8月1日妥当レンジ 15,150円~17,600円
次の株価上昇に向けた悪抜け局面

2014/08/05

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米景気の快調が利上げ警戒を生じさせる>
■米GDP(4-6月)が7/30(水)に発表された。市場予想を上回る前期比年率4.0%(実質)となり、米長期金利(10年国債)上昇、ドル高、株安の連鎖が生じた。8/1(金)の米雇用統計(非農業部門雇用者数の増加)が市場予想の22万人を下回る20.9万人となったことによってやや冷却されたものの、米景気回復→利上げ時期の早期化→米株安、という連鎖が働いている。
■日本株にとっては、円安というプラス面とNY株安と言うマイナス面の綱引きの中で小幅な株価下落に留まっている。しかし、米国金利上昇→円安→日本株上昇という過去の経験則に対して疑問も生じており、投資家の解釈が弱気と強気に振れ易い不安定な時間が目先は続きそうである。それは、銘柄選別という形で現れるかもしれない。
■日本経済に焦点を当てるのであれば、家計調査(6月・7/29発表)においては消費支出(2人以上の世帯)は前年同期比3.0%減少した。鉱工業生産(6月・7/30発表)も前月比3.3%減少と、消費増税後の回復がまだ見られない状態を表わしている。貿易収支の輸出数量が伸びない中で、経済成長見通しも慎重なスタンスに変わりつつある。内需と外需(グローバル展開)が改めて銘柄選択の焦点に浮かび上がるかもしれない。
 

 

<コンセンサスEPSは全期間でプラスに>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間においてプラスとなった。3月決算企業の1Q決算が先週から本格化しているが、全体的にはポジティブな反応。
■これまで述べてきたように、日本株は割安感が強い(妥当レンジは上方シフトを続けている)。そのため、米国株式が多少下落しても下落幅は限定的であり、円安基調が確認されることで輸出株を中心とした主力銘柄に焦点が移る可能性も考えられる。世界的に金利上昇に対するリスクが高まっているなどという弱気筋のコメントに動揺せずに、押し目をきちんと拾う局面と考える。 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,150円~17,600円 (前回 15,100円~17,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月1日)

今期予想EPS 882.61 (前週 880.91円)
来期予想EPS 989.43 (前週 983.35円)
再来期予想EPS 1081.69 (前週 1078.63円)
今期予想PER 17.59 (前週 17.55倍)
来期予想PER 15.69 (前週 15.72倍)
再来期予想PER 14.35 (前週 14.33倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.80% 前週 7.78%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.84% (前週 6.83%)

*8月1日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1
妥当レンジの上方シフトが続く。日経平均株価は引き続きレンジ下限近くの割安な水準。 

 

図2 

プラス企業比率は58.1%から63.2%に上昇。 

 

図3

  NT倍率は底打ち(マーケットは上昇局面入りか?) 

 

図4 

インプライド・リスク・プレミアムは6%台後半でマーケットには過熱感はない。

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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