(3667:東証1部) enish 営業損益改善 タイトル投入後の売上・利益に注目

2019/03/20

3667enish

今回のポイント
・18/12期は前期比24.3%の増収、7億16百万円の営業損失(前期は9億14百万円の損失)。ネイティブアプリ「欅のキセキ」が増収をけん引する中、ブラウザゲーム2タイトルも漸減傾向ながら総じて安定して推移した。ただ、変動費、「欅のキセキ」の支払ロイヤリティ、ファッションレンタルサービス「EDIST.CLOSET」関連費用に加え、新規タイトルの開発費等による営業費用の増加を吸収できなかった。4Q(10-12月)は新規タイトルの開発費を積極的に投下する一方、「12オーディンズ」の国内版クローズと「EDIST.CLOSET」事業の譲渡を実施し、一段の選択と集中を進めた。・「モバイルゲーム事業を取り巻く環境は変化が激しく、当社の事業も短期間に大きく変動する可能性があることなどから、信頼性の高い業績予想数値を算出することが困難となっている」として、業績予想の開示を見合わせた。決算業績及び事業の概況の速やかな開示に努める考え。

・新規タイトルの開発過程で一時的にコストが増加する事はあるが、コスト削減は進んでいるため、売上をいかに伸ばすかが課題。IPタイトルは当初から高い注目を集め売上貢献が期待できるが、原価率が高い。オリジナルタイトルはマーケティングの難易度が上がっている。こうした中、19/12期はIPタイトルとオリジナルタイトルを1本ずつ投入する。投入時期は未定だが、投入後の売上・利益の変化に注目したい。

会社概要

レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランII」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」等の人気作品を有するモバイルゲームの企画・開発・運営会社。「Link with Fun」というスローガンの下、「世界中にenishファンを作り出す」事をミッションとして掲げている。社名の「enish(エニッシュ)」は、人と人との縁(えん、えにし)に由来する。

基本方針は、(1)IPタイトルの強化、(2)オリジナルタイトルの強化、(3)非ゲーム事業への投資。「欅のキセキ」を中心としたゲーム事業の更なる成長と非ゲーム事業の拡大により安定した収益基盤の構築を目指している。非ゲーム事業では、ファッションレンタルサービス「EDIST.CLOSET」の提供、「Yahoo!ゲーム プレイヤー」の運用等を手掛けている。

グループが歩んだ成長の軌跡と、メンバーが努力し続ける事で起こした奇跡をたどるドキュメンタリータッチのパズルゲーム。ファンにグループやメンバーを知ってもらえるように工夫されており、メンバーが写真や動画で登場する。アイテム課金制をとっており、基本プレイは無料。350万超のダウンロード数を誇り、ユーザーレビューも安定して高評価を維持している(App Store4.8、Google Play4.5)。

2018年12月期決算
「欅のキセキ」をけん引役に売上が増加し、営業損失が減少

ネイティブアプリ「欅のキセキ」が増収をけん引する中、「ぼくのレストランII」や「ガルショ☆」のブラウザゲームも漸減傾向ながら総じて安定した推移となり、売上高が54億49百万円と前期比24.3%増加した。ただ、変動費である支払手数料、「欅のキセキ」の支払ロイヤリティ、EDIST.CLOSET関連費用に加え、新規タイトルの開発費(労務費及び外注費を費用計上)を中心にした営業費用の増加を吸収できず7億16百万円の営業損失となった。

尚、10月31日に「12オーディンズ」の国内版をクローズした他(海外版は引き続き展開)、12月1日には「EDIST.CLOSET」事業を(株)アドベンチャーに譲渡した。一方、開発中のタイトルは、オリジナルタイトル1本、IPタイトル1本。共に19/12期の投入を予定しており、オリジナルタイトル(「De:Lithe ~忘却の真王と盟約の天使~」)についてはティザーサイト(開発中のタイトルの広告サイト)を公開した。

18/12期第4四半期(10-12月)は、「ぼくのレストランII」、「ガルショ☆」、「欅のキセキ」がほぼ横ばいで推移したものの、「12オーディンズ」の国内版クローズや「EDIST.CLOSET」譲渡の影響で売上高が12億17百万円と前年同期比及び前四半期比で減少した。損益面では、新規タイトルのアート量産等に伴う外注費を中心に開発費が増加し、営業損失が前年同期及び第3四半期を上回った。同社は開発費を資産計上せず、全額期間費用として計上している。

期末総資産は前期末との比較で1億91百万円増の18億74百万円。自己資本比率66.5%(前期末41.7%)。同社は、17/12期、18/12期と2期連続で営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローを計上したため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している。しかし、①収益性が高いタイトルに対して優先的に開発・運営人員を配置する事による、売上の維持拡大、②プロダクトポートフォリオの見直し及び品質管理による収益力の強化、に取り組むと共に、③資金調達や資金繰りの安定化、④経費の削減に努めており、また、2019年1月7日付で実施した第三者割当による新株予約権が2019年2月12日までに3,735個行使され、1億68百万円の資金も調達した。このため、同社は、「継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められない」と判断している。

サービスの進捗状況

18/12期は、10月31日に「12オーディンズ」の国内版をクローズし(海外版は引き続き展開)、12月1日には「EDIST.CLOSET」を(株)アドベンチャーに事業譲渡した。その一方で、12月20日にキャラクターグッズ販売のECサイト「ちびマ!」をリリースし、19/12期中の投入に向け、オリジナルタイトル1本、IPタイトル1本の開発を進めている。オリジナルタイトルについては、タイトルが「De:Lithe(ディライズ) ~忘却の真王と盟約の天使~」と決まり、既にティザーサイトも公開されている。

主要3タイトルでは、「ぼくのレストランII」が、新機能デコ改善や他社IPとのコラボレーション等の取り組みにより、四半期ベースでわずかな減収にとどまっている。「ガルショ☆」は8周年イベントでの復刻ガチャの好調で第4四半期の売上実績が第3四半期を上回った。「欅のキセキ」においては、1周年フェスティバルによる様々な施策とイベントを実施した他、機能を追加してカード収集の遊び方を提案した。また、オリジナル楽曲を調整中である。

レストラン経営シミュレーション「ぼくのレストランII」

2010年6月にサービスを開始し、18/12期末で8年6ヶ月が経過した。会員数は170万人。18/12期第4四半期は、キッチンやフロアをデコレーションする新機能を加えた他、新デコガチャを販売した。また、(株)サンリオとのライセンス契約により「はろうきてぃ茶寮」の期間限定コラボを実施した。今後も継続的なコラボの実施等、魅力的な商材を提供していく。

アパレルショップ経営シミュレーション「ガルショ☆」

2010年11月にサービスを開始し、18/12期末で8年1ヶ月経過した。会員数は130万人。18/12期第4四半期は、アップデートに伴い「変身アイテム」を追加した効果や8周年記念の復刻ガチャの好調で前四半期比増収となった。コラボを推進すると共に、魅力的なアイテムを提供する事でユーザー満足度を高めていく。

「欅のキセキ」

ダウンロードが350万に達しており、第4四半期は1周年フェスティバルやイベントの実施による活性化効果も確認できた。引き続き魅力的な施策を実施していく。また、(株)ローソンとのコラボはECサイト「ちびマ!」との連携でシナジーを高めている。今後も、機能追加、魅力的なコンテンツの提供、雑誌社タイアップ販促連動等、各種コラボを実施していく。

機能追加と今後の施策

済・マイコレクション:集めたカードを自由に並べて鑑賞する機能を追加

済・カード図鑑:「全て」「メンバー」「衣装テーマ」「グループ」のカテゴリに分け収集状況を確認

済・撮り下ろしコンテンツ:専属カメラマンによるライブ撮り下ろし、雑誌社撮り下ろしコンテンツを追加

済・リバイバルイベント:過去のイベント衣装の全てのメンバーカードを獲得が可能

済・新VR動画公開:1眼または2眼にて楽しめる360度VR動画、まるで目の前にいるかのような感覚を提供

β版 ・スペシャルレッスン:新しいルールのパズルで金の宝箱からスペシャルカードを獲得可能、改修中

公式オンラインストア「ちびマ!」

同社が運営するゲームアプリを中心としたキャラクターグッズを販売する公式オンラインストアである。コンセプトは、“ちびキャラといつも一緒に”。第1弾として、欅坂46初の公式ゲームアプリ「欅のキセキ」のアクリルチャームや缶バッジのオリジナルグッズを販売している。第2弾以降、大型タイトル等の商品を随時追加していく予定。

19/12期の取り組み

「業績予想につきましては、モバイルゲーム事業を取り巻く環境の変化が激しく、当社の業績も短期的に大きく変動する可能性があること等から、信頼性の高い業績予想数値を算出することが困難となっている」として、開示を見合わせた。ゲーム事業に注力し、既存タイトルの売上高の維持・拡大を図ると共に、新規タイトルとしてオリジナルタイトル1本及びIPタイトル1本の2タイトルを投入する。新規タイトルを遅延なくリリースし、このうちオリジナルタイトルについては海外展開の準備も進めている。この他、Yahoo!ゲームプレイヤー、着せ替えアプリ、ちびマ!(EC)といったゲームやアプリの周辺領域で非ゲーム事業を展開していく。

(1)新規タイトル
オリジナルタイトル「De:Lithe(ディライズ) ~忘却の真王と盟約の天使~」

爽快高速コマンドバトル、高品質の日本式アート、極上のストーリー・世界観体験を特徴とする王道ロールプレイングゲーム。海外展開を念頭に開発されており、海外でも通用する育成システム&マネタイズを併せ持つ。App Store・google playにて、19/12期中のリリースを予定している。

IPタイトル

ユーザー評価の高い欅坂46公式アプリ「欅のキセキ」で培ったノウハウである、版元との連携、IPの世界観表現、効果的な演出等を駆使したアクションロールプレイングゲーム。IP特有の展開によりプロモーションを効率的かつ効果的に実施する事で収益の最大化を図る。タイトルは未定だが、App Store・google playにて、19/12期中のリリースを予定している。

(2)コストコントロール

現状は新規開発コストの費用計上額が大きいため、労務費、人件費、外注加工費を中心にコントロールしていく。労務費・人件費については、人員は大幅増員せず現状を維持(正社員135名程度、非正社員40名程度)し、既存タイトルから新規タイトルへ人員をシフトさせると共に、必要に応じて中国子会社「enish china」の増員やスポットで外注対応を行う。外注加工費については、開発量産フェーズに入り、18/12期第4四半期からアートの制作費が増加しているが、QA(品質保証)コスト等は効率化を進めている。広告宣伝費については、事前登録からKPIを設定し効果的なプロモーションを実施する。リリース後の初動は大きく投下する考えだが、費用対効果を見て柔軟に対応していく。原則、IPは「欅のキセキ」を参考に効率化し、オリジナルタイトルに資金を投下していく。支払手数料については、新規タイトルリリース後の増加が見込まれる。この他、収支を踏まえて主要ゲーム以外の小さい既存タイトルの継続を判断する他、ボットやFAQ等のシステム導入によりCAコストを効率化する等、コスト全般の圧縮に取り組む。

今後の注目点
営業損益の改善は、△9億14百万円から△7億15百万円への改善にとどまったが、営業CFは△8億85百万円から△3億81百万円へ大きく改善した。新規タイトルの開発過程で一時的にコストが増加する事はあるが、コスト削減は進んでおり、売上をいかに伸ばすかが課題。IPタイトルは当初から高い注目を集めるが、原価率が高い。一方、オリジナルタイトルはマーケティングの難易度が上がっており、同業他社も苦戦を強いられている。こうした中、19/12期はIPタイトルとオリジナルタイトルを1本ずつ投入する。月商ベースで1億円程度、売上を上積みする事ができれば、新規タイトルの開発費を吸収して安定的に利益を計上できるのではないだろうか。投入時期は未定だが、投入後の売上・利益の変化に注目したい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書   更新日:2018年08月07日
基本的な考え方

当社は、企業価値を継続的に高めていくためには、迅速な意思決定や適切な業務執行と共に、経営の健全性と透明性を高める経営監視システムを強化し、機能させることが極めて重要だと認識し、ステークホルダーの信頼維持のため、コーポレート・ガバナンスの充実に努めています。

<実施しない主な原則とその理由>

原則4-8 独立社外取締役の有効な活用

当社は、取締役会における議論が一層活性化し適切な意思決定が行われることや、その監督機能を強化することなどを目的として、独立社外取締役を1名選任しております。しかしながら、変化の激しい事業環境の中、事業規模を鑑みながら、今後、コーポレート・ガバナンスをさらに充実させるため独立社外取締役が複数名となるよう候補者の検討を行っております。

原則4-9 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質

当社は、独立性に関する基準又は方針は定めておりませんが、選任にあたっては、一般株主と利益相反が生じるおそれがないものとすることを選任基準のひとつと考え、東京証券取引所が定める独立性基準を参考にしております。

原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表

モバイルゲーム事業を取り巻く環境の変化が激しく、当社の業績も短期的に大きく変動する可能性があること等から、具体的な数値目標を算出することが困難となっているため、決算業績及び事業の概況のタイムリーな開示に努め、具体的な数値目標については開示を見合わせます。

<開示している主な原則>

原則3-1 情報開示の充実

(i)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画

当社は、「Link with Fun」というスローガンのもと、「世界中にenishファンを作り出す」ことをミッションとして掲げ、ゲームデザイナー、エンジニア及びアートデザイナーが付加価値の高いサービスを生み出す会社であるとともに、グローバルマーケットに立てるクリエーター、スペシャリストを生み出す会社でもあり続けたいという経営の基本方針のもと、モバイルゲームを通じて、世界中のユーザーに新たな喜びを提供してまいります。また、当社が属するモバイルゲーム業界につきましては、競争環境が激化しております。このような状況の下、当社といたしましては継続的に良質なゲームタイトルを市場に投入するとともに、ゲーム事業以外の新規事業を育成することで確固たる収益基盤を確立する必要があると考えております。そのため、重要な経営課題及びその進捗状況については、株主総会や四半期ごとの決算発表その他適時に説明を行うこととしております。また、企業価値拡大に向けた取り組み方針については、随時決算説明会資料等で開示を行っております。詳しくは当社IRページ(http://www.enish.jp/ir/)をご覧ください。

原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針

当社は、株主との建設的な対話を促進するため、経営陣幹部等を中心に様々な機会を通じて株主と対話を持つよう努めております。

また、広くIR活動を行うため、IR担当役員として取締役執行役員管理本部長を指定し、IR担当部署として管理本部経営企画を指定するとともに、経理、総務等の関連部門と有機的な連携に努めております。

アナリストや投資家および株主にタイムリーに情報提供するとともに、お問い合わせに迅速かつ適切に対応するよう努める一方で、対話に際してのインサイダー情報の管理を徹底するよう努めております。なお、株主の意見や懸念につきましては、必要に応じて経営陣幹部や取締役会に報告しております。

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