識学<7049> 使った経営・組織コンサルティングを開発・提供

2019/02/26

誤解や錯覚の発生要因と解決策を体系化した独自開発理論である「識学」を
使った経営・組織コンサルティングを開発・提供

業種: サービス業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 組織コンサルティング事業を展開
識学(しきがく、以下、同社)は、意識構造に着目し、独自に開発した「識学」 を基礎理論として、組織の生産性向上のための現状把握、改善及びその定 着サービスを提供する組織コンサルティング事業を展開している。15年3月 の設立と社歴は浅い。

売上高はマネジメントコンサルティングサービスとプラットフォームサービス に分類されるが、マネジメントコンサルティングサービスが売上高の大部分 を占めている(図表 1)。プラットフォームサービスは 17 年 7 月に開始して以 来、順次サービスを拡充してきており、18 年 3 月から本格的に有料契約を 開始している。

◆ 基幹理論「識学」
識学とはヒトの意識構造を分析し、行動を阻害する誤解や錯覚の発生原因 を研究する同社が独自に開発した理論である。ヒトの思考の癖から生じる誤 解や錯覚は個人の行動の質・量を低下させ、更に組織のパフォーマンスを 低下させる(図表 2)。識学はこの誤解や錯覚の発生要因と解決策を体系化 しており、組織に導入することでパフォーマンスを向上させる。

識学ではヒトの領域は大きく 5 つの領域(位置、結果、変化、恐怖、目標)に 分けることができるとしている。いずれかの領域で、間違った認識が発生す ると行動の質・量にずれが発生する。これらの 5 領域を正しく認識するという 前提が無ければ充実した環境を構築することも、個々人の能力向上も十分 には出来ず、生産性を低下させてしまうというのが識学の考え方である。

識学メソッドは一般的な研修と比べると多くの点で異なっている(図表 3)。 「従業員のモチベーションを上げる」、「従業員の努力や業務に取り組むプ ロセスも評価する」、「現場とのコミュニケーションを密にとる」という一般的な 研修では推奨される良きリーダーの言動が、識学メソッドでは誤解や錯覚を 発生させることにつながるという点を指摘し、リーダーに対して組織内で誤 解や錯覚を生じさせない組織マネジメント求めている。

識学を受講した経営者は社長が本来やらなければならない役割を再認識し た結果、従業員から時として「社長が冷たくなった」、「社長が変わった」とい う印象を持たれるようである。しかし、受講した経営者は「会社の未来」と「社 員の未来」という二つの未来にコミットするようになる。会社の未来へのコミッ トは会社を成長させ、結果的に社員に多くの利益を分配すること、社員の未来へのコミットは社員を成長させどんな環境変化があっても生き抜いていく 力を身につけさせるということにつながる。

◆ マネジメントコンサルティングサービス
マネジメントコンサルティングサービスは、経営者向け、幹部向け、管理職・ 新入社員向けに識学に基づく組織運営を導入・浸透し、組織の生産性を上 げるサービスである(図表4)。18年11月時点で同サービスの導入累計社数 は 864 社となり、売上構成比が高いのは組織長(経営者)向けのマスタート レーニング 3rd、2nd、継続の 3 サービスで、売上高の約 6 割を占めている。 料金はマスタートレーニング3rdを例にとると、一般講師で120万円、シニア 講師で 180 万円、上級講師(取締役の梶山啓介氏)は 300 万円となる。

◆ プラットフォームサービス
プラットフォームサービスはウェブ上で顧客の識学実践を支援するサービス で、主なサービスは組織診断、動画による復習等がある(図表5)。19/2期か ら本格的に有料サービスを開始し、18 年 11 月現在での導入実績は 122 社 となっている。

◆ 中規模企業が顧客に多い
同社の顧客属性を見てみると、従業員数200人未満の企業が9割弱を占め、 比較的社歴の長い企業が多い(図表6)。また、マザーズ上場企業が顧客に 多い。世の中の常識的なコンサルティングとは真逆の独自の理論であるた め、意思決定の早い中堅企業での採用が多くなる傾向にある。

◆ 重要なのは講師の質と量の確保
同社の成長にとって、識学の講師の確保は非常に大切となる。18 年 11 月 末現在で講師は 25 人であり、19/2 期末にかけては数名の増、20/2 期は 10 人以上講師を増やす計画である。識学の講師としてはマネジメント経験のあ る30代から 40代の人材が求められているが、上場承認以降は応募者が急 速に増加しているとのことである。

講師候補者が講師として認定され、一定品質のサービスが提供できるまで の期間は平均で3カ月とのことである。月額300万円の講師料を獲得できる ようになるまで 7~8 カ月が必要となるが、20 人弱の講師が月額 300 万円の 売上を上げているとのことである。

また、一度認定された講師であっても毎月品質確認テストを受験しなければ ならず、基準を下回ると再学習しなければならない。品質確認テストは現場 で発生した事例で横展開できそうなものから出題されるため、講師の質の向 上にも寄与している。なお、一般講師からシニア講師への昇格には一定の 売上実績、つまり経験も重視されている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。