運用者の視点:米中は『関税引き上げ』猶予で合意

2018/12/10

運用者の視点:米中は『関税引き上げ』猶予で合意

「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、見出したことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回は、12月1日にアルゼンチンで開催された米中首脳会談で合意された『関税引き上げ』の猶予についてみていきます。

【ポイント1】米中首脳会談にて、『関税引き上げ』の発動を猶予することで合意

■12月1日に開催された米中首脳会談にて、米国が年明けに予定していた2,000億ドルの対中輸入への『関税引き上げ』の発動を猶予することで合意しました。米国側の声明によると、猶予期間は90日で、その間に米国が懸念する1.技術移転の強要、2.知的財産権の保護、3.非関税障壁、4.サイバー攻撃、5.サービスと農業の市場開放、の5分野について協議し合意が得られなければ、当初の計画通り関税を引き上げるとしています。一方、中国側は米国産の農産品やエネルギー、工業製品などを大量に購入することで合意しました。

【ポイント2】最悪のシナリオは回避されるも、短期間での解決は難しい

■米中合意を受けて、ひとまず最悪のシナリオは回避されたと言えます。ただし、90日間ですべての懸案について合意に達することは容易ではありません。そもそも米国が設定した5つの議題のうち、例えば「技術移転の強要」は、存在自体を中国が認めていません。また、「知的財産の保護」についても、問題の存在は中国も認めているものの、再三にわたる過去の交渉で解決できなかったことを、わずか90日で合意するのは簡単ではありません。米国も短期間での解決が難しいことは承知の上で、中国に揺さぶりをかけています。

 

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【今後の展開】トランプ氏の対中圧力が中国の技術開発や知的財産確保を促す?

■90日後、例えば米国製品購入拡大の具体的な公約をもって『関税引き上げ』をさらに猶予することはあるかもしれませんが、技術移転や知的財産分野への対中圧力を弱めることはないとみておいた方が良さそうです。

■今回の『関税引き上げ』を巡る米中の貿易摩擦の高まりは、当の中国や米国のみならず世界的な景気減速懸念ともなっています。一方で、トランプ氏からの対中圧力の高まりは、中国の自前の技術開発や知的財産の確保を一段と高めることに繋がっていると考えることもできそうです。将来的には、中国が開発した革新的な技術が世界的に広まっていく可能性が高まる1つのきっかけとなったとも感じられます。

(2018年12月10日)

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