朝日ラバー 減収減益 第13次中期経営計画がスタート
渡邉 陽一郎 社長 |
株式会社 朝日ラバー(5162) |
企業情報
市場 |
JASDAQ |
業種 |
ゴム製品(製造業) |
代表取締役社長 |
渡邉 陽一郎 |
所在地 |
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2 |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(自己株式を控除) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
584円 |
4,547,544株 |
2,655百万円 |
2.8% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
-円 |
-% |
-円 |
-倍 |
979.90円 |
0.60倍 |
*株価6/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
*今期のEPSとDPSの会社予想は未定。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に帰属する四半期純利益 |
EPS |
配当 |
2017年3月(実) |
6,511 |
475 |
490 |
341 |
76.09 |
16.00 |
2018年3月(実) |
7,534 |
561 |
589 |
459 |
101.98 |
20.00 |
2019年3月(実) |
7,706 |
483 |
508 |
352 |
77.97 |
20.00 |
2020年3月(実) |
7,489 |
325 |
346 |
126 |
27.91 |
30.00 |
2021年3月(予) |
– |
– |
– |
– |
– |
– |
*21/3期の会社予想は、新型コロナウィルスによる影響を現段階において合理的に算定することが困難なことから未定とされた。
*2020年3月期の内訳は、普通配当20円、記念配当10円。
*単位:百万円、円
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.新中期経営計画
3.2020年3月期
4.2021年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 20/3期は前期比2.8%の減収、同31.9%の経常減益。売上高は、ASA COLOR LEDの受注が増加したものの自動車スイッチの防水カバー等や認証・ 認識ビジネスに対応するRFIDタグ用ゴム製品の受注などが減少した工業用ゴム事業で減少した。一方、プレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム製品の受注が堅調に推移した医療・衛生用ゴム事業は増加した。セグメント利益は、売上高の減少を受け工業用ゴム事業で減少したものの、プロダクトミックスの改善により医療・衛生用ゴム事業は増加した。なお、20/3期においては新型コロナウィルス感染症拡大の影響は軽微であった。
- 21/3期の会社計画は、医療・衛生用ゴム事業は堅調である一方で、工業用ゴム事業において、新型コロナウィルスの影響によるグローバル市場の需要減速が、一部で回復の動きを見せているものの、その回復の見 通しは不透明な状況となっている。こうした環境下、新型コロナウィルスによる影響を現段階において合理的に算定することが困難との判断により業績予想、配当予想ともに未定とされた。同社は、今後、顧客からの受注状況により業績見通しが明らかとなり次第、公表する方針である。
- 残念ながら利益計画が未達成となった第12次中期経営計画ではあるが、自動車エクステリア照明市場や一般照明市場への新製品の投入を行ったことに加え、ARチェックバルブやF-TEMモジュールや伸縮配線応用製品など今後販売拡大が期待される製品を開発できたことは大きな成果と思われる。今期からスタートする第13次中期経営計画では、これら新製品を収穫期に結び付けることができるのかも大きなテーマの一つとなりそうである。第12次中期経営計画の期間中に種まきした新製品を、同社の今後の成長を牽引する主力製品へ育て上げることができるのか注目される。
1.会社概要
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。
グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
事業系統図
(同社決算説明会資料より)
海外拠点
(同社決算説明会資料より)
連結業績の推移
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、20/3期の売上構成比は、それぞれ83.8%、16.2%。 今後は、RFIDタグ用ゴム製品、ASA COLOR LENS、医療回路製品用ゴム部品などの販売拡大が期待される。
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。顧客に要求される均一な色を実現している。
ASA COLOR LEDのイメージ
(同社決算説明会資料より)
ASA COLOR LEDの採用例
(同社会社説明会資料より)
(同社会社説明会資料より)
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。素材変性技術による安全性の高い材料と表面改質技術による摺動性の向上により、医療ミス防止などの安全性向上に貢献している。
プレフィルドシリンジ向けガスケットのイメージ
(同社決算説明会資料より)
・RFIDタグ用ゴム製品
RFIDタグ用ゴム製品は、溶剤を使わずに接着させる“分子接着・接合技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のRFIDを提供。取り付ける対象がどのようなものかを記憶し、認識させる機能で、今後成長が期待される認証・認識ビジネスに対応。 ゴムという弾性体の特徴を生かして、RFIDが使用できなかった用途への利用が可能に。さらに応用し市場拡大を進める。
RFIDタグ用ゴム製品イメージ
(同社決算説明会資料より)
【コア技術と事業領域】
オープンイノベーションで事業領域深耕につながる研究を加速するとともに、製品化に向けた実証研究を強化する。
(同社会社説明会資料より)
・色と光のコントロール技術
シリコーンゴムに着色剤や蛍光体を配合し、様々な色と光を出すことのできる色調管理技術を有し、ばらつきを調整し、顧客が望む細かい色調を実現。また、透明なシリコーン樹脂を材料とし、耐熱性、対紫外線性に優れ、集光・拡散といったレンズ機能を実現。ASA COLOR LEDなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、自動車内装、照明分野とコア技術を応用したスイッチ分野の拡大を図る方針。
・表面改質及びマイクロ加工技術
接着剤を使わずに、ゴムとゴムや金属、樹脂を接着させる分子接着・接合技術を有する。接着させる表面を改質処理し、化学反応で結合。これにより、有害な溶剤の廃棄処理が不要となり、耐熱性、耐水性もクリア。耐水性、耐候性に優れており、RFIDタグ用ゴム製品やマイクロ流体デバイスでこの技術が生かされている。また、数十ミクロンから数ミクロン単位の表面加工を行うマイクロ加工技術を確立。医療用ゴム製品である薬液混注ゴム栓の薬液注入口の形成と薬液漏れの防止や、充電して使用できる二次電池の内圧管理にもこのマイクロ加工技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、高性能製品や新たな分野を開拓する方針。
・素材変性技術
ゴムをはじめとするソフトマテリアルは、素材に添加物を配合することで求める機能を持たせることができる。更に、ナノ・分子レベルで成形することによりその機能をパワーアップすることも可能。卓球ラケット用ラバーなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、医療分野を支える製品を提供する方針。
【ESGへの取り組み】
同社は、ESGへも積極的に取り組んでいる。
(同社会社説明会資料より)
項目 |
方針と実績 |
E(エコロジー)環境 | 環境に対する取り組みが、持続可能性のある社会の実現に寄与すること、また、事業の競争力の向上と持続的な成長を支える視点の一つととらえ、社会の要請の応えられるよう取り組みを行う。
●工場電力の削減 白河工場と福島工場に太陽光発電パネルを設置。 また、白河工場と福島工場の照明をLED蛍光灯に置き換え、省電力化を実現。 ●廃棄物のリサイクル推進 ゴム屑やポリシート、フィルムなどのプラスチック類に加え、硬質を 含む混合プラスチックの焼却灰をセメント原料として使用する活動を推進。 |
S(ソーシャル)社会 | 地域社会の一員としての会社であることから、地域への貢献活動も継続して行い、地域の皆様とのコミュニケーションを深めることで、従業員の責任感とモチベー ションの向上に役立てる。
●最寄駅の清掃 福島工場、第二福島工場の最寄駅であるJR東北本線泉崎駅で、毎週火曜日の就業時間前に4~5名の当番制で清掃活動を実施。 活動を開始して2019年で24年目となる。 ●卓球大会の開催 福島県の県南地区の中学生を対象にした朝日ラバー杯の卓球大会と、高校生や社会人も含めた卓球大会を主催。 ●ケアハウスの清掃 新入社員研修の一環として、地域のケアハウスの清掃を実施。 ●地域イベントへの参加 福島県白河市のイベント「まるごと白河」の企業ブースに出展し、地元にある企業の活動の認知を広め、従業員が直接地域の皆様とふれあう機会を創出。 |
G(ガバナンス)統制 | 2015年6月に、監査等委員会設置会社に移行。社外取締役を招聘し、社内にない多様な意見を取締役会に反映し、内部統制のしくみとマネジメントの監査・監督のしくみの両輪で、適切なリスクマネジメントを推進。トップダウンによる経営理念・経営方針の伝達と、ボトムアップによる現場の知恵の具現化により事業を成長させる。 |
2.新中期経営計画
同社は、中期経営計画を策定するにあたり、「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを未来に通ずる姿とし、朝日ラバーらしい価値を磨き、独自の新製品開発による成長を描くため、2030年を見据えたビジョンを「AR-2030VISION」を定めた。具体的な内容は、以下の通り。
【AR-2030VISION】
弾性無限の創造で持続的な価値向上がつながる社会に貢献する企業へと成長し続ける。弾性無限への挑戦。
【経営基盤】
CSR/ESG経営を重視し、グローバルな社会課題に挑戦する企業へと邁進します。
【行動指針】
ステークホルダー・エンゲージメントを高めること。
【技術基盤】
制御&感性へ -ゴムが有する無限の可能性に感性技術を加えてQOL向上を目指します-
独自の競争力の源泉となるコア技術は、色と光のコントロール技術、素材変性技術、表面改質およびマイクロ加工技術としている。それらコア技術に対して新たに感性技術を融合させ、現実世界・ サイバー空間がシームレスにつながる世界において、それぞれの事業分野における「人と機械(シス テム)のつながり」を成長の視点と捉え、新たな価値の創造をもって社会課題の解決に挑む。
【事業基盤】
重点4事業分野へ -事業価値を高め続けて10年後にありたい姿の実現を目指します-
これまでの重点3事業分野(車載・照明事業、医療・ライフサイエンス事業、その他事業)について社会が求める 2030 年の環境から見つめ直すとともに、将来に「実装化」が想定されるテクノロジーを見通しながら、光学事業、医療・ライフサイエンス事業、機能事業、通信事業の重点4事業分野に集中して10年後にありたい姿の実現を目指す。
第13次三ヵ年中期経営計画
同社は、AR-2030VISIONの実現に向けて、最初のステージの2023年3月期までの2020年4月~2023年3月を第13次中期三ヵ年として、中期計画および単年度計画を策定した。中期経営方針 として「誠実で機敏な対応力で岩盤を築き質的に成長する」を掲げ、中期経営戦略 として、①事業が貢献する機会を増やして密着し、素早く課題を解決する技術で経験と実績を積み上げる、②CSR/ESG経営へ進化させると定め、最終年度である23/3期に数値目標である、連結売上高80~90億円、連結営業利益率8%以上を目指す。環境の変化による影響を考慮しながら成長を続ける目標とするため、売上高目標は範囲を持って設定するとともに、利益については、売上高に影響を及ぼす市場環境の変化に対応しながらも、質的成長を目指すことから、連結営業利益率を目標指標とした。 また、設備投資計画は、21/3期~23/3期累計で約10億円。20/3期までに進めてきた設備投資や環境整備による生産体制充実と、更に新製品・開発製品に注力し、案件を早期に立ち上げるための開発投資も進める予定である。
(1)重点事業分野の取り組み
光学事業(主要製品:ASA COLOR LED、シリコーン製レンズ、白色シリコーンインキ、カラーフィルター、蛍光体応用製品など)
20/3期の連結売上高約35億円に対し、23/3期の売上高は40億円を計画。「感性、共感」をキーワードに、色と光を制御する技術と感性技術を磨き、自動車の内装照明市場から外装照明、またアンビエント照明※に向けた技術開発と提案を進める。また、海外の顧客へのアプ ローチをさらに進めていくため、自動車産業向けの品質マネジメントシステムである IATF16949の認証を白河工場で2020年12月に取得する予定。
※アンビエント照明とは、室内の環境照明、または全般照明の総称。
(同社中期経営計画資料より)
医療、ライフサイエンス(主要製品:採血用・薬液混注用ゴム栓、AR超薄膜シリコーンシート、ARチェックバルブ、プレフィルドシリンジ用ガスケット、マイクロ流体デバイスなど)
20/3期の連結売上高約12億円に対し、23/3期の売上高は約15億円を計画。診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨き、世界の医療現場と患者のQOL(Quality of Life)向上に貢献する。また、医療機器産業に向けた提案力を高めるため、医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格であるISO13485の認証について、白河第二工場においてこの中期経営計画中の取得を目指す。
(同社中期経営計画資料より)
機能事業(主要製品:車載スイッチ用ラバー、感圧ラバーセンサ、F-TEM※、卓球ラケット用ラバー、気流制御電極など)
20/3期の連結売上高約18億円に対し、23/3期の売上高は21億円を計画。ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術と触覚・熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、将来のライフスタイルの実現への貢献に向けて、弾性無限で人に優しい感性価値を提供する。
※F-TEM(Flexible Thermos Electric Module)とは、ゴムならではの柔軟性を持った同社独自のペルチェデバイス。
(同社中期経営計画資料より)
通信事業(主要製品:RFIDタグ用ゴム製品、ビーコン、コネクタ、伸縮配線、ラバーファントムなど)
20/3期の連結売上高約9億円に対し、23/3期の売上高は12億円を計画。自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、伝える・伝わるセンシング技術、触覚・ 熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、ゴムだからこそ実現できる価値を提供する。
(同社中期経営計画資料より)
(2)海外展開
同社グループは、顧客の要望に応えるため最適なロケーションとして、アメリカと中国に販売子会社と生産子会社を設置している。 重点事業分野に向けて同社の価値をこれまでよりも広く認知してもらうため、積極的に海外市場へのアプローチを進めて、価格競争ではなく、顧客に密着した活動により独自の価値を提供して、顧客満足度の向上を図り販売拡大に結び付ける方針である。
(同社中期経営計画資料より)
その他、同社は新中期経営計画の経営戦略に掲げる「CSR/ESG経営に進化させる」の達成に向け、サステイナビリティビジョン2030を2020年中に策定する予定である。今後もステークホルダーとの対話を通じて企業価値の向上を目指す方針である。
3.2020年3月期決算
(1)連結業績
19/3期 |
構成比 |
20/3期 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
7,706 |
100.0% |
7,489 |
100.0% |
-2.8% |
売上総利益 |
1,907 |
24.8% |
1,755 |
23.4% |
-8.0% |
販管費 |
1,423 |
18.5% |
1,430 |
19.1% |
+0.4% |
営業利益 |
483 |
6.3% |
325 |
4.3% |
-32.7% |
経常利益 |
508 |
6.6% |
346 |
4.6% |
-31.9% |
親会社株主に帰属する四半期純利益 |
352 |
4.6% |
126 |
1.7% |
-64.0% |
*単位:百万円
前期比2.8%の減収、同31.9%の経常減益
売上高は、前期比2.8%減の74億89百万円。売上面では、工業用ゴム事業の売上高が同3.4%減少。今期における新型コロナウィルス感染症拡大による受注への影響は小さく、主力 製品である自動車内装照明用のASA COLOR LEDの受注が増加した。一方、自動車用精密ゴム製品の受注が市場の競争環境の変化を受けて減少したことに加え、認証・認識ビジネスに対応するRFIDタグ用ゴム製品の受注でも引き続き提案活動を推進したものの低調な推移となった。また、医療・衛生用ゴム事業の売上高は同0.5%の増加となった。プレフィルドシリンジガスケット製品、採血用・薬液混注用ゴム製品ともに受注は堅調に推移した。更に受注力を向上させるため、医療生産エリア拡充に向けた活動も開始した。
営業利益は、前期比32.7%減の3億25百万円。売上高が減少した工業用ゴム事業のセグメント利益は同30.7%の減益となった一方で、プロダクトミックスが改善した医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益は同15.4%の増益となった。売上高営業利益率は、4.3%と前期比2ポイントの低下。収益性の高いRFIDタグ用ゴム製品の売上高の減少等が影響し、売上総利益率は、23.4%と同1.4ポイント低下した。合理化により販管費の実額は減少したものの、売上高の減少により売上高対販管費率も同0.6ポイント上昇。また、前期と比較して営業損益の変動は小さく経常利益の減益率は概ね営業利益の減益率並みとなったより改善した。その他、特別損失で退職給付費用1億62百万円を計上した影響などにより親会社株主に帰属する当期純利益は、同64.0%の減益となった。
1株当たり配当は、通期で減益となったものの安定配当の側面を考慮し、期初計画通り19/3期から10円増配の30円(上期末10円、期末20円)を実施する方針である。なお、期末配当20円には、創立50周年の記念配当10円が含まれている。
四半期業績の推移
20/3期第4四半期(1-3月)は、落ち込みが大きかった前年同期比で大幅な増収増益となったものの、前四半期(10-12月)比ではほぼ横ばいとなった。
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。
(2)セグメント別動向
セグメント別売上高・利益
|
19/3期 |
構成比 |
20/3期 |
構成比 |
前期比 |
工業用ゴム事業 |
6,498 |
84.3% |
6,276 |
83.8% |
-3.4% |
医療・衛生用ゴム事業 |
1,207 |
15.7% |
1,213 |
16.2% |
+0.5% |
連結売上高 |
7,706 |
100.0% |
7,489 |
100.0% |
-2.8% |
工業用ゴム事業 |
641 |
79.7% |
444 |
70.3% |
-30.7% |
医療・衛生用ゴム事業 |
162 |
20.3% |
187 |
29.7% |
+15.4% |
全社費用 |
-320 |
– |
-307 |
– |
– |
連結営業利益 |
483 |
– |
325 |
– |
-32.7% |
*単位:百万円
セグメント別売上高(中期事業分野別)
19/3期 |
構成比 |
20/3期 |
構成比 |
前期比 |
|
車載・照明 |
3,154 |
40.9% |
3,429 |
45.8% |
+8.7% |
医療・ライフサイエンス |
1,227 |
15.9% |
1,228 |
16.4% |
+0.1% |
その他 |
3,324 |
43.2% |
2,831 |
37.8% |
-14.8% |
連結売上高 |
7,706 |
100.0% |
7,489 |
100.0% |
-2.8% |
車載・照明セグメントでは、ASA COLOR LEDの売上高増加が寄与した。医療・ライフサイエンスセグメントでは、医療用ゴム製品の受注が全般的に堅調となった。また、その他セグメントでは、RFIDタグ用ゴム製品、自動車スイッチ用ゴムの受注減少が影響した。
*単位:百万円
国内・海外別売上高
|
19/3期 |
構成比 |
20/3期 |
構成比 |
前期比 |
国内 |
6,346 |
82.4% |
5,938 |
79.3% |
-6.4% |
海外 |
1,359 |
17.6% |
1,550 |
20.7% |
+14.0% |
アジア |
1,195 |
15.5% |
1,369 |
18.3% |
+14.6% |
北米 |
149 |
1.9% |
164 |
2.2% |
+10.4% |
欧州 |
15 |
0.2% |
16 |
0.2% |
+8.5% |
合計 |
7,706 |
100.0% |
7,489 |
100.0% |
-2.8% |
*単位:百万円
国内売上高は前期比6.4%減少、海外売上高はアジアの増加が寄与し同14.0%増加した。
主力製品の売上推移
19/3-1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
20/3-1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
前期比(年度) |
|
ASA COLOR LED |
768 |
768 |
733 |
646 |
758 |
846 |
815 |
801 |
+10.4% |
ディスポーザブル用ゴム製品 |
264 |
309 |
329 |
276 |
279 |
306 |
309 |
293 |
+0.9% |
卓球ラケット用ラバー |
113 |
94 |
100 |
105 |
123 |
113 |
88 |
104 |
+3.5% |
RFIDタグ用ゴム製品 |
184 |
218 |
325 |
171 |
139 |
142 |
130 |
172 |
-35.0% |
*単位:百万円
ASA COLOR LEDは、前期末の顧客の在庫調整が完了し、20/3期第1四半期から受注が回復傾向にある。ディスポーザブル用ゴム製品は、採血用・薬液混注用ゴム栓の新機種の受注と回路製品の新規製品の量産がスタートした。卓球ラケット用ラバーは、顧客による市場の販売状況が好調で受注は好調に推移している。RFIDタグ用ゴム製品は、顧客の販売状況と新旧製品の入れ替えに伴う現行品の在庫調整の影響などにより受注が低迷している。
(3)個別及び子会社の動向
個別業績 | |||||
19/3期 |
構成比 |
20/3期 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
7,194 |
100.0% |
6,938 |
100.0% |
-3.6% |
売上総利益 |
1,555 |
21.6% |
1,464 |
21.1% |
-5.8% |
営業利益 |
348 |
4.8% |
246 |
3.5% |
-29.4% |
経常利益 |
399 |
5.6% |
300 |
4.3% |
-25.0% |
当期純利益 |
270 |
3.8% |
79 |
1.1% |
-70.6% |
*単位:百万円
単体は、RFIDタグ用ゴム製品、自動車スイッチ用防水カバーなどの受注が減少して減収減益となった。
子会社の動向 |
|
||||||
(株)朝日FR研究所 |
ARI International Corp. |
|
|||||
ゴム・プラスチック等の研究開発 1987年4月設立 |
工業用ゴム製品の販売 1999年6月設立 |
|
|||||
20/3期 |
前期比 |
19/12期 |
前期比 |
|
|
||
研究収入/売上高 |
135,600 |
-16.9% |
162,348 |
+1.8% |
|||
経常利益 |
4,259 |
– |
-13,058 |
– |
|||
当期純利益 |
2,791 |
– |
-13,058 |
– |
|||
円換算レート |
– |
1米ドル=109.25円 |
|
|
|||
朝日橡膠(香港)有限公司 |
東莞朝日精密橡膠制品有限公司 |
朝日科技(上海)有限公司 |
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工業用ゴム製品の販売 2005年11月設立 |
工業用ゴム製品の製造・販売 2010年7月設立 |
工業用ゴム製品の開発・設計・販売 2012年1月設立 |
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19/12期 |
前期比 |
19/12期 |
前期比 |
19/12期 |
前期比 |
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研究収入/売上高 |
397,770 |
-27.1% |
717,920 |
-10.4% |
251,949 |
-1.5% |
|
経常利益 |
35,697 |
-42.2% |
33,829 |
-50.3% |
6,441 |
-59.4% |
|
当期純利益 |
32,670 |
-39.6% |
31,228 |
-38.2% |
6,115 |
-58.7% |
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円換算レート |
1香港ドル=13.95円 |
1人民元=15.82円 |
1人民元=15.82円 |
*単位:千円
米中貿易摩擦の影響もあり、米国と中国の子会社は減益傾向となった。
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー
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19年3月 |
20年3月 |
19年3月 |
20年3月 |
|
現預金 |
2,388 |
2,259 |
仕入債務 |
401 |
413 |
売上債権 |
1,793 |
1,826 |
短期有利子負債 |
1,100 |
1,027 |
たな卸資産 |
832 |
995 |
流動負債 |
3,126 |
2,946 |
流動資産 |
5,367 |
5,305 |
長期有利子負債 |
2,074 |
2,018 |
有形固定資産 |
3,946 |
3,953 |
固定負債 |
2,851 |
2,992 |
無形固定資産 |
101 |
99 |
純資産 |
4,471 |
4,456 |
投資その他 |
1,033 |
1,036 |
負債・純資産合計 |
10,449 |
10,395 |
固定資産・繰延資産 |
5,081 |
5,089 |
有利子負債合計 |
3,175 |
3,045 |
※単位:百万円。有利子負債=借入+リース債務 |
20年3月末の総資産は19年3月末比54百万円減の103億95百万円。資産サイドでは借入金の返済及び未払法人税等の支払いによる現預金の減少が、負債・純資産サイドでは、借入金や未払法人税等が主な減少要因。純資産は投資有価証券の時価評価下落によりその他有価証券評価差額金が減少し、同15百万円減少した。20年3月末の自己資本比率は、42.9%と前期末から0.1ポイント上昇した。
キャッシュ・フロー | ||||
19/3期 |
20/3期 |
前期比 |
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営業キャッシュ・フロー |
540 |
871 |
330 |
+61.1% |
投資キャッシュ・フロー |
-747 |
-644 |
103 |
– |
フリー・キャッシュ・フロー |
-206 |
227 |
434 |
-209.9% |
財務キャッシュ・フロー |
-107 |
-208 |
-101 |
– |
現金及び現金同等物の期末残高 |
834 |
847 |
13 |
+1.6% |
※ 単位:百万円。
CFの面から見ると、前期との比較で、退職給付に係る負債の増加や仕入債務の増加などによりにより営業CFのプラス幅が拡大した。また、有形固定資産の取得による支出の減少などにより、投資CFのマイナス幅も縮小し、フリーCFはプラスへ転じた。一方、長期借入れによる収入の減少などにより、財務CFのマイナス幅は拡大した。
(5)設備投資実績
20/3期の設備投資は6億33百万円円(19/3期6億80百万円)、減価償却費は5億50百万円(同4億17百万円)。主にASA COLOR LEDの生産効率化のための設備改造投資を実施した他、太陽光発電システムを第二福島工場へ新設、白河工場に増設した(計45百万円)。
事業分野別設備投資の内訳 |
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車載・照明 |
145百万円 |
生産効率を図る改造投資 |
医療・ライフサイエンス |
159百万円 |
生産効率を図る改造投資 |
その他 |
316百万円 |
生産環境整備の投資 |
共通 |
13百万円 |
太陽光発電システムの設置 |
(6)退職給付債務計算方法の変更
同社は、退職給付債務の算定の対象となる従業員数が定常的に300人を超えると判断したことから、より信頼性の高い退職給付債務の見積もりにより業績評価を行うため、簡便法から原則法に変更した。従来の簡便法と原則法とで見積計算が異なるため退職給付の増加分を一括で費用計上する必要がある。これに伴い同社は、20/3期決算において退職給付費用1億62百万円を特別損失で計上した。
4.2021年3月期業績予想
(1)連結業績
20/3期 |
構成比 |
21/3期 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
7,489 |
100.0% |
– |
-% |
-% |
売上総利益 |
1,755 |
23.4% |
– |
-% |
-% |
販管費 |
1,430 |
19.1% |
– |
-% |
-% |
営業利益 |
325 |
4.3% |
– |
-% |
-% |
経常利益 |
346 |
4.6% |
– |
-% |
-% |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
126 |
1.7% |
– |
-% |
-% |
*単位:百万円
21/3期は、売上高計画、利益計画ともに未定
足元医療・衛生用ゴム事業は堅調である一方で、工業用ゴム事業において、新型コロナウィルスの影響によるグローバル市場の需要減速が、一部で回復の動 きが出てきているものの、その回復の見通しは不透明な状況となっている。日本においても緊急事態宣言等により同社の顧客においても事業活動が様々な制約 を受けており、現時点では受注予測の変動の可能性が高く、その回復程度と時期により同社の業績が大きく変動することから、21/3 期の会社計画は期初の段階では未定とされた。同社は、今後、顧客からの受注状況により業績見通しが明らかになった段階で会社計画を速やかに公表する方針である。
1株当たり配当についても、今期業績の会社計画が未定であることから、中間配当及び期末配当とも未定とされた。今後、業績予想が明らかになり次第、配当計画も公表される見込である。
21/3期の経営方針と経営戦略
【経営方針】
さらに好奇心を高めて深化、進化、新化しよう
【経営戦略】
事業が貢献する機会を増やして密着する。
素早く課題を解決する技術で経験と実績を積み重ねる。
CSR/ESG経営へ進化させる。
実効性や有効性を磨き鍛える。
(2)最近のトピック
【切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線を開発】
同社は、切り紙構造とゴムを複合することにより低応力で伸長し、耐久性と抵抗値特性に優れた新しい伸縮配線を開発した。ゴムの復元力と立体的な構造により、さまざまな配線として活用が可能となる。
日本の伝統工芸である「切り紙」に着想を得て、立体的に構造変化するよう加工された導電フィルムの周囲を独自のシリコーンゴムで封止することで低応力での伸長と高い絶縁性を可能にし、ゴムの復元力で収縮することで高い耐久性を兼ね備えた配線を実現した。
独自の複合化技術により、100%の伸縮試験でも70万回の伸縮でほとんど抵抗値が変わらず、電気特性の安定した接続が可能な他、市販のFPC(フレキシブルプリント配線板)コネクタに接続が可能。更に配線パターンを変更することにより伸長率や配線の長さ、チャンネル数をコントロールすることができる。
新しい伸縮配線は生体センシングの分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学との共同研究で発表された新しいウェアラブル筋電計測デバイスの一部にも用いられた。今後、様々なスポーツにおける計測に活用される他、ウェアラブルデバイスやロボット、介護などの配線として幅広い分野での活用が見込まれる。
<構造イメージ>
(同社HPより)
(同社HPより)
5.今後の注目点
今後新型コロナウィルス感染症拡大の影響が懸念されるものの、20/3期第4四半期は、主力製品が順調に推移していることが確認された。主力のASA COLOR LEDは顧客の在庫調整が終了し高水準の受注が継続している。また、ディスポーザブル用ゴム製品は、採血用・薬液混注用ゴム栓の新機種の受注と回路製品の新規製品の量産がスタートし、卓球ラケット用ラバーも顧客による市場の販売状況が好調で受注が好調に推移している。その他、受注の落ち込みが大きかったRFIDタグ用ゴム製品も20/3期第3四半期(10-12月期)との比較において、20/3期第4四半期(1-3月期)は、売上高が大幅に増加した。本来であれば21/3期は業績の回復期であっただけに新型コロナウイルス感染症拡大が非常に残念である。しかし、顧客企業の段階的な生産再開や事業活動の正常化により同社への受注も今後徐々に増加してくるものと期待される。同社は、今後の受注状況を把握した上で、見通しが明らかとなった段階で通期会社計画の公表を行う予定である。いち早く通期の会社計画が公表されとすれば、それは受注の回復傾向が強まったことを意味しており、同社の先行きに対する自信の表れと言えよう。いつの時点で、今期会社計画の公表が実施されるのか注目される。
また、残念ながら利益計画が未達成となった第12次中期経営計画ではあるが、自動車エクステリア照明市場や一般照明市場への新製品の投入、加えて、ARチェックバルブやF-TEMモジュールや伸縮配線応用製品の開発など今後販売拡大が期待される製品が育ちつつある。今期からスタートする第13次中期経営計画では、これら新製品をいかに収穫期に結び付けるかも大きなテーマの一つと言えよう。第12次中期経営計画の期間中に種まきした新製品を、今後の同社の成長を牽引する主力製品へ育て上げることができるのか注目される。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 8名、うち社外2名 |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月29日
「当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>
原則 |
開示内容 |
【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】
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年二回行っている社内での方針説明会、また毎月全社員を対象に行っている月例報告会で、健全な事業活動倫理を尊重する精神について、様々な角度と表現で伝えています。また、地域の経済同友会などに加盟し、他企業と交流を深めることで情報収集を行い、社内に展開しております。
特に重視しているのは社内のオープンなコミュニケーションです。いろいろな意見を出せる環境、聞く環境を整えていくことで、ステークホルダーを尊重する企業風土を醸成していけると考えております。 |
【株主との対話】
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当社WEBサイトで中期経営計画をわかりやすく公開しています。また、個人投資家向けのページでは、会社の目指す方向やトップメッセージなどを紹介しています。なお、2020年3月期通期決算の説明会は、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため中止といたしましたが、当社ホームページにおいて2020年3月期決算と2021年3月期の見通しに関するQ&Aおよび中期経営計画についての動画を掲載しております。 |