(1909)日本ドライケミカル株式会社 防災設備事業の高成長性に期待大

2022/07/21

 

 

 

 

遠山 榮一社長

日本ドライケミカル株式会社(1909)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

機械(製造業)

代表取締役社長

遠山 榮一

所在地

東京都北区田端6-1-1 田端ASUKAタワー 18階

決算月

3月末日

HP

https://www.ndc-group.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,506円

7,001,165株

10,543百万円

11.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

30.00円

2.0%

271.38円

5.5倍

2,514.40円

0.6倍

※株価は6/30の終値。各数値は2022年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月期(実)

36,304

1,702

1,739

1,116

157.61

30.00

2020年3月期(実)

39,846

2,974

2,784

1,584

224.12

30.00

2021年3月期(実)

43,073

3,396

3,177

2,312

330.25

33.00

2022年3月期(実)

44,793

2,827

2,777

1,890

270.08

30.00

2023年3月期(予)

45,500

2,900

2,900

1,900

271.38

30.00

(単位:百万円、円)
2018年10月1日付で1:2の株式分割を実施。2019年3月期の期首に当該株式分割が行われたと仮定してEPS、DPSを算出。
当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

日本ドライケミカル(株)の2022年3月期決算概要などについてご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期決算概要
3.2023年3月期業績見通し
4.成長戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 22/3期は4.0%増収、16.7%営業減益。防災設備事業、メンテナンス事業、商品事業が増収となった。売上総利益率が前期比1.9ポイント低下、販管費の増加は抑えたものの、営業利益率は前期7.9%から6.3%に低下した。会社予想に対し、各段階利益は上回った。下期の配当は17.50円/株を実施、通期では30.00円/株。 
  • 23/3期は前期比1.6%増収、2.5%営業増益を計画する。大都市圏を中心とした大規模再開発案件、さらには社会全般における防災意識の高まり等、需要喚起の要因もみられ、ビジネスの裾野も広がっている。同社顧客の防災にかかわるすべてのニーズにワンストップで応えることができる総合防災企業として、環境対応型社会の要請に応える考え。配当は年間30.00円(うち上期末12.50円、期末17.50円/株)を見込んでいる。 
  • 22/3期は減益となったものの、これは21/3期にやや利益率の高い案件があった反動によるもの。案件の規模が大きい同社としてはやむを得ない部分もあるだろう。一方で、改めて目を引くのは防災設備事業の着実な成長。19/3期から成長ぶりが顕著となり、18/3期比で売上高は83.6%増、CAGRは16%に達している。利益率も向上、売上総利益は同期間で2倍超。防災対策は必須のものであり、今後も高成長が持続しそうだ。また、商品関連事業では、同社独自の製品を相次いで打ち出している。消火器における同社のシェアは10%程度にとどまっており、今後の拡大余地は大きい。株価についてはPER、PBRとも極めて低位にとどまっており、見直し余地は大きいと考える。 

1.会社概要

「防災のプロフェッショナル」として高い評価を受けている国内最大級の総合防災企業であり防災エンジニアリング企業。同社グループは、各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消火設備、消防自動車、自動火災報知設備の製造・販売、防災関連用品の仕入・販売等、幅広く防災にかかわる事業を行なっている。
長年にわたって培われた経験と実績、高いエンジニアリング能力、独自の製品開発力などが強み。
2000年12月上場廃止となったが、2011年6月に再度東京証券取引所市場第2部へ上場。2013年12月には市場第1部に銘柄指定された。2022年4月4日からの東証新市場区分により、スタンダードへ移行。積極的なアライアンス戦略で顧客に新たな付加価値を提供する。

【沿革】

1955年

4月

粉末消火器、粉末消火設備および自動火災報知設備の製造・販売を主業として設立

1995年

6月

東証1部へ上場

2000年

12月

米国の総合セキュリティ・防災メーカーであるタイコインターナショナル社のTOBにより100%子会社となり、上場廃止

2010年

3月

株式上場を視野に取引先を中心に資本政策を実施

2011年

6月

東証2部へ再上場

2012年

5月

(株)初田製作所(非上場)と基本業務提携契約を締結

8月

(株)イナートガスセンターを設立

10月

沖電気防災(株)を子会社化

2013年

2月

新日本空調(株)と資本業務提携契約を締結

12月

東証1部へ上場

2014年

8月

OKIと資本業務提携契約を締結

福島市と立地基本協定を締結

10月

沖電気防災(株)を完全子会社化

2015年

1月

沖電気防災(株)を(株)ヒューセックへ商号変更

2016年

2月

ALSOKと資本業務提携契約を締結

2016年

5月

福島市福島工業団地内に福島工場を新設、稼働

2016年

7月

(株)総合防災を子会社化

2016年

10月

(株)ヒューセックを吸収合併

2017年

11月

(株)始興金属(19年3月よりNDC Korea(株)に商号変更)を子会社化

2018年

11月

広伸プラント工業(株)を子会社化

2020年

2月

本社を東京都北区に移転

2022年

4月

東証新市場区分により、スタンダードへ移行

 

【社長プロフィール】

遠山 榮一社長は、1950年生まれの72歳。
1972年に三菱商事に入社後、経理・財務部門、海外子会社などを歴任後、2004年1月同社入社。2005年8月に代表取締役就任。認知度・信用力の拡大を通じた企業価値の向上と企業体質の強化を図るとともに、従来の発想にとらわれない「防災市場」の創造・開拓を目指す。

 

【社是】

一、もの作り 
われわれは、社会のニーズを先取りした高品質な防災機器を製造、販売し、より安心・安全な社会インフラの構
築に貢献する。
一、顧客満足
われわれは、社員一人ひとりの質的向上を目指し、火災の報知から消火までをカバーする最強の防災プロ集
団であり続ける。
一、コンプライアンス
われわれは、コンプライアンス精神を尊び、自己規律を育む職場環境を醸成する。

 

【市場環境】

同社のメイン事業である防災設備事業の対象は主にオフィスビル、高層マンション、大型ショッピングセンターなど。
建設経済研究所の調査によれば、民間非住宅分野の建築着工床面積は企業に設備投資が増加基調の中、今後も底堅く推移すると見込まれるということだ。

 

(建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2022年4月)」よりインベストメントブリッジ作成

 

一方で、「リニューアル需要」も同社にとって重要なターゲットとなる。
国土交通省の調べによると、非住宅を対象としたリニューアル市場の市場規模は、2015年度が約7.8兆円、2016年度が約8.6兆円と大きく増加している。17年度、18年度は反動で減少したが、19年度には約9.2兆円へ大幅増。20年度については建築業の大型案件を中心に低迷したが、21年度は回復した。

 

 

(国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告書」より、インベストメントブリッジ作成)

 

◎上場の同業他社としては以下の3社を挙げることができる。

   

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE(実)

時価総額

PER(予)

PBR(実)

1909

日本ドライケミカル

44,793

+4.0

2,827

-16.7

6.3%

11.2

10,543

5.5

0.60

6455

モリタHD

83,602

-1.3

8,115

-8.4

9.7%

6.7

58,213,

0.72

6744

能美防災

112,913

+4.6

12,633

+14.3

11.2%

8.8

111,823

15.6

1.01

6745

ホーチキ

81,251

+6.1

5,479

+5.8

6.7%

10.1

32,255

7.5

0.76

(単位:百万円、%、倍)
売上高、営業利益は前期実績。時価総額等は2022年6月30日終値ベース。

 

従来の防災業界には例のない積極的な活動で、新市場の創造・開拓にチャレンジしている。日本ドライケミカルは22/3期のROEが4社中トップ。こうしたこともあり、劣っていたバリューションは一定のレベルで見直された。それでも、PER、PBRとも同業他社比で低水準。企業規模の拡大、収益性の向上とともに、更なる認知度の向上が必要だろう。

 

【事業内容】

総合防災企業として「防災設備事業」、「メンテナンス事業」、「商品事業」、「車輌事業」の4事業部門から構成されている。各事業において「防災」というニーズ全てに対応し、顧客満足度の最大化を図っている。また、新たな顧客ニーズを開拓し、新しいビジネスの開発に結び付けていくという方針を掲げている。

 

<防災設備事業>
売上高の半分強を占める同社の主力事業。建築防災設備、プラント防災設備、特殊防災設備の3分野がある。
どの分野においても顧客の防災ニーズは多様化、大型化、高度化、複雑化している。同社は、長年培ってきた豊富な実績・ノウハウと高い技術力によって、顧客に対し最適な防災システムを提供している。

 

「建築防災設備」
60年以上の歴史を持つ同社において最も実績のある分野。
対象建築物は、オフィスビル、高層マンション、大型ショッピングセンター、駐車場、トンネルなど。

(横浜ランドマークタワー)

 

最近でも都内の大型再開発において数多くの施工実績をあげている。

 

同社はこれら建築物の建築主もしくは建築に携わる大手建設会社や設備工事会社から各種防災設備の設置を受注している。

 

一般建築物の防災設備は、消防法によってその設置が義務付けられており、設置基準も詳細に定められている。
また、設置後の点検に関しても厳格な基準が設けられている。
消防法の歴史は常に強化の歴史であるが、同社はその強化に迅速且つ適切に対応し、大切な人命と貴重な財産を守るという社会的使命を担い、責任を持って遂行。顧客からの高い信頼を獲得してきた。

 

「プラント防災設備」
原子力、火力、ガス、石油、石炭などさまざまなエネルギープラントから、石油化学、医薬、鉄鋼など広範な産業分野の製造工場および倉庫などが対象。

(東京電力 品川火力発電所)

 

顧客は電力会社や重電メーカーなど。

 

エネルギープラントでは、火災が発生し初期消火に失敗すると油流出を伴う大規模火災に発展する恐れがある。
そこで、このような火災には大量の消火薬剤を散布できる泡やガスといった消火設備が最適である。
同社は、このように、対象物の危険性、特殊性、形状に最も適した防災設備をデザインし、構築している。

 

「特殊防災設備」
50年の歴史と実績を持つ。
船舶用の防災設備は船舶安全法、海上人命安全条約、船級協会などの規定により設置・点検が義務付けられている。

 

 

 

(同社HPより)

 

自船消火設備として機関室や貨物艙には二酸化炭素消火設備、ガス運搬船甲板部には粉末消火設備、他船消火設備としてタグボートや消防艇には泡水消火設備や粉末消火設備などがある。
対象船舶は大型タンカー、旅客船・フェリー、消防艇など多岐にわたる。

 

<メンテナンス事業>
設置した防災設備もいざというとき確実に作動しなくては何の意味もない。
防災設備の点検は消防関係法令に規定され、一般的に年間2回の点検が義務付けられている。
同社は消防設備士の資格を持つスタッフによる各種防災設備の保守点検業務およびそこから派生する修繕及び改修工事を行っている。主要顧客は施主及びビル管理会社など。
同事業については、社会的な要請やコンプライアンス意識の高まりを背景に成長が見込まれること、また収益性の観点から今後も収益の柱として強化していきたいと考えている。そのためには、幅広く防災の知識を有し、顧客に信頼される人財の育成・強化が必要と認識している。

 

<商品事業>
同社は日本初の粉末消火器を開発したパイオニアであり、以来、研究・開発を重ね、独自の技術で幅広いニーズに応えるさまざまな消火器や防災関連商品を企画・開発している。

 

(同社資料より)

 

オフィス・工場などに設置される一般的なタイプの消火器のほかに、発電所や石油関連施設などの危険物施設向けの大型消火器、自動車に搭載する消火器、家庭用消火器などさまざまなタイプの消火器の製造・販売を行っている。

 

1999年には日本で初めてアルミニウム製容器を市場で最も流通しているABC粉末消火器10型に採用して販売を開始し、その後もアルミニウム製容器を用いた多くの製品を展開してきている。

 

アルミニウム製消火器は、
・鉄製に比べ約20%軽いため、操作性が格段に向上する。
・錆びにくい性質から腐食による破裂を起こしにくい。
・リサイクル性が高く環境にやさしいため、ISO14000Sやごみゼロ工場などに適している。
といった特徴がある。

 

同社はアルミニウム製消火器の先駆的メーカーであり、今後は殆どが鉄製である海外市場へ進出していく考えだ。
消火器以外には、火災報知器、避難器具、防災キットなど各種防災用品の仕入・販売を行っている。

 

 

 

 

(同社HPより)

 

同社は全国14ブロック、計262社の販売代理店で構成されている「エクスチン会」により、全国をカバーする強力な販売体制を構築している。
(「エクスチン」は、消火器の英語「a fire extinguisher」から引用している。)

 

<車輌事業>
消防自動車には、消火栓や河川から水を汲み上げ放水する消防ポンプ自動車、水源のない場所で放水可能な水槽付消防ポンプ自動車、油火災等の消火を行う化学消防ポンプ自動車などさまざまな種類があるが、同社は、消火・防災技術の最先端を結集することで、こうした専門性の高い消防自動車のニーズに対応している。

 

(化学消防ポンプ自動車)

 

(粉末専用車)

 

(同社資料より)

 

同社は、消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、化学消防ポンプ自動車の他、支援車、指揮車、小型動力消防ポンプ付水槽車など、各種消防自動車を製造・販売している。
主要装置の機能の高度化のみならず、自動揚水モニター装置、泡自動混合装置などの電子化、自動制御化も進めることで、操作性・安全性の向上および省力化に貢献している。
車両メーカーよりトラックシャーシを購入した後、顧客ごとの仕様に合わせた艤装(*室内外の各種装備などを車体に取り付ける工程のこと)を施し消防自動車として納入する。顧客のほとんどは地方自治体で、交換需要が中心となっている。競争は厳しいが長年携わってきた中で同社独自のアイデアや技術も具現化してきており、今後も注力していく考えだ。

 

【ROE分析】

 

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

22/3期

ROE(%)

12.3

8.5

10.0

9.2

12.0

15.4

11.2

 売上高当期純利益率(%)

3.36

2.81

3.38

3.07

3.98

5.37

4.22

 総資産回転率(回)

1.40

1.24

1.26

1.31

1.14

1.05

1.10

 レバレッジ(倍)

2.63

2.45

2.35

2.30

2.65

2.73

2.41

 

22年3月期のROEは売上高当期純利益率の低下を主因に11.2%へ低下したものの2桁を維持した。今後の本質的・継続的な収益性の向上が期待される。

 

【特徴と強み】

同社の事業ドメインである防災業界は、消防法をはじめとする様々な法律があり、工事・保守点検では消防設備士の資格が必要である。また特定の製品においても日本消防検定協会などによる検査の合格が必須であることなどから、参入障壁が高いことが特徴である。
これに加えて同社独自の特徴としては以下の4点があげられる。

 

➀長年にわたって培われた経験と実績
同社の創業は1955年4月。60年以上の歴史を有しており、長年にわたり培ってきた経験と実績に基づく信用力は、大きな財産である。

 

➁高度なエンジニアリング能力
一般建築物、プラント、船舶など幅広い分野における多数の、そして多様な防災設備の施工実績は、同社の高度なエンジニアリング能力に裏付けられている。

 

➂独自の製品開発力
クイックスプラッシャー、グリーンアルコエース、高性能型消火器、、NEOスプリンクラーシリーズなど同社オンリーの製品が多数。今後も研究開発に注力し、独自製品の開発を進めていく。

 

➃積極的なアライアンス戦略
防災業界は、専門領域が分化され、また他社と共同で事業を展開するといったことは極めて例がない業界。
そうした中で、同社はアウトサイダーであった遠山社長のリーダーシップの下、従来の発想に囚われることなく新たな防災マーケットを創造しようという経営戦略により、積極的なアライアンスを展開している。

 

【株主優待を拡充】

株主が選べる防災用品(優待品目)をより充実させるため、毎年(例年8月)品目を一部入れ替えている。
21年9月30日現在の株主を対象とした優待品は以下の通り(いずれかひとつを選択)。

 

No.

品目

内容

救急セット巾着タイプ 巾着付きの救急セット

内容:ガーゼ、絆創膏、はさみ、伸縮包帯、綿棒、ピンセット等

サージカルマスクブルー50枚 やわらかな素材で、長時間の使用でも耳が痛くなりにくい平ゴム製の耳かけ(日本製)。
LEDランタンライト LEDと反射板の併用で明るさアップ。国産アルカリ乾電池で連続40時間使用可能。※単3形電池本が別途必要
抗菌広口ショルダー水コン 抗菌仕様の水コンテナ。大きな開口部なので氷も入れやすく、内部も洗いやすい。畳んでコンパクトに収納可能。
マルチツール 14 14の機能が隠されているマルチツール

機能:ナイフ、はさみ、缶切り、縫い針、ノコギリ、栓抜き、ドライバー等

マイレット mini-10 非常用の簡易トイレセット(10回分)

内容:抗菌性凝固剤、排便袋、持運び袋(各10個)、ティッシュ(2個)

オリジナル缶deボローニャ 食料備蓄品(3年6ヶ月保存可能)、

デニッシュパン(プレーン味)2缶セット

保存食5年サポートセットⅡ 1日分の食料品の備蓄セット(5年保存可能)

内容:スーパー保存水(1.5㍑)、ビスコ、アルファ米(五目)、きなこ餅

オリジナルQUOカード 1,000円分、コンビニエンスストア等で使用可能。
国内災害義援金(1,000円分) 日本赤十字社を通じて、被災者の手元に届けられる。

 

2.2022年3月期決算概要

(1)連結業績

 

21/3期

構成比

22/3期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

43,073

100.0%

44,793

100.0%

+4.0%

45,000

-0.5%

売上総利益

10,302

23.9%

9,859

22.0%

-4.3%

販管費

6,905

16.0%

7,031

15.7%

+1.8%

営業利益

3,396

7.9%

2,827

6.3%

-16.7%

2,500

+13.1%

経常利益

3,177

7.4%

2,777

6.2%

-12.6%

2,500

+11.1%

親会社株主に帰属する

当期純利益

2,312

5.4%

1,890

4.2%

-18.2%

1,750

+8.0%

(単位:百万円)

 

4.0%増収、16.7%営業減益
売上高は前期比4.0%増の447億93百万円。車輌事業が減収となったものの、防災設備事業、メンテナンス事業、商品事業は堅調に推移した。防災業界においては、原材料価格の高騰による業績への影響が懸念される状況だが、防災・減災を目的とした公共事業や都市部の大規模再開発等による需要は拡大している。こうした中、引き続き自動火災報知設備から消火設備、消火器そして消防自動車までを広くカバーする総合防災企業として、製品ラインナップの拡充を図り積極的営業活動を推進した。また、各種防災設備の設計・施工、消火器等の製造そしてそれらのメンテナンスを通じ世の中に高度な安心・安全を提供し、より良質な社会インフラを構築するという社会的使命を果たすべく注力している。
営業利益は前期比16.7%減の28億27百万円。利益面では商品事業の売上総利益が増加したものの、防災設備事業、メンテナンス事業、車輌事業の売上総利益が減少した。売上総利益率が前期比1.9ポイント低下して売上総利益は前期比4.3%減の98億59百万円となった。販管費の増加は抑えたものの、営業利益率は前期7.9%から6.3%に低下した。経常利益は前期比12.6%減の27億77百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同18.2%減の18億90百万円。
会社予想に対し、売上高はわずかに下回ったものの、各段階利益は上回った。
下期の配当は17.50円/株を実施、通期では30.00円/株。

 

(2)営業種目別動向

 

売上高

売上総利益

 

21/3期

構成比

22/3期

構成比

増減率

21/3期

利益率

22/3期

利益率

増減率

防災設備事業

24,074

55.9%

25,618

57.2%

+6.4%

5,744

23.9%

5,446

21.3%

-5.2%

メンテナンス事業

8,043

18.7%

8,344

18.6%

+3.7%

3,107

38.6%

3,093

37.1%

-0.5%

商品事業

8,928

20.7%

9,425

21.0%

+5.6%

1,281

14.4%

1,297

13.8%

+1.2%

車輌事業

2,027

4.7%

1,404

3.1%

-30.7%

168

8.3%

22

1.6%

-86.9%

(単位:百万円)

 

◎防災設備事業
増収減益。
プラント施設の工事案件が増加した。

 

◎メンテナンス事業
増収減益。
改修・補修工事案件が増加した。

 

◎商品事業
増収増益。
機器類の販売および小型工事案件の引き合いが好調だった。

 

◎車輌事業
減収減益。
前期にあった特殊車輌がなくなったこと等により減収減益となった。

(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

◎財政状態

 

21年3月

22年3月

 

21年3月

22年3月

 現預金

4,516

5,549

 仕入債務

8,204

8,471

 売上債権

15,064

15,463

 短期有利子負債

4,634

3,558

 棚卸資産

4,891

4,503

 長期有利子負債

2,523

3,828

流動資産合計

24,939

29,197

負債合計

21,053

21,750

 有形固定資産

8,955

9,232

純資産合計

18,971

19,700

 無形固定資産

1,249

1,090

 株主資本

15,515

17,103

 投資その他

4,880

1,931

負債純資産合計

40,025

41,451

固定資産合計

15,085

12,254

 有利子負債合計

7,158

7,387

資産合計

40,025

41,451

自己資本比率

40.4%

42.5%

(単位:百万円)

 

22/3期末の資産合計は、414億51百万円(前期末比、以下同14億26百万円増)となった。
流動資産は、291億97百万円(42億57百万円増)。主な内容は、現預金55億49百万円(10億32百万円増)、受取手形、売掛金及び契約資産121億63百万円(3億60百万円減)、電子記録債権33億円(7億59百万円増)、仕掛品11億49百万円(2億24百万円減)、短期貸付金30億53百万円(30億44百万円増)等。
固定資産は、122億54百万円(28億31百万円減)。主な内容は、有形固定資産92億32百万円(2億76百万円増)、無形固定資産10億90百万円(1億59百万円減)、投資その他の資産19億31百万円(29億49百万円減)等。
負債合計は、217億50百万円(6億97百万円増)となった。
流動負債は、160億56百万円(5億63百万円減)。主な内容は、支払手形、買掛金及び工事未払金55億73百万円(7億15百万円減)、電子記録債務28億97百万円(9億82百万円増)、1年以内返済予定の長期借入金5億97百万円(7億31百万円減)、未払法人税等5億62百万円(52百万円増)、契約負債13億31百万円(2億2百万円増)等。
固定負債は、56億94百万円(12億60百万円増)。主な内容は、社債16億75百万円(4億75百万円増)、長期借入金21億53百万円(8億29百万円増)等。
純資産合計は、197億円(7億28百万円増)。主な内容は、配当金の支払2億31百万円及び親会社株主に帰属する当期純利益18億90百万円計上等による利益剰余金、非支配株主持分20億97百万円(7億17百万円減)等。
これらの結果、22/3期末における自己資本比率は42.5%(前期末40.4%)となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期

22/3期

増減額

営業キャッシュ・フロー

5,099

3,174

-1,924

投資キャッシュ・フロー

-505

-2,068

-1,563

フリー・キャッシュ・フロー

4,594

1,105

-3,488

財務キャッシュ・フロー

-3,758

-100

3,658

現金及び現金同等物期末残高

4,516

5,549

1,032

(単位:百万円)

 

22/3期末における現金及び現金同等物は、55億49百万円となり、前期末から10億32百万円減少した。
営業CFは、31億74百万円の収入(前期は50億99百万円の収入)。主な収入は、税金等調整前当期純利益26億10百万円、減価償却費7億32百万円、棚卸資産の減少4億33百万円等。主な支出は、法人税等の支払額9億31百万円等。
投資CFは、20億68百万円の支出(同5億5百万円の支出)。主な収入は、有形固定資産の売却による収入2百万円等。主な支出は、有形固定資産の取得による支出11億24百万円、無形固定資産の取得による支出48百万円、投資有価証券の取得による支出866百万円等。
財務CFは、1億円の支出(同37億58百万円の支出)。主な収入は、長期借入れによる収入6億円等。主な支出は、長期借入金の返済による支出5億10百万円、配当金の支払額2億31百万円等。

 

3.2023年3月期業績見通し

◎連結業績

 

22年3月期 実績

構成比

23年3月期 予想

構成比

前期比

売上高

44,793

100.0%

45,500

100.0%

+1.6%

営業利益

2,827

6.3%

2,900

6.4%

+2.5%

経常利益

2,777

6.2%

2,900

6.4%

+4.4%

当期純利益

1,890

4.2%

1,900

4.2%

+0.5%

(単位:百万円)

 

増収増益予想
23/3期は、売上高が前期比1.6%増の455億円、営業利益は同2.5%増の29億円、経常利益は同4.4%増の29億円、当期純利益は同0.5%増の19億円を計画する。今後の経済環境については、新型コロナウイルスの感染拡大の防止策が継続され、社会経済活動が徐々に正常化に向かうなかで、景気の持ち直しの動きも期待される。一方で、原油価格や原材料価格の高騰、国際情勢不安なども重なり、先行きは厳しい状況が続くものと思われる。消防機器業界においても、なお予断を許さない状況が継続するものと想定されるが、大都市圏を中心とした大規模再開発案件、さらには社会全般における防災意識の高まり等、需要喚起の要因もみられる。同社を取り巻く事業環境、ビジネスの裾野は広がっている。同社顧客の防災にかかわるすべてのニーズにワンストップで応えることができる総合防災企業として、世の中に安心・安全を提供するとともに、従来型の消防防災にとどまることなく、火災を発生させない、火災をごく早い段階で感知する予防防災にも注力し、環境対応型社会の要請に応える考え。
配当は年間30.00円(うち上期末12.50円、期末17.50円/株)を見込んでいる。

 

4.成長戦略

(1)NDC(日本ドライケミカル)の成長戦略

経営課題である「収益基盤の強化」のために、①アライアンスの強化、②研究開発体制の強化の2つを主要な経営施策としている。提携先の技術や製品・システムを活用するとともに自火報と消火にかかる技術の融合を図る。2つの施策により同社にしかない独自の防災製品や防災システムを開発して、製品およびサービスの差別化を進めるとともに、収益基盤を強化していく考え。

 

(2)研究開発体制の強化

従来の消防防災の概念を覆す画期的な製品開発に取り組む。
次世代消防防災に向けた基本方針

▶ 国家検定が定める性能基準を超える性能 近年発生した火災

・全国で多発する工場火災

・大型バス出火による相次ぐ火災

・首里城火災(19年10月)

・京都ガソリン放火火災(19年7月)

・物流センター倉庫火災(17年2月)

・糸魚川市大規模火災(16年12月)

▶ 火災を未然に防ぐ予防という新ジャンル
▶ 環境に配慮した新しい消火薬剤を追及
▶ 世界スタンダードの消防機器・薬剤を日本市場へ

 

福島工場 総合防災研究棟
(同社資料より)

 

新しい技術、優れた海外製品を積極的に取り入れ、より消防防災の実態、現実に即したものに進化させ、真の安心・安全を追及する。

 

(3)次世代消防防災「予防防災」への注力

同社独自の製品による次世代消防防災

(同社資料より)

 

火をおこさない、火をおこさせない、火災を未然に防ぐという新ジャンル

(同社資料より)

 

(4)環境対応型社会における消火薬剤

ふっ素化合物を含む泡消火薬剤が環境問題となっている。同社では、ふっ素フリーを追及することで、環境対応型社会に応える。

 

グリーンアルコエース
全国の消防、石油コンビナート等に積極的に展開中。ふっ素化合物であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)に加え、今後の規制が検討されているPFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)も一切含有しない唯一の泡消火薬剤。

 

新液体系消火薬剤Gwet
高消火性能と高環境性を併せ持つ 画期的な新型液体系消火薬剤

 

 

高環境性

PFOS他、ふっ素化合物を一切使用しないふっ素フリー

 

Gwetを応用した製品開発

 

(同社資料より)

 

マルチ火災に対応

(普通火災・油火災・電気火災・天ぷら火災・樹脂火災・リチウムイオン電池火災)

 

 

2次災害レス

中性で安全な液体薬剤、放射後の後処理も簡単

 

5.今後の注目点

22/3期は減益となったものの、これは21/3期にやや利益率の高い案件があった反動によるもの。1案件の規模の大きい同社としてはやむを得ない部分もあるだろう。一方で、改めて目を引くのは防災設備事業の着実な成長。19/3期から成長ぶりが顕著となり、18/3期比で売上高は83.6%増、CAGR(年平均成長率)は16%に達している。利益率も向上し、売上総利益は前期比では減益であったものの18/3期比では2倍を超えている。他の事業との兼ね合いもあり、一見見えにくいが、主力である防災設備事業における高い成長性は、強い競争力を示すものでもある。防災対策の強化は建築やプラントなどにおいて必須のものであり、今後も高成長が持続しそうだ。また、商品関連事業では、同社独自の製品を相次いで打ち出している。消火器における同社のシェアは10%程度にとどまっており、今後の拡大余地は大きい。
株価は軟調に推移しており、PER、PBRとも極めて低位にとどまっている。見直し余地は大きいと考える。

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 6名、うち社外1名
監査役 3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月27日

 

<基本的な考え方>
当社は、株主を含むステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを積極的に行い、より良い関係を築くことで信頼を確保します。また持続的な企業価値の向上のため、経営の健全性や透明性、効率性を高め、社会全体から信頼される企業集団を目指して、コーポレートガバナンスの構築に努めます。

 

基本方針
1.株主の権利行使が適切に確保されるよう配慮し、実質的平等性を確保します。
2.ステークホルダーの皆様と適切な協働に努め、相互繁栄を目指します。
3.適時適切な情報開示を行い、透明性のある経営を確保します。
4.取締役会、監査役会はその役割、責務を正しく理解し、適切に遂行します。
5.株主の声に耳を傾け、建設的な対話を行います。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

原則2-4 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保 当社は、女性社員の活躍が会社の持続的な成長を確保する上での強みとなることを認識しておりますが、事業の特性上、まだ推進できておりません。女性社員の活躍を推進できる職場環境づくりを前向きに検討してまいります。
補充原則3-1-2 外国人投資家株主数比率が約1.40%、株式数比率が約7.25%であるため、英語での情報開示は行っておりませんが、今後の外国人投資家株主構成等の推移を勘案し、必要に応じて検討してまいります。
補充原則4-1-3 当社は、最高経営責任者後継計画は、最重要課題と考えており、今後取締役会において、検討を行ってまいります。
原則4-8 独立社外取締役の有効な活用 当社は現在、独立社外取締役は1名でありますが、今後、当社の事業環境を理解した社外の適任者を選任できるよう、引き続き努力してまいります。

 

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

原則1-4.政策保有株式に係る議決権行使基準 一般の株主と同様に議案内容を精査し、必要に応じ株主として当該会社と対話を行い、議決権を行使いたします。
原則5-1-2.株主との建設的な対話に関する方針 当社の株主との建設的な対話を行うための体制整備、取組みは、次のとおりです。

 

1.株主との対話については、管理本部長が統括しております。

2.株主から対話の申し入れがあった場合は、管理本部長が代表取締役、IR担当部門等と対応方法を検討し適切に対応しております。

3.IR担当部門は、管理本部長と協議の上、面談以外の方法として、投資家・アナリスト向け決算説明会を実施するとともに、その内容をホームページで開示しております。また個人投資家に対しても、IRのイベントに参加し、会社説明会等を実施しております。

4.IR活動で得られた株主、アナリストからのご意見等は、管理本部長又はIR担当部門長より、取締役会、経営委員会に報告され、企業価値向上に積極的に活用しております。

5.株主との対話における内部情報の管理については、情報開示、インサイダー取引防止の社内規程等により適切に行っております。

 

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