5月11日妥当レンジ 9,550円~11,000円
日本株が低迷するもう一つの理由

2012/05/15

 【IFIS/TIWコンセンサス225】

先週も引き続き欧州情勢の混乱の中で、リスクオフの状態が続いている。米国長期金利(10年国債)はリスク回避の動きから3月19日の2.39%から低下を続け、先週末には1.84%にまで低下した(これを書いている14日現在は1.77%)。米金利低下によって円高圧力が高まっており、円ドルは80円/ドル近辺で小動きするとともに、ユーロに対しては、再び100円/ユーロ割れが迫っており、為替レートが日本株下落の一因となっている。
ギリシャでは再選挙の可能性が高まっており、再選挙が行われると推察される6月10日まで混沌とした状況が続くとともに、ユーロの足並みの乱れから周辺国も一段と揺さぶられるかもしれない。
米国ではJPモルガンチェースが20億ドル以上の巨額損失を発表した。この発生理由を廻って米銀全体に対する信用不安が囁かれている。これから発表される米国経済指標に内容によっては比較的堅牢であった米国市場も揺らぐ可能性が生じてきた。
14日(月)の国内株式市場は、日経平均株価は僅かにプラスであったものの、一部の銘柄を除けば幅広く、新興市場も含めて大きく下落した。マネーの逃避拡大と下値を拾う動きが止まってしまったようだ。しかしながら、国内企業業績は概ね悪くはない。3月期決算の発表がまだ幾分は残っているタイミングであるが、決算前のコンセンサスにはやや届かないものの悲観的になるほどのものではない。当レポートではゴールデン・ウィーク明けにリバウンドの可能性を指摘してきたが、それは今のところは不発に終わっている。海外要因だけなら欧州情勢と為替が好転すれば反転するだろう。しかし、反転(リバウンド)はそれほど大きくない可能性もあるかもしれない(後述)。

5月11日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」の予想EPSは、本決算発表に伴う対象決算期の変更から大きく増加している。変化幅(円)は、今期(1期)+124.79円、来期(2期)+33.08円、再来期(3期)+12.94円であった。
まだ、決算期変更対象企業は金融機関を中心に20社程度残っているが概ね出揃った。コンセンサスの今期予想EPSは675.84円となり、3月30日時点の来期予想EPS(これが決算期変更後は今期になる)708.80円にはやや届かないものの、大きく期待を下回る水準ではなった。来期予想EPSは795.88円であり、同じく3月30日時点の再来期予想EPS 800.92円に近い水準にある。この数値を見る限りでは、企業業績は悪いとは言えない。むしろ、良好と言える。しかし、一点大きく気に懸かるのが再来期の予想EPSが伸び悩んでいることである。
EPSの変化率は5月11日現在で、前期実績→今期予想42.8%増、今期予想→来期予想17.8%増、来期予想→再来期予想7.9%増である。前期から今期は震災後のサプライチェーンの問題や電力供給不安、タイ洪水被害の影響などからの回復が見込まれており、それがEPSの大幅な増加となる。しかし、来期、再来期にかけて成長余地が狭まっていることを表している。
予想ROEは、今期ベースで7.11%、来期ベースで8.12%、しかし、再来期ベースでは8.29%と改善が急激に鈍化する。これはEPSの伸び悩みと、分母である自己資本が膨らむことによるものである。株価は理論的には、供給側のROEならびに成長率と、需要側の期待リターン(金利+リスクプレミアム)によって決定される。
その結果、日経平均株価の妥当レンジは、来期ベース(通常使っている予測値)では9,550円~11,000円であるが、再来期ベースを算出しても10,000円~11,550円に留まる。来期妥当レンジから再来期の妥当レンジは、中心値の株価成長率で僅か4.9%に理論値では留まる。

現状は欧州情勢からリスクオフの投資行動から投資家の期待リターン(=割引率)が上昇していることが、株価が低迷している主因であると考えるが、成長鈍化とROEの改善鈍化によってPBR1.0倍割れが理論的にも常態化する局面が近づいていることを表している。
これを回避するには成長率を高めることが何より求められる。しかし、それが出来ないのであれば現在30%前後に留まっている配当性向を引き上げることが株価回復には必要になるであろう。配当利回りの上昇と、自己資本の拡大抑制によるROEの改善が求められる。

市場全体としては現在の危機を脱却しても、長期的に停滞することが懸念される。もちろん、個別企業においては例外も少なくはないだろう。その条件は、高成長・高ROEであることが真っ先に挙げられる。現在(5月11日現在)の期待リターンは8.35%である。これはやや異常値としても銘柄選択の際には、8%を上回るROE水準をポイントに置くべきであろう。引き続き、割安感の強い自動車関連企業や新興市場の好業績銘柄を投資対象の中核に据える。 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

9,550円~11,000円 (前回 9,500円~10,900円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月11日)

今期予想EPS 675.84 (前週 551.05円)
来期予想EPS 795.88 (前週 762.80円)
再来期予想EPS 859.03 (前週 846.09円)
今期予想PER 13.25 (前週 17.02倍)
来期予想PER 11.25 (前週 12.30倍)
再来期予想PER 10.42 (前週 11.09倍)
来期予想PBR 0.91 (前週0.97倍)
来期予想ROE 8.12% 前週7.91%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
7.50% (前週7.09%)

*5月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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