ダイバージェンスからコンバージェンスへ(吉川レポート)

2021/05/12

ダイバージェンスからコンバージェンスへ(吉川レポート)

1.中国主導、米国先行を経て欧州のキャッチアップ
2.長期金利は上昇を再開へ
3.短期的にはリスクにも目配りが必要

1.中国主導、米国先行を経て欧州のキャッチアップ

■世界経済を大局的に見ると2020年4-6月以降、世界経済を主導してきた中国は足元でも堅調さが続き、経済政策が段階的に正常化に向かう中で安定成長軌道へ移行し始めています。代わって2020年秋~2021年前半は米国経済の回復ペースが加速し、他地域との景況感の差(ダイバージェンス)が目立っています。特に2021年1-3月の成長率を見ると、米国は前期比年率6.4%の高成長となりましたが、ユーロ圏は2.5%のマイナスに落ち込み、日本においてもマイナス成長が予想されます。

■バイデン政権の追加コロナ対策(家計向け現金給付)を受けて耐久消費財の消費が急増したことが米国の成長加速の一因ですが、根底にあるのはワクチン普及によるサービス消費の立ち直りの差に違いがあるからといえます。サービス消費がGDPに占める割合は、米45%、日欧でも30%強となっています。コロナ前の2019年を100とすると、米国のサービス消費は2021年1-3月には95前後まで回復した一方、日欧では一時的な上下はあるものの、戻りが遅れているといえます。

■米国の4月分の雇用統計は3月の特殊要因によって市場予想比で下振れましたが、米経済の実態は対面型サービス消費を中心に上振れが継続していることであるといえます。しかし、大陸欧州でも年央から夏場にかけてワクチン接種が進んでいけば、回復が遅れてきた分、サービス消費の回復余地が大きくなると考えられます。欧州連合(EU)共通財政である復興基金も夏場以降に始動することも考えると、年後半はユーロ圏経済が米国にキャッチアップし始め、地域間格差が縮小する(コンバージェンス)局面に移行していくと考えられます。

2.長期金利は上昇を再開へ

■米10年国債利回りは3月末に一時1.75%を上回る水準をつけた後、4月以降は1.5~1.7%のレンジで推移しています。これは、①景気上振れや米連邦準備制度理事会(FRB)の政策変更の可能性等が一旦織り込まれたこと、②バイデン政権の財政刺激が想定より長期間にわたり緩やかに効く見通しになったこと、③日欧など経常黒字国から米債券市場に資金が流入したこと、などが米長期金利上昇を抑制しているためと考えられます。当面、米長期金利は一進一退となると考えられます。

■ゆくゆくはユーロ圏経済が米国にキャッチアップするコンバージェンス局面が金融市場で意識されていくと予想されます。欧州長期金利が緩やかに上昇し始めるにつれて米長期金利のレンジも再び上方シフトとなる可能性が高く、為替では対欧州通貨を中心にドルがやや軟化するとみられます。

■メインシナリオとしては、金利上昇のペースが緩やかに進行すると考えます。MMFなど流動資産に滞留している資金が高水準となっており、極端な市場の動きを抑える効果を持つと予想されます。FRBのテーパリング(債券購入額の減少)も、市場での織り込みが徐々に進んできたことに加え、潤沢な流動性を供給できることがショックアブソーバー的な動きになると考えられます。

■インフレは、焦点となる米国のGDPをみていくと、雇用が大きく落ち込む中で、生産性は上がっています。これは生産性上昇の大部分のうち、一部はデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展などを反映している可能性があるといえます。また、経済再開に伴い一時的な賃金・価格上昇は起きますが、構造変化がインフレ圧力の一部を吸収するため、賃金、サービス物価の大幅上昇が長期間続く可能性は小さいと考えられます。FRBや欧州中央銀行(ECB)は、テーパリングは行っても政策金利は相当期間、維持していくと考えられます。

■株式市場は、主要先進国の長期金利上昇が緩やかであれば、一時的な調整があっても持ち直すと期待されます。新興国は新型コロナ問題が収束するには先進国より時間がかかるため、ファンダメンタルズが堅実な国に限定して検討すべき環境と言えます。

3.短期的にはリスクにも目配りが必要

■概ね、景況感の見通しは全体的に悪くありませんが、局面の転換期に差し掛かっているといえます。一時的に市場を動揺させる要因として目配りしておくべきものとしては、①新型コロナの変異株の広がりによる経済正常化プロセスの遅れや逆戻り、②住宅価格や仮想通貨などの上昇など金融環境の過剰な緩和に対する中央銀行からのけん制(コメントなど)、③供給制約(部品供給の遅れ、新型コロナで失職した労働者の復帰が鈍いなど)によるインフレの上振れないし企業マージンの圧迫、④バイデン政権の増税策、⑤米中対立、⑥強すぎる米国(米消費の想定以上の上振れ=米家計貯蓄率の想定以上の低下)などを意識しておく必要があります。

(吉川チーフマクロストラテジスト)

(2021年5月12日)

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