AIは雇用の敵か、味方か

2026/05/15

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◆AI投資に積極的な米企業

企業の積極的なAI(人工知能)関連投資が続いています。米アトランタ連銀(連邦準備銀行)と米リッチモンド連銀が米国内企業の財務担当役員約750名を対象に行った調査※1によると、2026年中にAI関連投資を行う計画があると回答した企業の割合は全体の8割以上、大企業に限定すると9割程度に上りました【図1】。同調査によると、こうした投資の主な目的は、生産効率の改善や労働生産性の向上などとされています。

◆AI導入が雇用削減の要因にも・・・

生産効率の改善や労働生産性向上をAI導入で達成できるとすると、その分、雇用は削減されるのでしょうか。米チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社の集計※2によると、AIは2026年1~4月に発表された人員削減計画の主な理由の第3位に挙げられています。この調査は公表された人員削減計画を同社が独自集計したもので、米国企業を包括的に対象とするものではありませんが、AI導入に伴う業務見直しや組織改編などにより、雇用が削減されるケースも一部で見られ始めているようです。

◆AIと雇用、脅威論を超えて

とはいえ、AIと雇用を巡る議論においては、AIに仕事を奪われる脅威にばかり目を向けるべきではないと思われます。例えば、AI導入と企業の求人行動を定量的に分析したFRB(米連邦準備理事会)のレポート※3では、AI導入の程度が高い産業や企業で求人件数が減少している証拠は確認されず、むしろ、これらの産業や企業では、生産性向上に伴って採用を増加させている可能性さえ示唆する結果が得られています。

またOECD(経済協力開発機構)は、深刻な労働力不足に直面する日本の労働市場において、AIの活用が労働力不足への対応、労働者のスキルの補完、意思決定のサポートに役立つ可能性を指摘しています※4。さらに、これらの実現に向けて、幅広い層の労働者がAIを活用できるよう、企業による研修の充実や労働者自身の自己研鑽の促進などを政策的に推進することを提言しています。

AIと労働者の仕事の奪い合いを懸念するばかりではなく、AI活用促進を前提とした労働環境の整備や得られた恩恵の再分配の在り方などに、議論の軸足を移すべきではないでしょうか。

※1 Baslandze, Salomé (2026) “How Might AI Change the Workplace? Evidence From Corporate Executives”, Research & Commentary, March 25, 2026, Federal Reserve Bank of Richmond

※2 Challenger Report April 2026

※3 Liu and Webber (2026) “AI Adoption and Firms’ Job-Posting Behavior”, FEDS Notes, March 27, 2026, FRB

※4 OECD (2025) “Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan”, November 28, 2025, OECD

AIがもたらす生産性の向上は、経済全体にとって大きなプラスになるはずです。今後は、こうして得られた便益をいかに豊かな生活に結び付けるかが一層重要となるでしょう。

(シニアエコノミスト 藤本 啓)

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