企業の資金繰りはなぜ悪化しないのか

2026/10/02

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◆企業の資金繰りは安定

10月1日に日銀短観(全国企業短期経済観測調査)が発表されました。今回調査では、景気が底堅さを維持するもとで、企業の資金繰りも安定していることが示されました【図1】。足元では、輸入物価の上昇を起点とする仕入れ価格の上昇、人件費の増加、金利上昇に伴う資金調達コストの増加など、企業のコスト負担は高まっています。それにもかかわらず、企業の資金繰り判断に目立った悪化はみられなかった背景を、どのように考えればよいのでしょうか。

◆背景には価格転嫁と緩和的な金融環境

この背景として、まず、価格転嫁によってコスト上昇分の転嫁が進んでいることが挙げられます。仕入価格判断指数(DI)と販売価格判断DIをみると、足元、仕入価格判断DIが大幅なプラス(仕入価格が上昇したと回答した企業の割合が下落したと回答した割合を大きく上回っている状況)で推移しており、この動きに連動して、販売価格判断DIも大幅なプラスで推移しています【図2】。すなわち、企業は仕入価格上昇に対応して販売価格を上昇させているという姿が窺われます。こうした価格設定行動によるキャッシュフローの改善が、資金繰りを安定させていると考えられます。

また、金融機関の貸出態度が緩和的であることも挙げられます。貸出態度判断DIは、2010年6月調査以来プラス、すなわち金融機関の貸出態度が緩和的とされる状況が続いています。足元にかけて、徐々に厳格化の動きが見られるものの、そのペースは非常に緩やかとなっています【図3】。企業が、好調な収益を背景に利払い負担増加の吸収余力を高めていることもあり、金融機関の貸出態度も緩和的な状況が維持されているとみられます。

◆今後は景気引き締め効果も徐々に顕在化

今回調査では、価格転嫁や緩和的な金融環境が企業の資金繰りの安定につながっている姿が確認されました。今後は、価格や金利の上昇の景気引き締め効果が徐々に顕在化すると想定されます。それらが企業の資金繰りや業況にどう反映されるのか、丁寧に見ていく必要がありそうです。

コスト増加や金利上昇は今後も持続することが見込まれます。収益圧迫要因があるもとでも、資金繰りの安定が維持されるかが注目されます。

(シニアエコノミスト 藤本 啓)

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