中長期的なインド株のキーポイント

2020/09/29

中長期的なインド株のキーポイント

1.コロナショック後、大きく戻したインド株式市場
2.上値を抑える新型コロナの感染拡大
3.当面上値の重い展開、中長期的には高い経済成長を背景に上昇基調

1.コロナショック後、大きく戻したインド株式市場

■新型コロナウイルスの感染拡大により世界の株式市場は3月にかけ急落しましたが、各国政府の大規模な財政政策や積極的な金融緩和策が打ち出され、世界経済の底入れが意識される中、4月以降は米国を中心に急速に持ち直しました。新興国市場のインド株式市場も同様に3月下旬を底に大きく反発し、上昇トレンドの中にあります。

■代表的な株価指数のSENSEX指数は、3月下旬の25,981ポイントを底に上昇基調となり、8月末には39,467ポイントと、約6カ月ぶりの高値を付け、今年1月に付けた過去最高値から約6%安の水準まで戻しました。その後は新型コロナの感染拡大に歯止めがかからないことなどから上値が重くなり、高値圏で一進一退の動きが続いています。インドでは実体経済が急減速しているものの、追加経済対策などへの期待や低金利を嫌気した投資家の買いが相場を支えています。

■インド株式市場の堅調さの背景には、世界的な金融緩和に伴う金余りがあると考えられます。金余りによる投資家のリスク選好姿勢の強まりを受けて、インド株式市場に海外からの資金が流入しています。3月から4月にかけて新型コロナの感染拡大の影響で、海外投資家の大幅な売り越しが続きましたが、5月以降は大きく買い戻しが入りました。5月以降9月24日までの海外投資家の累計買い越し額は、110億米ドル(約1兆1,500億円)を超える規模となっています。世界の投資家は新興国市場の中で選別をして成長期待の高いインド株に投資しているとみられます。

2.上値を抑える新型コロナの感染拡大

ここで、インド株の上値を抑える要因となっている新型コロナの感染拡大とインド経済の減速について確認します。

(1)新型コロナウイルスの感染拡大

■インドの新型コロナの感染者は累計で570万人を超え、米国に次ぐ世界で2位の多さに増えています。13億人の人口大国インドでは、足元の1日の新規感染者が9万人を超えるなど、新規感染は今や世界最多となっています。医療体制が整っていないインドでは、死者数も急増しています。

■インドは3月末からコロナ対策として全土封鎖を実施したものの、感染が広がるなかで6月から経済活動を再開したため感染拡大が加速しました。封鎖の解除により、都市部から帰省した出稼ぎ労働者が地方にウイルスを持ち込み、感染が都市部から地方に広がりました。最近の新規感染は地方が中心で、医療体制が脆弱なことから感染拡大に拍車がかかっています。現状では感染者数のピークアウトの気配はみられず、コロナ感染の収束は見通せない状況です。

(2)当面マイナス成長が続く見込み

■新型コロナの感染拡大の影響で、インドの4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比▲23.9%と過去最大の落ち込みとなり、世界の主要国のなかでもマイナス幅が大きくなりました。3月に導入された全土封鎖が経済活動を大きく抑制したためです。ただ、6月以降経済活動を再開した後も、新規感染者数は増加傾向にあり、景気の持ち直しは力強さを欠いています。

■インド経済はコロナ感染が落ち着く時期が見通せないことから、停滞が長引くとみられます。弊社は、前年同期比でマイナス幅が徐々に縮小するものの、2021年1-3月期までマイナス成長が続くと予想しており、プラスに転じるのは2021年4‐6月期を想定しています。

3. 当面上値の重い展開、中長期的には高い経済成長を背景に上昇基調

新型コロナの感染拡大とそれに伴う経済の停滞が当面インド株の足かせとなりそうです。しかし、中長期的な観点でみれば、ワクチン開発などにより、コロナ感染の拡大はいずれ収束すると考えられます。その際、重要なのはインドの相対的な成長期待の高さやグローバルな金融環境だと思われます。以下で中長期的な経済成長の背景となる人口動向および中央銀行の金融政策を確認します。

(1)中長期的にインドの生産年齢人口は拡大

■中長期の経済成長を促す、インドの生産年齢人口(15~64歳)の増加は他国と比べ、突出しています。国連の人口統計によれば、2020年から2030年にインドの生産年齢人口は約1億人増加し、2030年には10億人に達する見通しです。この間、生産年齢人口が約2,600万人減少する中国とは対照的で、人口も逆転します。2030年までに、世界の生産年齢人口の約5分の1がインドになると予想されており、「人口ボーナス」と呼ばれる高成長が期待できる機会がインドに訪れていることを示唆しています。

(2)金融環境は良好

■米連邦準備制度理事会(FRB)は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で「フォワード・ガイダンス」を導入し、ゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで続けるとしました。米国の超金融緩和政策の長期化からグローバルな金融環境は極めて緩和的な状況が続き、基本的には投資家のリスク選好姿勢を後押しするとみられます。

■インド準備銀行(RBI)は8月の金融政策決定会合で、市場の利下げ予想に反して政策金利を据え置きました。ただし、RBIは消費者物価上昇率が鎮静化すれば追加利下げの可能性を示唆しており、今後も利下げを継続するとみられます。RBIは次回10月は見送るものの、12月の決定会合で追加利下げに踏み切ると予想しています。

以上のように、高い経済成長期待と過去に例のない金融緩和環境の継続から、中長期的なインド株式市場の投資環境は良好であることに変わりはないと思われます。ただし、短期的には、コロナ感染が抑制されず、景気回復のペースが鈍くなることから相場が下振れすることも想定されます。

(2020年9月29日)

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