キッツ(6498) 増収増益、計画も上回る

2023/03/16
 

河野 誠 社長

株式会社キッツ(6498)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

機械(製造業)

代表者

河野 誠

所在地

千葉県千葉市美浜区中瀬1-10-1

決算月

12月

HP

https://www.kitz.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

867円

90,396,511株

78,373百万円

10.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

33.00円

3.8%

95.91円

9.0倍

1,002.69円

0.9倍

*株価は2/24終値。各数値は2022年12月期決算短信より。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年3月

127,090

6,950

7,241

4,937

53.06

20.00

2020年12月

84,245

3,751

3,169

2,113

23.38

9.00

2021年12月

135,790

8,990

8,975

4,954

55.26

20.00

2022年12月

159,914

11,051

12,045

8,549

95.35

33.00

2023年12月(予)

167,000

11,900

12,300

8,600

95.91

33.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。2020年12月期は決算期変更のため9ヶ月決算。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

(株)キッツの2022年12月期決算概要、23年12月期業績予想などをご紹介します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年12月期決算概要
3.2023年12月期業績予想
4.第1期中期経営計画 2024の進捗
5.今後の注目点
<参考1:長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030 「流れ」を変える』>
<参考2:第1期中期経営計画 2024>
<参考3:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 22年12月期の売上高は前期比17.8%増の1,599億円。バルブ事業は同17.3%の増収。半導体製造設備向けは国内・海外とも増収。国内市場では価格改定効果が寄与し、同8%の増収。海外市場は同33%の増収。為替の寄与もあり、中国以外は各エリアとも伸長した。伸銅品事業は同18.8%の増収。売価に影響を与える原材料相場の上昇に伴い販売価格が上昇し、販売量も増加した。営業利益は同22.9%増の110億円。バルブ事業は増収により同23.9%の増益。伸銅品事業は期中における原材料相場の急落に伴う販売単価の下落の影響やエネルギーコストの上昇等により同66.6%の減益となった。全社売上・利益はともに計画を上回った。 
  • 23年12月期の売上高は前期比4.4%増の1,670億円、営業利益は同7.7%増の119億円の予想。バルブ事業は増収増益、伸銅品事業は減収増益を見込んでいる。前期同様、原材料市況高、費用増を数量増や原価低減で吸収し増益を確保する。配当は前期と同じく33.00円/株の予想。予想配当性向は34.4%。 
  • 同社では、経営基本方針として「コア事業と成長分野で収益をあげられる両利きの経営を目指す」を掲げ、「デジタル化・脱炭素化を背景とした成長分野・地域への積極的リソース投入」と「投下資本収益性(ROIC)を重視した事業展開」を進める「第1期中期経営計画2024」を推進中である。22年12月期に全社売上高及びセグメント別売上高が計画値を上回ったことから、今後の事業環境の見通し及び足元の業績動向を踏まえ、更なる業績の向上を目指して24年12月期の定量目標(連結業績・セグメント別売上高・セグメント別営業利益)を上方修正することとした。非財務目標については、変更はない。 
  • 前期と比較して伸び率は低いものの、今期も増収増益を予想している。上下で見ると、上期は前下期比減収・微増益であり、下期からの本格的な伸長と計画している。2022年に続き、インフレと金利上昇による景気減速リスク、為替動向など不透明な状況にある一方、コロナ禍の影響も薄れる中で緩やかな景気回復が期待されている。こうした環境下、バルブ事業において好調な半導体装置、水素/低炭素市場が牽引役としてどのように収益拡大に貢献していくのか注目していきたい。 

1.会社概要

バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入る。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われる。同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社34社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)やホテル事業等も手掛けている。

 

【1-1 企業理念】

創業70周年を迎えた2021年を機に、企業としての存在意義と社会に対する貢献について議論を重ね、長期経営ビジョンを公表するにあたり、企業理念である「キッツ宣言」を改訂した。
ゆたかな地球環境と持続可能な未来を創造することが、社会に対して果たすべき使命であると認識し、創業以来培ってきた流体制御技術と材料開発をさらに磨き上げ、社会インフラを支え続けていくという強い思いを込めている。

 

同社資料より

 

【1-2 事業セグメントの概要】

事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、22/12期の売上構成比は、それぞれ78.3%、20.3%、1.4%。

 

 

(1)バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。同社は、鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用され、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブと言った主力商品で高い国内シェアを有する。
販売面では、国内は主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外は、インド、U.A.Eに駐在員事務所を置く他、中国、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産面では、国内工場の他、海外では中国、台湾、韓国、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジルに生産拠点を展開し、グローバルコスト及び最適地生産の実現に向けた生産ネットワークを構築している。

 

建築設備

ホテルや病院、オフィスビル等の建築設備において、空調、衛生、防災設備等に使われるバルブ等。

水道・給水設備

上下水道における配管ラインの機器・装置、水処理・汚泥処理施設に使われるバルブ及び戸建、集合住宅用の給水装置用商品等。

ガス・エネルギー施設

LNG(液化天然ガス)生産施設やパイプライン等で使われるバルブ等。

産業機械・生産設備

産業機械・生産設備のあらゆる場所で使われるバルブを扱っている。

石油精製、コンビナート施設

石油精製、石油化学、化学プラントのプロセスライン等で使われるバルブ等。

半導体製造設備

半導体製造設備向けのバルブ、継手(グループ会社のキッツエスシーティーで製造・販売)。

 

(2)伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。

 

(3)その他
子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。

 

【1-3 ROE分析】

 

19/3期

20/3期

20/12期

21/12期

22/12期

ROE(%)

7.4

6.5

2.8

6.4

10.0

 売上高当期純利益率(%)

4.12

3.88

2.51

3.65

5.35

 総資産回転率(回)

1.03

0.95

0.61

0.96

1.08

 レバレッジ(倍)

1.75

1.76

1.84

1.84

1.74

*20/12期は9か月決算。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

22/12期のROEは計画を1.0ポイント上回り、2ケタ台に乗った。PBR1倍以上実現のためにも、収益性改善に伴う更なる向上が期待される。

 

2.2022年12月期決算概要

【2-1 連結業績】

 

21/12期

構成比

22/12期

構成比

前期比

修正予想比

売上高

135,790

100.0%

159,914

100.0%

+17.8%

+1.9%

売上総利益

34,461

25.4%

38,819

24.3%

+12.6%

販管費

25,470

18.8%

27,768

17.4%

+9.0%

営業利益

8,990

6.6%

11,051

6.9%

+22.9%

+5.2%

経常利益

8,975

6.6%

12,045

7.5%

+34.2%

+5.2%

当期純利益

4,954

3.6%

8,549

5.3%

+72.6%

+11.0%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益、以下同様。修正予想比は22年11月公表の業績予想に対する比率。

 

増収増益、計画も上回る。
売上高は前期比17.8%増の1,599億円。バルブ事業は同17.3%の増収。半導体製造設備向けは国内・海外とも増収。国内市場では価格改定効果が寄与し、同8%の増収。海外市場は同33%の増収。為替の寄与もあり、中国以外は各エリアとも伸長した。
伸銅品事業は同18.8%の増収。売価に影響を与える原材料相場の上昇に伴い販売価格が上昇し、販売量も増加した。
営業利益は同22.9%増の110億円。バルブ事業は増収により同23.9%の増益。伸銅品事業は期中における原材料相場の急落に伴う販売単価の下落の影響やエネルギーコストの上昇等により同66.6%の減益となった。全社売上・利益はともに計画を上回った。

 

 

 

為替及び原材料相場

 

21/12期

22/12期(実績)

22/12期(計画)

ドル:対円

110.39

132.09

133.31

ユーロ:対円

130.36

138.49

138.03

電気銅建値:円/トン

1,067,000

1,194,750

1,178,750

 

【2-2 セグメント別動向】

 

21/12期

構成比

22/12期

構成比

前期比

修正予想比

売上高

135,790

100.0%

159,914

100.0%

+17.8%

+1.9%

バルブ事業

106,754

78.6%

125,189

78.3%

+17.3%

+1.8%

伸銅品事業

27,366

20.2%

32,513

20.3%

+18.8%

+1.6%

その他

1,668

1.2%

2,212

1.4%

+32.6%

+10.6%

セグメント利益

8,990

6.6%

11,051

6.9%

+22.9%

+5.2%

バルブ事業

12,088

11.3%

14,980

12.0%

+23.9%

+4.0%

伸銅品事業

665

2.4%

222

0.7%

-66.6%

+122.0%

その他

-243

68

3.1%

* 単位:百万円。営業利益の構成比は売上高利益率。修正予想比は22年11月公表の業績予想に対する比率。

 

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

(1)バルブ事業
売上・利益とも前期及び計画を上回った。
原材料高騰、費用増を数量増、原価低減で吸収した。

 

(市場別)
今期より中長期ターゲット市場を8つの市場区分に整理した。現行コア事業(建築設備、石油化学、水処理、機械装置)を基盤に成長分野・新規分野(半導体装置、半導体材料(フィルター)、機能性化学、水素/低炭素)への資源移動を進め、収益構成を変えてゆく。

 

建築設備は工期の遅れもあり流通に在庫が滞留しややスローダウン。石油化学及び水処理は順調に推移した。機械装置は好調に推移しているものの計画に対してはやや未達となった。半導体装置、半導体材料は好調に推移し計画を達成した。機能性化学は中長期的に伸ばしていく分野として市場・顧客分析を行うとともに新商品の開発に注力している。
水素/低炭素は物件の受注に注力し、受注・内示物件5件を獲得した。

 

(エリア別)
*国内
売上高は前期比8%増の728億円。
建築設備向けが弱含んだものの価格改定も寄与し、増収となった。半導体装置向けも好調を継続している。

 

*海外
売上高は同33%増の523億円。うち為替による影響は約60億円の増加。
アセアンはコロナからの回復により増収。韓国は半導体装置向けが堅調だった。
中国は、上海のロックダウンの影響は軽微であったものの、不動産業界の停滞やゼロコロナ政策等により景気は減速している。
米州は、為替の追い風のほか、石油化学等の工業向けの好調が継続している。
欧州は、ロシアのウクライナ侵攻の影響により景気は減速傾向だが、前期比では持ち直している。

 

(2)伸銅品事業
増収減益。売上・利益とも計画を上回った。
生産量・販売量は高水準で推移した。売価に影響を与える原材料相場は、7月初旬に急落後再び上昇した。
エネルギーコストの上昇等もあり、第3四半期累計からは持ち直したものの減益となった。

 

(3)その他
増収、黒字転換。
ホテル事業でまん延防止等重点措置の全面解除など行動制限が緩和されたことにより宿泊客が増加した。

 

【2-3 財政状態とキャッシュ・フロー】

◎BS

 

21年12月

22年12月

増減

 

21年12月

22年12月

増減

流動資産

86,621

93,177

+6,556

流動負債

32,939

23,335

-9,604

現預金

27,943

24,370

-3,573

仕入債務

8,037

8,975

+938

売上債権

30,031

33,539

+3,508

短期有利子負債

13,574

3,153

-10,421

たな卸資産

26,807

33,006

+6,199

固定負債

29,226

38,190

+8,964

固定資産

56,798

59,392

+2,594

長期有利子負債

25,292

33,766

+8,474

有形固定資産

41,436

45,200

+3,764

負債

62,166

61,526

-640

無形固定資産

4,590

3,164

-1,426

純資産

81,253

91,042

+9,789

投資その他

10,772

11,027

+255

利益剰余金

51,708

57,911

+6,203

資産合計

143,419

152,569

+9,150

負債・純資産合計

143,419

152,569

+9,150

* 単位:百万円。売上債権には電子記録債権を含む。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

売上債権、たな卸資産、有形固定資産の増加などで資産合計は前期末比91億円増加の1,525億円。有利子負債の減少等で負債合計は同6億円減少し615億円。利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加などで純資産は同97億円増加の910億円。
自己資本比率は前期末より3.0pt上昇し59.0%となった。

 

◎CF

 

21/12期

22/12期

増減

営業キャッシュ・フロー(A)

8,280

8,541

+261

投資キャッシュ・フロー(B)

-3,236

-7,471

-4,235

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

5,044

1,070

-3,974

財務キャッシュ・フロー

-11,527

-5,567

+5,960

現金及び現金同等物期末残高

27,658

24,076

-3,582

* 単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

営業CFは前期とほぼ変わらず。有形固定資産の取得による支出の増加などで投資CFのマイナス幅は拡大し、フリーCFは縮小。キャッシュポジションは低下した。

 

3.2023年12月期業績予想

【3-1 連結業績】

 

22/12期

構成比

23/12期(予)

構成比

前期比

売上高

159,914

100.0%

167,000

100.0%

+4.4%

営業利益

11,051

6.9%

11,900

7.1%

+7.7%

経常利益

12,045

7.5%

12,300

7.4%

+2.1%

当期純利益

8,549

5.3%

8,600

5.1%

+0.6%

*単位:百万円。

 

為替及び原材料相場

 

22/12期

23/12期(予)

ドル:対円

132.09

128.00

ユーロ:対円

138.49

139.00

電気銅建値:円/トン

1,194,750

1,250,000

 

増収増益を予想
売上高は前期比4.4%増の1,670億円、営業利益は同7.7%増の119億円の予想。
バルブ事業は増収増益、伸銅品事業は減収増益を見込んでいる。前期同様、原材料市況高、費用増を数量増や原価低減で吸収し増益を確保する。
配当は前期と同じく33.00円/株の予想。予想配当性向は34.4%。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【3-2 セグメント別見通し】

 

22/12期

構成比

23/12期(予)

構成比

前期比

バルブ事業

125,189

78.3%

134,700

80.7%

+7.6%

伸銅品事業

32,513

20.3%

30,000

18.0%

-7.7%

その他

2,212

1.4%

2,300

1.4%

+4.0%

連結売上高

159,914

100.0%

167,000

100.0%

+4.4%

バルブ事業

14,980

12.0%

16,400

12.2%

+9.5%

伸銅品事業

222

0.7%

400

1.3%

+80.2%

その他

68

3.1%

70

3.0%

+2.9%

調整額

-4,219

-4,970

連結営業利益

11,051

6.9%

11,900

7.1%

+7.7%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高利益率。

 

(1)バルブ事業
増収増益。

 

(市場別)
コア市場では、建築設備、機械装置が堅調な一方、石油化学、水処理が減収を見込む。
グロース市場では、半導体装置、水素/低炭素を筆頭に全市場で2桁の増収予想。

 

(エリア別)
中国、インドが2桁増収見込み。欧州・その他はウクライナ情勢も影響もあり横這い、その他市場は増収の予想。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

(2)伸銅品事業
減収増益。
銅価格は前期比5%程度の上昇を予想。
材料費低減に向け、鋳造Cラインを3炉体制に増強し、減耗低減・黄銅滓のリサイクル化を図る。
半導体向け、自動車向け、建機/重機/農機向けに注力し、成長市場への参入・拡販に取り組む。
DX化による業務合理化・自動化を進め、生産管理業務(生産計画)、受注業務・製造現場の見える化と生産性向上を図る。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

(3)その他
経営環境の好転を受け、増収、今期も利益確保を図る。

 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

 

【3-3 経営方針、財務戦略・資本政策】

「ROIC × ESG経営」を掲げ、企業価値の向上と社会価値の向上を同時に目指す。
経営の基軸を「中長期的な投下資本収益性の向上」に置き、社外に向けてはROEを、社内ではROICを主要KPIとして目標管理を実施する。

 

(同社資料より)

 

ROE目標を、「2024年 9%以上」「2030年 10%以上」とし、ROIC経営の導入、積極的な戦略投資の実施、将来に向けた成長・収益性の確保に取り組む。最適資本構成の維持と借入余力の確保を図る。

 

ROIC経営では、①収益性改善(製品ポートフォリオの見える化と組み換え・価格戦略の実行・不採算製品見直し)、②ROIC Tree展開とPDCA管理、③CCC改善と資産圧縮に取り組む。

 

2022年から2024年の3年間の営業CFは380億円と見込んでおり、以下のような投資、株主還元、借入返済・資金調達を実行する。フリーCFはゼロ以上を目指す。

 

(同社資料より)

 

4.第1期中期経営計画2024の進捗

同社では、経営基本方針として「コア事業と成長分野で収益をあげられる両利きの経営を目指す」を掲げ、「デジタル化・脱炭素化を背景とした成長分野・地域への積極的リソース投入」と「投下資本収益性(ROIC)を重視した事業展開」を進める「第1期中期経営計画2024」を推進中である。

 

(1)初年度2022年12月期の振り返り

材料価格の高騰と価格改定効果に加え、為替の影響もあり、売上高は計画を大幅に達成した。
営業利益については、原材料・購入部品価格やエネルギーコストの上昇はあったものの、数量増や原価低減で吸収し、計画を達成した。
非財務目標の各項目についても2024年12月期目標の達成に向け取り組みを進めている。

 

(同社資料より)

 

(2)中期経営計画の定量目標の見直し

以上のように、全社売上高及びセグメント別売上高が計画値を上回ったことから、今後の事業環境の見通し及び足元の業績動向を踏まえ、更なる業績の向上を目指して24年12月期の定量目標(連結業績・セグメント別売上高・セグメント別営業利益)を上方修正することとした。非財務目標については、変更はない。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

(3)事業環境

2023年の経済動向については、2022年に続き、世界経済は、インフレと金利上昇による景気減速リスク、為替動向など不透明な状況にあると見ている。
サプライチェーン問題・経済安全保障により製造業は国内回帰の傾向を強めていき、加えて歴史的な物価高を受け、政府・経済界一体となった賃上げの流れが強まっていく。
コロナ対策での経済社会活動の制限解消により緩やかな景気回復が期待される。

 

中長期的には以下のような事業環境を想定している。

 

(同社資料より)

 

(4)各事業の市場別戦略

◎バルブ事業
各市場の概況および2023年の主要施策は以下のとおり。

 

①建築設備
世界的な景気減速により投資案件は減少した。国内住宅着工件数は減少傾向だが首都圏再開発は継続しており、海外での政府系投資案件やデータセンター建設投資は引き続き積極的である。

 

2023年は、中国・ASEANでのリージョン完結型ビジネスの拡大、戦略在庫による短納期ニーズへの対応を通じたデータセンター市場の需要取り込み、配管工法・材質の変化と自動化・スマート化に対応した製品の開発などに取り組む。

 

②石油化学
世界的な脱炭素の流れに加え、ロシア・ウクライナ問題による需給バランスの不均衡により事業再編が進むと見ている。
新興国では経済成長に伴う需要増により、中長期的な投資拡大が見込まれ、先進国では脱炭素・ケミカルリサイクルの実証プラントの投資が増える見込みである。

 

2023年は、北米市場に向けたAPI認証製品ラインナップ拡充を行う。また、KISMOS事業化に向けた拡大のため、評価導入中の案件から正式導入契約の獲得・契約獲得先企業の同種プラントへの横展開・代理店・販売店の活用に取り組む。
さらに、保守・保全需要の取り込み、Perrin製品の日本生産による高付加価値品の短納期対応の実現を図る。

 

③水処理
世界の水インフラ需要は増加するが、価格帯と認証制度が参入障壁となっている。国内では老朽化した水道管の管路更新と耐震化ニーズによる需要が高まるが予算の制限がある。半導体需要拡大に伴う純水/超純水プラントへの投資は継続しており、環境対策に向けた水のリサイクル需要にも期待している。

 

2023年は、キッツグループが有する、水関連技術や製品・サービスを総合的に活用したソリューションを提供する。具体的には、
①ピュアキレイザーの大流量タイプ発売、サービス体制の構築、②バタフライバルブ/アクアシリーズの拡販、メンテナンス需要の取り込み、③地下水処理分野への本格参入などである。
また、純水/超純水処理装置市場への本格参入においては、①PPS弁体バタフライバルブの市場投入、②PFAライニングバタフライバルブの拡販に取り組む。

 

④機械装置
RoHS・REACH等環境規制に対応した製品供給・部品調達が求められ、温室効果ガス削減に向けたグリーン冷媒への切替需要が今後も高まると見ている。医療/食品/バッテリー/バイオ産業向けの機械装置への要求仕様が高度化している。

 

2023年は、RoHS・REACH等環境規制物質の管理強化と対応製品拡充、機械装置営業部による市場深堀り、客先ニーズに合わせた小型軽量/自動化した製品の開発、耐圧防爆型アクチェータの拡販に取り組む。

 

⑤半導体装置
足元で半導体は投資調整局面に入り、米中問題による不透明感もあるものの、中長期的には継続した投資が見込まれ、成長は維持・拡大方向にあると見ている。客先ニーズに柔軟に応えるため、生産能力増強に加え、研究開発体制強化と海外での販売力強化が求められる。

 

2023年は、新工場の立ち上げによるシェア拡大、基幹システムの刷新による自働化・省力化、米国向け戦略商品の開発推進に取り組む。

 

⑥半導体材料(フィルター)
旺盛な半導体需要を背景に半導体フォトレジスト用フィルター(ポリフィックス)は堅調な成長が見込まれる。顧客の製品・部品及び環境負荷に対する要求品質はさらに高まっている。

 

2023年は、新工場の立ち上げ準備とユーザー認証取得、微細化対応の技術確立とユーザー認証促進による販売
拡大、CO 2 分離膜に関するNEDO事業の推進に注力する。

 

➆機能性化学
医薬・食品・衛生事業及び二次電池産業では世界的に継続した力強い投資が見込まれる。主要顧客である石油化学系各社は高付加価値の機能性化学分野への事業に注力しており、高度化するプロセス要求に対応した製品ラインナップの拡充が求められる。

 

2023年は、ダイヤフラムバルブの市場投入、ライニングバルブのラインナップ拡大、エクステンションボンネット構造ボールバルブの拡販、医薬市場の市場調査継続に取り組む。

 

⑧水素/低炭素
脱炭素社会に向けたエネルギー転換に加えて、ロシア・ウクライナ問題により、クリーンエネルギー(LNG/アンモニア/水素)や再生可能エネルギー(バイオマス/地熱など)の需要が急激に高まる。水素社会に向けたサプライチェーン構築の取り組みが進んでいる。
2023年は、水素事業部の立ち上げに注力する。具体的にはパッケージユニットによる水素ステーション市場攻略、液化水素・高圧水素用バルブの販売、研究開発事業(NEDO/JAXA)の遂行のほか、メンテナンス事業を検討する。

 

◎伸銅品事業
既存領域は縮小傾向にあるが、成長分野(半導体、自動車等)の開拓、サプライチェーン見直しに伴う加工品の需要取り込み及び継続的コストダウンで収益力を高める。

 

2023年は、鋳造Cラインを3炉体制に増強するほか、減耗低減、黄銅滓のリサイクル化による材料費低減に取り組む。
加えて、半導体向け・自動車向け・建機/重機/農機向けなど成長市場への参入・拡販を図る。
生産管理業務(生産計画)や受注業務におけるDX化による業務合理化・自動化を進め、製造現場の見える化と生産性向上を図る。

 

 

5.今後の注目点

前期と比較して伸び率は低いものの、今期も増収増益を予想している。上下で見ると、上期は前期下期比減収・微増益であり、下期からの本格的な伸長と計画している。
2022年に続き、インフレと金利上昇による景気減速リスク、為替動向など不透明な状況にある一方、コロナ禍の影響も薄れる中で緩やかな景気回復が期待されている。
こうした環境下、バルブ事業において好調な半導体装置、水素/低炭素市場が牽引役としてどのように収益拡大に貢献していくのか注目していきたい。

 

<参考1:長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030 「流れ」を変える』>

 

2022年2月、新しい「キッツ宣言」の実現に向けて、持続可能な社会の実現に貢献しつつさらなる長期的な成長と企業価値向上に取り組むべく、長期経営ビジョン『「Beyond New Heights2030 「流れ」を変える』及び第 1 期中期経営計画 2024 を策定した。

 

(1)ありたい姿

以下、4つのありたい姿を掲げている。

テクノロジー/ソリューション

「流す」「止める」「絞る」のあらゆるニーズに、オンリーワンの技術とユーザーの期待を超える提案力で挑戦し続ける。

コアビジネス/成長ビジネス

情報化社会、サステナブル社会に向けて、コアビジネスの基盤を強化し、同時に成長ビジネスへの参入を、リスクを恐れず加速させる。

事業を通じた環境保全

環境にやさしい商品・材料の開発や製造プロセスを追求し、持続可能な未来に貢献することにより、社会から信頼される。

多様な人財の活躍

性別、年齢、国籍、文化等を超えて、社員一人ひとりがプロフェッショナルとして、最高のパフォーマンスでいきいきと働いている。

 

(2)目指す経営構造と定量目標

①定量目標
2030年度の目標は、以下の2つ。
☆「平均売上高成長率:4%以上(2030年度の連結売上高 2,000億円規模)」
☆「ROE:10%以上(2030年度の連結当期純利益100億円規模)」

 

②経営構造
ビジネス領域は、建築設備や石油・一般化学など現在のコア事業を土台に、半導体、機能性化学、水素、新規事業等の成長領域への拡張を図る。
ビジネスモデルとしては、デジタル化・脱炭素化を背景とした成長分野・地域へ積極的にリソースを投入するとともに、投下資本収益性(ROIC)を重視した事業展開を目指す。

 

(3)2030年に目指す姿:ビジネス領域のシフト

 

コア事業と成長分野で収益をあげられる両利きの経営を目指す。

 

(同社資料より)

 

①長期戦略投資方針
総投資枠(9か年)で800億円を設定し、うち約6割を成長・新規分野への戦略投資枠(DX・M&A含む)とする。
コア事業からのビジネスシフトに向け、経営リソースを重点的に割り当てる。

 

(4)サステナビリティ

①サステナビリティ基本方針とサステナビリティスローガン
以下のような、サステナビリティ基本方針とスローガンを掲げている。

 

◎サステナビリティ基本方針
キッツグループは、企業理念である「キッツ宣言」の実現に向けて、
①事業を通じた社会課題の解決に取り組み、企業価値と社会価値の向上を図る
②効率的で、公正かつ透明性の高い企業経営を実現し、社会から信頼される企業となる
③あらゆるステークホルダーとの対話により、強固な信頼関係を構築する

 

◎サステナビリティスローガン
「つくる未来 のこす未来」

 

つくる未来
キッツグループは、「誠実」に行動し、そして「変革」を恐れずチャレンジし、地球と人にやさしい循環型社会の実現を目指して、
新しい未来を創造します。

 

のこす未来
キッツグループは、限りある地球資源と人の暮らしを守り続け、私たちが次の世代にのこすことのできる社会の実現に努めます。

 

◎サステナビリティ経営
①全体像
2030年に向けた長期戦略において、サステナビリティ経営を経営戦略の中核に据えた。

 

(同社資料より)

 

②サステナビリティ経営重点テーマ
E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)それぞれの経営重点テーマを定め、具体的に取り組んでいく。

 

サステナビリティ経営重点テーマ

具体的取り組み

E

カーボンニュートラル/資源循環

「トリプルゼロ」実現に向けたKPI目標展開

(CO2削減率/水資源排出量/廃棄物埋立処分率)

イノベーション

脱炭素/水素社会を支える流体制御技術の開発

環境負荷低減に貢献する材料の開発

S

社員エンゲージメントの持続的向上

企業理念/ビジョンの浸透化

D&Iの推進とコラボレーション文化の醸成

グローバル経営を支える人財育成と制度改革

社員がいきいきと働く職場環境の実現

持続可能なサプライチェーンの構築

CSR調達の重視

安定的な原材料や部品調達システムの構築

G

コーポレート・ガバナンス

リスクマネジメント

コンプライアンス

経営意思決定の更なる透明性向上

リスク低減と機会創出双方に着目したリスクマネジメント

サステナビリティ経営に資するグローバル・コンプライアンス

 

◎E(環境)
CO2ゼロ、環境負荷ゼロ、リスクゼロの「トリプルゼロ」の取り組みをすすめ、2050年度、持続可能な循環型社会の実現を目指す。
2030年度の目標は、「CO2削減率90%」「廃棄物埋立処分率1.0%未満」「水資源排出量100%減」。
(いずれも、国内グループにおける2013年度との比較)

 

◎S(社会)
多様な人財の活躍を目指し、性別・年齢・国籍・文化等を超えて、社員一人ひとりがプロフェッショナルとして、最高のパフォーマンスでいきいきと働いている環境を創る。

 

◎G(ガバナンス)
コーポレート・ガバナンスにおいては、資本コストの評価軸を取り入れたポートフォリオ経営の強化や、サステナビリティ委員会設置によるモニタリング機能の充実と実行体制の強化を図る。

 

リスクマネジメントにおいては、グループ全社におけるリスクの特定・評価・対策実施・検証と継続的なアップデートを行うほか、社会要請・市場変化に係るリスクから発想を転じた新たな商機の発掘を目指す。

 

コンプライアンスにおいては、社会要請に合致したコンプライアンス・プログラムへの移行を図るほか(人権・労働・環境・腐敗防止などへの対応強化)、社員一人ひとりが自分ごととして取り組む自律的なコンプライアンスのグループ全社への浸透を目指す。

 

(5)DXに向けて

DX化と業務革新活動との連携によりビジネス変革(BX)を図る。
流体制御とデジタルで世界の社会インフラを支え、ゆたかな未来を創造するために、既存事業の徹底した効率化と経営リソースの可視化・流動化を図り、顧客志向の機動的な組織へと転換することを目指す。

 

<参考2:第1期中期経営計画 2024>

(1)概要

①経営基本方針
コア事業と成長分野で収益をあげられる両利きの経営を目指す。
*デジタル化・脱炭素化を背景とした成長分野・地域への積極的リソース投入
*投下資本収益性(ROIC)を重視した事業展開

 

②定量目標
財務KPIについては前述の通り、24年度目標を修正した。非財務KPIは修正していない。

 

財務KPI

2021年度

2024年度目標

連結売上高

1,357

1,700

連結営業利益

89

130

ROE

6.4%

9%以上

配当性向

36.2%

35%目途

単位:億円

 

*セグメント

 

21/12期

2024年度目標

バルブ事業

1,067

1,366

伸銅品事業

273

310

その他

16

24

連結売上高

1,357

1,700

バルブ事業

120

170

伸銅品事業

6

8

その他

-2

1

調整額

-35

-49

連結営業利益

89

130

単位:億円

 

非財務KPI

2021年度

2024年度目標

CO2削減率

-28.1%

-80%

社員エンゲージメントスコア

   

働きがい

48pt

56pt

働きやすさ

43pt

55pt

女性社員全体比率

21.7%

23%

女性管理職比率

3.4%

10%

男性育児休業取得率

29.0%

50%

※CO2削減率は2013年比、国内グループ。2020年度実績を2021年度実績(確定値)に置き換え (▲26.9% → ▲28.1%)。CO2削減率以外はキッツ単体。
※女性管理職は、部門長職に就いている社員。

 

(3)各事業の中期計画

(3)-1 バルブ事業
(3)-1-1 市場別戦略
中長期ターゲット市場を8つの市場区分に整理した。現行コア事業(建築設備、石油化学、水処理、機械装置)を基盤に成長分野・新規分野(半導体装置、半導体材料(フィルター)、機能性化学、水素/低炭素)への資源移動を進め、収益構成を変えてゆく。

 

(同社資料より)

 

①建築設備
国内の住宅着工戸数は減少傾向も、ASEAN中心に海外市場の成長は継続する。先進国では簡易施工のニーズが増加している。世界的にはデータセンター需要の急拡大が見込まれる。

 

(主要施策)
データセンター市場の需要取込みに向け、短納期ニーズへの対応:製品の在庫化を進める。
簡易施工に対応した接続方式の製品開発を進めるほか、配管工法・材質の変化と自動化・スマート化に対応した製品を開発する。

 

②石油化学
新型コロナウイルス感染症からの回復に伴い、世界の石油需要は新興国で増加する見通し。先進国ではクリーンエネルギーへシフトしつつも、石油化学需要は堅調と見ている。

 

(主要施策)
クリーンエネルギー化や環境対策などのユーザー動向に追従した製品を開発する。
日系を中心としたキーアカウントユーザーに対するサービスとMRO受注率の向上を図る。
キッツ予兆診断システムの導入率を引き上げる。
グローバル規格や顧客認証への対応を進める。

 

③水処理
世界の水インフラ需要は増加するが、価格帯と認証制度が参入障壁となっている。半導体需要の高まりにより、純水/超純水プラントへの投資は拡大すると見られる。

 

(主要施策)
純水プラントメーカーや純水装置メーカーに密着したマーケティング活動を展開する。
金属イオンの溶出厳禁対応や樹脂系製品の開発を進める。
造水装置(ピュアキレイザー、アクアレスキューなど)を中心に、水インフラ分野へのソリューションを提供する。

 

④機械装置
RoHS・REACH対応やグリーン冷媒対応など、高度化する機械装置分野の環境対応ニーズを的確に捉え、新たな顧客価値を提供する。

 

(主要施策)
機械装置営業部を新設する。
機械装置の小型軽量化と自動化に対応した製品の開発と市場への導入を図る。
RoHS・REACHなど環境規制への対応製品を拡充する。
次世代(グリーン)冷媒への切替え需要を取り込む。

 

⑤半導体装置
堅調な半導体市場拡大を背景に、半導体装置向けクリーンバルブの生産能力を拡大するとともに、研究開発体制の整備をすすめる。

 

(主要施策)
生産能力増強のため、新田SC工場に新棟を建設する。
生産面でのDX(自働化・省力化)投資を実施する。
研究開発体制を強化する。

 

⑥半導体材料(フィルター)
旺盛な半導体需要を背景に、半導体フォトレジスト用フィルター(ポリフィックス)も堅調な成長を見込む。需要拡大に対応するため、生産能力を拡大する。

 

(主要施策)
ポリフィックス等工業フィルターの生産能力を拡大する。
半導体sub‐nano対応次世代膜の開発に取り組む。
精密フィルターの他分野(レジスト用以外)への用途開発を進める。

 

⑦機能性化学
主要顧客である化学各社は高付加価値な機能性化学分野に注力している。高度化するプロセス要求に対応する製品ラインナップを拡充し、収益拡大を図る。

 

(主要施策)
ダイヤフラムバルブなど、高クリーン性・易メンテナンス性の要求に応える製品ラインナップを拡充する。
ファインケミカル専属の営業・技術横断組織を組成し、キッツSCTとのシナジーを追求する。
ファインケミカル/装置・機械メーカー等とのプロセス技術・生産技術ネットワークの構築・強化を図る。

 

⑧水素・低炭素
脱炭素社会に向け、水素エネルギー関連の市場ポテンシャルは急拡大すると予想される。社会実装が進む水素サプライチェーンへの参入を図り、事業拡大を目指す。

 

(主要施策)
パッケージユニットにより水素ステーション市場を攻略する。また、小規模な地産地消型グリーン水素エネルギーチェーン事業に参入する。
液化水素大型実証プラント(出荷・受入基地、運搬船)、水素航空機市場参入に向けた研究開発(NEDO事業)を進める。
水素発電、水素パイプライン等、新たな水素エネルギー需要を取り込む。
海外向けLNG用超低温バルブのラインナップを拡充し、販売を強化する。

 

(3)-1-2 グループ戦略
「グループシナジーの創出」「ユーザー接点の強化」「グローバルでの製品およびエリア戦略」の3つを中心に、収益拡大を図る。

 

(3)-1-3 エリアビジネス戦略
①北米市場
◎重点ターゲット市場
建築設備、石油化学、水処理、半導体装置、機能性化学、水素・低炭素

 

◎事業機会
*産油国アメリカにおける石油・石油化学・ガス市場の拡大
*環境規制強化の動き(脱炭素・鉛フリー化など)

 

◎主要施策
米国拠点をオイル&ガス向け市場戦略のコントロールタワーと位置付ける。
化学市場への参入に向け、廉価ボールバルブの開発・上市を狙う。
工業弁においては、3ピース型トラニオンボール弁やハイパフォーマンスバタフライ弁の拡販を図る。
汎用弁においては、コマーシャル弁市場の売上拡大を目指す。

 

②中国市場
◎重点ターゲット市場
建築設備、石油化学、水処理、機械装置、半導体装置、機能性化学

 

◎事業機会
*「新基建(新型インフラ)」政策を背景としたデータセンター市場等の拡大
*石油産業の政策誘導(化学シフト)に伴うエチレン等生産能力の拡大
*政策的な半導体国産化による市場の拡大

 

◎主要施策
*建築設備・石油化学・機能性化学市場
汎用弁においては、設計・生産・販売の一貫体制を積極活用:市場要求スピードへの対応力を強化する。
工業弁では、中国生産工場を活用し市場規模の大きい工業系の販売を拡大する。
自動弁では、中国生産拠点での組立検査体制を構築する。

 

*半導体装置市場
現地生産能力の増強と販売の拡大を図る。

 

③アセアン・インド市場
◎重点ターゲット市場
建築設備、石油化学、水処理、機械装置、機能性化学、水素・低炭素

 

◎事業機会
*都市インフラをはじめとした新興国中間層マーケットの成長に伴うMiddle‐Zone経済の拡大
*日系ユーザーの進出に伴うキーアカウントマーケティング機会の拡大

 

◎主要施策
*アセアン
日系ユーザーを中心としたキーアカウント網を構築する。
地域密着マーケティングによる売れ筋商品の見極めと現地一貫(開発・生産・販売)供給体制を整備する。
地域ブランドとUnimech社との協業による収益最大化を図る。
*インド
内国生産政策に対応したリージョン完結の地域戦略を確立する。

 

(3)-2 伸銅品事業
既存領域は縮小傾向にあるが、成長分野(自動車、半導体等)の開拓、サプライチェーン見直しに伴う加工品の需要取込み、製造コストダウン・リサイクル推進、DX等による業務効率化などを進め、継続的コストダウンで収益力を高める。

 

(3)-3 その他(サービス事業:ホテル紅や)
Withコロナ下での収益確保に向け、個人客及び近県商圏をターゲットに営業政策を転換する。環境変化を契機にサービス生産性の抜本的改革と定着化を図る。

 

(4)デジタル・トランスフォーメーション(DX)

 

「設計・開発」「生産・保証」「マーケティング・販売・CS」「バックオフィス」それぞれの分野においてDXを導入し、「オペレーション比率低減」と「付加価値業務へのシフト」を進める。
DXによって、EX(従業員価値)とCX(顧客価値)の向上を図る。

 

(5)財務戦略・資本政策

経営の基軸を「中長期的な投下資本収益性の向上」に置き、対外にはROE、社内ではROICを主要KPIとして目標管理を実施する。
将来の成長・ROE向上に向けた戦略投資を実行、及び必要な資金調達を実施する。
コロナ禍の有事対応のための厚い手元流動性は平時モードに戻し、連結現預金は1ケ月程度(連結月商比)に縮減する。

 

項目

目標・計画

ROE

2024年 9%以上、2030年 10%以上

ROIC

ROIC経営の導入

①収益性改善(価格戦略の実行・不採算製品見直し)

②ROIC Tree展開とPDCA管理

③CCC改善と資産圧縮

営業CF

380億円(2022-2024年累計)

投資

総投資枠370億円、戦略投資枠240億円

株主還元

配当性向 中期方針35%継続

有利子負債

社債償還100億円(2022年9月)

 

 

<参考3:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

7名、うち社外4名

監査役

5名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年3月30日)

 

基本的な考え方
コーポレート・ガバナンスを有効に機能させることは、企業の社会的責任を果たし、経営の効率性や透明性を高め、持続的な企業価値の向上に資するものであることと認識しています。
そのため、当社グループは、企業理念である「キッツ宣言」に基づき、あらゆるステークホルダーからの信頼に応え、企業の社会的使命と責任を果たすとともに、コンプライアンスを重視し、かつ経営環境の変化に迅速に対応できる適確かつ迅速なマネジメント体制及び事業執行体制を整備・運用するなど、実効性のあるコーポレート・ガバナンスを実現してまいります。
 なお、当社は「コーポレート・ガバナンス基本方針」を定めており、「コーポレートガバナンス・コード実施状況表」及びサステナビリティの取り組みの情報とともに、当社ウェブサイトに開示しています。
https://www.kitz.co.jp/sustainability/

 

https://www.kitz.co.jp/sustainability/governance/

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、東京証券取引所(以下「東証」という)が2021年6月に改訂した「コーポレートガバナンス・コード」の各原則をすべて実施しています。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4】 政策保有株式
当社は、「政策保有株式に関する方針」を定めており、安定株主の形成等を目的とした政策保有株式は原則として保有しないこととしているほか、同方針を満たさないと判断された株式銘柄については可能な限り縮減を進めることとしています。
また、毎年、期初に開催する取締役会において、同方針に基づいて、当社グループが保有する政策保有株式の個別の銘柄の保有目的、保有に伴う定量的経済合理性及び保有リスク等を精査し、その適否を検証しています。
政策保有株式に係る議決権行使については、株式発行会社の経営状況、ガバナンス体制及び中長期的な企業価値の向上につながる適切な意思決定の有無並びに当社グループの企業価値の向上につながるか否かの観点を総合的に踏まえ、議案ごとに賛否の判断を行っています。
株式の政策保有に関する方針につきましては、当社ウェブサイトに開示している「コーポレート・ガバナンス基本方針」及び「政策保有株式に関する方針」を、特定投資株式の銘柄ごとの株式数につきましては有価証券報告書をそれぞれご参照ください。

 

【補充原則2-4-1】 中核人材の多様性確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針・実施状況
[1]中核人財の登用等における多様性確保についての考え方
当社は、経営上の重要な戦略の一つとして、2015年度より、ダイバーシティを推進しています。社員を会社の財産(人財)ととらえ、多様な属性
(年齢、性別、国籍、職種、役職、働き方など)や価値観を持つ社員の「個」を尊重し、互いに認め合い、それぞれの力を発揮できる環境を整えることが会社の使命であると考えています。
また、当社は、従来から性別や国籍に関係なく、能力や実績を重視する人物本位の人財登用を実施しています。持続的な成長と企業価値の向上を実現させるためには、多様な視点や価値観を尊重することが重要であると考え、経験・技能・キャリアが異なる人財の積極的な採用を行うとともに、これらの人財が活躍できる職場環境を整備しています。

 

[2]女性の管理職への登用
当社は、女性活躍を進めることを経営課題の一つと位置づけ、ダイバーシティを進めるため、採用における女性社員比率の向上や女性が働きやすい環境づくりのほか、女性のキャリア形成の支援、女性が働ける職域を拡大するための試みなどの施策を実施することにより、女性社員のさらなる成長に向けた様々な取り組みを進めてまいりました。今後も、ますます女性社員がいきいきと活躍できる会社となるための取り組みを進める方針です。なお、当社における現在の女性社員比率は21.7%ですが、これを2024年度までに23%、2030年度までに25%に引き上げる目標としています。
また、女性管理職(部門長職)の登用について、現在は女性管理職比率が3.4%であり、管理職をはじめとする意思決定を行う地位への登用において男女差があります。当社はこれを課題として認識しており、今後、女性社員の採用をさらに進めるとともに、女性社員育成教育の充実を進めることにより、次期管理職候補の源泉ともなる女性リーダー職(準管理職クラス)の層を厚くする取り組みを行うほか、女性中途採用者の管理職登用の施策を着実に実施することなどにより、女性管理職比率を2024年度までに10%、2027年度までに16%、2030年度までに20%まで段階的に引き上げる計画です。

 

[3]外国人の管理職への登用
当社グループは、様々なお客様の異なるニーズを適確に把握し、質の高い商品・サービスをスピーディーに提供するため、日本を含め、世界18ヵ国の地域に製造・販売拠点を展開しています。また、日本以外の拠点に勤務する外国人社員は当社グループ全体の54.5%を占めています。
しかし、当社においては、2015年度から中途入社及び新卒の外国人社員採用に注力していますが、過去5年間の外国人社員採用の平均採用数は3.8人で、外国人社員の全体比率は2021年度末において2%の水準です。このような状況から、外国人の管理職登用の目標設定を行うまでには至っておらず、当社はこれを課題として認識しています。今後、さらに多くの外国人社員の採用を進める過程で、外国人社員の管理職登用について検討することとしています。
また、当社は、2030年度に向けて、さらなる事業のグローバル化の加速を重視し、世界中に広がるオペレーションの現地化の推進と全体最適の視点で事業の効率化を進める方針です。そのため、「キッツグローバルHRポリシー」に基づき、国籍や人種、性別などにかかわらず、各地域の特性を良く理解した優れた人財を地域ごとに登用するとともに、国や地域の枠を越えた人財交流を積極的に図り、グローバルに最適な人財活用の実現を目指してまいります。

 

[4]中途採用者の管理職への登用
中途採用者の管理職への登用については、すでに45%の水準にあります。そのため、現状比率が維持できるよう取り組みを行います。

 

【補充原則3-1-3】 サステナビリティの取組み(人的資本投資・知的財産投資・気候変動リスク)
TCFD等の枠組みに基づく情報開示の質と量の充実
[1]サステナビリティ推進に関する取り組み
当社は、社会の持続的な発展と当社グループの中長期的な成長の両立を実現するためには、サステナビリティ経営が重要であり、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関わる課題への対応が新たな企業価値創出の契機になると考えています。当社は、サステナビリティ経営の推進にあたり、
「サステナビリティ基本方針」及び「サステナビリティスローガン」を定め、これらに基づき、サステナビリティ重点テーマを設定しています。
なお、サステナビリティの推進体制は、経営企画本部に「サステナビリティ推進室」を設置するとともに、経営企画本部長を委員長とし、当社の執行役員及び国内グループ会社の社長を常任委員とする「全社サステナビリティ推進委員会」を設置しています。
「全社サステナビリティ推進委員会」は、当社グループにおけるサステナビリティ経営の重点課題及びそれぞれの課題に係るKPI(重要業績評価指標)を共有し、これをグループ各社のKPIの策定及び計画修正に反映することにより、グループ一体でサステナビリティ経営を強力に進めることを目的としています。

 

[2]人的資本・知的財産への投資等
当社は、2022年2月に公表した「キッツグループ長期経営ビジョン」及び「中期経営計画」において、長期経営ビジョン実現のための成長へのステップとして、成長性、収益性、資本効率性及び配当性向の定量目標並びに人的資本及び開発(知的財産投資を含む)に係る投資など、経営資源の配分及び事業ポートフォリオに関する戦略について盛り込んでいます。

 

[3]気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響
当社は、2021年に、後記の「2030年までのCO2等の温室効果ガス排出削減の中期環境目標」を設定しました。当該中期環境目標の実現を加速させるとともに、気候変動が事業活動に与える財務上の影響について情報開示を段階的に進化させていくため、2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。
これにより、今後、データに基づいた分析を段階的に進め、気候変動に関するリスクと機会の把握を行うとともに、TCFD に沿った情報開示の質と量の充実を進める方針です。
なお、気候変動への対応についての情報を当社ウェブサイトにおいて開示しております。
  https://www.kitz.co.jp/environment/env_warming.htm

 

1.ガバナンス
当社は、「グループ環境経営」の考え方に基づき、2021年に「環境長期ビジョン」を策定しました。中期経営計画、環境長期ビジョン及び環境目標の主要項目に対する進捗と実績については、執行役員で構成する経営会議において確認し、その方向性、課題及び特に重要な施策についての意思決定を行っています。また、特に重要な事項については取締役会に諮り、審議・決定しています。

 

2.戦略
当社は、将来の環境変化(シナリオ)を用いて気候変動に関するリスクと機会の検討を進め、戦略のレジリエンスの検証を行うことが重要であると認識しています。
現時点においては、長期経営ビジョンに基づく環境長期ビジョンを踏まえ、気候変動リスクが経営戦略、事業及び財務に与える影響・インパクトについて、2021年度は社内ワーキンググループにおいて、気候変動に関する当社の重要事業のリスクと機会の定性分析を行い、その分析結果を踏まえ、経営会議において評価しました。
今後、当社は、気候変動に関するリスクを評価・管理する仕組みを構築し、データ分析に基づく将来の環境変化シナリオを用いて、気候変動に関するリスクと機会の検討及び当社戦略のレジリエンスの検証を行うとともに、TCFD提言に沿った情報開示の質と量の充実を進める方針です。

 

3.リスクと管理
社内ワーキンググループにより気候変動に関する重要事業のリスクと機会の分析を行い、経営会議においてその分析結果について評価し、施策の策定・実施及びその結果の把握を行うプロセスとしています。今後、気候変動に関するリスクを評価・管理する仕組みを再構築し、将来の環境変化(シナリオ)を用いて対応策と財務への影響について開示を進めてまいります。

 

4.指標と目標
当社グループは、設定した 2030年までの CO2 等の温室効果ガス排出削減の中期環境目標において、国内グループ会社については2013 年を基準年として2030 年までに90%削減を、また、海外製造拠点を含む当社グループでは50%削減をそれぞれ目標にしており、効率的かつ環境に配慮したモノづくりの体制を目指しています。

 

【原則5-1】 株主との建設的な対話
当社は、株主との対話を促進するため、次の取り組みを行っています。
1.株主との対話を促進するため、IR部門を設置し、IR担当執行役員を選任する。
2.すべての株主及び投資家に対し、適時・正確かつ公正に情報を提供するため、「ディスクロージャー・ポリシー」を策定し、当社ウェブサイトにおいて開示する。

IR情報


3.原則として、機関投資家及びアナリストを対象とする決算説明会を四半期ごとに、個人投資家を対象とする会社説明会を毎年開催し、社長またはIR担当執行役員が説明を行う。また、必要に応じて社外取締役を含む取締役及び監査役が出席し、株主との対話を促進する。
4.株主から面談の申し入れがある場合は、原則としてIR担当部門長が対応することとし、面談の趣旨及び所有株式数などに応じて、社長またはIR担当執行役員が対応する。
5.株主との対話を行う場合は、インサイダー取引防止のため、情報の適切な管理を行う。
6.長期経営ビジョン及び中期経営計画等について、分かり易い方法で説明する。
7.株主との対話を補助するため、必要に応じて、広報・IR室、経営企画部、経理財務センター、サステナビリティ推進室、総務部及び法務部等の有機的な連携を図る。
8.機関投資家及びアナリストとの対話において把握した意見・要望等を社長及びIR担当執行役員に定期的に報告し、必要に応じて、社長がその内容を取締役会及び経営会議に報告するとともに、経営改善に活用する。
9.決算短信及び有価証券報告書等の決算情報のほか、経営情報、株式・株主総会の情報等のIR情報を当社ウェブサイトにおいて開示する。
10.毎年6月末及び12月末時点における株主構造の把握を行う。

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