東洋インキSCホールディングス(4634) 海外でのパッケージ関連材料伸長

2023/04/07

 

 

 

髙島 悟 社長

東洋インキSCホールディングス株式会社(4634)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

化学(製造業)

代表取締役社長

髙島 悟

所在地

東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン

決算月

12月末日

HP

https://schd.toyoinkgroup.com/ja/index.html

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,999円

58,286,544株

116,514百万円

4.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

90.00円

4.5%

113.23円

17.7倍

4,133.90円

0.5倍

*株価は3/10終値。各数値は22年12月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年12月

279,892

13,174

13,847

8,509

145.72

90.00

2020年12月

257,675

12,909

12,543

6,019

103.06

90.00

2021年12月

287,989

13,005

15,442

9,492

169.36

90.00

2022年12月

315,927

6,865

7,906

9,308

171.49

90.00

2023年12月(予)

330,000

11,000

9,500

6,000

113.23

90.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

 

東洋インキSCホールディングス株式会社の2022年12月期決算概要などをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年12月期決算概要
3.2023年12月期業績予想
4.中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年‐2023年)の進捗
5.今後の注目点
<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年‐2023年)>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2022年12月期の売上高は前期比9.7%増の3,159億円。為替の影響や価格改定効果により主要セグメントが増収。特に海外を中心に、リキッドインキ、粘着剤・接着剤などのパッケージ関連材料が伸長した。営業利益は同47.2%減の68億円。売上拡大(+8億円)、価格改定(+199億円)はあったものの、原材料価格の上昇(-211億円)、エネルギー価格高騰(-18億円)、販売数量増加による経費増や物流コスト増(-16億円)、市況悪化による数量減(-33億円)などで減益となった。液晶パネル・エレクトロニクス市況の急減速が影響した。2021年および2022年の2年間で、価格改定効果は+252億円であったが、原材料高騰-333億円と、コスト増を吸収しきれなかった。当期純利益は同1.9%減の93億円。サカタインクス株式会社との資本提携解消に伴い同社株式を売却し、投資有価証券売却益56億円を計上した。 
  • 2023年12月期の売上高は前期比4.5%増の3,300億円、営業利益は同60.2%増の110億円の予想。ウィズコロナの下で景気が持ち直していくことが期待される一方、世界的な金融引締めが続く中、海外景気の下振れや国内での物価上昇による影響も見込まれる。原材料やエネルギー価格の高止まりや景気の停滞等、厳しい事業環境が続くと見ているが、市況回復・海外事業拡大、コストダウン、価格改定による営業利益改善に取り組む。印刷・情報は減収増益、それ以外のセグメントは増収増益を見込む。配当は前期と同じく90.00円/株を予定。予想配当性向は79.5%。 
  • 中期経営計画「SIC-Ⅱ」の最終年度となる23年12月期、売上高は同中計の期初計画を全セグメントで上回る見込みだ。リチウムイオン電池関連材料や環境調和型製品など、同社の技術力を生かし、生産能力を増強しながら新たな需要を着実に取り込むことができたと言えるだろう。 
  • 一方で、原材料およびエネルギー価格高騰が響き、営業利益は当初計画の半分の水準にとどまることとなりそうだ。これだけ大きな外部環境の変化に対応するには、企業1社の力ではいかんともし難い面はあるが、1倍を下回るP B R上昇に向けて、引き続きより高収益でコスト競争力の高い製品の創出、構造改革の加速に取り組んで行く必要があろう。次の中期経営計画に繋げていくためにも、2023年12月期にどれだけ売上・利益を積み上げていけるか注目していきたい。 

1.会社概要

国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルタ材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外61社の連結子会社、7社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界24か国の拠点を基盤に様々な国や地域で事業を展開(2022年12月末)。
社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、2027年に向け持続的成長を可能にする企業体質への変革を目指している。

 

【1-1 沿革】

1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。
当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。
印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶用カラーフィルタなど他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。2022年4月、市場再編に伴い東証プライム市場に移行。

 

【1-2 経営理念など】

企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念体系」を、1993年4月に制定した。2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指していく。

 

<東洋インキ経営理念>

経営哲学 人間尊重の経営
経営理念 私たち東洋インキグループは、世界に広がる生活文化創造企業を目指します。

◇ 世界の人びとの豊かさと文化に貢献します。

◇ 新しい時代の生活の価値を創造します。

◇ 先端の技術と品質を提供します。

行動指針 ◇ 顧客の信頼と満足を高める知恵を提供しよう。

◇ 多様な個の夢の実現を尊重しよう。

◇ 地球や社会と共生し、よき市民として活動しよう。

◇ 株主権を尊重し、株主価値の向上に努め市場の評価を高めよう。

 

【1-3 市場環境】

◎概要
(市場動向)
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。2020年は新型コロナウイルスの影響などもあり大きく落ち込んだ。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2021年までの17年間のCAGR(年平均成長率)は+2.5%と堅調に拡大している。

 

 

海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるということだ。

 

また世界的な環境意識の高まりの中、バイオマスインキなど、環境調和型製品に対するニーズも拡大しており、インキ各社は独自技術を活かした新製品開発に取り組んでいる。

 

◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、(4634)東洋インキSCホールディングスは国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは5位にランキングされている。

 

   

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

4116

大日精化工業

121,000

-0.8%

2,400

-67.8%

2.0%

34,341

11.0

0.3

5.9

4631

DIC

1,150,000

+9.1%

43,000

+8.4%

3.7%

232,087

11.5

0.6

4.8

4633

サカタインクス

222,000

+3.0%

6,000

+45.4%

2.7%

55,905

11.0

0.6

5.3

4634

東洋インキSCHD

330,000

+4.5%

11,000

+60.2%

3.3%

116,514

17.7

0.5

4.3

4635

東京インキ

42,840

+3.5%

300

-55.6%

0.7%

8,122

0.3

2.9

4636

T&K TOKA

43,800

-1.5%

520

+128.1%

1.2%

26,630

22.2

0.6

5.8

*売上高、営業利益は各社の今期予想。ROE、PBRは前期実績。単位:百万円、倍。時価総額は2023年3月10日終値ベース。

 

【1-4 事業内容】

◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。

 

<印刷インキの構成要素>

顔料(有機顔料、無機顔料など)

水、油に不溶の着色に用いる粉末。

ワニス(合成樹脂、油脂類、溶剤など)

油脂類、天然樹脂、合成樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる。

添加剤(滑剤、硬化剤など)

乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する。

 

この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。

 

<主な印刷インキの種類と用途>

種類

特徴・用途

平版インキ

対象物を紙とする代表的な印刷インキ。雑誌、ポスター、チラシなど。

グラビアインキ

微細な濃淡が表現できるので、写真画像の印刷等に適している。現在では主に食品包装材などフィルムへの印刷に使用される。

スクリーンインキ

他の印刷方式では印刷が困難な被印刷物を中心に、自動車の計器類、基板回路形成などのエレクトロニクス分野などでも使用される。

フレキソインキ

ダンボールやフィルム、布などの表面印刷に利用される。

UV硬化型インキ

乾燥工程で、熱風ドライヤーを使用せずに瞬間乾燥することから、CO2を直接発生させないUV硬化印刷に用いられる。VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を発生しない環境調和型インキである。

 

◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。

 

 

☆色材・機能材関連事業

 

22/12期

売上高

79,380

営業利益

1,846

利益率

2.3%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

汎用化成品

顔料、顔料分散体

高機能化成品

高機能顔料、CF(カラーフィルタ)ペースト

表示材料

液晶カラーフィルタ用レジストインキ

着色剤

着色剤、機能性着色剤

その他色材・機能材

記録材塗料、機能性分散体、インクジェットインキ、開発品

 

 

 

 

 

印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルタ材料を生み出した。
分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業

 

22/12期

売上高

76,240

営業利益

2,504

利益率

3.3%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

塗工材料

粘着テープ、接着テープ、マーキングフィルム、電磁波シールドフィルム

接着剤

粘着剤、接着剤、ラミネート接着剤、ホットメルト

塗料樹脂

製缶塗料、樹脂、機能性ハードコート

その他ポリマー・塗加工

メディカル製品、天然材料、開発品

 

 

 

 

中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。

 

☆パッケージ関連事業

 

22/12期

売上高

83,464

営業利益

963

利益率

1.2%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

リキッドインキ

グラビアインキ、フレキソインキ、グラビア溶剤

グラビア機器・製版

グラビア機器、グラビア・フレキソ製版

 

 

 

 

グラビア印刷、フレキソ印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器・製版を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。

 

☆印刷・情報関連事業

 

22/12期

売上高

75,180

営業利益

654

利益率

0.9%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

オフセットインキ

オフセットインキ、新聞インキ、UV(紫外線硬化型)インキ、金属インキ

印刷材料機器

印刷機器、印刷材料

その他印刷・情報

スクリーンインキ、その他開発品など

 

 

 

 

創業以来の基盤セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。
印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。

 

◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取り組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2022年12月末現在、44の海外連結対象子会社を有し、幅広い国や地域で事業を展開している。

 

(地域別売上高、22年12月期)

 

売上高

前期比

営業利益

前期比

日本

1,770

+2.0%

29

-60.3%

アジア・オセアニア

1,269

+11.7%

37

-22.9%

ヨーロッパ

269

+27.5%

5

-61.5%

北米・中南米

227

+40.1%

-1

調整

-376

-1

連結計

3,159

+9.7%

69

-46.9%

*単位:億円

 

 

【1-5 ROE分析】

 

17/12期

18/12期

19/12期

20/12期

21/12期

22/12期

ROE (%)

4.8

5.4

3.9

2.8

4.4

4.3

売上高当期純利益率(%)

4.32

4.08

3.04

2.34

3.30

2.95

総資産回転率(回)

0.65

0.77

0.75

0.68

0.73

0.77

レバレッジ(倍)

1.72

1.72

1.72

1.76

1.84

1.87

 

PBR1倍以上に向け、一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するためには引き続き一段の収益性および効率性の改善が望まれる。

 

【1-6 特徴と強み】

①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料であるコア素材の顔料や樹脂を自社で生産し続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルタ材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。

 

(同社HPより)

 

②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。

 

③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。

 

④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。ただ、単にボリュームアップを目的としたM&Aは志向していない。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。

 

2.2022年12月期決算概要

(1)業績概要

 

21/12期

構成比

22/12期

構成比

前期比

予想比

売上高

287,989

100.0%

315,927

100.0%

+9.7%

+0.3%

売上総利益

58,704

20.4%

54,202

17.2%

-7.7%

販管費

45,699

15.9%

47,336

15.0%

+3.6%

営業利益

13,005

4.5%

6,865

2.2%

-47.2%

-1.9%

経常利益

15,442

5.4%

7,906

2.5%

-48.8%

-7.0%

当期純利益

9,492

3.3%

9,308

2.9%

-1.9%

+3.4%

単位: 百万円。「収益認識に関する会計基準」等を22年12月期第1四半期から適用。21年12月期の数値は適用前の数値だが、影響が軽微であるため前期比については当該会計基準等を考慮していない。以下同様。

 

増収、減益
売上高は前期比9.7%増の3,159億円。為替の影響や価格改定効果により主要セグメントが増収。特に海外を中心に、リキッドインキ、粘着剤・接着剤などのパッケージ関連材料が伸長した。
営業利益は同47.2%減の68億円。売上拡大(+8億円)、価格改定(+199億円)はあったものの、原材料価格の上昇(-211億円)、エネルギー価格高騰(-18億円)、販売数量増加による経費増や物流コスト増(-16億円)、市況悪化による数量減(-33億円)などで減益となった。液晶パネル・エレクトロニクス市況の急減速が影響した。
2021年および2022年の2年間で、価格改定効果は+252億円であったが、原材料高騰-333億円と、コスト増を吸収しきれなかった。
当期純利益は同1.9%減の93億円。サカタインクス株式会社との資本提携解消に伴い同社株式を売却し、投資有価証券売却益56億円を計上した。

 

 

(2)セグメント別動向

 

21/12期

構成比

22/12期

構成比

前期比

売上高

         

色材・機能材

74,995

26.0%

79,380

25.1%

+5.8%

ポリマー・塗加工

70,736

24.6%

76,240

24.1%

+7.8%

パッケージ

73,645

25.6%

83,464

26.4%

+13.3%

印刷・情報

66,695

23.2%

75,180

23.8%

+12.7%

その他・調整

1,915

1,661

合計

287,989

100.0%

315,927

100.0%

+9.7%

営業利益

         

色材・機能材

5,391

7.2%

1,846

2.3%

-65.7%

ポリマー・塗加工

3,570

5.0%

2,504

3.3%

-29.7%

パッケージ

1,813

2.5%

963

1.2%

-46.9%

印刷・情報

1,730

2.6%

654

0.9%

-62.2%

その他・調整

501

895

合計

13,005

4.5%

6,865

2.2%

-47.2%

単位: 百万円。営業利益の構成比は売上高利益率。

 

☆色材・機能材関連事業
増収も、原材料の価格高騰やエネルギーコスト上昇の影響で減益。

 

(液晶ディスプレイカラーフィルター用材料)
大型テレビやスマートフォン向けの液晶パネル需要が減少したことで大型から中小型まで急激な減産の動きが進み、後半は出荷が非常に低調となった。

 

(プラスチック用着色剤)
容器用が食品容器向けを中心に堅調であったが、半導体等の部材不足や中国でのロックダウンに伴う影響により自動車用や事務機器用が伸び悩んだ。

 

(インクジェットインキ)
商業印刷用やサイン用が堅調に推移した。

 

(車載用リチウムイオン電池材料)
米国や欧州の拠点整備が進み、需要の増加とともに販売を拡大した。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
増収も、原材料の価格高騰やエネルギーコスト上昇の影響で、販売価格の改定やコスト削減が及ばず減益。

 

(塗工材料)
後半に入り導電性接着シートや電磁波シールドフィルムがスマートフォンの市況低迷の影響を受けたほか、液晶パネルや自動車向けの耐熱微粘着フィルムも市場での急激な生産調整のため低調。

 

(接着剤)
国内ではスナックやペットフード向けなど包装用が堅調であったが、粘着剤は、ラベル用やディスプレイ用が需要低迷の影響を受けた。海外では、米国やインドでの設備増設により粘着剤の拡販が進んだほか、接着剤も食品や薬品包装向けの販売が堅調。

 

(缶用塗料)
国内では機能性を付与した新製品の拡販が進んだが、海外では漁獲量の低迷により食缶用が低調に推移するなど、全体では伸び悩んだ。

 

☆パッケージ関連事業
増収も、原材料の価格高騰やエネルギーコスト上昇の影響で減益。

 

(リキッドインキ)
国内では、冷食や飲料ラベル、麺類等の食品向けの需要が底堅く、各種資材の調達難や価格上昇を見据えた顧客での在庫積み増しの動きもあり、主力の包装用が堅調。海外では、中国でロックダウンによる影響で出荷が落ち込んだが、他地域では経済活動が回復し、拡販も進み堅調に推移した。

 

(グラビアのシリンダー製版事業)
包装用で新版需要が少なかったことに加え、エレクトロニクス関連の精密製版も伸び悩んだ。

 

☆印刷・情報関連事業
増収減益。

 

(国内)
情報系印刷市場の構造的な縮小により、チラシや広告、出版向けが低調であったが、紙器用や飲料缶向けの金属印刷用は堅調に推移した。
構造改革や同業他社との協業によるコストダウンを進めたが、原材料の調達難や価格高騰、エネルギーコストの高止まり等により利益が大きく圧迫された。

 

(海外)
欧州や中国等でウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症の影響により市況が低迷したが、他の地域では経済活動の回復や拡販が進み堅調に推移した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

21年12月末

22年12月末

増減

 

21年12月末

22年12月末

増減

流動資産

223,589

229,247

+5,658

流動負債

112,125

113,463

+1,338

 現預金

64,816

55,117

-9,699

 仕入債務

68,221

70,738

+2,517

 売上債権

94,297

100,390

+6,093

 短期借入金

24,042

24,022

-20

 たな卸資産

59,570

67,582

+8,012

固定負債

67,823

69,836

+2,013

固定資産

183,306

181,930

-1,376

 長期有利子負債

55,415

59,851

+4,436

 有形固定資産

111,716

122,366

+10,650

負債合計

179,948

183,300

+3,352

 無形固定資産

2,225

2,619

+394

純資産

226,947

227,877

+930

 投資その他の資産

69,364

56,944

-12,420

 利益剰余金

151,740

151,414

-326

資産合計

406,896

411,177

+4,281

負債純資産合計

406,896

411,177

+4,281

       

有利子負債残高

79,457

83,873

+4,416

*単位:百万円

 

現預金減少の一方、売上債権、たな卸資産、有形固定資産の増加などで資産合計は前期末比42億円増加の4,111億円となった。
有利子負債の増加等で負債合計は同33億円増加の1,833億円。為替換算調整勘定がプラスに転じたことなどで純資産は同9億円増加の2,278億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末比0.4ポイント低下し、53.3%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/12期

22/12期

増減

営業CF

15,760

4,262

-11,498

投資CF

-17,576

-5,645

+11,931

フリーCF

-1,816

-1,383

+433

財務CF

-11,988

-8,102

+3,886

現金同等物残高

60,949

53,385

-7,564

*単位:百万円

 

投資有価証券売却益増加、仕入債務の増加額縮小などで営業CFのプラス幅は縮小。サカタインクスとの資本提携解消に伴う社債の発行による収入などで財務CFのマイナス幅は縮小。
キャッシュポジションは低下した。

 

(4)トピックス

◎商号を変更
22年12月、商号を変更すると発表した。
新商号はartience 株式会社 (アーティエンス、artience Co., Ltd.)。

 

(同社資料より)

 

(変更の目的)
同社は1896年の創業以来、顔料・樹脂・分散などのコア技術に基づき、それぞれの時代の社会ニーズに応じた製品を提供してきたが、社会環境が目まぐるしく変化する中で、新たな時代に貢献し更なる成長を遂げるため、経営理念体系を変更し、自社の提供価値を「感性に響く価値」と再定義することとした。
変わりゆく時代のニーズ・課題を先んじて見つけ出し、「一人ひとりが主役となり、世界の人々に先端の技術で先駆の価値を届ける会社」へと変革するという強い決意を示すとともに、その実現に向け、思いを込めた新たな商号に変更する。

 

(新商号に込めた思い)
新商号 artience(アーティエンス)は、「art」と「science」を融合した言葉。art は色彩をはじめとした五感や心への刺激に加えリベラルアーツの観点、science は技術や素材、合理性を表現している。
同社の強みである art と science を融合し磨き上げることによって生まれる、人の心を動かす「感性に響く価値」を世界に提供していくことで心豊かな未来の実現に貢献していくという思いを表している。

 

2023年3月23日に開催予定の定時株主総会で承認されることを条件として、2024年1月1日に変更予定である。

 

 

3.2023年12月期業績予想

(1)業績見通し

 

22/12月期

対売上比

23/12月期(予)

対売上比

前期比

売上高

315,927

100.0%

330,000

100.0%

+4.5%

営業利益

6,865

2.2%

11,000

3.3%

+60.2%

経常利益

7,906

2.5%

9,500

2.9%

+20.2%

当期純利益

9,308

2.9%

6,000

1.8%

-35.5%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

増収、営業増益
売上高は前期比4.5%増の3,300億円、営業利益は同60.2%増の110億円の予想。
ウィズコロナの下で景気が持ち直していくことが期待される一方、世界的な金融引締めが続く中、海外景気の下振れや国内での物価上昇による影響も見込まれる。原材料やエネルギー価格の高止まりや景気の停滞等、厳しい事業環境が続くと見ているが、市況回復・海外事業拡大、コストダウン、価格改定による営業利益改善に取り組む。
印刷・情報は減収増益、それ以外のセグメントは増収増益を見込む。

 

(同社資料より)

 

配当は前期と同じく90.00円/株を予定。予想配当性向は79.5%。

 

(2)セグメント別動向

売上高

22/12月期

23/12月期(予)

前期比

色材・機能材

794

870

+9.6%

ポリマー・塗加工

762

780

+2.3%

パッケージ

835

880

+5.4%

印刷・情報

752

750

-0.2%

その他・調整

17

20

合計

3,159

3,300

+4.5%

営業利益

     

色材・機能材

18

36

+95.0%

ポリマー・塗加工

25

45

+79.7%

パッケージ

10

25

+159.6%

印刷・情報

7

12

+83.5%

その他・調整

9

-8

合計

69

110

+60.2%

*単位:億円。

 

(各セグメントの計画)
☆色材・機能材関連事業
増収増益。
リチウムイオン電池用分散体の欧米中日市場への供給を拡充する。液晶パネル中国市場での拡販、着色剤の環境調和型製品の展開にも取り組む。インクジェットは水性軟包装用を拡大する。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
増収増益。
国内の価格改定や不採算品見直しと海外の拡大による収益力改善、成長領域(環境、半導体、メディカル)への製品展開による中期的な収益構造変革に取り組む。

 

☆パッケージ関連事業
増収増益。
環境調和型製品を軸とした製品展開のほか、国内外で価格改定を推進する。海外市場でのシェア向上と収益改善に取り組む。

 

☆印刷・情報関連事業
減収増益。
国内構造改革の継続によるコストダウンと価格改定の推進のほか、機能性インキを中心とした海外事業の拡大に取り組む。

 

4.中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年‐2023年)の進捗

(1)2022年12月期までの進捗

大きく変化する事業環境の下、「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出と拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」の3つの方針について、2021、2022年の2年間で以下のような取り組みを進めた。

 

(同社資料より)

 

2023年12月期は「売上高3,300億円、営業利益110億円」を予想しており、同計画の当初計画「売上高3,000億円、営業利益220億円」に対し、売上高は超過も、営業利益は未達の見通しである。

 

(2)今期の取り組み

最終年度となる2023年12月期の各方針における取り組みは以下のとおりである。

 

方針①事業の収益力強化
主力の8製品において、成長が続く海外市場で、環境調和型製品を軸に事業を拡大する。
2023年の海外比率は、2021年49.9%、2022年52.8%からさらに上昇し、54.2%を計画している。

 

(同社資料より)

 

メディア材料においては、液晶パネル市場の変化へ柔軟に対応する。
液晶パネル市場は22年上期後半から低迷したが、在庫調整も一服し23年下期以降回復すると見ている。
中国シフトは加速し、競争が更に激化するが、顧客採用に向け量産テストを継続する。
コモディティである大型パネル市場では、世界最大の中国市場で売上拡大を図るため、コスト競争力と中国現地営業体制の強化に注力する。
ハイエンド市場では、徹底した差別化・機能製品を展開し、シェアを拡大する。具体的には、薄膜高精細の中小型パネル、CMOSや波長制御のセンサー、分散レス顔料・低温硬化の環境負荷低減製品などを積極的に投入する。

 

方針②重点開発領域の創出と拡大
リチウムイオン電池正極材用導電カーボンナノチューブ(CNT)分散体の需要が中国・北米で拡大しており、順次量産を開始している。

 

中国では世界最大手の車載電池メーカーCATLにおいて、航続距離が長いハイエンドEV用次世代高容量リチウムイオン電池に採用された。中国珠海拠点の設備を増設し、生産能力を強化する。24年量産モデルのリチウムイオン電池より搭載される予定である。
北米では、米国車載電池市場が急拡大しているため、従来のジョージア州工場に加え、北米第2拠点となるライオケム・イー・マテリアルズ(新会社)を新設した。2025年より量産を開始する予定だ。

 

中国・北米に日本・欧州を加えた4極生産体制と独自技術を持つ唯一のCNT分散体メーカーとして事業を拡大する。
欧州市場では、第2期工事を終えたハンガリーで23年第1四半期に量産を開始するとともに、第3期工事に着工する。日本では静岡県富士市で設備を増強中である。
独自技術を有する同社は、技術革新により性能と安全性を両立させた高性能CNT分散体(正極材用)、負極材用など関連材料も開発を推進する。
2026年には売上高350億円超をめざす。

 

(同社資料より)

 

方針③持続的成長に向けた経営資源の価値向上
ESG経営については、各分野それぞれ以下の取り組みを推進する。

 

(同社資料より)

 

事業基盤の強化においては、新事業創出に向けた専任組織を設置するほか、リスキリング・リカレント教育を導入する。間接部門の人員を成長領域へシフトする。
DX推進による基盤強化においては、営業・技術開発・生産・管理の各分野でDXを推進する。

 

設備投資
成長を推進する設備投資を実行する。
SIC-II3年間累計の設備投資は当初400億円を計画していたが、464億円に引き上げた。
2023年はリチウムイオン電池用分散体向け設備投資88億円を含む、168億円を計画している。

 

(同社資料より)

 

5.今後の注目点

中期経営計画「SIC-Ⅱ」の最終年度となる23年12月期、売上高は同中計の期初計画を全セグメントで上回る見込みだ。
リチウムイオン電池関連材料や環境調和型製品など、同社の技術力を生かし、生産能力を増強しながら新たな需要を着実に取り込むことができたと言えるだろう。
一方で、原材料およびエネルギー価格高騰が響き、営業利益は当初計画の半分の水準にとどまることとなりそうだ。
これだけ大きな外部環境の変化に対応するには、企業1社の力ではいかんともし難い面はあるが、1倍を下回るPB R上昇に向けて、引き続きより高収益でコスト競争力の高い製品の創出、構造改革の加速に取り組んで行く必要があろう。
次の中期経営計画に繋げていくためにも、2023年12月期にどれだけ売上・利益を積み上げていけるか注目していきたい。

 

 

2023年

(当初計画)

2023年

(今期予想)

差額

売上高

3,000

3,300

+300

色材・機能材

815

870

+55

ポリマー・塗加工

755

780

+25

パッケージ

800

880

+80

印刷・情報

645

750

+105

営業利益

220

110

-110

色材・機能材

69

36

-33

ポリマー・塗加工

85

45

-40

パッケージ

56

25

-31

印刷・情報

13

12

-1

*単位:億円

 

<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年‐2023年)>

持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、3年ごと3段階の中期経営計画に落とし込み、課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していこうと考えている同社は、第1段階である「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」に続き、第2段階である「中期経営計画SIC-Ⅱ(2021-2023年)」を2021年1月にスタートさせた。

 

<前中期経営計画SIC-I (2018~2020年)の総括>

 

 

原料の高騰、市場構造の変化、コロナ禍など外部環境の大きな変化もあり、業績目標には未達であったが、重点領域であるポリマー・塗加工、パッケージ事業へ収益シフトを進めることができたほか、新事業に資源を投入した。
また重点施策である環境対応製品の展開を進めることができ、海外エリアへの展開も推進するなど、一定の成果を収めることもできたと考えている。

 

一方、印刷・情報関連事業を中心とした構造改革の更なるスピードアップ、新製品・新事業の柱の創出、コロナ禍による市場構造の急激な変化への対応が課題であるという点が明確になった。

 

<外部環境についての認識>

新型コロナウイルスについては、2021年度は徐々に回復基調に入るが、コロナ前水準への経済回復は2022年度以降となる。国内よりも海外市場は早期に回復すると見ている。
引き続き不透明で厳しい事業環境・市場環境が続くが、この逆風を変革のチャンスとする考えだ。
今後の成長市場のテーマを「グリーン」「デジタル」「健康」と設定した。

 

<目指す姿>

目指す姿は「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」。
上記のように今後の成長市場のテーマを「グリーン」「デジタル」「健康」とし、「サステナビリティ」「コミュニケーション」「ライフ」を重点開発領域とする。
「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」という3つの方針により、ありたい姿を目指していく。

 

(同社資料より)

 

<数値目標>

2023年12月期 売上高3,000億円、営業利益220億円、営業利益率7%以上、ROE7%以上を目標としている。

 

 

<基本方針①:各セグメントにおける収益強化策>

 

◎セグメント別収益強化策

色材・機能材 ◆成長市場において収益の柱を確立

*EV:リチウムイオン電池関連材料の展開

 

*デジタル:FPD用レジストインキの中国シェア拡大、イメージセンサ用レジスト、インクジェットインキ

 

*プラスチック着色剤:拠点整理、高付加価値製品の拡大

ポリマー・塗加工 ◆接着剤事業の海外展開と新ポリマーによる成長市場への事業拡張

*パッケージ・工業材:生産能力増強と環境調和型製品群の拡充による海外展開

 

*5G・IoT:5G市場でのポジション確立と半導体市場への参入

 

*メディカル・ヘルスケア:関連製品群の拡大と育成

パッケージ ◆環境対応をリードし、特にアジア市場で成長拡大

*パッケージリサイクル事業化推進

 

*中国、インド、トルコ、東南アジア等の海外成長市場に集中投資

印刷・情報 ◆市場環境に適合した収益事業へ進化

*紙器等の包装用途および工業分野向け機能性インキを拡大

 

*カラー・コミュニケーション事業化推進

*2021年度よりインクジェットインキは印刷・情報事業から色材・機能材事業に変更している。

 

各セグメントの売上高・営業利益目標は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<基本方針② 重点開発領域の創出と拡大>

 

◎3つの重点開発領域
3つの重点開発領域での注力ポイントなどは以下の通りである。

サステナブル・サイエンス ◆持続可能な社会実現

 

(中心となる開発対象)

*バイオマス、リサイクルなど環境調和パッケージ

*EVや新エネルギー向けリチウムイオン電池材料

 

コミュニケーション・サイエンス ◆キー素材で5G・IoT社会に貢献

 

(中心となる開発対象)

*IoTやセンサ向け光学制御材料

*5G、半導体向け低誘電材料、機能性フィルムなど

 

ライフ・サイエンス ◆人々の生活を豊かに・健やかに

 

(中心となる開発対象)

*貼付型医薬品

*デジタル印刷用インクジェットインキ

 

 

◎開発体制の変革
重点開発領域の研究開発体制も強化する。

 

各セグメント主管会社に研究所を新設する。2-5年のスパンでの中期開発テーマを手掛ける「中期的な開発戦略の専任部門」であり、新製品や新事業の創出を加速する。

 

色材・機能材 先端材料研究所
ポリマー塗加工 ポリマー材料研究所
パッケージ 機能材開発研究所
印刷・情報

 

より長期的な開発テーマは、ホールディングスR&D研究所、生産技術研究所が担当し、各研究所と連携をとって研究開発を進める。

 

◎投資計画
成長市場への集中投資を行う。
SIC-IIでは総額400億円を計画しており、内訳は、色材・機能材 29%、ポリマー・塗加工 31%、パッケージ 25%、印刷・情報 11%。また次の3年(SIC-Ⅲ)も見据えた6年間の主要投資は、「色材・機能材 約200億円」「ポリマー・塗加工 約300億円」「パッケージ 約400億円」を計画している。
色材・機能材では日本・中国・米国・欧州におけるEV関連材料、ポリマー・塗加工では医薬品(守山工場)、新ポリマー合成(川越製造所)、粘接着剤(米国・中国・インド)、パッケージではトルコ・インド・中国・インドネシアでの工場建設・増強を計画している。

 

<基本方針③ 持続的成長に向けた経営資源の価値向上>

 

 

企業体質の変革に向け、以下のような取り組みを進める。

 

◎働き方・人事制度改革
成果連動型の評価制度を強化する。
女性活躍宣言により、国内女性管理職比率を現在の4%から8%に引き上げる。
新卒に限らず、通年採用を拡大する。
グループ人員の適正規模を見極め、適正な配置を進める。
リモートオフィスが定着してきたのを機にイノベーション創出に繋がるオフィス改革に取り組む。

 

◎DXの推進
持続的成長のための重要な経営課題であると認識しており、各部門でDXを推進する。

部門

取り組み

営業 *デジタル・マーケティング

*新ビジネスモデル構築

生産 *スマートファクトリー

*IoTでプロセス変革

技術開発 *マテリアルズ・インフォマティクス

*開発スピード高速化

管理 *RPA推進

*DX推進に向けた教育

 

◎ガバナンス体制の変革
中でも、取締役・監査役の独立性の向上、透明性の確保、業績連動報酬制度の導入、リスクマネジメント強化、政策保有株の削減に取り組む。

 

◎環境経営の推進
環境課題に強い意識を有する同社は、今後さらに環境調和型製品の開発・拡大に注力し、持続可能な社会づくりに貢献する。

社会課題

製品・サービス

省エネ *高感度UV硬化

*EB(電子線)硬化

VOC対策 *水性化

*無溶剤化

CO2削減 *バイオマス
フードロス削減 *鮮度保持

*レトルト対応

廃プラ・リサイクル *生分解

*リサイクルシステム

 

また気候変動問題においても、政府が掲げる「2050年 カーボンニュートラル」に向け、CO2削減に積極的に取り組むほか、省エネ活動も継続する。2020年には川越製造所が省エネルギーセンター会長賞を受賞している。

 

◎キャッシュ・フロー方針
財務健全性と投資・株主還元のバランスを重視する。
財務健全性においては自己資本比率の適正水準維持、手元流動性の確保を念頭に置く。
設備・技術投資、人材投資、M&Aを積極的に実行する。
また、安定配当を継続する。21年2月には自社株買い50億円を実行したが、今後も状況を踏まえ検討していく。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 11名、うち社外6名(5名が独立役員)

(2023年3月23日現在)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年3月30日

 

<基本的な考え方>
当社グループは、持株会社体制のもと、グループ戦略機能を強化し、スピード経営を推進し、グループ全体最適と各事業最適をバランスさせることを通じてグループ全体としての価値向上を目指しております。
当社グループにおける経営の枠組みは、グループ企業経営における基本的な考え方を体系化した経営哲学及び経営理念並びに行動指針からなる「東洋インキグループ理念体系」と、社会的責任への取組み姿勢を明確にしたCSR憲章及びCSR行動指針からなる「CSR価値体系」で構成されております。
当社グループは、「東洋インキグループ理念体系」と「CSR価値体系」を実践することにより、サイエンスに基づくモノづくりを通して、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献し、経営理念に掲げる「世界にひろがる生活文化創造企業」を目指してまいります。
そのためにはステークホルダーと同じ視点で自身の企業活動を評価し、経済、社会、人、環境においてバランスの取れた経営を遂行することこそが、企業としての有形、無形の価値を形成し、社会的責任を果たすための最重要課題として位置付けております。

 

この実現のために、
・事業執行機能を各事業会社に委譲するとともに、コーポレート・ガバナンスを強化するため、グループ各社に適用される稟
議規程及び関係会社管理規程の適切な運用
・内部統制システムの整備
・株主総会、取締役会、監査等委員会、会計監査人など法律上の機能制度の強化による指導・モニタリング機能の向上
・迅速かつ正確、広範な情報開示による経営の透明性の向上
・コンプライアンス体制の強化・充実
・地球規模の環境保全の推進
などを進め、株主や取引先、地域社会、社員などの各ステークホルダーと良好な関係を構築し、コーポレート・ガバナンスを充実させております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
2021年6月改訂後のコーポレートガバナンス・コードに示される諸原則(2022年4月4日以降適用となるプライム市場向けの内容も含みます。)について記載しております。

 

原則

開示内容

(原則1-4) 当社は、政策保有上場株式について、毎年、取締役会において、経済合理性を検証しております。資本コストと比較した保有に伴う便益や取引状況などを個別銘柄毎に検証し、保有が適切ではないと判断した銘柄は、当該企業の状況や市場動向を勘案した上で縮減を進めてまいります。

なお、前期は11銘柄の全量売却と2銘柄の一部売却を実施いたしました。

政策保有上場株式の議決権行使については、各議案が発行会社の中長期的な企業価値の向上に資するものであるか否か、当社を含む株主共同の利益に資するものであるか否か、また当社グループの経営や事業に与える影響等を定性的かつ総合的に勘案したうえで、議案毎に適切に行使いたします。なお、発行会社において企業価値の著しい毀損、重大なコンプライアンス違反の発生等、特別な事情がある場合や、株主としての当社の企業価値を損なうことが懸念される場合は、発行会社との対話等により十分に情報収集したうえで、慎重に賛否を判断いたします。

(補充原則2-4①) 当社は日本国内での女性管理職比率を2023年度に8%とする目標を設定しております。次期リーダー層の女性社員を対象としたキャリア研修を実施するなど、女性社員が仕事や役割にチャレンジする自信と勇気をもって一歩踏み出せるよう、働きかけてまいります。

なお、日本国内における外国人及び中途採用者の管理職比率については、国籍や職歴による差別のない採用・育成方針であることに鑑み数値目標を掲げる必要はないと考えております。後述の方針に基づき多様性の確保に努めております。

ちなみに2022年1月時点における国内の各管理職比率は女性が約4.5%、外国人は1%未満、中途採用者は約34%となっております。

多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針については、以下のとおりです。

【グローバルな視野・能力を持つ人材の育成】

国内外問わず、海外ビジネスに関連する多様な実務経験を通した能力開発を行う方針のもと、人材育成を進めております。

また将来を見据え、若手・中堅層を中心に海外現地法人での実習による人材育成を進めております。

 

【組織の活性化に向けたダイバーシティ推進】

①社員同士の違いを認め、活かすための情報提供と教育の提供、②女性管理職の積極登用の方針のもと、2021年よりダイバーシティ推進プロジェクトを発足させ、多様な人材が活躍できる環境整備、制度設計、育成施策の検討を進めてまいります。

(補充原則3-1③) 当社は、長期構想SIC27において、東洋インキグループの持続的な成長が社会の持続可能性の向上に寄与する姿をコンセプト「サステナブルグロース」として掲げ、中期経営計画の基本方針にサステナビリティについての取り組みを盛り込んでおります。加えて、グループのCSR/サステナビリティ活動の実践的な長期目標として、サステナビリティビジョン「TSV2050/2030」を策定し、2050年におけるカーボンニュートラル達成に向けた2030年におけるCO2排出量削減目標を設定いたしました。今後、体制の整備及び気候変動シナリオ分析を含め、当社ホームページや統合レポート等を通じてTCFD提言に基づいた情報開示を推し進めてまいります。

人的資本については人材を最も重要な資源として積極的な投資を行っており、各種研修や自己啓発活動を推進する東洋インキ専門学校の設置、人材ローテンション制度の導入、ダイバーシティ推進のための女性の活躍推進やメーカーとして労働安全衛生の徹底を推進しております。新たな知的財産の創出についても社会ニーズを的確にとらえた新製品の開発や新ビジネスの創出を促進するためにR&D体制を刷新した他、オープンイノベーションの推進や戦略的な特許の取得等にも努めており、これらの情報につきましても統合レポートなどを通じて積極的な開示を実施いたします。

(原則5-1) 当社では株主・投資家を重要なステークホルダーと考えており、行動指針の一つとして「株主権の尊重と株主価値の向上」(ShS:Shareholder Satisfaction)を掲げ、株主権の尊重と株主価値の向上に取り組んでおります。その中でも株主や投資家との建設的な対話は重要なファクターと位置付けております。財務・総務担当の取締役やIR担当の取締役を指定し、関係各部門の有機的連携により情報共有を確実に行い、株主にはグループ総務部、投資家にはグループ広報室が窓口となって対話の促進を図っており、対話を通じて把握した意見のうち重要性が高いと判断したものについては担当取締役に適宜報告しております。

インサイダー情報の管理については、インサイダー取引防止管理規程、情報保護管理規程などを定めているほか、ビジネス行動基準に具体的な行動指針として定め、ガイドブックを全グループ社員に配布するとともに、定期的な教育を行うことで周知徹底を図っております。

 

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