10月25日妥当レンジ 20,700円~22,400円
米中の部分合意を視野に株高継続も、警戒レベルも上昇中

2019/10/29

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米FOMCと雇用統計に注目が集まる>
■先週は目立った経済統計の発表が無い中、米中貿易協議における部分合意が調印に向けて前進しているとの報道や、シリア北部における地政学的リスクの後退、英国のEU離脱期限延長(28日に3ヵ月延長で合意)によって「合意なき離脱」が回避される見通しから、株式市場は堅調に推移した。
■世界的にマイナス金利が広がることによって、債券から株式への資金移動が生じている模様であり、日本株においては事業リスクの小さな配当利回り銘柄が注目された。日経平均株価は本日(29日)年初来高値を更新し、23,000円台を回復した。
■国内企業業績は決して芳しい状態とは言えないまでも、(結果からすれば)かなりの部分が織り込み済みであったかのように、決算に対するネガティブな反応は(ここまでの発表では)限定的なものに留まっているように見受けられる。米国債投資の拡大と輸出の減少の影響から、米FRBが利下げを行っても(現時点まで)円高に振れていないことが市場参加者の強気に繋がっているようにも思われる。
■今週は、米FOMC(29-30日)、日銀金融政策決定会合(30-31日)が予定されている。FOMCでは0.25%の利下げ、日銀は据え置きが予想されている。FOMCの利下げは今回で一旦打ち止めになるとの見方も強い。記者会見においてパウエル議長が追加利下げに含みを持たせる発言をするかどうかが注目される。経済指標発表も集中する。米国:ADP雇用統計(30日)、雇用統計(1日)、ISM製造業PMI(1日)、中国:製造業PMI(31日)、財新・マークイット製造業PMI(1日)、日本:鉱工業生産指数(31日)、日銀展望レポート(31日)。

< 「コンセンサスDI」は再来期が60%超>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、来期・再来期ベースで前週比マイナス。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)はサンプル数が少ないものの、 再来期ベースが60%超となった。来年度中の業績底入れを織り込み始めた可能性もある。一時のイレギュラーなのか、新たなトレンドかを次週確認したい。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,700円~22,400 (前回20,600円~22,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月25日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月25日)

今期予想EPS 1342.87 (前週1342.51円)
来期予想EPS 1403.80 (前週1406.30円)
再来期予想EPS 1514.45 (前週1516.13円)
今期予想PER 16.98 (前週16.75倍)
来期予想PER 16.24 (前週15.99倍)
再来期予想PER 15.05 (前週14.84倍)
来期予想PBR 1.07 (前週1.06倍)
来期予想ROE 6.61% 前週 6.66%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.60% (前週 6.67%)

10月25日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



日経平均株価は、妥当レンジ上限をさらに超えてきた。リスクフリーレートを-0.150%(10/25現在)とした場合の妥当レンジ 21,20023,000円も超えようとしている。地政学的リスクや、主要経済指標発表には警戒をもって対応したい。 

来期予想ベースのプラス企業比率は、 53.3%→37.044.450.6%→49.0
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.4%→36.641.952.8%→62.2
サンプル数が少ないものの、再来期ベースが60%超に。非鉄、機械、医薬品の業績見通しに底入れか?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

このページのトップへ