コンパクトカー需要増とともに国内生産は外へ外へと向かう

2012/08/31

【アナリストコラム 高田 悟】

三菱自動車の新型「ミラージュ」の発売が本日スタートした。エンジン排気量は1,000cc、CVT(無断変速機)を搭載。3グレードの構成で消費税込みの価格帯は100万円弱から130万円弱まで。軽量化、空気抵抗低減、そしてアイドリングストップ機能(オートストップ&ゴー)搭載などによりガソリンエンジン登録車トップの低燃費27.2km/ℓを実現した。注目すべきは、「低燃費」、「低価格」、「コンパクト(扱いやすさ))をキーワードとし、「先進国における環境対応車」と「新興国におけるエントリーカー」というニーズを両立させたグローバルコンパクトカーとの位置付けのもと、この春に同社タイ製造拠点で生産を開始し、日本国内へ逆輸入するという点だ。

3月末より先行して販売するタイでの評価は高く、7月末時点で33千台超の注文を得たという。先週、同車に試乗した。エンジンが信号待ちで自動的に切れ、ブレーキペダルから足を放すと再稼動するアイドリングストップに特に違和感はなく、幕張という海浜地帯の爽快感も重なり、快適なドライブを味わった。12年度内に国内で30千台の販売が目標とのことだがその販売動向が注目される。また、同車はタイ、アセアン、そして今回の日本国内投入に続き、今後は欧州、豪州などで順次展開の予定という。

リッターカーから排気量1,500ccぐらいまでと言われるコンパクトカー。2012年の世界市場はおよそ1,300万台(内、先進国550万台強、新興国750万台)との推計だ。先進国ではハイブリッド車や電気自動車に続く、第三の環境対応車(既存ガソリンエンジン車進化による環境負荷軽減)として評価され、新興国ではモータリゼーション進行過程でのエントリーカーとして今後一段の需要増が想定される。現在世界需要の2割弱を占めるこのゾーンは台数、比重ともに確実に拡大が続くとみられ、この需要を上手く取り込めるか否かが完成車メーカーの今後の浮沈を決めると言っても過言ではない。

コンパクトカーでは低価格実現と収益性追求が大命題だ。解の一つとしてトヨタは東北を小型車生産拠点として育成する。また、日産は量産車種生産を一部九州へ移した。しかし、円高が長期化し、少子化により市場縮小が続く中での最適な生産地の究極的選択は品質を含めた生産環境が整い、固定費が安い、海外需要地とは言えまいか。日産は他に先駆け一昨年、販売台数年5万台強の「マーチ」のタイからの逆輸入を始めた。「マーチ」、「ミラージュ」で国内新車販売における逆輸入コンパクトカー比重は2%程度の計算だが、この比重が今後上がることはあれ下がることはないだろう。「ミラージュ」では部品現地調達率は7割程度のもようだが今後9割程度まで徐々に高めていくと聞く。やがてECU(電子制御装置)など重要部品調達も完成車生産拠点へシフトすることになろう。こうした流れの中で広かった国内自動車産業の裾野が次第に狭くなっていく現実が見えてくる。

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
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