(6089)株式会社ウィルグループ 減収減益も予想を上回る

2021/07/02

 

池田 良介 代表取締役会長

株式会社ウィルグループ(6089)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

サービス業

代表者

池田 良介

所在地

東京都中野区本町1-32-2

決算月

3月

HP

https://willgroup.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,016円

22,554,500株

22,915百万円

35.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

25.00円

2.5%

82.78円

12.3倍

370.13円

2.7倍

*株価は6/14終値。各数値は21年3月期決算短信より。

 

連結業績推移(2019年3月期よりIFRS基準)

決算期

売上高

営業利益

経常・税前益

親会社所有者利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

79,197

2,417

2,437

1,210

57.44

18.00

2019年3月(実)

103,300

2,957

2,876

1,539

69.46

18.00

2020年3月(実)

121,916

4,145

4,057

2,380

107.07

23.00

2021年3月(実)

118,249

4,030

3,788

2,363

106.35

24.00

2022年3月(予)

121,000

3,400

3,270

1,840

82.78

25.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

 

(株)ウィルグループの2021年3月期決算概要、2022年3月期業績予想、中期経営計画などについてご報告致します。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.中期経営計画「WILL-being 2023」
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

 

今回のポイント

  • 21/3期は減収減益も売上・利益とも業績予想を上回った。売上収益は前期比3.0%減の1,182億49百万円。海外の人材派遣売上等が増加したが、国内のセールスアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け減少した。営業利益は同2.8%減の40億30百万円。セールスアウトソーシング領域及びファクトリーアウトソーシング領域の利益の減少があったものの、海外での雇用支援補助金収入や国内での雇用調整助成金等の計上に加え、有給休暇引当金の減少等もあり、ほぼ前年並みの利益を確保。予想値を大きく上回った。配当は前期比1円増配の24円/株を予定。配当性向は22.6%。

     

  • 22/3期の売上収益は前期比2.3%増の1,210億円、営業利益は同15.6%減の34億円と増収減益を予想。建設技術者社員の採用・営業体制強化(6億円)、介護・IT人材・スタートアップ領域の人材紹介のコンサルタント人員体制強化(7億円)を先行投資枠として設定した。この先行投資13億円を考慮しない営業利益のベース予算は47億円で、感染拡大前の2020年3月期の41億円を上回る水準。配当は1株当たり1円増配の25円を予定している。予想配当性向は30.2%。新型コロナウイルス感染症再拡大による影響は、一部の領域において想定しているが、体制を整備してきたため事業への影響は収束の方向に向かっており、連結業績には大きく影響しないと見ている。

     

  • 中期経営計画「WILL-being 2023」の基本方針は、「WORK SHIFT戦略による高収益体質化」。人材紹介や専門性の高い領域への人材派遣など「無期雇用:Perm領域(permanent)」を拡大し、成長機会の最大化・最適化を目指すとともに、人材派遣や業務請負など「有期雇用:Temp領域(temporary)」のデジタル化推進による生産性向上や事業安定性を軸とした雇用機会の最大化・最適化を目指す。Perm領域での注力事業は建設技術者派遣と介護人材紹介。今来期先行投資を行い成長基盤の構築を進める。

     

  • コロナ禍の影響を受け減収減益となった21/3期に続き、22/3期は増収ながらも減益予想ではあるが、これはPerm SHIFT、中長期のグループの柱となることを目指し集中的に投資して成長を実現する事業群の中でも、建設技術者派遣及び介護人材紹介等への先行投資によるものである。

     

  • 建設業界は新規需要が今後大きく増加することは見込みにくいが、老朽化したインフラの維持・補修が大きな課題となっている。介護業界は言うまでもなく高齢化が進行する中でその重要性は益々高まる一方であり、両業界とも国策としての対応が必要である。また、一部ではロボティクスやICTの導入も進んでいるようだが、人手不足の中で「人」の価値が一段と増大する分野でもある。もちろん、競争も激しくなることも予想されるが、元来定着率の低い業界でその改善に実績を残してきた同社のノウハウや強みを活かして成長を実現することができるのか、中期的な視点で注目していきたい。

     

     

1.会社概要

販売支援スタッフ、コールセンターオペレーター、食品業界を中心とした製造ラインスタッフ、介護施設等への人材派遣、人材紹介等、カテゴリー特化型の人材サービスを手掛ける持ち株会社。フィールドサポーターと呼ばれる社員が現場に常駐する「ハイブリッド派遣」が特徴。現場第一主義を掲げ、他社との差別化を図っており、新規事業の創出にも注力している。
グループ会社は、セールス及びコールセンターのアウトソーシングを手掛ける(株)ウィルオブ・ワーク、セールスプロモーションの(株)クリエイティブバンク、製造業に特化したサービスを手掛ける(株)ウィルオブ・ファクトリー、及びアジア・オセアニアを中心に人材サービスを展開する海外子会社等。

 

【1-1ビジョン・経営理念】

「4つの事業領域で、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になる」を「WILLビジョン」として掲げている。

 

Working

「働く」を支援する事業領域

Interesting

「遊ぶ」を支援する事業領域

Learning

「学ぶ」を支援する事業領域

Living

「暮らす」を支援する事業領域

 

【1-2 事業内容】

事業領域拡大により、マネジメント範囲も拡大したことから、21/3期より、事業セグメントを、国内WORK事業、海外WORK事業、その他、3セグメントに括り直しを行い、マネジメント体制を変更した。

国内WORK事業
国内において、セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域、介護・保育領域等、カテゴリーに特化した派遣・紹介や業務請負を行っている他、スタートアップ企業への人材支援等も手掛けている。

 

セールスアウトソーシング領域 : (株)ウィルオブ・ワーク、(株)クリエイティブバンク
通信分野向けが売上全体の50%を超えており、アパレル分野が10%超、その他30%超。通信分野向けは、家電量販店等でのスマートフォン等の販売業務や販売スタッフのマネジメント、販売情報の収集・報告等の業務に従事するスタッフの派遣、チーム型派遣(ハイブリッド派遣)、販売業務の業務請負、人材紹介を行っている。。

 

コールセンターアウトソーシング領域 : (株)ウィルオブ・ワーク
コールセンターを運営する企業やテレマーケティングサービスを展開する企業を顧客とし、通信会社やBPO(業務プロセスの一部を継続的に外部企業に委託すること)向けを中心に、金融機関向けも増えている。アフターサービス、相談、苦情の受付等の業務に従事するスタッフの派遣、チーム型派遣(ハイブリッド派遣)、人材紹介を行っている他、自社保有のコールセンターにおいて、顧客のテレマーケティング業務の請負も行っている。

 

ファクトリーアウトソーシング領域 : (株)ウィルオブ・ファクトリー
景気に左右され難い食品製造業を中心としており、製造、検査、品質管理、仕分け、梱包等の軽作業に従事するスタッフの派遣、チーム型派遣(ハイブリッド派遣)、生産工程業務の業務請負、人材紹介を行っている。

 

介護・保育領域 : (株)ウィルオブ・ワーク
介護施設を運営する企業、保育施設に対して、スタッフの派遣、人材紹介を行っている。

 

スターアップ人材支援 : フォースタートアップス(株)
HR(Human Resources)を中核とした成長産業(ベンチャー/スタートアップ企業等)支援事業や、国内最大級の成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB(スタートアップデータベース)」の運営を行っている。

 

その他領域 :(株)ウィルオブ・コンストラクション、(株)ボーダーリンク等
建設技術者派遣・人材紹介、ALT(外国語指導助手)派遣、エンジニア派遣・人材紹介等を行っている。

 

海外WORK事業
ASEAN及びオセアニア地域において、政府系、エンジニア、ファイナンス、リーガル等の人材派遣や人材紹介を行っている。WILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.、 Good Job Creations (Singapore) Pte. Ltd.、 Scientec Consulting Pte. Ltd.、
The Chapman Consulting Group Pte. Ltd.、 Oriental Aviation International Pte. Ltd.、 Ethos BeathChapman、
Quay Appointments Pty Ltd.、 u&u Holdings Pty Ltd.、 DFP Recruitment Holdings Pty Ltd、
Asia Recruit Holdings Sdn.Bhd.、

 

その他
システムエンジニア等にコミュニティの場を提供するコンセプト賃貸運営や、労働集約型ビジネス以外の拡大に向け、外国人労働者の就労時間管理システムである「アワマネ」、外国人サポートサービス「エンポート」等、新たなプラットフォームの開発強化に向けて、HRTech分野の拡大に取り組んでいる。
(株)ウィルグループ等。

 

2.2021年3月期決算概要

【2-1 連結業績(IFRS)】

 

20/3期 

構成比

21/3期 

構成比

前期比

予想比

売上収益

121,916

100.0%

118,249

100.0%

-3.0%

+1.9%

売上総利益

25,402

20.8%

24,056

20.3%

-5.3%

販管費

21,422

17.6%

20,463

17.3%

-4.5%

営業利益

4,145

3.4%

4,030

3.4%

-2.8%

+18.5%

税引前利益

4,057

3.3%

3,788

3.2%

-6.6%

+16.6%

親会社所有者利益

2,380

2.0%

2,363

2.0%

-0.7%

+35.1%

* 単位:百万円。予想比は20年11月発表の修正予想に対する増減。

 

減収減益も売上・利益とも業績予想を上回る
売上収益は前期比3.0%減の1,182億49百万円。海外の人材派遣売上等が増加したが、国内のセールスアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け減少した。
営業利益は同2.8%減の40億30百万円。セールスアウトソーシング領域及びファクトリーアウトソーシング領域の利益の減少があったものの、海外での雇用支援補助金収入や国内での雇用調整助成金等の計上に加え、有給休暇引当金の減少等もあり、ほぼ前年並みの利益を確保。予想値を大きく上回った。
配当は前期比1円増配の24円/株を予定。配当性向は22.6%。

【2-2 セグメント別動向】

 

20/3期 

構成比・利益率

21/3期 

構成比・利益率

前期比

予想比

国内WORK事業

84,438

69.3%

80,050

67.7%

-5.2%

-0.7%

海外WORK事業

36,074

29.6%

36,920

31.2%

+2.3%

+8.4%

その他

1,549

1.3%

2,121

1.8%

+36.9%

-1.4%

IFRS調整額

-146

-843

売上収益

121,916

100.0%

118,249

100.0%

-3.0%

+1.9%

国内WORK事業

5,061

6.0%

4,253

5.3%

-16.0%

+0.1%

海外WORK事業

971

2.7%

1,106

3.0%

+13.8%

+25.7%

その他

-352

-166

調整額+IFRS調整額

-1,535

-1,163

営業利益

4,145

3.4%

4,030

3.4%

-2.8%

+18.5%

* 単位:百万円。

 

国内WORK事業
前期比減収減益。売上収益、利益ともほぼ予想通りの着地。

 

セールスアウトソーシング領域のアパレル分野、ファクトリーアウトソーシング領域において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、需要が減少。
一方で、コールセンターアウトソーシング領域、介護・保育領域等においては、求人の回復は遅れているものの、需要は底堅く堅調に推移した。また、各領域ともウィズコロナ、アフターコロナを見据え、営業代行サービス、在宅型のコンタクトセンターサービスなど新たなサービスの顧客開拓にも注力した。
利益面においては、新規受注状況から採用費等をコントロールしたが、セールスアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域が減収となったため減益。
稼働スタッフ数は、ファクトリー領域において、顧客の減産、生産計画の見直しにより減少するも、全体では改善傾向にある。

 

(同社資料より)

 

海外WORK事業
前期比増収増益。売上収益、利益ともに予想を上回る。

 

新型コロナウイルス感染症拡大の中でも、政府系、エンジニア、ファイナンス、リーガル等の人材派遣は安定して推移した。
オーストラリア、シンガポールの景気減速、企業活動の停滞により、人材紹介の需要は低下していたものの、足元では需要は回復に向かっている。
シンガポールにおける新型コロナウイルス対策としての雇用支援政府補助金約7億円を計上した。

(同社資料より)

 

為替レート

 

20/3期実績

21/3期実績

当初前提

1円変動による営業額/年(売上収益、利益)

オーストラリアドル

74円

76円

70円

3.8億円

0.1億円

シンガポールドル

79円

78円

75円

0.9億円

0.0億円

 

その他
前期比増収、損失縮小。売上収益、利益ともにほぼ予想通り。

 

労働集約型ビジネス以外の拡大に向け、外国人労働者の就労時間管理システムである「アワマネ」、外国人サポートサービス「エンポート」等、新たなプラットフォームの開発強化に取り組んだ。
また、第1四半期に、ITエンジニア/クリエイター向け賃貸住宅(TECHRESIDENCE)1物件を販売した。
なお、新たにサービスを開始したスキマ時間バイトアプリの「デイワク」に関しては、当初活用を見込んでいた既存の顧客基盤、スタッフ基盤が活用できなかったことから、2021年4月にサービスを終了した。
利益面においては、新分野への先行投資を引き続き実施しつつも、既存事業の業容拡大、ファンドが保有する株式を一部売却したことから増益となった。尚、賃貸住宅の販売益及びファンド保有の一部株式売却益はIFRS調整で相殺し、その他の包括利益に含める会計処理を行っている。このため、連結営業利益には含まれていない。

 

 

【2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー】

◎財政状態

 

20年3月

21年3月

増減

 

20年3月

21年3月

増減

流動資産

22,041

23,570

+1,529

流動負債

21,566

24,790

+3,224

現預金

5,944

7,455

+1,511

営業債務・その他債務

12,521

13,760

+1,239

営業債権・その他債権

15,067

14,694

-373

その他流動負債

2,391

2,048

-343

非流動資産

22,558

23,190

+632

非流動負債

15,909

11,943

-3,966

有形固定資産

1,315

1,082

-233

その他金融負債

8,012

6,563

-1,449

使用権資産

6,200

5,715

-485

負債合計

37,476

36,733

-743

のれん

5,654

6,155

+501

資本合計

7,123

10,027

+2,904

その他無形資産

5,455

6,049

+594

親会社所有者帰属持分

5,233

8,240

+3,007

資産合計

44,600

46,760

+2,160

負債純資産合計

44,600

46,760

+2,160

 

 

 

 

借入金合計

9710

8788

-922

* 単位:百万円

 

現預金の増加などで資産合計は前期末比21億円増加の467億円。借入金の減少など負債合計は同7億円減少し367億円。
利益剰余金の増加で資本合計は同29億円増加の100億円
親会社所有者帰属持分比率は前期比5.9%上昇し17.6%。EBITDA調整後有利子負債倍率は同0.5ポイント低下し1.1倍、のれん調整後親会社所有者帰属持分倍率は同0.2ポイント低下の0.5倍、調整後ネットDEレシオは同0.3ポイント低下の0.1倍など、財務指標は全て改善傾向にある。

 

 

◎キャッシュ・フロー(CF)

 

20/3期 

21/3期 

増減

営業キャッシュ・フロー

4,908

4,316

-592

投資キャッシュ・フロー

-3,035

-433

+2,602

フリー・キャッシュ・フロー

1,873

3,883

+2,010

財務キャッシュ・フロー

-2,631

-2,646

-15

現金及び現金同等物期末残高

5,944

7,455

+1,511

* 単位:百万円

 

M&A関連の支出がなくなり投資CFのマイナス幅が縮小し、フリーCFは大幅に改善。
キャッシュポジションは上昇した。

 

 

3.2022年3月期業績予想

【3-1 連結業績】

 

21/3期 

構成比

22/3期(予) 

構成比

前期比

売上収益

118,249

100.0%

121,000

100.0%

+2.3%

売上総利益

24,056

20.3%

25,640

21.2%

+6.6%

販管費

20,463

17.3%

営業利益

4,030

3.4%

3,400

2.8%

-15.6%

税引前利益

3,788

3.2%

3,270

2.7%

-13.7%

親会社所有者利益

2,363

2.0%

1,840

1.5%

-22.2%

* 単位:百万円。

 

増収減益予想
売上収益は前期比2.3%増の1,210億円、営業利益は同15.6%減の34億円の予想。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響は収束する見込みで、下記の先行投資13億円を考慮しないベース予算は47億円で、感染拡大前の2020年3月期の41億円を上回る水準。
建設技術者社員の採用・営業体制強化(6億円)、介護・IT人材・スタートアップ領域の人材紹介のコンサルタント人員体制強化(7億円)を先行投資枠として設定した。

 

配当は1株当たり1円増配の25円を予定している。予想配当性向は30.2%。

 

新型コロナウイルス感染症再拡大による影響は、一部の領域において想定しているが、体制を整備してきたため事業への影響は収束の方向に向かっており、連結業績には大きく影響しないと見ている。

 

【3-2 セグメント別見通し】

 

21/3期

構成比・利益率

22/3期(予)

構成比・利益率

前期比

国内WORK事業

800.5

67.7%

840.5

69.5%

+5.0%

海外WORK事業

369.2

31.2%

353.7

29.2%

-4.2%

その他

21.2

1.8%

15.7

1.3%

-26.0%

IFRS調整額

-8.4

0

売上収益

1182.4

100.0%

1210

100.0%

+2.3%

国内WORK事業

42.5

5.3%

45

5.4%

+5.9%

海外WORK事業

11

3.0%

8.6

2.4%

-22.3%

その他

-1.6

-2.8

調整額+IFRS調整額

-11.7

-16.8

営業利益

40.3

3.4%

34.0

2.8%

-15.6%

* 単位:億円。

 

◎国内WORK事業の内訳

 

21/3期

22/3期(予)

前期比

売上高

 

 

 

セールスアウトソーシング領域

190.4

201.0

+5.5%

コールセンターアウトソーシング領域

168.6

168.7

+0.0%

ファクトリーアウトソーシング領域

205.8

194.5

-5.5%

介護ビジネス支援領域

132.1

156.3

+18.2%

スタートアップ人材支援領域

12.7

17.8

+40.2%

建築技術者領域

52.7

61.8

+17.2%

その他

37.8

40.2

+6.4%

営業利益

 

 

 

セールスアウトソーシング領域

14.1

16.8

+18.8%

コールセンターアウトソーシング領域

11.2

11.1

-1.2%

ファクトリーアウトソーシング領域

10.0

11.4

+14.5%

介護ビジネス支援領域

3.8

7.0

+85.3%

スタートアップ人材支援領域

1.5

1.8

+13.9%

建築技術者領域

-1.8

-6.5

その他

3.5

3.3

-6.6%

* 単位:億円。

 

*セールスアウトソーシング領域
安定した通信分野を継続的に拡大する。また、売上総利益率の高い営業代行等の拡大に向け、現場正社員の採用を強化する。

 

*コールセンターアウトソーシング領域
売上総利益率の高い金融系案件を引き続き拡大する。1現場当たりのシェア率を高め、派遣から業務委託への切替を推進する。

 

*ファクトリーアウトソーシング領域
安定した食品分野のシェアアップを図る。食品以外の分野は、物流、消費財から売上総利益率の高い電機・電子分野等の受注拡大にシフトする。
2021年7月に連結子会社間の合併により、管理業務や拠点統合により収益性が改善する。

 

*介護ビジネス領域
新規出店(1拠点)による人材派遣売上の増加を見込んでいるほか、コンサルタントの増員、紹介予定派遣の拡大により人材紹介売上の増加も見込んでいる。

 

*スタートアップ人材支援領域
求人案件数は、感染症拡大前の水準に戻っており、今後も注視は必要なものの、求人案件数は堅調に推移する見通しである。
また、コロナ禍においてDXが加速しているように、今後の環境変化に対応した革新的なサービスを提供するスタートアップ企業からの求人需要は拡大すると見ている。
コロナ収束後の採用市場活性化を見据えた営業人材採用を引き続き強化する。

 

*建設技術者領域
未経験者の人材派遣拡大に向け、営業体制、フォロー体制拡充のための人員増員に向けた先行投資6億円(21.3期は2億円)を見込んでいる。

 

*その他
ALT派遣は引き続き拡大。IT人材の派遣・人材紹介を拡大する。

 

◎海外WORK事業
減収減益。
前期にあった政府補助金収入約7億円の影響がなくなるが、人材紹介売上の回復によりカバーする。人材派遣は堅調に推移すると見込んでいる。為替については、保守的に想定している。

 

4.中期経営計画「WILL-being 2023」

同社では2023年3月期をターゲットとする中期経営計画「WILL-being 2023」を遂行中である。

 

【4-1 中期経営計画のアップデート】

昨年発表した基本方針に変更は無いものの、新型コロナウイルス感染拡大の社会に対する様々な影響・変化を踏まえ、計画のアップデートを行った。

 

(1)アップデートのポイント
①外部環境の変化
「社会」、「企業」、「求職者」においてこれまでも予測されていた変化が、コロナ禍によって一気に加速し、働き方の未来が数年前倒しされたと考えている。

 

「社会」
世界の人口増加および先進国における高齢化の進展、不安定な政治情勢、持続可能な社会の実現に向けた動き(SDGs)の進展

 

「企業」
アウトソーシング需要の高まり、テクノロジーの進化による個人の働き方の大きな変化、持続的成長に向けた人材投資増加

 

「求職者」
テレワークの浸透による場所や時間に縛られないライフスタイル重視の働き方を望む声の拡大、人生100年時代を迎えての生涯労働期間増加に向けたシニアワーカーの増加

 

(2)中長期シナリオ
収益性を高めるとともに成長分野への投資を積極的に行うことで、将来の飛躍的な成長を実現する。
現在の営業利益率は3%程度だが、将来的には2ケタの利益率を目指す。

 

(3)事業ポートフォリオの明確化
高収益企業への変革に向け、以下の5領域で事業ポートフォリオを構築する。

領域

位置づけ

経営指標

利益最大化領域

売上成長・シェア拡大よりも、売上総利益率、生産性の向上を優先し、営業利益率を高める事業群

営業利益率

戦略投資領域

中長期のグループの柱となることを目指し、集中的に投資して成長を実現する事業群

売上成長率

探索領域

将来グループの柱となれる事業(一定規模以上の営業利益額または営業利益率が見込める事業)で、投資を実行するか見極める事業群

個別に設定

見極め領域

探索領域では、KPIを達成できず、事業の継続可否を判断すべき事業群。

個別に設定

撤退領域

一定規模以上の営業利益、営業CFの創出が将来的にも困難であり、速やかに撤退準備に入るべき事業群

 

 

【4-2 基本方針】

「WORK SHIFT戦略による高収益体質化」を掲げている。

 

WORK SHIFT戦略とは、ポートフォリオシフトとデジタルシフトにより、営業利益率を高める戦略。

ポートフォリオシフト

人材紹介や専門性の高い領域への人材派遣など「無期雇用:Perm領域(permanent)」を拡大し、成長機会の最大化・最適化を目指す。Perm SHIFTと呼ぶ。

Perm領域の21年3月期の粗利率は35%。

デジタルシフト

人材派遣や業務請負など「有期雇用:Temp領域(temporary)」のデジタル化推進による生産性向上や事業安定性を軸とした雇用機会の最大化・最適化を目指す。

Temp領域の21年3月期の粗率は14%。

 

これまでの同社は、複数カテゴリーでの事業展開、未経験、未資格のカジュアル派遣を中心としてきたが、今後は利益率が高いPerm領域のポートフォリオを拡大するとともに、Temp領域の生産性を高め、利益率を向上させることで、高収益体質に変革する考えだ。

 

【4-3 事業ポートフォリオマネジメント】

前述の5領域の「位置づけ」を基に、個別の事業を以下のように分類・運営し、基本方針である「WORK SHIFT戦略による高収益体質化」を目指す。

 

(同社資料より)

 

【4-4 重点戦略】

以下4つの戦略を推進する。

戦略

該当領域

戦略① ポートフォリオシフトによる収益性の改善

利益最大化領域

戦略投資領域

戦略② デジタルシフトによる生産性の改善

戦略③ 次なる戦略投資領域の探索

探索領域

戦略④ 財務戦略

グループ全体

 

戦略① ポートフォリオシフトによる収益性の改善
◎Perm SHIFTによる売上総利益率の改善
国内、海外とも、人材紹介、専門性の高い領域への人材派遣を拡大する(Perm SHIFT)。
その中でも特に、介護、建設技術者の領域にフォーカスする。
2023年3月期には国内外ともPerm領域が5割を超す計画。同時に売上総利益率を21年3月期の19.0%から21.8%まで引き上げる。

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

◎建設技術者派遣領域
従来の経験者採用中心から未経験者採用に注力する。高い離職率を改善し、建設技術者派遣領域においてトップを目指す。

 

21年3月期売上52億円を、23年3月期100億円まで倍増させる。
また未経験者採用を90名から、1,000名へと大幅に拡大する。

 

そのために、「顧客開拓」においては経験者での強みである土木領域に加え、未経験者を受入れやすい民間住宅、プラント、サブコン領域を強化する。強化に向けて営業人員も増加する。
「採用」においては、年間400名の新卒・未経験中途採用が可能な体制を構築する。2021年4月新卒入社は、131名であった。
また「定着率」については、入社前研修期間を延長し、入社後のギャップを解消するほか、稼働スタッフのフォローアップ体制を強化する。これまで同社が蓄積してきた定着率向上のノウハウが効果を発揮すると会社側は考えている。

 

人員増強および採用など、22年3月期、23年3月期それぞれ6億円、合計12億円の先行投資を計画している。
◎介護領域
人材紹介の売上比率を、21年3期の3%から23年3月期には16%まで引き上げ利益率を高める。

 

21年3月期売上132億円を、23年3月期183億円まで拡大させる。
うち、人材紹介売上は4億円から30億円へ。紹介人数は700名から2,700名へ拡大する。

 

「人材紹介」においては、エージェントを21年3月期の38名から23年3月期までに93名まで増員するほか、人材派遣の顧客基盤を活かしたオーダーを開拓する。紹介予定派遣を強化する。
「人材派遣」においては23年3月期までに4拠点を新規出店するほか、技能実習生や特定技能者など外国人労働者を積極採用する。
また「定着率改善」に向けてスタッフのフォローアップ、マッチング精度を高めていく

 

人員増強および採用など、22年3月期、23年3月期それぞれ2億円、合計4億円の先行投資を計画している。

 

◎介護、建設以外の領域
利益最大化領域においては、トップライン成長は緩やかなものの、より収益性の高い案件へシフトすることで売上総利益率の上昇を目指す。

 

セールスアウトソーシング領域

Perm領域

*5G端末の普及の機会を捉え、安定した通信分野を継続的に拡大

*売上総利益率の高い営業代行等の拡大に向け、現場正社員の採用を強化

コールセンターアウトソーシング領域

Temp領域

*売上総利益率の高い金融系案件を引き続き拡大

*案件当たりのシェア率を高め、派遣から業務委託に切替え、売上総利益率を改善

*コロナ関連の入札案件については、収益性・終了後の人員シフトが可能な場合には、積極的に取り組む。

ファクトリーアウトソーシング領域

Temp領域

*コロナ収束後の入国規制緩和に備え、引き続き外国人労働者採用を強化し、安定した食品分野のシェアアップによる収益性改善を目指す。

*食品以外の分野では、同じ軽作業でも物流、消費財よりも売上総利益率の高い電機・電子分野、自動車部品等の受注拡大にシフト。

海外WORK事業

Perm領域

Temp領域

*豪州、シンガポール拠点の各社で多国籍展開している顧客の共有により、顧客内のグループシェアを拡大

*人材派遣、人材紹介とは異なる新しいHR事業を探索

 

戦略② デジタルシフトによる生産性の改善

 

「業務のオンライン化・自動化による効率化」「データの一元管理による効率化」「テレワーク・面談のオンライン化による効率化」「連結子会社の統合に伴う効率化」を中心としたデジタルシフトにより、生産性を高める。

 

戦略③ 次なる戦略投資領域の探索
◎HRTech
次なる戦略投資事業をトライ&エラーを繰り返しながら、探索していく。
営業利益率の高いビジネスを探索することで、将来的な連結営業利益率向上を図る。

 

現在、AIを活用したエンジニア人材紹介「LAPRAS」、外国人就労管理ツール「アワマネ」「ビザマネ」、インバウンドサービス「ENPORT」などを手掛けており、課題を解決しながら先行投資を行って成長事業へ育成するべきかを検討していく。

 

このうち、インバウンドサービスであるビザマネ、ENPORTについてはミャンマー子会社、ベトナムの子会社及び提携先、インドネシアの提携先を通じたサービス利用者を、21年3月期の15,000名から23年3月期には80,000名まで拡大させる計画だ。

 

戦略④ 財務戦略
以下、3つの指標について目標を設定している。

 

財務項目

指標

目標

概要

財務健全性

親会社所有者帰属持分比率

20%以上

将来の成長投資や財務体質強化。21年3月期18%。

資本効率

ROIC

20%以上

収益率の改善と資本効率の向上。21年3月期14%。

WACCは11%程度と認識している。

株主還元

総還元性向

30%以上

成長投資を確保しつつ、利益還元の充実を図る。

 

【4-5 数値目標】

増収を継続し、先行投資(22/3期:約13億円、23/3期:約13億円)を行いながらも、営業利益率の改善を図る。
Perm領域の中でも、建設技術者、介護人材紹介の急成長及びそれに伴う利益率の向上を図る。

 

◎全社

 

20/3期

21/3期

22/3期(計画)

23/3期(計画)

CAGR/増加率

売上収益

1,219

1,182

1,210

1,335

+6.3%

前期比増収率

+18%

-3%

+2%

+10%

売上総利益率

20.8%

20.3%

21.2%

22.6%

+2.3pt

販管費

214

204

222

248

+10.3%

うち先行投資費用

13

13

営業利益

41.4

40.3

34.0

53.5

+15.2%

営業利益率

3.4%

3.4%

2.8%

4.0%

+0.6pt

ROIC

14%

14%

12%

20%

+6pt

自己資本比率

11.7%

17.7%

19.0%

22.0%

+4.3pt

総還元性向

25.1%

22.9%

30.6%

30.0%

+7.1pt

*単位:億円。CAGR/増加率は21/3期実績に対する23/3期計画までの伸び率。同社資料を基にインベストメントブリッジが計算。

 

◎Temp領域、Perm領域

 

20/3期

21/3期

22/3期(計画)

23/3期(計画)

CAGR/増加率

Temp領域

 

 

 

 

 

売上収益

849

854

834

865

+0.6%

売上総利益

127

118

125

131

+5.4%

Perm領域

 

 

 

 

 

売上収益

356

315

361

447

+19.1%

うち建設技術者

48

53

62

99

+36.7%

うち介護人材紹介

3

4

17

30

+173.9%

うち介護人材派遣

128

153

+9.3%

売上総利益

125

109

129

162

+21.9%

うち建設技術者

11

11

13

22

+41.4%

うち介護人材紹介

3

4

8

14

+87.1%

*単位:億円。CAGR/増加率は21/3期実績に対する23/3期計画までの伸び率。同社資料を基にインベストメントブリッジが計算。

 

5.今後の注目点

コロナ禍の影響を受け減収減益となった21/3期に続き、22/3期は増収ながらも減益予想ではあるが、これはPerm SHIFT、中長期のグループの柱となることを目指し集中的に投資して成長を実現する事業群の中でも、建設技術者派遣及び介護人材紹介への先行投資によるものである。

 

建設業界は新規需要が今後大きく増加することは見込みにくいが、老朽化したインフラの維持・補修が大きな課題となっている。介護業界は言うまでもなく高齢化が進行する中でその重要性は益々高まる一方であり、両業界とも国策としての対応が必要である。また、一部ではロボティクスやICTの導入も進んでいるようだが、人手不足の中で「人」の価値が一段と増大する分野でもある。
もちろん、競争も激しくなることも予想されるが、元来定着率の低い業界でその改善に実績を残してきた同社のノウハウや強みを活かして成長を実現することができるのか、中期的な視点で注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2021年06月22日)
基本的な考え方
当社は、経営の透明性とコンプライアンスを徹底するため、コーポレート・ガバナンスの充実を図りながら、当社グループ全体の経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築します。また、企業倫理、経営理念等を当社グループ全体に浸透させるため、様々な施策を通じて全社的な活動を展開します。

 

<実施しない主な原則とその理由>
2021年6月22日時点において、当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を全て実施しています。

 

<開示している主な原則>
【原則1-4】
(1)政策保有に関する方針
当社は、政策保有株式として上場株式を保有していません。今後につきましても、事業機会の創出、取引・協業関係の構築・維持・強化等を総合的に勘案し、中長期的な企業価値向上に資すると判断する場合を除き、保有しない方針としています。政策保有株式を保有する場合、上記の方針に照らし、保有の意義が希薄と判断した場合には、できる限り速やかに縮減していく方針としています。
(2)政策保有株式に係る検証の内容
政策保有株式を保有する場合は、定期的に、取締役会において、保有によるメリット、リスク、資本コストに対する投資対効果などの経済合理性、将来の見通し等についての評価を行い、継続保有の判断を行うこととしています。
(3)政策保有株式に係る議決権行使基準
政策保有株式に係る議決権の行使は、画一的に賛否を判断するのではなく、投資先企業の経営方針・戦略等を十分尊重したうえで、中長期的な企業価値ならびに株主還元向上の視点から、議案ごとにその賛否を判断し、議決権行使をすることとしています。

 

【原則5-1】
当社では、「情報開示の基本方針」「情報開示の基準」「情報開示の方法」「将来の見通しに関して」及び「沈黙期間について」からなるディスクロージャー・ポリシーを策定し、当社ホームページで公表しています。また、株主との建設的な対話を促進するための方針を次の通りとしています。
(1)当社のIR活動は、代表取締役、管理本部担当執行役員が積極的に対話に臨み、経営戦略・事業戦略・財務情報等について、公平性・正確性・継続性を重視し、双方向の良好なコミュニケーションを図るIR活動を展開します。
(2)管理本部を中心とし、経営企画、総務、財務、経理、法務、IT部門、各事業責任者等が有機的に連携し、適時かつ公正、適正に情報開示を行います。
(3)対話の手段として、株主向け会社説明会の充実等に取り組みます。
(4)対話において把握された株主の意見・懸念等は、代表取締役または管理本部担当執行役員を通じて、四半期単位で、当社各会議体へ適切かつ効果的なフィードバックを行います。
(5)ディスクロージャー・ポリシーに基づく沈黙期間の設定の他、インサイダー情報の管理に関する規程を運用し、徹底します。

 

 

 

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