サイバーセキュリティクラウド(4493) 2025年に向けた成長戦略に沿った成長を実現
小池 敏弘 社長 兼 CEO |
株式会社サイバーセキュリティクラウド(4493) |
企業情報
市場 |
東証グロース市場 |
業種 |
情報・通信 |
代表者 |
小池 敏弘 |
所在地 |
東京都品川区上大崎3-1-1 JR東急目黒ビル13階 |
決算月 |
12月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数 |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,764円 |
9,416,244株 |
16,610百万円 |
27.5% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
0.00 |
– |
36.84円 |
47.9倍 |
137.62円 |
12.8倍 |
*株価は2/21終値。各数値は2022年12月期決算短信および同社リリースより。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2018年12月 |
488 |
-29 |
-27 |
-27 |
– |
0.00 |
2019年12月 |
816 |
143 |
141 |
153 |
17.20 |
0.00 |
2020年12月 |
1,194 |
188 |
172 |
134 |
14.60 |
0.00 |
2021年12月 |
1,817 |
297 |
297 |
169 |
18.17 |
0.00 |
2022年12月 |
2,275 |
385 |
395 |
306 |
32.61 |
0.00 |
2023年12月(予) |
3,000 |
500 |
500 |
346 |
36.84 |
0.00 |
*予想は会社予想。単位:百万円、円。2020年12月期〜2021年12月期は連結決算、2022年12月期は非連結決算。2023年12月期から連結決算。
*株式分割 2018年3月 1:10、2019年9月 1:100、2020年7月 1:4(EPSは遡及修正後)。
(株)サイバーセキュリティクラウドの2022年12月期決算概要などをご報告します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年12月期決算概要
3.2023年12月期業績予想
4.2025年に向けた成長戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 22年12月期の売上高は22億75百万円、営業利益は3億85百万円(ともに非連結)となり、会社計画(売上高22億33百万円、営業利益3億62百万円)に対し過達。実質成長率は、売上高が前期比28.9%増、営業利益が同39.2%増となった。クラウド型WAFである攻撃遮断くんのサーバセキュリティタイプをリニューアルしたほか、AWS MarketplaceでパブリッククラウドのWAF自動運用サービスであるWafCharmの販売を新たに開始したことが奏功し、各プロダクトのユーザー数、ARPU(ユーザー当たり平均利用額)ともに伸長した。収益面では、2025年に向けた成長戦略実現に向け、営業人員のスキル増強や積極的な広告宣伝等の投資を行ったものの、増収効果により、営業利益率を実質前期比1.3ポイント上昇させることができた。
- 23年12月期の売上高は前期比28.1%増の30億円、営業利益は同20.9%増の5億円を予想。今期より米国子会社が新規連結化される予定。成長戦略の達成に向けた重点施策を引き続き着実に実行していくことになろう。開発リソースの増強やグローバル展開に伴う先行投資が一定収益を圧迫することになるが、2025年の成長戦略に掲げた財務目標(売上高50億円、営業利益10億円)達成に向けた着実な成長を見込んでいる。決算説明会の席上、小池社長から「2022年にグローバルへの足掛かりを作ったことで視界はかなり良好になっており、すべきことがしっかりと見えている状態である」との見解が示された。
- 新型コロナウイルス発生に端を発したオンライン化・DXの流れは、勢いこそ落ち着きを見せているものの、今後も高水準の成長が見込まれている。この流れに連動する形でサイバー攻撃件数は増加の一途を辿っている。加えて、攻撃方法も日々巧妙化しており、サイバーセキュリティ対策は急務となっている。実際、警察庁の調べによると、1日1IPアドレスあたりの攻撃検知件数は直近3年間で2.7倍になり、2021年は7,334.9件となっている。しかし、国内のWAF(Web Application Firewall)導入率は、その認知率の低さから依然として15.7%(総務省「令和3年通信利用動向調査」)に留まっており、今後も更なる成長が期待される。加えて、日本市場の40倍以上の規模を有する海外市場への足掛かりもしっかりと確立しつつあるため、今後非連続での成長の実現可能性に着目していきたい。
- 同社は2022年より2025年の成長戦略に掲げた財務目標(売上高50億円、営業利益10億円)に向けた取り組みに注力している。23/12期会社計画もその戦略に紐づいた数値目標になっているが、既存プロダクトのオーガニックグロースをベースに、同社の持つ事業開発力を活かしたSIDfmの提供価値最大化、グローバル対応も含めた新サービスの継続的な投入が具現化すれば、更なる成長も可能になってくるだろう。主要プロダクトのKPI推移だけでなく、事業展開の道標にも注目していきたい。
1.会社概要
「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念を掲げ、Webサイトへのサイバー攻撃の可視化・遮断ツール「攻撃遮断くん」(クラウド型WAF)、AWS WAFなどプラットフォームのルール(シグネチャ)自動運用サービス「WafCharm」、及びAWS WAFのルールセット「AWS WAF Managed Rules」を中心としたセキュリティサービスを、世界有数のサイバー脅威インテリジェンスとAI技術を活用しながらサブスクリプションで提供している。
2018年9月に「AWS WAF」のルールセットであるManaged Rulesの販売及び海外展開を目的として設立したCyber Security Cloud Inc.(ワシントン州シアトル)と共にグループを形成。グローバル展開の本格化に伴い、今後重要性が高まるとの判断から、23年12期より連結対象となる予定。
1-1 同社を取り巻く環境
◎増加し続けるサイバー攻撃
インターネットの利用増加とともに、サイバー攻撃数は増加傾向にある。同社資料によれば、2020年のサイバー攻撃関連通信は5,001億パケットで、前年比64.4%増加。DXの加速に伴い、サイバー攻撃はさらに拡大すると予測される。
◎中小・準大手企業の低いWAF導入率
PCをウイルス感染から守るウイルス対策ソフトの導入率は過去10年間80%台で推移し、飽和状態であるのに対して、ハッカーによる攻撃からWebサイトを守るWAF(Web Application Firewall、詳細は後述)は、2012年8.8%から2022年15.7%と約2倍に成長。WAF導入率は着実に成長しており、さらなる市場成長に期待できる。
◎DXと同時に求められるサイバーセキュリティ対策
2021年9月に閣議決定した「次期サイバーセキュリティ戦略」において、DXとサイバーセキュリティ確保に向けた取り組みを同時に推進することが掲げられた。
同戦略では「経営層の意識改革」「地域・中小企業におけるDX with Cybersecurityの推進」「サプライチェーン等の信頼性確保に向けた基盤づくり」「誰も取り残さないデジタル/セキュリティ・リテラシーの向上と定着」が、主な具体的施策として取り上げられている。
◎日本政府の動向
2021年9月のデジタル庁発足、2022年4月の改正個人情報保護法の全面施行など、政府のサイバーセキュリティに関する取り組みは積極的である。
直近では、防衛産業へのセキュリティ基準の強化やクレジットカードのセキュリティ強化が大きな動きである。
全ての日本企業は、より強固なセキュリティ対策を求められることになる。
ポイント |
|
防衛産業へのセキュリティ基準整備 | ・政府は、攻撃被害を受けた後の対策まで要求 |
改正個人情報保護法の全面施行 | ・個人情報保護委員会への報告義務、個人への通知義務が発生
・法人に対する罰金刑が強化(最大1億円、2020年12月に施行) |
1-2 セキュリティ対策と同社の事業領域
あらゆるサービスがインターネットを通じて普及し、日常生活やビジネス面での利便性が格段に向上する中、サイバー攻撃が増加の一途をたどっている。
サイバー攻撃に対する企業のセキュリティ対策は大きく2つに分けることができ、一つはWebサイトへの不正アクセスによる個人情報の搾取から守るWebセキュリティ、もう一つは社内で使用される端末(PC、スマートフォン、タブレットなど)がウイルスに感染することを防ぐ社内セキュリティである。
例えば、AmazonのようなECサイトであれば、多くの人がクレジットカード情報をAmazonに登録しているが、こうした情報をサイバー攻撃から守ることがWebセキュリティである。
また、WAFの提供形態は主にアプライアンス型WAF、ソフトウエア型WAF、クラウド型WAFがあり、同社はWebサービスを提供している法人等に対して、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」を提供している。
ハッカーからの攻撃を防ぐWebセキュリティ事業を展開
(同社資料より)
WAFは「SQLインジェクション」や「クロスサイトスクリプティング」をはじめとした不正侵入による情報漏えいやWebサイト改ざん等を防ぐファイアウォール。従来のファイアウォールやIDS/IPSでは防ぐことができない攻撃にも対応可能である。
クラウド型WAF「攻撃遮断くん」は、2013年に販売を開始し、導入の手軽さ、同社自身の開発・運用という安心感、更には豊富な大企業へのサービス提供実績等もあり、日本国内のクラウド型WAF市場における累計導入社数・導入サイト数でNo.1を誇る。
ただ、近年の情報漏洩事故の多くが、Webサイトに対する不正アクセスが原因とされる中で、Webサイトへのセキュリティ対策は未だ十分に行われておらず、また対策済みであると誤認している経営者が多い(株式会社マーケティングアンドアソシェイツ「セキュリティソフト浸透度調査」)。
1-3 サービス内容
同社はWebセキュリティ事業の単一セグメントにおいて、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」、「攻撃遮断くん」で培った技術を基に、AWS(Amazon Web Services)が提供する「AWS WAF」のルール(エンジン)の自動運用を行うサービス「WafCharm」、「AWS WAF」のルールセットであるManaged Rules、更には脆弱性情報の収集・管理を行う「SIDfm」を提供している。
◎クラウド型WAF「攻撃遮断くん」
「攻撃遮断くん」は、Webアプリケーションに対するサイバー攻撃を検知・遮断・可視化する、クラウド型のセキュリティサービス。製品の開発から、運用・販売・サポートまで、同社が一貫して手掛けることで、Webサイトへの多種・大量のサイバー攻撃のデータと運用ノウハウを蓄積できていることが強み(2万サイト以上から得た2.3兆件以上のデータ)。
それらを「攻撃遮断くん」の開発・カスタマイズやシグネチャ(攻撃の特徴的なパターン)の更新に反映させることでWebサイトをセキュアな環境に保つことを実現している。
また「攻撃遮断くん」は、リアルタイムでサイバー攻撃を可視化し、攻撃元IPや攻撃種別(どこの国から、どのような攻撃がなされているか)等を管理画面で把握することができる。目には見えないサイバー攻撃を可視化することで、より適切な状況把握と情報共有が可能になる。
AIの活用
「攻撃遮断くん」はAIの活用が進んでいることも特徴。具体的には、AIを活用することで従来のシグネチャでは発見することができなかった攻撃や、顧客のサービスに影響がある誤検知を発見できる。同社は一般的な攻撃情報だけでなく、ユーザーの正規のアクセスや攻撃として誤検知されたアクセスをニューラルネットワーク(AIの機械学習のための技術・ネットワーク)に学習させ、日々のアクセスデータや検知データをAIで評価することでシグネチャ精度を日々向上させている。
◎AWS WAFなどプラットフォームのルール自動運用サービス「WafCharm」
2017年12月に提供を開始した「WafCharm」は「攻撃遮断くん」で蓄積したWebアプリケーションに対する攻撃パターンをAIに学習させることで、世界のクラウド市場で最大のシェアを持つAWS(Amazon Web Services)に搭載されたAWS WAFの自動運用を可能にした。導入と運用の手軽さだけでなく、AWSとの連携によるAWS WAFの新機能リリースに対応した迅速な新機能の開発も評価されている。
AWS WAFを導入することでWebアプリケーションのセキュリティを高めることができるが、サイト運営者が自らルールを設定して運用する必要があり、使いこなすためには多くの知識と時間が必要となる。しかし「WafCharm」を利用することで、AWS WAFの持つ複数のルールから、AIがWebサイトに最適なルールを設定し、運用してくれる。加えて、新たな脆弱性への対応も自動でアップデートされるため、常にセキュアな状態でWebサイトの運用が可能。また、ルール毎の検知数・攻撃種別・攻撃元国・攻撃元IPアドレスをまとめたレポート機能や、検知した内容をリアルタイムでメール通知するメール通知機能も用意されている。
2020年11月からはMicrosoftのプラットフォーム「Azure」への適用も開始。また、2021年11月よりGoogleのプラットフォーム「Google Cloud」への適用を開始し、世界3大プラットフォームに対応している。更に、2022年11月より「WafCharm for AWS Marketplace」をリリースし、世界200ヵ国以上での販売を開始した。
◎AWS WAFのManaged Rules
AWS WAFでは、Managed Rulesというセキュリティ専門のベンダーが独自に作成する厳選されたセキュリティルールが用意されており、特定の脅威を軽減させるために必要なセキュリティルールがパッケージになっている。セキュリティの対象が特定の脅威に限定されるが導入・運用が容易。「WafCharm」で培ったAWS WAFにおけるルール設定ノウハウをもとにパッケージ化したサービスであり、AWS WAFのユーザーは、AWS Marketplaceから簡単にManaged Rulesを利用することができる。
世界で7社目となるAWS WAFマネージドルールセラーに認定された同社の米国子会社が2019年2月末にAWS MarketplaceでManaged Rulesの提供を開始した。
◎脆弱性情報提供サービス「SIDfm」事業と、Webセキュリティ診断
2020年12月に完全子会社化した株式会社ソフテック(2022年4月に吸収合併)が開発したサービス。「SIDfm」はサービスを開始して以来、20年以上に亘り数多くの顧客の脆弱性管理基盤の情報ベースとして活用されており、ソフテックの脆弱性専門アナリストが、日々現れる脆弱性の内容を調査してコンテンツを作成し、様々な手段を用いて顧客に情報を送り届けている。
また、顧客が判断に悩む脆弱性の影響調査においても「SIDfm」コンテンツを見ることにより的確な判断を行うことができるだけでなく、脆弱性情報は個々のIT資産の脆弱性の状態を管理するためのマッチングにも利用されている。ソフテックでは脆弱性に係るコンテンツの作成から脆弱性の管理ツールの提供までの包括的なソリューションを提供している。
サイバーセキュリティクラウドがこれまで展開してきたWebセキュリティ事業では、脆弱性情報を活用しながらWebサイト・Webサーバへのサイバー攻撃を可視化、遮断している。そこに「SIDfm」による脆弱性管理に強みを持つソフテックが加わることにより、それぞれのノウハウ共有による両社の技術力強化に加え、サイバーセキュリティクラウドのビッグデータ活用や販売チャネルの拡大も可能となる。
1-4 ビジネスモデル
主要サービス「攻撃遮断くん」は、顧客に対し提供するサービスの対価を、使用した期間に応じて受領するサブスクリプション(月額課金)型モデルとなっており、継続したサービス提供を前提としている。
収益構造は、ストック収益である月額課金額(MRR:Monthly Recurring Revenue)と、初期導入費用などのスポット費用で構成され「攻撃遮断くん」にかかる収益の90%以上がストック収益になっている。また、Webアプリケーションの脆弱性の情報収集と脆弱性への迅速な対応、シグネチャの設定、カスタマイズ等による顧客価値向上を実現することで高い継続率を実現しており、解約率は約1%と低位にとどまる。
開発から、運用、サポートまで自社で一気通貫する強みを活かし、顧客満足度を高めながらサービスを提供している。
(同社資料より)
1-5 導入企業と販売ルート
各業種で、日本を代表する有名企業が同社製品を導入している。セキュリティ要件が厳しい金融/官公庁への導入が進み、高い信頼を獲得している。
(同社資料より)
また、強固な顧客基盤を持つ大手販売パートナー数も順調に拡大しており、導入企業数の増大に繋がっている。WafCharm拡販のため、多くのAWSユーザーを抱えるパートナーとの連携も強化している。
(同社資料より)
2.2022年12月期決算概要
2-1 連結業績概要
21/12期 |
構成比 |
22/12期 非連結 |
構成比 |
会社計画比 |
22/12期 連結 |
前期比 |
|
売上高 |
1,817 |
100.0% |
2,275 |
100.0% |
+1.9% |
2,342 |
+28.9% |
売上総利益 |
1,281 |
70.5% |
1,611 |
70.8% |
– |
1,654 |
+29.1% |
販管費 |
984 |
54.2% |
1,225 |
53.9% |
– |
1,240 |
+26.0% |
営業利益 |
297 |
16.4% |
385 |
17.0% |
+6.6% |
413 |
+39.2% |
経常利益 |
297 |
16.4% |
395 |
17.4% |
+9.3% |
420 |
+41.1% |
当期純利益 |
169 |
9.3% |
306 |
13.5% |
+13.1% |
304 |
+79.5% |
*単位:百万円
*22/12期は非連結決算へ移行したため、連結決算を継続していたと仮定した場合の数値を22/12期連結として表示。
2025年に向けた成長戦略に沿った成長を実現
同社は、2022年4月1日付で、完全子会社である(株)ソフテックを吸収合併(簡易合併・略式合併)したことに伴い、第2四半期以降非連結決算へ移行している(ソフテックの第1四半期業績が含まれない)。そのため、21年12月期との比較分析はできない。ただし、同社は比較分析を可能とするために22年12月期も連結決算を継続した場合の数値を開示している。同レポートではその数値を用いて比較分析を行う。
売上高は22億75百万円、営業利益は3億85百万円(ともに非連結)となり、会社計画(売上高22億33百万円、営業利益3億62百万円)を過達しての着地となった。連結決算を継続した場合の数値を用いた前期比較は、売上高が28.9%増、営業利益が39.2%増ということになった。
22年12月期においては、クラウド型WAFである攻撃遮断くんのサーバセキュリティタイプをリニューアルしたほか、AWS MarketplaceでパブリッククラウドのWAF自動運用サービスであるWafCharmの販売を新たに開始した。その結果、各プロダクトのユーザー数、ARPU(ユーザー当たり平均利用額)ともに伸長した。
収益面では、2025年に向けた成長戦略実現に向け、営業人員のスキル増強や積極的な広告宣伝等の投資を行ったものの、
増収効果により、営業利益率を実質前期比1.3ポイント上昇させることができた。
2-2 主要指標の動向
(1)ARR
第4四半期(10-12月)の全社合計ARRは前年同期比33.2%増、前四半期比6.0%増の25億9百万円と、引き続き堅調に推移した。
(2)ユーザー数
ユーザー数は全プロダクトベースで前年同期末比31.4%増の5,556ユーザーとなった。各プロダクトで順調に増加したが、特にManaged Rulesの伸長が目立った。
(3)ARPU
Managed Rulesはユーザー数の伸びだけでなく、ARPUもしっかりと上昇している。22/12期第1四半期をピークに下落基調にあったSIDfmは第3四半期をボトムに第4四半期は前四半期比0.5%増に転じた。
(4)解約率
攻撃遮断くんの解約率は0.97%となり、上場来では初めて1%水準を下回った。WafCharmについても引き続き定位安定を継続している。
(5)ストック収益
4プロダクト(攻撃遮断くん、WafCharm、Managed Rules、SIDfm)のMRR合計から算出されるストック収益は、全体売上の95.5%を占めている(22年12月期第4四半期)。22年12月期第4四半期の新規受注額は過去最高を更新していることから、23年12月期第1四半期以降も高成長の持続が見込まれる。
(6)営業費用・従業員数
第4四半期(10〜12月)の営業費用合計は前年同期比7.4%増の5億22百万円。積極的な人材投資により人件費は恒常的に増加しているが、その他のコストについては効率化が進んでいる。
22年12月末の従業員数は前年末比10名増の93名。同社は2023年も採用活動を一段と積極化する考えである。
2-3 トピックス
(1)AWS 「Marketplace Partner of the year – APJ」を受賞
2022年11月、過去1年間の「AWS Marketplace」上での実績を評価され、AWS社から「2022年リージョナル・グローバルAWSパートナーアワード」の「Marketplace Partner of the year – APJ」を受賞した。このカテゴリーにおいては日本で唯一の受賞であり「AWS Marketplace」のコミュニティ内でしっかりと認知度が拡大していることを評価されたと言える。2023年以降のグローバル展開加速に向けた足掛かりになることが期待される。
(2)「WafCharm for AWS Marketplace」を世界に向けてリリース
WafCharm をグローバル版にリニューアルし、アップデートしたうえで、本格的にグローバルでの展開を開始した。同プロダクトは既に日本国内においては圧倒的なシェアと満足度を有しており、グローバルにおいても大きなポテンシャルを秘めていると同社は考えている。加えて、同社は3年以上前から「AWS Marketplace」にて「AWS WAF Managed Rules」を販売しており、これまでに世界90カ国以上、3,200以上のユーザーへの販売実績を有することも販売に向けた追い風になるだろう。
(3)営業力強化により、1人あたり新規受注金額が前期比1.5倍に
2022年は「将来の成長を支えるコア人材の育成」に注力した1年であった。特に営業力の強化に努めた結果、1人あたり新規受注額が前期比1.5倍となった。これまでの取り組みにより、営業のコア人材はしっかりと育ってきていることから、同社は今後ノウハウの仕組み化などを通じた組織構築に取り組んでいくことになるだろう。
(4)グループ入り後に成長を続けるSIDfm
2020年12月に買収したソフテックが提供している「SIDfm」のARRは2020年12月1億44百万円から2022年12月1億89百万円に伸長した。攻撃遮断くんとの共同セミナーを開催するなどグループシナジーが発揮されたことが背景にある。2022年4月に吸収合併し、同社のプロダクトとして営業するようになったことで、引き合い件数は一段と増えているようである。市場自体も黎明期から浸透期に入ってきたことから、2023年以降も高い成長が見込まれよう。
3.2023年12月期業績予想
3-1 連結業績
22/12期 |
構成比 |
23/12期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
2,342 |
100.0% |
3,000 |
100.0% |
+28.1% |
営業利益 |
413 |
17.7% |
500 |
16.7% |
+20.9% |
経常利益 |
420 |
17.9% |
500 |
16.7% |
+19.0% |
当期純利益 |
304 |
13.0% |
346 |
11.5% |
+13.9% |
*単位:百万円。
*22/12期は非連結決算へ移行したため、連結決算を継続していたと仮定した場合の数値を22/12期として表示。
会社計画は成長戦略に向けたオーガニック成長が前提
23年12月期の売上高は前期比28.1%増の30億円、営業利益は同20.9%増の5億円の予想。今期より米国子会社が新規連結化される予定。
成長戦略の達成に向けた重点施策を引き続き着実に実行していくことになろう。開発リソースの増強やグローバル展開に伴う先行投資が一定収益を圧迫することになるが、2025年の成長戦略に掲げた財務目標(売上高50億円、営業利益10億円)達成に向けた着実な成長を見込んでいる。決算説明会の席上、小池社長からは「2022年にグローバルへの足掛かりを作ったことで視界はかなり良好になっており、すべきことがしっかりと見えている状態である」との見解が示された。
4.2025年に向けた成長戦略
クラウド化、DX、5G、IoTの普及、浸透が加速するのに伴い、サイバーセキュリティ領域も急拡大することが見込まれ、同社にとっては極めて有利な事業環境が予想される。そうした追い風の下、同社は日本発のグローバルセキュリティメーカーとして世界中で信頼されるサービスを提供することを目指している。具体的には、2025年までに以下3点の実現を目標としている。
*導入社数10,000社を実現し「Webセキュリティ」分野における国内トップセキュリティ企業へ
*財務目標として、売上高50億円、営業利益10億円を目指す
*グローバル展開を加速させ、海外売上比率を10%に引き上げる
4-1 財務目標
(1)売上高50億円の達成
攻撃遮断くんとWafCharmの合計導入社数10,000社を実現し、「Webセキュリティ」分野における国内トップセキュリティ企業に向けて、2025年売上高50億円を目指す。
グローバル売上を全体の10%まで引き上げ、その後の事業拡大に向けた足がかりを作る。
*売上高の推移
2021年 |
2022年 |
2025年目標 |
CAGR (21-25) |
|
攻撃遮断くん |
10.8 |
12.5 |
20 |
+16.1% |
WafCharm |
3.9 |
6.1 |
20 |
+49.5% |
国内 |
3.9 |
6.1 |
15 |
+39.2% |
海外 |
– |
– |
5 |
– |
その他 |
3.3 |
4.6 |
10 |
+35.1% |
全社 |
18.1 |
23.4 |
50 |
+29.1% |
*CAGRは同社資料を基にインベストメントブリッジが計算
そのための重点施策が以下の3つである(詳細は後述)。
*攻撃遮断くんのパートナー支援強化
*WafCharmのグローバル展開
*新ソリューションにおけるサービスラインアップの増強
(2)2025年の営業利益を3倍超の10億円へ
各重点施策実行のために、開発及び営業人員を中心に採用を強化する。2022年~2024年は黒字を前提としつつも、積極的なマーケティング活動等の先行投資によって認知を拡大させ、2025年の営業利益10億円達成を目指す。国内セキュリティ市場の変化やグローバル市場の投資機会などに応じ、機動的に投資判断を行う。
4-2重点施策
(1)パートナー支援強化
ユーザー数を加速度的に拡大させるため、直販組織に蓄積されたノウハウを活用し、パートナーサクセス(※)に注力するなど、パートナーによる販売網の強化に取り組んでいる。新規パートナー獲得に向けては、全国主要都市に対象を拡大し、クラウドベンダーやSIerなど幅広いパートナーの確保に動いている。22年3月には、国内最大級の企業情報データベースベンダーと連携するWebマーケティング企業の株式会社コウズ(大阪府大阪市)と「攻撃遮断くん」の取次店、及び「WafCharm」の販売代理店契約を締結している。既存パートナーに対しては、パートナーの自社サービスとのセット販売を支援し、CSC製品の取り扱い数拡大を図っている。その結果、2022年12月期のパートナー企業経由の販売金額は前年度比36.2%増となった。国内パートナーへの支援強化に加え、2023年からは海外でもパートナープログラムを展開していく計画。
※パートナーサクセス
パートナーへの情報提供や販売活動支援を通じて、同社製品への理解を促進させ、パートナーを介してエンドユーザーへ届ける価値を最大化するための支援活動の総称
(2)WafCharmのグローバル展開
AWSとの関係強化を第一に動いている。2023年も更にAWSと協力しながら、AWS Marketplaceを通じたグローバルでの販売に注力していく。
(3)サービスラインアップの増強
できるだけ毎年新しい機能、新しいプロダクトを出していくことを掲げている。2022年にはWafCharm for AWS MarketplaceにWeb改ざん検知機能を搭載しリリースした。2023年以降も引き続き新サービスの開発、サービスラインナップの増強に取り組んでいく見込みである。
5.今後の注目点
新型コロナウイルス発生に端を発したオンライン化・DXの流れは、勢いこそ落ち着きを見せてはいるものの、今後も高水準の成長が見込まれている。この流れに連動する形でサイバー攻撃件数は増加の一途を辿っている。加えて、攻撃方法も日々巧妙化しており、サイバーセキュリティ対策は急務となっている。実際、警察庁の調べによると、1日1IPアドレスあたりの攻撃検知件数は直近3年間で2.7倍になり、2021年は7,334.9件となっている。しかし、WAF(Web Application Firewall)導入率は、その認知率の低さから依然として15.7%(総務省「令和3年通信利用動向調査」)に留まっており、今後も更なる成長が期待される。加えて、日本市場の40倍以上の規模を有する海外市場への足掛かりもしっかりと築き上げているため、今後非連続での成長の実現に着目していきたい。
同社は2022年より2025年の成長戦略に掲げた財務目標(売上高50億円、営業利益10億円)に向けた取り組みに注力している。23年12月期会社計画もその戦略に紐づいた数値目標になっているが、既存プロダクトのオーガニックグロースをベースに、同社の持つ事業開発力を活かしたSIDfmの提供価値最大化、グローバル対応も含めた新サービスの継続的な投入が具現化すれば、更なる成長も可能になってくるだろう。主要プロダクトのKPI推移だけでなく、事業展開の道標にも注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 5名、うち社外2名 |
監査役 | 3名、うち社外3名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年3月31日)
基本的な考え方
当企業グループは、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念のもと、グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、その実現を効果的、効率的に図ることができるガバナンス体制を構築します。また、コンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主の権利を重視し、また、社会的信頼に応え、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識に立ち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。