日本ゼオン(4205) 中長期的な成長は持続する見通し

2023/11/23

 

 

豊嶋 哲也 社長

日本ゼオン株式会社(4205)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

化学

代表取締役社長

豊嶋 哲也

所在地

東京千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル

決算月

3月末日

HP

https://www.zeon.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を含む)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,336.5円

229,513,656株

306,745百万円

3.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

40.00円

3.0%

130.15円

10.3倍

1,591.79円

0.8倍

*株価は11/13終値。発行済株式数、EPSは24年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月

337,499

33,147

36,319

18,458

84.06

19.00

2020年3月

321,966

26,104

28,744

20,201

92.44

21.00

2021年3月

301,961

33,408

38,668

27,716

126.74

22.00

2022年3月

361,730

44,432

49,468

33,413

153.22

28.00

2023年3月

388,614

27,179

31,393

10,569

49.94

36.00

2024年3月(予)

380,000

20,500

25,000

27,500

130.15

40.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2022年3月期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

日本ゼオンの2024年3月期上期決算概要などについてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年3月期上期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期経営計画>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
付属:Fact Sheet

 

今回のポイント

  • 売上高は前年同期比6.1%減の1,854億円、営業利益は同53.1%減の94億円。エラストマー素材事業は減収減益。合成ゴムは中国景気減速の影響、化成品は粘着テープの需要回復に遅れが見られた。ラテックスは手袋需給緩和の影響を受けた。高機能材料事業は減収減益。高機能樹脂は大型フィルムや光学用途樹脂の出荷は回復が見られたが中小型フィルムや医療その他樹脂が出荷低調。高機能ケミカルは電池材料の海外関連会社で決算期ズレの影響があった。 
  • 24/3期は、売上高は前期比2.2%減の3,800億円、営業利益は同24.6%減の205億円を予想。売上高・営業利益とも前回予想から減額修正。中国の景気動向等の不透明感を背景とした市場環境の悪化により、エラストマー素材事業部門や高機能材料事業部門の主力製品について需要の回復遅れの影響等が出ており、販売数量の下振れが予想されることによる。特別利益の計上により当期純利益については、前回予想値を上回る見込み。配当は修正なく、期末は20円/株、年間で4円増配の40円/株を予想。10年度から14期連続の増配予想。予想配当性向は30.7%。 
  • 1Qは前四半期比で低価法評価損の戻し入れ等により大幅に改善したが、2Qは1Qのような一過性要因がなく対前四半期で増収減益。通期予想は下期の見通し悪化を織り込んだ結果、減額修正となった。エラストマー素材では、中国経済低迷などにより回復の足取りが重くなっており、高機能材料では、ノートPC、タブレット向け中小型フィルムにおける顧客生産の下方修正などが失速の要因となった模様だが、中長期での事業展開や見通しには大きな変化はないと見ている。同社が材料を手掛ける電気自動車向けリチウムイオン電池は、2Qに顧客在庫調整から回復が見られ、今後も大きな市場成長が見込まれる。進行中の中期経営計画についても同様に変化はない。27/3期に目指す利益水準を達成するとEPSは200円近くが予想される。短期的な経済状況及び市況悪化はあるものの、中長期的な成長は持続する見通し。足元の株価は低迷しBPSを大きく下回る水準。中長期での事業展開や中期経営戦略で掲げる利益目標も考慮すると、見直し余地は大きいといえそうだ。 

1.会社概要

自動車部品やタイヤに使用される合成ゴムや、医療用手袋等に使用される合成ラテックスを始めとして、世界的な高シェア製品を多数保有する石油化学メーカー。独創的な技術開発力とそれを生み出す研究開発体制、高い収益性などが強み。
自動車部品、タイヤ、ゴム手袋、紙おむつ、携帯電話、液晶テレビ、香水など身の回りにある多種多様な製品に同社が製造する製品(素材)が使用されている。
グループは、同社および子会社60社、関連会社7社で構成されており、世界16か国に生産、販売拠点を有している。(2023年3月期有価証券報告書)

 

 

 

(同社資料より)

 

【1-1社名と経営ビジョン】

「ゼオ」(Geo)はギリシャ語で大地、「エオン」(Eon)は永遠を意味し、その合成語「ゼオン」には「大地から原料を得て永遠に栄える」という意味が込められており、世界に誇り得る独創的技術によって、地球環境と人類の繁栄に貢献することを経営理念として掲げている(設立時は資本及び技術提携先であった米国B.F.グッドリッチ・ケミカル社の塩化ビニル樹脂製品の商標「Geon」を取って社名としていたが、1970年の資本関係解消を機に表記を「Zeon」と改めた)。

 

【1-2沿革】

同社は、古河電工、横浜ゴム、日本軽金属の古河系3社の共同出資により、米国B.F.グッドリッチ・ケミカル社との提携による塩化ビニル樹脂製造技術の導入を前提として、1950年4月に設立された。
1951年にB.F.グッドリッチ・ケミカル社が35%の株式を取得し、技術及び資本の全面提携が成立し、翌1952年に日本で初めて塩化ビニル樹脂の量産を開始した。
1959年にはB.F.グッドリッチ・ケミカル社から合成ゴム製造技術を導入し、日本で初めて量産を開始。自動車向け需要の増大に対応し、生産設備を拡大していく。

 

1965年にはC4留分からブタジエン(合成ゴムの主原料)を効率よく製造する同社の独自技術であるGPB(ゼオンプロセスオブブタジエン)法による生産を開始した。
B.F.グッドリッチ・ケミカル社が事業の中核を塩化ビニル樹脂事業にシフトするのに伴い、特殊合成ゴム事業を譲り受け、1970年資本提携も解消へ。これに伴い1971年に英文社名をGeonからZeonに変更した。
同じく1971年にはC5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを抽出する独自技術GPI(ゼオンプロセスオブイソプレン)法を開発し生産を開始。

 

1980年代に入り、合成ゴムに加えて、フォトレジストなどの情報材料、合成香料、メディカル分野など新規事業への展開を積極化させていく。
1984年、現在では世界シェアトップとなった水素化ニトリルゴムZetpol® を高岡工場で生産開始。
1990年、GPI法によって抽出、合成された高機能材料事業の主要製品であるシクロオレフィンポリマーZEONEX® を水島工場で生産開始。
1993年、電子材料事業で中国に進出した。
1999年にはゼオン・ケミカルズ(米国、現 連結子会社)が、グッドイヤーから特殊ゴム事業を買収し、特殊ゴム分野で世界トップメーカーとなる布石を打つ。
2000年、水島工場での塩化ビニル樹脂生産を打ち切り、創業事業の塩化ビニル樹脂事業から撤退した。
21世紀に入り、LCD用光学フィルムゼオノアフィルム®の上市、グローバル生産・販売体制の強化、シンガポールにおける溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)の商業運転開始、富山県氷見市のLCD用光学フィルム設備を増強、世界初スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場稼働、住友化学とS-SBR生産販売のための合弁会社設立など、積極的な事業展開を進めている。

 

【1-3事業内容】

同社の主要製品は、原油を蒸留分離して得られるナフサを熱して抽出される炭素数の異なる様々な抽出物を原材料としている。ナフサを熱すると、順次、一酸化炭素ガス(C1)、エチレン(C2)、プロピレン(C3)が抽出される。
同社は、プロピレン(C3)を抽出した後のC4留分から独自開発のGPB法によって抽出したブタジエンや、その後のC5留分からGPI法によって抽出したイソプレン・モノマーピペレリンジシクロペンタジエン、2-ブチン等を原材料に加工を行い、合成ゴム、合成ラテックスを始めとした各種素材を生産している。

(同社資料より)

 

生産した素材そのものを顧客に販売する素材型ビジネスが中心の「エラストマー素材事業」、素材を同社において一次加工し顧客に販売する部材型ビジネスが中心の「高機能材料事業」、「その他の事業」がある。

*いずれも2023年3月期実績。消去、全社前の構成比。

 

<エラストマー素材事業>
「エラストマー」とは、「ゴムのように弾性に富む高分子化合物の総称」(三省堂 大辞林より)で、合成ゴムがその代表例である。沿革にあるように同社は1959年に日本で初めて合成ゴムの量産を開始しており、同事業は会社の基盤を支える事業である。内訳としては大きく、合成ゴム事業、合成ラテックス事業、化成品事業(石油樹脂、熱可朔性エラストマー)に分類される。

 

➀合成ゴム事業
<製品例:タイヤ>
世界トップクラスの品質を誇るタイヤ用合成ゴムを、世界の主要タイヤメーカーに納入している。製造している合成ゴムの種類には、耐摩耗性・耐老化性・機械的強度特性に優れるスチレンブタジエンゴム(SBR)、弾性・摩耗性・低温特性のバランスに優れるブタジエンゴム(BR)、天然ゴムとほぼ同様の特性をもち品質安定性に優れるイソプレンゴム(IR)等がある。
今後はSBRの特性を更に改良した低燃費タイヤ用のS-SBRの需要が急速に拡大すると見込んでおり、これに対応した供給能力増のため、シンガポール工場の第1系列が2013年9月、第2系列も2016年4月に稼働を開始した。シンガポール工場の供給能力は7万トンとなっている。

 

<製品例:自動車用部品>

(同社資料より)

 

自動車エンジンにおいては、ラジエーターホース、フューエルホース、タイミングベルト、オイルシールなどの各部品において耐油性、耐熱老化性に優れた特殊合成ゴムが用いられている。
世界No.1の特殊合成ゴムメーカーである同社はその品質の高さを評価されており、自動車用特殊合成ゴムの中で高いシェアを有している。中でも、タイミングベルト用の水素化ニトリルゴムZetpol® は耐熱性、耐油性、機械的強度特性に優れており、世界で高いシェアを占めている。
また従来品の性能を大きく向上させたZetpol® の新製品を開発した。これは従来製品比で+10℃も耐熱性を改善させたもので、従来のシール・ガスケット部品の長寿命化に対応できるだけでなく、次世代バイオ燃料を用いたエンジン向けにも需要が拡大すると見込んでいる。さらに、押出加工性が良好であることからホース用途にも展開が広がってきた。顧客の評価も上々で、高価なゴムの代替材を中心として、国内、アジア、欧米で採用が進んでいる。

 

➁合成ラテックス事業
合成ラテックスとは、合成ゴムを水中に分散させた液状ゴムのことで、ゴム手袋をはじめ、紙加工、繊維処理、接着剤、塗料、化粧パフ等に使用される。化粧用パフ用アクリロニトリルブタジエン(NBR)ラテックスは世界でも高いシェアを有している。

 

➂化成品事業
C5留分から製品化を行う同社独自のGPI法により粘着テープ・ホットメルト接着剤用素材、トラフィックペイント用バインダー等、幅広い製品化を行っている。

 

<高機能材料事業>
独創的技術である高分子設計や加工技術によって、高付加価値を有した材料・部材を扱っている。
光学樹脂関連及び光学フィルムなど高機能樹脂事業と、電池材料、化学品、電子材料、トナーなど高機能ケミカル事業、メディカルデバイス事業からなる。

 

➀高機能樹脂事業
◎光学樹脂関連及び光学フィルム
GPI法によってC5留分から抽出、合成されたシクロオレフィンポリマーは、独自技術で開発した熱可塑性プラスチックで、製品としてZEONEX® とZEONOR® がある。
ZEONEX® は高透明性、低吸水性、低吸着性、耐薬品性を活かして、カメラレンズやプロジェクターレンズなどの光学部品、シリンジやバイアルなどの医療用容器に使用されている。
ZEONOR® は高透明性や転写性、耐熱性等を活かし、透明汎用エンプラとして、導光板や自動車部品、半導体容器などの幅広い分野で使用されている。

 

シクロオレフィンポリマーから、世界初の溶融押出法で開発された光学フィルムがゼオノアフィルム® で、光学特性、低吸水・低透湿、高耐熱性、低アウトガス、寸法安定性に優れ、液晶テレビやスマートフォン、タブレット端末のディスプレイ、有機ELディスプレイなど幅広い用途で利用されている。

 

(同社資料より)

 

また、同社では世界で初めて「斜め延伸位相差フィルム」を開発し、生産している。
有機ELの光反射防止フィルムとしての採用も進んでおり、今後も中小型用フラットパネルディスプレイ向けの需要拡大が見込まれる。同社の光学フィルムは、富山県高岡市および氷見市、福井県敦賀市の3拠点で生産している。

 

他にも、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビ用途に代表される、電子デバイス向け塗布型有機絶縁材料ZEOCOAT® がある。ZEOCOAT® は、透明性が高く、吸水性が非常に低いほか、膜からガス成分を発生しにくいためディスプレイの画質と信頼性の向上を同時に達成することができる。
今後、液晶に比べ薄く成型できる有機ELディスプレイ向けに拡販を積極的に進めるとともに、新しい半導体を用いた薄膜トランジスタやフレキシブルディスプレイ用の絶縁材料での採用を目指している。

 

②高機能ケミカル事業
◎電池材料
リチウムイオン電池用材料として負極及び正極、機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー、シール剤を供給している。
現在、リチウムイオン電池はスマートフォン、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源として広く使用されており、その高容量化は強く求められている。
さらに、軽量・小型でありながら、大きなエネルギーを蓄えられることから、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車向け、スマートグリッドなどの産業電源向けでの採用が拡大しているが、一方で、高温下で使用した場合、寿命が低下しやすいといった課題があった。
同社は、リチウムイオン電池バインダーの高機能化を進め、正極用バインダーとして寿命の低下抑制に大きく貢献する水系機能性バインダーの開発に成功し、また、リチウムイオン電池の蓄電容量を従来比5~15%上げられる負極用バインダーの製品化にも成功した。また、環境負荷を考慮した製品群拡大の一環として、水系の製品設計によるセパレータコート接着スラリーの本格的な展開を開始した。
正極・負極・機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー及びシール剤はリチウムイオン電池の「寿命・容量・生産性・安全性・充放電レート」の5大性能向上に寄与し、電気自動車の普及に貢献するものと考えている。
リチウムイオン電池の将来性に注目し、早くから取り組んできた同社では、「リチウムイオン電池バインダー市場でのトップイノベーター」として、急速充電など自動車用途でのニーズに応えた新しい材料機能の普及拡大や次世代の新しい電池の実現に向けた機能性材料の提案を継続的に実施している。

 

(同社資料より)

 

◎化学品
C5留分より得られる原料を活用して食品・香粧品用の合成香料や、特徴ある溶剤及び植物調整剤などの特殊化学品を扱っている。
グリーン系の合成香料では世界一のシェアを有している他、医農薬中間体の原料やフロン代替用途などの溶剤・洗浄剤・ウレタン発泡剤及び機能性エーテル溶剤など、幅広い産業分野に特徴ある製品を供給している。

 

③メディカルデバイス事業
メディカルデバイス市場は、景気の影響が少なく、また日本における高齢化の進行と新興国の市場拡大で成長が見込まれる一方、医療機器の製造・販売会社に対する法的要件が厳格であるほか、薬事承認申請作業が必要で、医療従事者との関係作りが不可欠であること等から参入障壁が高く、魅力的な市場であると同社では考えている。
同社は、1974年に人工腎臓の開発を開始したのを皮切りにメディカルデバイス事業を積極的に推進し、1989年に子会社ゼオンメディカル株式会社を設立し、同社グループ内で開発・製造・販売・薬事のすべての分野において対応が可能な体制を構築している。
消化器系製品では、胆道結石除去用の差別化製品である「オフセットバルーンカテーテル」、国産初の胆管カバードステント「ゼオステントカバード」、また循環器系製品では、急性心筋梗塞時等に心臓の拍動を補助するデバイスとして、世界最細径の「ゼメックスIABPバルーンプラス」など、豊富な開発実績を有している。

(同社資料より)

 

現在注力しているのが、胆道結石による痛みからの解放につなげる結石除去デバイスである。
同社の開発製品であるゼメックスクラッシャーカテーテル、ゼメックスバスケットカテーテルNT、エクストラクションバルーンカテーテルなど、巨大結石から胆泥・胆砂まであらゆる胆道結石を除去できるデバイスをラインアップしており、結石除去デバイス全体で50%のシェア獲得を目指す。また、2016年3月には、ガイドワイヤータイプとしては世界初の光センサー型FFR(※)デバイスを上市した。光ファイバー型センサーであることから血圧測定のズレが起こりにくい。ガイドワイヤーとしての操作性も高い評価を得ている。

 

※FFR:冠動脈の診断および治療において、病変の重症度を定量的に評価し治療戦略を決定するための冠血流予備量比のこと。

 

【高機能新規素材開発例 ~カーボンナノチューブ(CNT)~】
積極的な研究開発によって様々な新素材を世の中に送り出してきた同社だが、今後大きな成長が期待されるのが「単層CNT」だ。

 

①単層CNTとは?
1993年、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研) ナノチューブ応用研究センター長の飯島 澄夫博士によって世界で初めて蜂の巣上の炭素原子が網目のように結び付いた、筒状分子構造の物質が発見され、「カーボンナノチューブ(CNT)」と命名された。その構造により、単層CNTと多層CNTに大きく分類できる。多層CNTは比較的生産が容易であることから国内外において実用化への応用開発が推進されている。

(同社資料より)

 

一方、単層CNTは、「鋼の20倍の強度」、「銅の10倍の熱伝導性」、「アルミの半分の密度」、「シリコンの10倍の電子移動度」など、「軽量かつ高強度でありながら高い柔軟性を持つ」、「電気や熱伝導性が極めて高い」といった、多層CNTを上回る優れた特性を持つ。
例えば、リチウムイオン電池の導電助剤への展開、高い伸縮性や強度を持つことから、電子ペーパーや超薄型タッチパネル用の透明導電膜のほか、放熱材料への利用なども考えられている。また、広帯域の光を吸収できる特性があるため、電磁波吸収材としての実用化研究も進んでおり、エネルギー分野、エレクトロニクス分野、構造材料分野、高機能材料分野等、幅広い場面での応用が見込まれている。

(ゼオンナノテクノロジー(株) HPより) 

 

しかし、従来の単層CNTは、不純物が多く、且つ生産性が低いために、製造コストが高く1g当たり数万~数十万円にも及ぶのが大きな課題であった。

 

②同社の取組み&位置づけ
このような背景の中、低炭素社会の実現というグローバルな社会的要請に応え、日本で発見された数多くの優れた特性を持つ単層CNTを応用した新製品を世界に先駆けて事業化、工業化するための技術の確立に取り組んでいる。
同社と産総研が、「スーパーグロース法」という2004年に産総研 畠賢治博士らによって開発された合成技術をベースにして、産総研のつくばセンター敷地内に2010年12月に開設した実証プラントで量産化に向けた研究開発および供給(2011年4月から、産総研より量産品のサンプル供給を開始)を担当し、複合材料の用途開発を上記の研究組合が進めている。
産総研 ナノチューブ応用研究センターが量産化のためのパートナーに同社を選定したのは、同社の荒川公平氏(前取締役常務執行役員)がCNT研究開発者として豊富な実績と成果を有していた事が大きな理由だということであり、単層CNT実用化プロジェクトにおける同社の重要性は非常に大きなものである。

 

③今後の展開
スーパーグロース法を基にした量産化技術を確立した同社は、2015年11月、山口県周南市の徳山工場内に量産プラントを竣工させ、世界初の量産を開始した。単層CNTの量産化技術を確立しているのは世界でも同社のみであり、国内外を問わず問い合わせが来ており、順次サンプル出荷を行っており、同社自らも他社に対し用途提案も行っている。カーボンナノチューブを用いたシートによるリチウムデンドライトの抑制技術の開発によって、リチウム金属電極(負極)の大幅な寿命向上を達成し、高エネルギー密度、大容量のリチウム金属電極(負極)の実用化加速への貢献が期待される。(同社2022年1月25日プレスリリース)
一方、単層CNTは、ナノ材の一種でありそのサイズが極めて小さい事、形状が繊維状であることから化学的な特性以外に、サイズや形状によって生体への侵入などによる影響があるのではないかという懸念も指摘されている。
現在、産総研を中心に評価手法の標準化、OECDのエンドポイント測定等の取組みが進められており、国際標準化、法規制化が順次行われると考えられている。

 

<その他の事業>
反応射出成形法(RIM成形法)で使用されるジシクロペンタジエンを原料としたRIM配合液を取り扱っている。

 

【1-4 ROE分析】

 

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

22/3期

23/3期

ROE(%)

8.6

10.3

5.3

7.2

7.9

10.0

10.9

3.2

 売上高当期純利益率(%)

6.12

8.05

3.92

5.47

6.27

9.18

9.24

2.72

 総資産回転率(回)

0.75

0.72

0.78

0.79

0.78

0.71

0.78

0.77

 レバレッジ(倍)

1.86

1.77

1.71

1.66

1.62

1.55

1.52

1.54

21/3期、22/3期と連続でROEは10%を上回った。しかし、23/3期は需要環境が悪化したため、売上高当期純利益率は低下し、ROEは低水準にとどまった。今後の需要環境の回復と収益性の改善に加え、高機能材料セグメントの成長を中心とした中長期的な収益性の向上にも期待したい。

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【1-5特長・強み】

1.世界トップクラスの独創的な技術開発力
C4留分からブタジエンを製造するGPB法は戦後の日本化学史上トップクラスの技術開発であり、アメリカ、韓国を始め世界19か国49プラントに技術供与している。
また、C5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを製造するGPI法も同社オリジナルで、水島工場が世界で唯一の抽出プラントであり、他社には技術供与していないオンリーワンの技術である。
この2つの技術に代表される独創的な技術開発力が同社の大きな強みであり、世界的に高く評価されており、国内外で数々の賞を受賞している。技術関係では、GPB法、GPI法はもちろんのこと、1960年から現在までに54の賞を、環境・安全関係では1982年から現在までに28の賞を受賞している。

 

2.世界的な高シェア
Zetpol®、ZEONEX®、ZEONOR® に代表される同社の独創的技術から生み出された様々な製品は、世界的に高いシェアを獲得している。これ以外にも、化粧品や食品フレーバーに使用されるリーフアルコール、化粧用パフ用NBRラテックスなども「世界No.1」製品となっている。

 

3.独創的な技術を生み出し続ける研究開発体制
「ニッチでも、日本ゼオンらしい得意分野でひとのまねをしない、ひとのまねのできない、地球に優しい、革新的独創的技術にもとづく、世界一製品・事業を継続的に創出し、社会に貢献する」との基本理念に基づき、研究開発に取り組んでいる。
主要研究拠点は神奈川県川崎市にある「総合開発センター」だが、製造現場に近いところで研究開発を行うことが効率的であるとの考えから、高岡工場に精密光学研究所およびメディカル研究所を、米沢工場に化学品研究拠点を、徳山工場にトナー研究所を、水島工場に化成品研究室を設立した。また海外では、アメリカ・ドイツ・シンガポール・中国に技術サポート拠点を有している。新たなる研究開発への取り組みも始まっており、新事業・新技術に特化した創発推進センターの設立など、2030年までのゴールを見据えたSDGsへの取り組みも含め、持続的な研究開発に挑戦している。

 

2.2024年3月期上期決算概要

【2-1 連結経営成績】

 

23/3期 上期

構成比

24/3期 上期

構成比

前年同期比

会社予想比

売上高

197,417

100.0%

185,442

100.0%

-6.1%

+0.2%

売上総利益

61,695

31.3%

49,928

26.9%

-19.1%

販管費

41,511

21.0%

40,467

21.8%

-2.5%

営業利益

20,184

10.2%

9,461

5.1%

-53.1%

-14.0%

経常利益

24,400

12.4%

13,034

7.0%

-46.6%

-10.1%

四半期純利益

17,419

8.8%

10,359

5.6%

-40.5%

-1.3%

*単位:百万円。

 

前年同期比減収減益
売上高は前年同期比6.1%減の1,854億円、営業利益は同53.1%減の94億円。エラストマー素材事業は減収減益。合成ゴムは中国景気減速の影響、化成品は粘着テープの需要回復に遅れが見られた。ラテックスは手袋需給緩和の影響を受けた。
高機能材料事業は減収減益。高機能樹脂は大型フィルムや光学用途樹脂の出荷は回復が見られたが中小型フィルムや医療その他樹脂が出荷低調。高機能ケミカルは電池材料の海外関連会社で決算期ズレの影響があった。
営業外では為替差益の増加があり、経常利益は同46.6%減の130億円。四半期純利益は同40.5%減の103億円となった。

 

 

【2-2 セグメント別動向】

◎上期

 

23/3期 上期

構成比

24/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

         

エラストマー素材事業

111,412

56.4%

104,731

56.5%

-6.0%

高機能材料事業

56,562

28.7%

51,409

27.7%

-9.1%

その他

31,611

16.0%

31,463

17.0%

-0.5%

調整

-2,169

-2,160

合計

197,417

100.0%

185,442

100.0%

-6.1%

営業利益

エラストマー素材事業

9,331

8.4%

3,644

3.5%

-60.9%

高機能材料事業

11,636

20.6%

6,592

12.8%

-43.3%

その他

719

2.3%

1,399

4.4%

+94.6%

調整

-1,502

-2,174

合計

20,184

10.2%

9,461

5.1%

-53.1%

 

*単位:百万円。                                               営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【2-3 四半期動向】

 

23/3期1Q

2Q

3Q

4Q

24/3期1Q

2Q

3Q

4Q

売上高

97,576

99,841

96,788

94,409

91,927

93,515

   

営業利益

10,726

9,458

7,651

-656

6,114

3,347

   

*単位:百万円

対前四半期(24/3期1Q)との比較では1.7%増収も、45.3%減益となった。

 

◎セグメント別

 

23/3期1Q

2Q

3Q

4Q

24/3期1Q

2Q

3Q

4Q

売上高

               

エラストマー素材事業

53,547

57,865

55,921

54,897

52,218

52,513

   

高機能材料事業

30,076

26,486

24,941

23,853

25,196

26,213

   

その他

15,099

16,512

16,853

16,806

15,374

16,089

   

営業利益

               

エラストマー素材事業

4,058

5,273

2,878

-2,025

2,464

1,180

   

高機能材料事業

6,981

4,655

4,905

1,755

3,998

2,594

   

その他

422

297

686

976

637

762

   

*単位:百万円

 

【エラストマー素材】
前四半期比増収減益
出荷量は合成ゴムが増加したものの、ラテックスや化成品が減少した。市況価格の下落、合成ゴムの販管費増、並びに化成品の固定費単価悪化等により、減益。

 

*合成ゴム
原料価格下落に伴う販売価格の下落により売上は横ばい。海外関係会社の定修費用増、1Qの棚卸資産関連費用の戻入発生により減益。

 

*ラテックス
手袋向け需要は22年度並み、原料価格下落により増益。

 

*化成品
出荷品目構成差により増収、出荷量回復に向け販売価格調整を実施、1Qの棚卸資産関連費用の戻入発生により減益。

 

【高機能材料】
前四半期比増収減益
大型フィルムおよび光学用途向け樹脂の回復により増収も、中小型フィルムや医療その他向け樹脂の出荷低調により減益。
*高機能樹脂
大型フィルムおよび光学用途向け樹脂の出荷回復により前年同期比、前四半期比ともに増収、中小型フィルムおよび医療その他向け樹脂の出荷低調により、前年同期比、前四半期比ともに減益。

 

*高機能ケミカル
電池材料における海外関連会社の決算期ズレ影響等で前年同期比は減収減益、前四半期比では顧客稼働率の回復に伴い増収増益。

 

◎品目別出荷量の動向
*電池材料
2Q(7-9月)の出荷量は前年同期比26%の増加、前四半期比では29%の増加、上期(4-9月)では1%の減少。
EV向けは前年同期比22%増加。前四半期比では34%増加。中国顧客の稼働率が緩やかに回復したことで前年同期比、前期比ともに増加した。
民生他向けは、前年同期比50%増加。前四半期比では7%増加。モバイル端末向けは中国顧客の生産調整による底打ちから回復の傾向にあり、前年同期比、前四半期比ともに出荷量が増加した。

 

*光学樹脂
2Q(7-9月)の出荷量は前年同期比15%の減少、前四半期比では6%の減少、上期(4-9月)では8%の減少。
光学用途向けは、前年同期比9%増加。前四半期比では34%増加。一部顧客の在庫調整緩和に伴い、前年同期比、前四半期比ともに出荷量増。徐々に需要の復調は見られるも、持続性については曖昧であり注視が必要
医療その他向けは前年同期比22%減少。前四半期比では16%減少。水島工場定修に伴う出荷調整および半導体市場の停滞、一部顧客の在庫調整等の影響を受け、前年同期比、前四半期比ともに出荷量が減少した。

 

*光学フィルム
2Q(7-9月)の出荷量は前年同期比91%の増加、前四半期比では1%の増加、上期(4-9月)では22%の増加。
中小型向けは、前年同期比27%減少、前四半期比では14%減少。タブレットおよびノートPCの生産台数減、新モデルのスマートフォン生産開始遅れの影響を受け、前年同期比、前四半期比ともに出荷量が減少した。
大型向けは前年同期比177%増加、前四半期比では4%増加。23/3期2QのTVメーカー生産調整から需要が回復、前年同期比、前四半期比ともに出荷量が増加した。

【2-4 財政状態】

◎主要バランスシート

 

23/3月末

23/9月末

増減

 

23/3月末

23/9月末

増減

流動資産

296,631

287,620

-9,011

流動負債

160,587

153,542

-7,045

現預金

30,082

33,669

+3,587

買入債務

86,781

72,349

-14,432

売上債権

83,594

88,530

+4,936

短期有利子負債

27,960

28,960

+1,000

棚卸資産

127,452

120,954

-6,498

固定負債

22,973

25,540

+2,567

固定資産

226,237

248,701

+22,464

長期有利子負債

有形固定資産

113,924

129,789

+15,865

負債合計

183,560

179,081

-4,479

無形固定資産

4,442

5,155

+713

純資産

339,308

356,609

+17,301

投資その他の資産

107,871

113,217

+5,346

自己資本

336,310

353,507

+17,197

資産合計

522,868

535,691

+12,823

負債・純資産合計

522,868

535,691

+12,823

*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、買入債務には電子記録債務を含む。

 

(同社資料より)

 

有形固定資産、投資その他の資産の増加などで資産合計は前期末に比べ128億円増加した。
買入債務の減少などで負債合計は同44億円の減少。
その他有価証券評価差額金及び為替換算調整勘定の増加などで純資産は同173億円の増加。
この結果自己資本比率は前期末より1.7ポイント上昇し66.0%。D/Eレシオは前期末と同じ0.08となった。

 

3.2024年3月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

期初予想

前回予想

売上高

388,614

100.0%

380,000

100.0%

-2.2%

399,000

394,000

営業利益

27,179

7.0%

20,500

5.4%

-24.6%

24,000

27,500

経常利益

31,393

8.1%

25,000

6.6%

-20.4%

26,000

31,500

当期純利益

10,569

2.7%

27,500

7.2%

+160.2%

19,000

23,500

*単位:百万円

 

減額修正、減収・営業減益を見込む、純利益は増額修正
24/3期は、売上高は前期比2.2%減の3,800億円、営業利益は同24.6%減の205億円を予想。売上高・営業利益とも前回(7月)予想から減額修正となった。前回修正した時点では、24/3期下期の業績予想は期初予想を据え置いていた。精査した結果、中国の景気動向等の不透明感を背景とした市場環境の悪化により、エラストマー素材事業部門や高機能材料事業部門の主力製品について需要の回復遅れの影響等が出ており、全般的な販売数量の下振れが予想される。このため、24/3期の連結業績予想について、売上高、営業利益、経常利益は前回公表予想値を下回る見通しとなった。一方で、投資有価証券売却益(特別利益)の計上により当期純利益は前回予想値を上回る見込みとなった。
配当は修正なく、期末は20円/株、年間で4円増配の40円/株を予想。10年度から14期連続の増配予想。予想配当性向は30.7%。

 

【3-2 セグメント別動向】

 

23/3期

24/3期(予)

前期比

前回予想

売上高

       

エラストマー素材事業

222,230

211,000

-5.1%

217,000

高機能材料事業

105,356

106,000

+0.6%

113,000

売上高合計

388,614

380,000

-2.2%

394,000

営業利益

   

 

エラストマー素材事業

10,184

6,900

-32.2%

8,600

高機能材料事業

18,296

14,400

-21.3%

18,000

営業利益合計

27,179

20,500

-24.6%

27,500

*単位:百万円

 

下期の事業環境
(1)エラストマー素材
*合成ゴム
中国経済低迷による影響を受けると予想。

 

*ラテックス
手袋向け需給は上期並みと予想、事業構造改革を推進。

 

*化成品
出荷量増を見込むも、足取りは重いと予想。

 

 

(2)高機能材料
*光学樹脂
医療その他向け中心に顧客在庫調整、半導体市場低調の影響を受ける。

 

*光学フィルム
タブレット・ノートPC向けについて、顧客生産下方修正。

 

*電池材料
当初予想と比較し緩やかな需要回復となるものの、継続的な回復を見込む。

 

前提となる下期の為替・市況は、米ドル=140円、ユーロ=150円、国産ナフサ=63,000円、アジアブタジエン=800米ドル。

 

 

4.今後の注目点

営業利益は1Qに低価法評価損の戻し入れ等の影響で、前四半期(23/3期4Q)から大幅に改善し、下期は精査中のため据え置きという前提付きで、上期・通期予想は上方修正された。しかし、2Qは1Qのような一過性要因はなく、下期の見通し悪化要因を織り込んだ結果、通期予想は減額修正となった。エラストマー素材は、期初の想定より早期に回復していたが、中国経済低迷などにより回復の足取りが重くなっている模様。前回レポートでは「中国の景気減速による需要動向については今後の状況を注視」としたが、具現化した形となった。高機能材料では、大型フィルムは回復しているものの、タブレットやノートPC向け中小型フィルムにおいて、顧客の生産が下方修正したことなどが下方修正の要因となった模様。
足元は失速したものの、中長期での事業展開や見通しには大きな変化はないと見ている。同社が材料を手掛ける電気自動車向けリチウムイオン電池は、2Qに顧客在庫調整からの回復が見られ、今後大きな市場成長が見込まれる。また、光学や医療などでその特性が重視されているシクロオレフィンポリマー(COP)においても、足元の低調は一過性であり将来の見通しは明るい。
第2フェーズに入っている進行中の中期経営計画についても同様に変化はない。27/3期に目指す利益水準を達成するとEPSは200円近くが予想される。短期的な経済状況及び市況悪化はあるものの、中長期的な成長は持続する見通し。14期連続増配と、積極的な株主還元も評価したい。
上期の決算を受けて足元の株価は軟調に推移し、BPS(1,591.79円)を大きく下回る水準。中長期での事業展開や中期経営戦略で掲げる利益目標も考慮すると、見直し余地は大きいといえそうだ。

 

 

<参考1:中期経営計画>

22年3月期を初年度とする中期経営計画「STAGE30」を推進中である。「第1フェーズ」と位置付けた23/3期を終え、現在は27/3期を最終年度とする「第2フェーズ」に入った。

 

【1-1-1 中期経営計画の全体像】

企業理念は「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」。
「大地から原料を得て永遠に栄える」という意味を込めた社名にふさわしく、独創的な技術・製品・サービスの提供を通じ、「持続可能な地球」と「安心で快適な人々のくらし」に貢献することを使命とする。

 

そのうえで、2030年のビジョンを「社会の期待と社員の意欲に応える会社」とした。
また、全社員の具体的な行動指針である「大切にすること」として「まずやってみよう」「つながろう」「磨き上げよう」の3つを掲げた。
SDGsのうち、9つの目標実現に注力し、社会の期待に応える会社を目指す。

(同社資料より)

 

【1-1-2】

中期経営計画全体像

h3 class=”heading-03″>フェーズと業績目標

(同社資料より)

 

【1-2-1 第1フェーズの進捗状況】

 

(同社資料より)

 

【1-2-2】

全社戦略ごとの第1フェーズ進捗説明

(1)カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する

(同社資料より)

 

(2)既存事業を「磨き上げる」+新規事業を「探索する」
既存事業を「磨き上げる」①
COP(*)と電池材料の強化のための能力増強を実施。 *COP=シクロオレフィンポリマー

 

(同社資料より)

 

既存事業を「磨き上げる」②
既存SBUの勝ち残りに向けて、同社の誇る差別化製品群での能力増強を積極的に実施。

 

(同社資料より)

 

新規事業を「探索する」
重点4分野の一つ「情報通信」分野を中心に新規事業売上高21億円増を達成。
更なる成長に向けて「医療・ライフサイエンス」分野での2社買収を含め、各分野にて社外連携を進めた。

 

(同社資料より)

 

(3)個々の強みを発揮できる「舞台」を全員で創る
より多くの人生の選択肢の提供に向けた制度・環境整備を進めた。

(同社資料より)

 

【1-3-1】

中期経営計画第2フェーズの全体像

(同社資料より)

 

第1フェーズは外部環境が低調な中、「助走期間」と位置付け、明確な定量目標は設定していなかったものの、計画策定と実施を並行して進めたことで、全社戦略ごとに成果が出てきている。第2フェーズでは「社会の期待と社員の意欲に応える会社」という2030年のビジョンは変えずに、利益率を重視した27/3期の業績目標を設定し、フェーズ最終年度である2026年度の目標値についても定量化にこだわり設定した。2030年度の目標値達成に向けて、途中期間の目標値と施策は2年ごとにローリングしていく考え。また、全体戦略では、経営基盤を「磨き上げる」を新設し、ガバナンスを更に強化する方針。
中期計画の新たな名称は「STAGE30」

(同社資料より)

 

【1-3-2】

中期経営計画第2フェーズの全社戦略

(1)カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する

2030年を見据えてScope1+2を減らす
2050年を見据えてScope3の削減とその貢献を目指す

(同社資料より)
*GHGプロトコルに基づいて算出した場合:72.9万トン

 

(2)カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する
   +既存事業を「磨き上げる」+新規事業を「探索する」

安定安全な生産を実現し、持続可能な「ものづくり」を推進する。
これらにより、労働生産性の向上を図る。

(同社資料より)

 

(3)既存事業を「磨き上げる」
①COPは光学・医療の主力用途で堅調に成長、電池材料は世界EV市場成長を確実に取り込む

事業拡大投資計画が進行中

(同社資料より)

 

欧州と北米で電池材料の生産体制整備、またエリアは開示されていないがCOPのレジリエンス強化検討が進行中。地産地消をベースとした生産体制を構築していくことで、顧客ニーズを適時適切にキャッチし拡販につなげていく考え。

 

②資本コストとROICを基準として事業の効率性を磨き上げる

(同社資料より)

 

③COPは光学・医療の主力用途で堅調に成長、電池材料は世界EV市場成長を確実に取り込むことで、高機能材料事業の売上高比率が拡大する計画。

エラストマー素材事業・・・効率性を重視した構造改革の推進高機能材料事業・・・COPと電池材料の販売拡大

(同社資料より)

 

(4)新規事業を「探索する」
重点4分野として設定している「CASE・MaaS」「医療・ライフサイエンス」「情報通信(5G/6G)」「省エネルギー」の分野を中心に、新規事業売上高の拡大に挑む

CVCとM&Aが全社に広がるようリソースと仕組みを強化する製・販・技がつながって新市場に新製品を投入する

(同社資料より)

 

(5)「舞台」を全員で創る

健康で意欲的に働ける環境を整える

 

健康経営の取り組みを前に進める

●日本ゼオン健康行動指標(*)の導入による生活習慣病リスク低下への取組み

(*)日本ゼオン健康指標:生活習慣病リスク低減に向けた3つの行動(BMI基準値維持、有運動習慣、非喫煙)のうち、いずれか2項目以上の達成者率

「自分らしさ」を発揮できる

人事制度を運用する

●個々の強みと成長を引き出す人材マネジメント変革

●「職務」を軸とした管理職 新人事制度の導入・浸透

DI&Bの考え方を

浸透させる

●DI&B推進による自分らしさの発揮を支える組織風土づくり

●多様な人材を活かすリーダーシップ教育

 

(6)経営基盤を「磨き上げる」(新設)
27/3期の目標値

(同社資料より)

 

コーポレートガバナンスを「磨き上げる」

 

ガバナンス強化

●役員報酬の中計連動性強化

●多様性・独立性に富む役員の選任

●政策保有株式の削減

 

将来の経営を担う多様な人材育成

●管理職新人事制度の運用開始

●管理職・管理職候補層教育の推進

●多様なキャリア採用

資本効率の磨き上げ

●積極的事業投資を支える 高度な財務マネジメント

 

【1-3-3 中期経営計画第2フェーズ、財務目標】

(1)業績目標
27/3期目標値

(同社資料より)

 

セグメント別目標

(同社資料より)

 

エラストマー素材の営業利益については、合成ゴムの採算性改善を中心に拡大していく考え。

(同社資料より)

 

(2)キャッシュフローアロケーション
■強化事業や新規事業の拡大実現に向け、積極的な新規投資と研究開発を実施するとともに株主還元の拡充を進める
■原資として政策保有株式の売却資金と有利子負債も活用し、資本効率向上と資本構成の最適化を目指す

(同社資料より)

 

(3)投資計画
■COPおよび電池材料等の差別化製品と、新規事業に新規投資を集中
■24/3~27/3期累計新規投資1,700億円程度に、維持更新投資500億円を加えた約2,200億円の投資を計画
        

(同社資料より)

 

(4)株主還元
■利益成長にあわせた株主還元の拡大を目指す

・安定的・継続的な配当を維持
・配当性向30%以上を維持
・自己株式の取得は市況や資金需要等を勘案し機動的に実施

 

(5)資本構成
■今後、有利子負債調達と株主還元の拡充によりD/Eレシオ上昇(0.3以下を維持)
■資本構成の最適化を進め、中長期的な企業価値向上を目指す

・積極的な投資実行の支援と資本構成の最適化を目指すため、 今後は有利子負債調達を拡大
・格付シングルAを維持可能な水準に財務規律をコントロール
・政策保有株式の縮減を進め、 資産効率を向上させる

(同社資料より)

 

 

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 11名、うち社外5名
監査役 5名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2023年7月7日

 

<基本的な考え方>
当社は、株主をはじめとする多様なステークホルダーの利益を尊重し、利害関係を調整しつつ収益を上げ、企業価値を継続的に高めることを目指します。その実現のために、コーポレートガバナンスを通じて効率的かつ健全な企業経営を可能にするシステムを構築する努力を継続します。
また、内部統制システムを整備することにより、各機関・社内組織の機能と役割分担を明確にして迅速な意思決定と執行を行います。その経過および結果については適切な監視と情報公開を行い、経営の透明性の向上に努めます。

 

<実施しない主な原則とその理由>
(すべての原則について、2021年6月改訂後のコード(プライム市場向けの内容を含む)に基づき記載しております)
当社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>(抜粋)

原則

開示内容

【原則1-4 いわゆる政策保有株式】 ・他社の株式を政策保有するにあたっては、その保有が取引先、地域社会その他のステークホルダーとの関係強化をもたらし、ひいては中長期的視点で当社の企業価値向上に資するものかどうか等を十分に検討します。このような検討を経て取得した株式については、毎年個別銘柄ごとに保有目的の適切性や保有に伴う便益およびリスクが資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を検証します。

・2022年度における適否検証では、2022年12月28日開催の取締役会において、いずれの銘柄についても保有が妥当であると判断いたしましたが、財務戦略の最適化の観点から一部の保有銘柄について縮減を進めることとし、年度末までに上場株式6銘柄の全数売却、同6銘柄の一部売却を完了いたしました。その売却価額の合計額は48億16百万円であります。しかしながら、年度末にかけての株価上昇の影響から、政策保有株式の連結貸借対照表計上額は802億95百万円(対連結純資産比率23.66%)となりました。

・2023年度から開始する中期経営計画「STAGE30」第2フェーズでは、全社戦略の一つとして「経営基盤を「磨き上げる」」を掲げ、ガバナンス強化を重視して企業価値の向上を実現してまいります。財務戦略の面でも2026年度目標として「政策保有株式の対連結純資産比率15%未満」を設定し、その達成に向けてさらなる縮減を進めていく計画です。

・政策保有株式の議決権については、投資先企業の中長期的な企業価値向上の観点からその行使の判断を行います。

【補充原則4−11−1 取締役会のバランス・多様性および規模に関する考え方】 ・取締役会は、知識・経験・専門性等のバックグラウンドが異なる多様な取締役で構成するものとし、その員数は、会議体として十分な審議を尽くし、迅速かつ合理的な意思決定を行うに適切な規模という観点から、定款の規定に基づき15名以内とします。

・社外の企業経営者や行政官経験者等、豊富な経験および見識を有する者による意見を当社の経営方針に適切に反映させるため、また、取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保するため、業務執行に携わらない独立社外取締役を複数名選任します。

・当社の経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキルと、各取締役が有し、且つ当社がその発揮を特に期待するスキルの組み合わせの一覧(いわゆるスキルマトリックス)については、当社「定時株主総会招集ご通知」

https://www.zeon.co.jp/ir/stock/meeting/

中の株主総会参考書類をご参照ください。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 ・当社における株主との対話はIR・SR担当部署が主管し、管理担当役員が統括します。

・IR・SR担当部署は、当社内の関係部門と適宜情報交換を行い、株主に対する正確かつ偏りのない情報提供を行います。

・当社は、四半期毎の投資家向け説明会の開催、当社WEBサイトにて開示する決算説明資料の充実、個人投資家向け会社説明会への参加など、 個別面談以外の対話の手段の充実にも継続的に取り組みます。

・IR・SR担当部署は、株主との対話にて寄せられた意見について適宜整理・分析を行い、代表取締役に報告します。

・当社は、インサイダー取引・適時開示等管理規程に基づき、未公表の重要事実の管理を徹底し、情報漏洩のないよう株主との対話を行います。

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