10月21日妥当レンジ 8,500円~9,800円
欧州財務危機はひとまず解決に向かうものの

2011/10/25

【IFIS/TIWコンセンサス225】

この週末に不動産会社に勤務する方と話す機会があり、その中に幾つか興味深い話があった。

一つは、不動産投資を行っているオーナーさんは、株式(投資信託を含む)にも投資をしており、株価が低迷する中では新規の不動産購入には動けない状況にある。資産家ほど分散投資が進んでいるものの、一定のキャッシュポジション(現預金)を確保しておくならば、何かを購入するには、何かの資産を売るしかない。そのために不動産市場は全く流動性が無い状況に陥っているとのこと。

二つ目は、実需(オーナー自身が住むために買う)が見込める好立地の一定の広さのある物件は比較的値崩れが小さいのであるが、投資目的の不動産は利回り重視となる。要求する利回り水準が6%台に上昇しているのと同時に家賃相場が下がっていることから値崩れが大きい。前者が1割も下げていないのと対照的に、後者は3割程度下がっているとのこと。

株式市場でも同じようなことが生じているのではないだろうか?実需(=他社に代替されない競争力のある)企業の株価は多少の業績悪化でも大きく崩れないが、そうでない企業は株価指標が割安でも買われない。投資家の期待収益が高まっている一方で、業績見通しが悪化している、という状況も不動産市況と同じである。

23日の欧州連合首脳会議において、欧州銀行の大幅な資本増強が合意された。26日に欧州首脳会議、欧州財務相理事会、ユーロ圏首脳会議の3つが予定されているが、ギリシャ支援に向けた民間投資家の負担増、EFSF(欧州金融安定基金)の増強について合意がされると見られる。また、ユーロ圏の統治、財政、経済統合についても積極的な議論が行われるとみられる。欧州財務危機については後遺症や副作用が将来的に発生する可能性はあるもののひとまずは決着に向けての確実性が強まった。

こうした状況を受けて24日(月)の東京株式市場は8,800円台へと大きく上昇した。しかし、21日のNY市場で市場最高値の円高(75.78円/ドル)を記録したことや企業業績見通しの悪化など単純に楽観視できる状況にはない。業績見通しの悪化を織り込みながら底値固めをする展開がまだ続きそうである。

10月21日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」の予想EPSは、今回も、今期予想ベース(1期)、来期予想ベース(2期)、再来期予想ベース(3期)の全期間において前週を下回った。減少幅は、それぞれ▲3.16円(1期)、▲6.55円(2期)、▲7.03円(3期)であり、期間が遠いほど減少幅が大きくなっている。

来期予想ベース(2期)において大きくマイナス修正された企業は、大和証券グループ本社(8601)、オリンパス(7733)、安川電機(6506)、キヤノン(7751)、ファナック(6954)、KDDI(9433)、コマツ(6301)、ホンダ(7267)、オークマ(6103)、日本電気硝子(5214)、日立建機(6305)、日本化薬(4272)、など(コンセンサスEPSへのインパクトの順)。

なお、参考までに、連日の株価下落が続くオリンパスのコンセンサスEPSを構成しているEPSは、10月21日時点で2.12円(1期)、3.84円(2期)、5.09円(3期)となっている。

今回は、予想EPSの減少を受けて日経平均の妥当レンジを8,500円~9,800円へと引き下げる。まだ2~3週間は減少トレンドが続く可能性は大きいと考える。

日経平均の予想PBRは0.91倍(今期末予想ベース、10/21現在)とリーマンショック時を下回る水準にある。個別の企業ではPBR0.5倍を割り込んでいる企業も少なくは無い。かつては、PBR1.0倍を清算価値と呼び、それを下回れば下落余地は少ないと考えられた。しかし、グローバル投資家が株価形成のイニシアティブを握っている今日にあって、冒頭に紹介した不動産価格の構造と同様に投資収益性で図られるようになったのである。業種別の過去の株価水準や、単純にPBRが安いから割安という評価をすることが出来なくなっている。

それでは何を基準とすべきであるか? 極めて単純化すれば、ROEである。財務体質(自己資本比率、有利子負債比率など)に注意する必要があるものの、ROEが投資家の要求利回りを上回らない限りは、PBR1.0倍割れは必定である。投資家の要求利回りはインプライド・リスク・プレミアム(IRP)+無リスク証券の利回り(10年国債利回り)で算出される。

10月21日現在では、IRP6.85%(来期ベース)+10年国債利回り1.005%=7.855%。ちなみに来期予想ベースのROEは7.63%と要求利回りを下回っている。

「10月が目先のボトムとなる可能性が強い」と述べてきたが、こうした変数が変らない限り、あるいは実需とも言える投資(事業投資の性格を持つもの、配当利回り・株主優待などインカムゲインを目的とした投資)が増えない限り、PBR1.0倍割れが続くことを念頭においておく必要があるだろう(ちなみに当レポートの「日経平均の妥当レンジ」は、ROE、EPS成長率、投資家の要求利回りを鑑みて設定している)。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

8,500円~9,800円 (前回 8,600円~9,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月21日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月21日)

今期予想EPS 616.52 (前週 619.68円)
来期予想EPS 730.01 (前週 736.56円)
今期予想PER 14.08 (前週 14.12倍)
来期予想PER 11.89 (前週 11.88倍)
来期予想PBR 0.91 (前週0.92倍)
来期予想ROE 7.63% 前週7.72%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.85 (前週6.90%)

*10月21日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
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