カラダノート<4014> ファミリーデータベース活用の余地の大きさに期待
妊娠育児中のママ向けアプリで集積したデータベースを梃子に事業を展開
ファミリーデータベース活用の余地の大きさに期待
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 妊娠育児中のママを対象としたコンテンツ提供を起点として妊娠育児世帯向け商材のプロモーションを支援
カラダノート(以下、同社)は、妊娠育児中のママを主な対象としたアプリ(コンテンツ)を提供するとともに、妊娠育児世帯に商品やサービスを提供したい企業に対してマーケティング支援を行っている。妊娠育児中のママに役立つコンテンツを提供することでユーザーのパーソナルデータを蓄積し、そのデータに基づいて、ニーズに合った商品やサービスをレコメンドしていく。同社は、商品やサービスを提供する企業から成果報酬の形で収益を得ることとなる。
同社の事業は、ファミリーデータプラットフォーム事業の単一セグメントで、売上高のほぼすべてが企業からの成果報酬である。内訳の詳細の開示はないが、保険や食材宅配等の分野の企業からの成果報酬が多い。
◆ 子育て向けアプリを中心とした自社コンテンツ
同社の競争力の源泉のひとつは、妊娠育児中のママ及び世帯のパーソナルデータを蓄積する仕組みにある。代表的なのは妊娠・育児中のママにとって有用な機能を持つ子育て向けアプリである。アプリは無料で使用することができ、主だったものとしては、プレママ向け情報提供コンテンツ「ママびより」、陣痛間隔計測ツール「陣痛きたかも」、授乳記録管理ツール「授乳ノート」、離乳食管理ツール「ステップ離乳食」、予防接種管理ツール「ワクチンノート」がある。
妊娠中から1歳未満の子どもを持つ親によるダウンロード数は19年には155万件となり、18年~19年の2年間の出生数に対するダウンロード率は87%と高い水準を誇っている。
ママ向け以外に、中高年向けの健康をサポートするヘルスケアアプリとして、「血圧ノート」、「お薬ノート」、「通院ノート」があり、20年6月1日末時点で、累計230万ダウンロードとなっている。
20年8月末時点で、子育て向けアプリとヘルスケアアプリを合わせて21個のアプリを運営し、合計ダウンロード数は800万に迫っている。
◆ パーソナルデータが蓄積されたファミリーデータベース
妊娠育児中のママを対象としたアプリや外部広告を通じてキャンペーンを実施し、アンケートに記載されたパーソナルデータを蓄積し、ファミリーデータベースを構築している。毎月約4万件のペースでパーソナルデータの登録が増加しており、20/7期末時点で80万件弱のアクティブなファミリーデータが蓄積されている(図表1)。
◆ 収益のほとんどは提携企業へのプロモーション支援によるもの
同社は、妊娠育児ママ世帯向けにサービス展開をしている提携企業に対し、ファミリーデータベースを活用したプロモーション支援を行っている。具体的には、ファミリーデータベースに蓄積されているパーソナルデータから、提携企業が希望する条件に合致したユーザーを抽出し、見込客としてデータ提供を行う(これを「送客」と称している)。その見込み客が、提携企業の商品やサービスの購買につながった際に、同社は成果報酬を受け取る。
提携企業の商材には、保険(年間送客数約30 万件)、食材宅配(同約16 万件)、幼児教育(同約5 万件)、住宅、ウォーターサーバー、就労支援がある。同社の売上先上位は保険代理業者と食材宅配業者で占められており、同社の収益も保険や食材宅配によるものが多いと推察される(図表2)。
同社の売上高のほぼすべてがこの成果報酬であり、成果報酬は、「アクションユーザー数×1 アクションユーザー当たりアクション数×アクション単価(成果報酬単価)」の掛け算で表すことができる。同社では、この掛け算を構成する3 項目をKPI(重要指標)としているが、20/7 期第3 四半期において、アクションユーザー数は月間平均約2.7 万人、1 アクションユーザー当たりアクション数は月間平均1.5 案件となった。また、アクション単価は、同社が現在注力している保険領域では約63%増となっている。
送客による成果報酬以外では、19 年4 月に開始した内祝いEC サイト「ママびより内祝い」のサービスによる収益がある。これは、提携企業へ送客するのではなく、同社自身が運営するEC サイトへ送客する形態の事業である。ただし、まだ規模はさほど大きくないと推察される。