11月11日妥当レンジ 16,850円~18,200円
結果オーライであるが、底流には日本経済の回復も

2016/11/15

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<円安の恩恵はあるものの、日本株はもともと底入れ状態>

■想定外のトランプ勝利となった米大統領選。もう一つの想定外がドル高(円安)であった。減税・公共投資政策や上下院ともに共和党が多数派を占めたことによる財政赤字拡大の可能性や、海外資金の米国への還流政策(本国投資法?)の可能性などが米金利上昇・ドル高の背景である。
■円安とNY株式市場の上昇を受けて、日本株も瞬間的な下落後は4月高値(日経平均17,572円)を超える上昇となっている。トランプ勝利・ドル高は結果オーライの想定外であったが、株価上昇には2つの想定内がある。1)2Q決算発表での悪抜け、2)日本経済の回復基調が強まっていること、である。
■14日発表の7-9月期GDP(速報値)は、年率換算で前期比+2.2%であった。半導体製造装置やスマホ向け電子部品など外需が牽引した形で個人消費は+0.06%の伸びに留まったが、実質雇用者報酬は前年同期比+3.0%と増加している。有効求人倍率は1990年代前半の水準にまで高まっており、賃上げ個人消費回復の流れが次第に出てくるものと予想される。
■3月期決算企業の2Q決算発表においては、為替水準の見直しから通期予想を下方修正する企業もあったものの、それは織り込み済み。コンセンサス予想もやや上向いており、業績見通しの底打ち感が強まっている。
■トランプ氏の大統領就任(1月20日)に向け、政策の具体化から市場は再度波乱が生じる可能性も考えられるものの、国内景気・国内企業業績の回復感が強まることから今後も株式市場は底堅い展開を予想する。

 

 

<コンセンサス予想EPSは底堅い状態続く>
■11月11日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は全期間プラス。ソフトバンクグループ(9984)の影響が押し上げた形ではあるものの、それを除いてもマイナス幅は限定的。前週比プラスとなった銘柄数の比率は、50%を来期・再来期ともに下回るものの微調整の範囲と考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,850円~18,200円 (前回16,450円~17,750円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月11日)

今期予想EPS 1010.46 (前週 1006.79円)
来期予想EPS 1072.19 (前週 1064.80円)
再来期予想EPS 1177.55 (前週 1167.64円)
今期予想PER 17.19 (前週 16.79倍)
来期予想PER 16.20 (前週 15.88倍)
再来期予想PER 14.76 (前週 14.48倍)
来期予想PBR 1.14 (前週 1.12倍)
来期予想ROE 7.06% 前週 7.03%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.82% (前週 6.87%)

*11月11 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

%e5%9b%b31
再来期の予想EPSの増益率は+9.8%。これを考慮すれば株価にはまだ割安感がある。

 


%e5%9b%b32
来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.6%→48.0%→48.9%→45.9%→46.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.5%→51.1%→54.7%→40.0%→47.4%。

比較的底堅い状態か。

  [注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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