スマサポ(9342) 入居者アプリ「totono」を核としたサービスの拡充で成長を図る
不動産管理会社と賃貸入居者とのコミュニケーション領域にソリューションを提供
入居者アプリ「totono」を核としたサービスの拡充で成長を図る
業種: サービス業
アナリスト: 松尾 十作
◆ 不動産管理会社向けソリューションサービスを提供
スマサポ(以下、同社)は、不動産管理会社と賃貸入居者とのコミュニケーションに、同社のサービスを介在させることで、不動産管理会社の収益機会の拡大や業務負担を軽減すると同時に賃貸入居者の満足度が向上するサービスを提供している。社名の由来は「smartなくらしをsupportする」との経営理念による。
同社のサービスは、①入居者満足度調査サービス「スマサポサンキューコール」、②入居者アプリ「totono」、③スマサポ内覧サービス「SKB」、④家賃保証サービス「sumai保証」、⑤新電力サービス「スマサポでんき」の5つである。①から④までが不動産管理会社向けソリューション、⑤は新電力サービスとして売上高を開示している(図表1)。①から④の構成比は開示していないが、①の入居者満足度調査サービスが売上高の大半を占めている。
1)入居者満足度調査サービス「スマサポサンキューコール」
スマサポサンキューコールは、新たな入居者の入居物件に対する満足度アンケート調査を、不動産管理会社の代行として行うことや、生活に必要なインターネット回線やウォーターサーバー等の各種ライフライン等の案内を電話にて行うサービスである。
満足度アンケート調査は、不動産管理会社へ定期的にフィードバックすることで、不動産管理会社の業務改善の参考となる。契約不動産管理会社数は22/9期末で870社(前期末比55.9%増)、契約不動産管理会社が管理する世帯数は同様に2,371,662世帯(同25.2%増)である(図表2)。入居者への架電業務は自社のコールセンターだけでなく、複数の外部のコールセンターに業務を委託している。
同社は顧客情報を得ることを入居者の同意を得た後に、顧客情報を不動産管理会社から入手し、不動産管理会社へ顧客紹介手数料を支払う。満足度アンケート調査と同時に入居者へインターネット回線やウォーターサーバー等の各種ライフラインを案内し、成約すればこれらのサービス等の提供企業や代理店から同社は取次手数料等を受け取る。
2)入居者アプリ「totono」
totonoは、不動産管理会社と入居者とのコミュニケーション手段のアプリである。賃貸借契約を締結した後に、駐車場・駐輪場契約等を入居者は不動産管理会社と紙やFAX、電話で行なっていた。totonoはそうした契約をスマートフォン上で済ませられるものである。
不動産管理会社にとっては、管理している物件の一階入り口近くの掲示板に「断水のお知らせ」、「エレベーターの定期点検のお知らせ」の紙を貼っていた作業がスマートフォンへの連絡(お知らせ掲示板)で済むほか、入居者にとっては、「隣の犬がうるさい」、「エアコンが壊れた」等のトラブル相談、頻繁にある問い合わせとそれに対する回答を簡潔にまとめたFAQも掲載されており、個別トラブルの相談もアプリを利用したチャットで済ませられる。入居に関する更新や退去等の解約申請の受付機能もある。
totonoをダウンロードする入居者からはアプリの利用料を受け取らず、不動産管理会社から利用者単位でアプリの初期導入料と毎月の利用料を収受する仕組みである。入居者からのチャットなどの問い合わせに対し、同社が対応した場合1チャット当たり約780円を不動産管理会社に請求している。
totonoは20年8月に始めたサービスだが、22/9期末時点のアプリのダウンロード数は61,621件となり、契約不動産管理会社の世帯数増に伴い、ダウンロード数が増加している(図表3)。
3)スマサポ内覧サービス「SKB」
スマサポ内覧サービスは、賃貸物件の内覧時における鍵の管理業務効率化を図るためのキーボックスを使用するサービスである。入居希望者が内覧する際、随行する不動産仲介会社が不動産管理会社に当該物件の鍵を取りに行き、内覧が終ると鍵を返しに行くやり取りを省く点にこのサービスの利用価値がある。同社は導入する不動産管理会社から機器代金と月額利用料を受け取っている。
スマートフォンからアプリの操作でキーボックスを開閉する仕組みであり、あらかじめ不動産管理会社が開閉するパスワードを管理している。同社はこのキーボックスの製造を外注しており、一定数を在庫として保有している。利用状況については公表されていない。
4)家賃保証サービス「sumai保証」
家賃保証サービスは、入居者の連帯保証人を代行するサービスである。入居者は同社と保証委任契約を結び、同社に保証料を支払う。同社は家主及び家主と連帯している不動産管理会社と家賃保証契約を結ぶことにより、不動産管理会社は契約で規定されている保証の範囲内で滞納賃料や原状回復費用の未回収分を同社から受けることが出来る。利用状況の開示データはない。
5)新電力サービス「スマサポでんき」
新電力サービスは、不動産管理会社が管理する物件の共用部分に係る電力契約を既存の地域電力会社から新電力会社に切り替える取次を行っている。新電力サービスとして、21年12月迄は同社が新電力会社から電気を仕入れ、顧客に販売していたが、仕入電力料金変動のリスク軽減のため、22年1月からは取次契約へとサービス内容を変えた。22/9期の販売高減少はこうしたサービス内容の変化によるものである。同社は、新電力サービスから完全撤退する意向にあり、将来的には同サービスに伴う手数料収入はなくなる見込みである。