7月6日妥当レンジ 9,050円~10,350円
妥当株価レンジの基準設定を変更

2012/07/10

 【IFIS/TIWコンセンサス225】

前回のレポートにおいて『世界的にリスクが高止まりしている状態では、妥当株価レンジの設定水準=インプライド・リスク・プレミアムの適応範囲を再検討することも必要かもしれない』と述べたが、今回、4月27日まで遡って妥当株価レンジを変更・修正する。
従来は、インプライド・リスク・プレミアムがおおよそ6.00%~7.00%となる日経平均株価の水準を妥当株価レンジとしてきた。これはリーマンショック前の2005年~2008年頃のインプライド・リスク・プレミアムの水準を参考にして、経済・投資活動の正常な状態での株価水準を想定したものであった。ギリシャ問題から欧州危機、東日本大震災を経て、やがては世界経済の安定化に向かうという前提については今後も堅持するものの、少なくともそれに至るまでの時間に対しては懐疑的にならざるを得ないと判断した。加えて、妥当株価レンジと現実の株価が大きく乖離を続けることによって、妥当レンジそのものが単なる理論上の形式数値に陥っていることや、読者に誤解を生じさせる可能性も否定できないことによる。今回、決算期が新年度入りした4月27日以降について、インプライド・リスク・プレミアムを6.50%~7.50%を新たな基準値として、妥当株価レンジの再計算による修正を行った(後述)。

ECB(欧州中央銀行)は5日に、政策金利を1.00%から0.75%への引き下げを行った。これ自体は市場の予想通りであったが、予想外だったのは民間銀行がECBに資金を預け入れる際の預金ファシリティ金利を0.25%から0.00%に変更し、ゼロ金利としたことである。この処置は短期金利を更に低めに誘導することや銀行資金を市中に循環させることが目的と考えられる。ユーロ圏首脳会議でスペインなどへの支援に基本合意したものの足並みが揃わないことによってスペインやイタリアの国債利回りが再び急上昇している。これらの結果として、ユーロ安が急速に進行している。ユーロドルは、7月4日時点の1.25ドルから6日には1.22ドル台(過去2年間の最低水準)にまで下落した。
また、6日に発表された米雇用統計は非農業部門雇用者数が8.0万人増と市場予測10万人増を下回った。先週末のNY市場の下落と、米雇用統計、円高などを受けて日本株市場もやや調整色を強めそうな状況である。
こうした経済環境の不透明感に加えて、「LIBOR」(ロンドン銀行間取引金利)の不正疑惑が市場心理を悪化させる要因として登場してきたことには注意を要する。「LIBOR」は国際的な主要銀行が短期に資金の貸借を行う市場であり、住宅ローンやクレジットカードなど世界全体で360兆ドルもの金融取引で使われているとされる。既にFSA(英金融サービス機構)より罰金の支払を命じられた英バークレイズ銀行だけでなく、多くの国際的な主要銀行が関与していた可能性が浮上している。英国では重大不正捜査局(SFO)が捜査を開始しており、国際金融取引の根幹が揺れ動く懸念もあり、不気味である。

今週は、11日~12日の日銀政策決定会合が予定されているが、目立った緩和は期待できないと市場は予想している。しかし、円高が進行するようであれば日本でも現在1.0%ある預金ファシリティ金利(日本では付利と呼ばれる)の引き下げを求める声が強まるかもしれない。経済統計では、13日に発表される中国の各種統計(4-6月GDP速報、鉱工業生産、小売売上高など)に注目が集まりそうである。

7月6日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」の予想EPSは、今期(1期)700.09円(前週比-3.28円)、来期(2期)795.33円(前週比-3.00円)、再来期(3期)869.72円(前週比-4.20円)と、引き続きマイナスが続いている。
マイナス企業では、オリンパス(7733)、ソフトバンク(9984)、ファーストリテイリング(9983)、キヤノン(7751)、コマツ(6301)、ホンダ(7267)など主力企業が目立った。プラス企業では、横河電機(6841)、KDDI(9433)、豊田通商(8015)などが挙げられる。
日経平均の妥当レンジは、今回9,050円~10,350円へと基準変更後の前週値(9,000円~10,300円)より若干上方に引き上げる。これはBPSの基準としている日経新聞データの逆算値の変化によるものである。
基準変更による影響であるが、基準前と比べて500円前後の引き下げとなる。

基準変更によって妥当レンジの水準が引き下げられたが、それでも現株価水準よりはやや上方に位置している。これは企業業績の予想の下方への圧力が影響しているものと考える。今月下旬から始まる3月決算期企業の1Q決算においては大きな見通し変更はまだ行われないものと考えられるが、円高(特に対ユーロ)の影響や欧州や新興国の景気減速の影響が顕在化するのは2Q以降と考えられる。 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

9,050円~10,350円 (前回 9,000円~10,300円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月6日)

今期予想EPS 700.09 (前週 703.37円)
来期予想EPS 795.33 (前週 798.33円)
再来期予想EPS 869.72 (前週 873.92円)
今期予想PER 12.89 (前週 12.81倍)
来期予想PER 11.34 (前週 11.28倍)
再来期予想PER 10.37 (前週 10.31倍)
来期予想PBR 0.92 (前週0.91倍)
来期予想ROE 8.11% 前週8.07%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
7.52% (前週7.48%)

*7月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
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独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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