為替を動かす2つの力:原油価格と日米金利差
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米ドル/円の上昇(円安)傾向が続いています。こうした動きについては様々な見方や解釈がなされていますが、ここでは、原油価格との連動と日米の金利差に焦点を当てて、イランと米国の軍事衝突が起こった今年2月末以降の米ドル/円相場を振り返りたいと思います。
◆円安進行の背景に原油価格上昇と日米金利差
2月末以降4月下旬まで、米ドル/円は中東情勢をめぐる報道や、それを受けた原油価格の動向に伴い上昇していたことが分かります【図1】。
4月末から5月初にかけては、政府・日銀による為替介入とみられる円買い・ドル売りにより水準が大きく切り下がる局面がありましたが、その間も変動方向は原油価格に連動したと言えるでしょう。もっとも、5月中旬以降は、原油価格と米ドル/円の方向感が乖離する場面もみられています。
原油価格に連動して米ドル/円が上昇した背景には、いわゆる「有事のドル買い」と米ドルの実需増加があります。「有事のドル買い」とは、地政学リスクなどの局面で投資家が安全資産とされる米ドルや米国債へ資金を移す動きです。これに対して実需の増加は、原油高により日本など輸入国の輸入総額が増加するため決済通貨である米ドル需要が高まること(または、米ドル需要の高まりが予想されること)で生じます。
加えて、日米金利差の拡大も米ドル/円の上昇要因です。5月中旬以降の原油価格と米ドル/円の乖離にも金利差拡大が影響しているとみられます。これは、為替市場では一般に金利上昇が見込まれる国の通貨が買われる傾向があるためで、実際に2年債利回りに基づく日米金利差と為替の関係を見ると、金利差拡大(米金利が円金利より上昇)に伴い米ドル/円が上昇する傾向が確認できます【図2】。
さらに、この関係について、米国とイランの軍事衝突前の2月初から為替介入とされるドル売りがみられた4月末までの期間と、介入後の5月以降を比較すると、金利差に対する感応度(近似線の傾き)はほぼ不変で、介入により水準のみが一時的に押し下げられていたことが分かります。そうしたもとで、この押し下げ分は、その後の金利差拡大によって米ドル/円が上昇したことにより、短期間で打ち消されたと考えられます。
◆円安傾向により持続する物価上昇圧力
以上のような最近の動きを踏まえると、進行した円安が巻き戻されるためには、中東情勢の緊張緩和による原油価格の落ち着きのみならず、日米の金融政策スタンスやインフレの状況などを反映した日米金利差の縮小も重要な要素となるでしょう。目下の円安をめぐる最大の懸念は、輸入物価上昇の国内物価への波及です。これは今後ラグを伴い徐々に進むと見込まれます。政府は食品消費税減税など財政政策で対応する方針を掲げていますが、これらは物価上昇の根本原因の一つである円安を緩和するものではない点には留意が必要です。
世論調査では優先的に取り組むべき政策課題として「物価対策」が多く挙げられます。
物価高への根本対応をどう進めるか、政府・日銀のスタンスには広く注目が集まります。
(シニアエコノミスト 藤本 啓)
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