタマイズを行った場合は月 額 10 万円)、「メールマーケティングサービス」は月額 1 万円である。従量課金のうち大きなものは利用会員数の増加に応じたものであり、「スマート CRM サービス」の場合、月 2 万人までは基本料金のみで利用できるが、2 万人を超えると、1 万人毎に月額 1 万円が加算される。
ワンショットレベニューは、初期費用、初期導入時のカスタマイズ開発費、そ の他の周辺サービスの利用料から構成される。初期費用は「スマート CRM サービス」は 50 万円、「メールマーケティングサービス」は 3 万円である(便 宜上、リカーリングレベニューを示す CRM サービスに区分されている)。一 方、初期導入時のカスタマイズ開発費はカスタマイズサービスに区分されて いる。
◆ 販売チャネル
具体的な内訳の開示はないが、販売チャネルとして、直接販売のほか、ソリ ューションパートナーと呼ばれる代理店経由の販売がある。