グローバルで進む「ニューノーマル」と2極化相場

2020/10/15

グローバルで進む「ニューノーマル」と2極化相場

1.米国、中国など世界で進む2極化相場
2.「情報技術」、「一般消費財・サービス」等がけん引
3.今後の見通し~「情報技術」が多くの産業に変化をもたらす時代に

1.米国、中国など世界で進む2極化相場~「グロース株」主導で高値を更新する世界株式市場

■世界株価指数(MSCI AC World Index)は、新型コロナウイルスの影響と都市封鎖(ロックダウン)の影響を受け、経済活動や企業業績が大幅に悪化するとの見通しから大きく下落しました。しかし、3月23日を底に大きく反転し、9月には市場最高値を更新しました。その後、一時調整しましたが、10月に入り再び堅調に推移しています。

■今回の回復過程を投資スタイル別にみると、けん引役は「グロース株」です。スタイルとは、世界株価指数に採用されている銘柄をROEの水準などからグロース(成長性に焦点)とバリュー(低株価収益率(PER)、低株価純資産倍率(PBR)、高配当利回りなど株価価値に焦点)に区分けしてみたものです。

■今回コロナ禍の中で、投資スタイルはグロースへの傾斜を強めました。足元のグロース度(グロース÷バリュー比率)は世界株価指数が1.59倍です。米国が時価総額ベースで58%を占めており、1.66倍の米国がグロース株優位の展開を生み出していることがわかります。しかし、主要各国・地域についてみると、グロース度が際立っている市場はほかにもあります。中国(2.02倍)やオランダ(1.86倍)、台湾(1.80倍)は米国よりもグロース度が高いです。多くの市場が1を上回っており、世界全体で2極化が進んでいます。

■ちなみに、スウェーデン、オランダは10月12日に「グロース株」主導で最高値を更新しました。台湾が10月12日、中国、韓国も10月13日に「グロース株」にけん引され年初来高値を更新しました。韓国やスウェーデン、日本、ドイツ、インドにも成長性豊かな企業が数多くあり、今後さらにグロース度が高まるか注目されます。

2.「情報技術」、「一般消費財・サービス」等がけん引~ウエイトは低いものの中国企業の多さに注目

■セクター別の動向を整理します。世界株価指数のけん引役は「情報技術」、「一般消費財・サービス」などです。「情報技術」は2019年後半も他のセクターを大きく上回って堅調に推移しています。これは米中貿易摩擦が緩和へと向かう可能性の高まりが背景です。また、20年は新型コロナウイルスの感染拡大懸念と年後半以降の景気回復期待を背景に、「情報技術」が一段と上昇しました。さらに特徴的なのは、コロナ禍の巣ごもり消費の拡大期待から「一般消費財・サービス」、「コミュニケーション・サービス」が堅調に推移している点です。新型コロナの感染拡大と人の移動を制限した都市封鎖は、それまでの生活様式を一変させました。現時点では、人の移動を伴う消費がデジタルに移行したものですが、今後人の移動が一定の回復を見せれば、消費全体が拡大する可能性もあります。

■次に、米中に絞って比較しました。米国と中国の動向を見ると、まず、指数全体では19年以降のパフォーマンスに大きな差は表れていません。市場のけん引役である「一般消費財・サービス」、「コミュニケーション・サービス」、「情報技術」について整理すると、「一般消費財・サービス」で中国、また、「コミュニケーション・サービス」で米国の優位が確認できます。なお、「情報技術」指数全体と同様、米中間では大きな差は付いていません。なお、「情報技術」は世界株価指数ベースでみるとウエイトは22%です。その77%を米国が占めています。中国は1%に過ぎません。

■米中は貿易交渉にとどまらず、ハイテク分野での競争も激化していますが、どちらかが一方的に敗者となるわけではなく、厳しい競争が続くと予想されます。世界株価指数の「情報技術」に占める中国の時価総額ウエイトは微々たるものですが、銘柄数を調べると、米国が110を上回る銘柄数ですが、中国(含む香港)も100を上回りほぼ互角です。中国企業は比較的起業の時期が新しいこともあり、今後の成長が米国を脅かす可能性もありそうです。

3.今後の見通し~「情報技術」が多くの産業に変化をもたらす時代に

■世界経済は、数々の危機に直面してきました。大きな経済的な危機後の産業構造にどのような変化があったのでしょうか。ここでは時価総額ウエイトの上位4セクターの変遷を確認することで今後の方向性をまとめたいと思います。

■97年以降、ITバブルの崩壊、リーマン・ショックと世界金融危機を経験しました。ITバブル当時、最もウエイトが高かった「金融」はITバブル崩壊後そのウエイトが一段と高まり、「情報技術」のウエイトが低下しました。一方、リーマン・ショックと世界金融危機後は、「金融」のウエイトが低下し、「情報技術」のウエイトが上昇しました。コロナ・ショック直前の2019年には「情報技術」が「金融」を上回るという大きな変化が起きていました。コロナ・ショック後はその格差が一段と拡大しています。こうした時価総額の変遷から見ると、これまでの「金融」主導型の資本市場構造が「情報技術」、「一般消費財」などの基礎となる「テクノロジー」主導に変化することが示唆されます。

■引き続き「グロース株」優位の展開が続く可能性があります。既に現在は、「情報技術」に加え、「コミュニケーション・サービス」、「一般消費財・サービス」、「ヘルスケア」といった「ニューノーマル」時代に不可欠なセクターが台頭しています。「金融」分野ではIT技術の導入が急速に進展しており、「金融」が「グロース株」になる可能性もあります。新規公開を目指すスタートアップ市場では様々な分野でITを駆使して、新サービスを提供する企業が増加する見通しです。数年かかると思われたデジタル・トランスフォーメーション(DX)も、新型コロナの感染拡大を背景に、一挙に浸透し始めました。コロナ後も「情報技術」が多くの産業に変化をもたらす時代になったと言えそうです。

■新しい産業構造の形はまだはっきりとは見えていませんが、新型コロナとの闘いの中で、「ニューノーマル」化を目指す動きが続きそうです。少なくとも今後数年はITの需要をいかにサービス化していくかが重要な局面と言えそうです。

(2020年10月15日)

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