2021年はゴルディロックス

2020/11/27

2021年はゴルディロックス

1.グローバル経済は回復へ、「構造調整」により低インフレが続く
2.コロナ禍からの回復に加え、金融・財政政策が経済を支える
3.今後の見通し~2021年はゴルディロックス

1.グローバル経済は回復へ、「構造調整」により低インフレが続く

■2021年のグローバル経済は、コロナ感染抑制等を背景とした景気減速から回復が本格化すると見ています。複数の種類のワクチンが接種可能となる見込みで、これも景気回復の確度を高めます。弊社では、2021年の世界経済の成長率を+6.1%、22年を+4.2%と見込みます。

■これらの経済成長率は、世界経済の潜在成長率と言われる+3.5%程度を大きく上回っていますが、インフレ圧力は低位にとどまると見込んでいます。これは、コロナの感染拡大が始まる前から起こっていた、IT利用の高度化等による企業や消費者の行動変化とそれによる「構造調整」の影響によるものです。

■すなわち、需要は労働生産性の高いIT関係のセクターに移ります。また、労働力の移動も起こりますが、それが落ち着くまでには一定の時間とコストがかかります。このため、経済活動がフルキャパシティの状況に戻るにはかなりの時間を要すると思われます。失業率はある程度高止まりし、需要と供給にはギャップが残り、物価は上昇しにくい状況が続くと見込みます。このため、金融政策は、21年から22年にかけて、主な中央銀行が長期金利をターゲットに量的な緩和を行うという枠組みが維持されると見られます。更に財政政策でも追加的な景気対策が続くと考えられます。

2.コロナ禍からの回復に加え、金融・財政政策が経済を支える

■以上の動きを経済の規模で確認します。GDP成長率は大きく改善しますが、経済の規模が2019年のレベルに戻る時期については、米国は来年の前半、日本が来年半ば、欧州が来年後半になると予想しています。需給ギャップの解消もその順番になりそうです。このため、ユーロ圏が低金利政策を続ける可能性が高く、米ドル高による景気への逆風を避けるため、米国の金融政策も相当期間において緩和が継続されると考えられます。世界的な低金利政策は数年続くと思われます。

■一方、財政政策も、拡張的な政策が継続される見通しです。新興国は来年にかけても高水準の財政赤字が続く見通しです。先進国は赤字が縮小傾向に入るとみられますが、コロナ以前と比べると高水準の財政支出が続くとみられます。米国はコロナ対応政策第4弾が見込まれ、欧州も復興予算が本格化する見込みです。このように、先進国・新興国ともに積極的な財政政策が継続する見通しです。中央銀行の潤沢な資金供給の下で財政資金が経済を支える、という枠組みが基本的に維持されると見ています。

3.今後の見通し~2021年はゴルディロックス

■こうしたマクロ見通しを前提に考えると、2021年は適温相場(ゴルディロックス)になると予想されます。以下では2021年の主要市場の見通しを整理したいと思います。

<日本株式市場>

●年内はもう一段の水準の切り上げが期待でき、高値圏で推移する見通しです。来年1-3月はもみ合いで値を固める時期と考えられます。1月後半から始まる10-12月決算で業績の回復が続いていることを確認することになると思います。ただ、7-9月期の決算で業績の上振れはある程度織り込んでおり、また、11月以降の急騰の反動で、一旦もみ合う展開になると思われます。4-6月以降年末にかけては、循環的な景気回復と政策期待から業績回復を織り込む形で上昇すると考えています。

<日本債券市場>

●動きの少ない展開が続きそうです。これは、景気が改善に向かうとの見通しではあるものの、金融政策が変化する可能性が少ないためです。低インフレの環境の下で、国内外で金融緩和状態が続く見通しです。ただ、ワクチンの開発が進み、来年実用化されると想定され、景気の回復は確かなものとなる可能性が高まっていることから、長期金利がマイナスで定着する可能性は非常に低くなったと考えられます。

<米国・欧州株式市場>

●米大統領・議会選挙も終わり、議会はねじれ状態となります。金融政策も大きく変わることはなく、現在の低金利環境が継続する見通しです。複数開発された新型コロナ感染症のワクチンは効果が非常に高く、患者が重篤化する可能性も低いことなどから、コロナを巡る不透明感が大きく後退することも市場には大きなプラス要因です。米国株式市場の上昇基調は、年末から来年1-3月にかけて続くと思われ、その後上昇ペースは緩やかなものになる見通しです。

●欧州株式市場は、景気回復期待から米国市場にキャッチアップするという形で出遅れ感を取り戻そうと大きく上昇しました。足元では、多少落ち着いたものの、コロナの新規感染者数が引き続き多く、景気への影響が懸念されます。こうした中で、上振れるとすれば、中国景気が予想以上に急速かつ大幅に回復するなど外部環境の変化が要因として挙げられます。欧州企業は中国やラテンアメリカ、アフリカを含む新興国での売り上げが大きいためです。ただ、欧州は部分的にせよ再度ロックダウンという形で、景気が低迷する可能性が高く、ロックダウンが短期で終わるかどうかが重要です。

<アジア・環太平洋株式市場>

●アジア株式市場は、ワクチン開発による景気回復期待を大きく織り込みました。今後は、ワクチンの安定した供給の可能性など様々なニュースが出やすい時期になることから、来年前半はやや上値が重くなる可能性があります。しかし、21年の1株当たり利益は前年比+15%とアジアとしては大幅な増益が予想され、好調な業績が株価を下支えすると考えます。18、19、20年と減益で、21、22年の持ち直しでようやく17年以降の年率で+4%強の成長軌道に戻ることから、株価が極端に過熱するとは想定していません。

<米国・欧州債券市場>

●米国は、新型コロナを背景に、金融政策、財政政策によるサポートが続くと見ています。政策の見直しが議論されるのは数年先と考えられます。一方、欧州は、復興基金に代表されるように、ここにきて欧州連合(EU)としてまとまってきており、政治的なリスクがほぼなくなり安定性が増すと判断しています。米欧とも、強力な金融政策を背景に低位で安定した推移が続くと予想します。

<為替市場>

●米ドルは100円~115円のレンジでの推移を見込みます。日米の実質金利差や米国の底堅さがドル高・円安要因ですが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和政策に対する市場の信任は厚く、上値も抑制されると考えます。

●ユーロも復興基金による景気下支えや、近年にない政治的な安定は大きなプラス要因と見られ、強含む(円安)見通しです。

(2020年11月27日)

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