限定的な「日本版TACO」
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◆今年の骨太は異例づくめ
報道によると、来週21日にいよいよ高市政権で初となる「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)が閣議決定されます。今年は異例づくめでした。まず、決定時期です。近年では6月のG7サミット前に決まるスケジュールが一般的でしたが、今年は7月下旬まで後ずれしました。2月に衆議院選挙が行われたことで予算編成スケジュールが後ずれしたことや、食料品消費税率の引き下げを巡る意見集約に難航していることが理由とみられます。
また、骨太の原案に市場が大きく反応したことも、珍しい展開でした(骨太ショック)。6月30日の経済財政諮問会議で原案が示されると、長期金利はその前日から9日連続で上昇し、一時2.900%と約30年ぶりの高水準に上昇しました。外為市場でも、1ドル=162円台まで円安・米ドル高が進みました。
◆債券・為替市場から見えた2つの懸念
債券・為替市場が懸念したのは原案の特に2つのポイントでした。【1】1つは、日銀の独立性についてです。原案には、日銀の「適切な金融政策運営」が「非常に重要」と記されました。日銀の独立性が弱まって政策が後手に回り、インフレのコントロールに失敗する「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念が強まりました。
【2】もう1つは、財政規律への不安です。昨年まであった「財政健全化」の文言が原案で削除されました。報道によると、これは2001年に「骨太」を作り始めてから初めてのことです。原案公表直前(6月24日)の経済財政諮問会議で、2040年度までの官民370兆円投資が明らかになり、毎年10兆円の追加歳出が前提になっていたことも財政運営に対する懸念を強めています。
◆市場の反応を受けた文言見直しへ
骨太ショックによる金利上昇・円安を受けて、政府・与党は異例の文言見直しに動くようです。例えば、注釈の部分に「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」と記すと報じられています。日銀の独立性に配慮している姿勢を示す意図がありそうです。こうした動きは、市場の反応を受けて政権が軌道修正を図るTACO(Trump Always Chickens Out)の日本版と呼べるでしょう。
◆「原案がショックの原因とは思わず」
もっとも、このような日本版TACOは中途半端との評価が多い印象です。【1】については修文を施すものの、これまでの言動などを踏まえると、政権の基本的な考え方に変化はないとの認識が多いです。また、【2】については修文すら無く、そのまま閣議決定されるようです。
7月15日の党首討論で高市首相は、『骨太ショックという言葉は、とある新聞社が発信して、それで広がった。私はまだ閣議決定もしていない、政府のただ一つの文書の原案が、ショックの原因だとは思っていない』と述べました。嚙み合わない「市場との対話」が続けば、円安や長期金利の上昇が進み、経済の安定成長の基盤が崩れかねません。債券・為替市場の信認を得る経済政策運営を模索する動きが続きそうです。
市場参加者の関心は、骨太の修文の有無・内容にとどまらず、政権の根本的な政策哲学にも向かっているのでしょう。
(シニアストラテジスト 稲留 克俊)
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