3月25日妥当レンジ 28,583円~30,863円
日銀の「指し値オペ」から円安圧力強まる

2022/03/29

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米国市場では0.5%利上げの織り込み進む>
■21日のパウエルFRB議長の講演以降、米国市場で利上げの織り込みが急速に進んでいる。次回5月の会合(FOMC)での0.5%利上げに留まらず、6月の会合でも0.5%の利上げ予測が高まっている。それを受けて米国金利の上昇傾向が強まっており、米10年国債利回りは28日には一時2.555%を付けた。
■また、引き締めの影響による景気減速に対する懸念から長短金利差も縮小しており、10年債と2年債の利回り格差は0.2%を下回る局面も出てきており、長短が逆転する「逆イールド」が4-6月にも表れるとの見方も台頭している。
■一方で、利上げによるインフレ対応への評価はポジティブな面も多く、米国経済は足元も好調を持続していることもあり、米国株市場は堅調である。29日にコンファレンスボード消費者信頼感指数、4月1日に米雇用統計・ISM製造業景気指数が発表されるが、市場予測は堅調な内容を見込んでいる。
■他方、米国の金利による日米金利差拡大から円安・ドル高が進んでいる。日銀が円安阻止の利上げに踏み切るのではないかとの警戒感から10年国債利回りが上昇していた。これに対して日銀は28日に「指し値オペ(公開市場操作)」による国債全量買い取りを発表。金融緩和を継続するとのメッセージとなり、ドル円は一時125円台にまで上昇した。
■日本株市場は、市場リスクの低下、米国株市場が堅調であることなどから、円安効果が見込める輸出企業、資源需要に対応した銘柄の物色などから主力株を中心に2週間で約3000円の大幅上昇となった。足元でもまだ上昇基調が続いている。アナリストコンセンサスは堅調さ(若干のプラス基調)を維持しているものの、円安・資源高の影響や業種間の明暗が今後は顕在化する可能性が考えられるだろう。バリュエーション面でも(割安から)妥当な範囲に入ってきており、上値追いは慎重に臨みたい。
■29日にロシアとウクライナの4回目の停戦協議がトルコで予定されている。親ロシア支配地域ならびにクリミア半島の扱いについて棚上げで合意できるかが焦点となっている。
■中国上海市でオミクロン型の蔓延から28日に一部地域で実質ロックダウンとなった点も懸念される。

 

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,583円~30,863 (前回27,965円~30,200円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月25日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月25日)

今期予想EPS 1650.53 (前週1651.72円)
来期予想EPS 1816.33 (前週1814.29円)
再来期予想EPS 1903.68 (前週1903.57円)
今期予想PER 17.06 (前週16.24倍)
来期予想PER 15.50 (前週14.79倍)
再来期予想PER 14.79 (前週14.09倍)
来期予想PBR 1.20 (前週1.15倍)
来期予想ROE 7.72% 前週 7.76%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.00 (前週 7.18%)

3月25日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

日経平均株価は2週間で約3000円の上げ幅となり、妥当レンジ(下限)に達した。来期のコンセンサスDI50%を下回っているものの、予想EPSには低下傾向はみられず、円安のプラス部分と、インフレ以上に米国経済の基調の強さを見込んだ展開になっている。しかし、日銀の金融緩和継続がさらなる円安に拍車をかける可能性もあり、一部の輸出企業を除けば国内の景況感は悪化する可能性が強い。マーケット全体よりも今後は業種間の明暗が顕著に表れる展開が出てきそうだ。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.6%→50.0%→49.447.348.844.0
再来期予想ベースのプラス企業比率は、62.149.652.8%→49.454.0%→51.3%。
来期ベースは4週連続で50%割れ。予想EPSそのものはプラスであることとの乖離は、業種間の明暗を示すものか?
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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