英国のEU離脱問題は議会採決が焦点に

2018/11/27

市川レポート(No.599)英国のEU離脱問題は議会採決が焦点に

  • EUは離脱協定案と政治宣言案を正式決定、ただ12月の英議会で否決なら合意なしの離脱も。
  • 保守党315人のうち強硬離脱派40~50人と、DUP10人の反対で、12月の可決は難しい状況。
  • 最終的には採決され合意ありの離脱を予想するが、内閣不信任案の流れとなった場合は要注意。

EUは離脱協定案と政治宣言案を正式決定、ただ12月の英議会で否決なら合意なしの離脱も

英国では11月14日、欧州連合(EU)からの離脱に関する協定案が臨時閣議で了承されました。しかしながら閣議の翌日、協定案に反対する政権幹部が相次いで辞任したため、与党保守党内では強硬離脱派を中心に、メイ首相の不信任投票を求める動きが強まりました。ただ、強硬離脱派の実力者であるゴーブ環境相は11月16日、政権にとどまる意向を表明し、メイ政権の崩壊はひとまず回避されています。

こうしたなか、EUは11月25日に臨時EU首脳会議を開催し、離脱条件などを定める離脱協定案と、将来関係の大枠を示す政治宣言案を正式に決定しました。これにより、英国のEU離脱は、「合意あり」の方向で進むことになりましたが、次の焦点は英国議会です。英国議会では、12月11日に離脱協定案と政治宣言案の審議と採決が行われます。否決の場合、「合意なし」の離脱という可能性が残ることになります。

保守党315人のうち強硬離脱派40~50人と、DUP10人の反対で、12月の可決は難しい状況

離脱協定案には、英国の実質的な離脱を先送りする内容が盛り込まれており、強硬離脱派は反発しています。また、アイルランド国境問題も未解決のままとなっており、保守党に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は反対の姿勢を示しています。なお、保守党の強硬離脱派は40~50人程度とみられ、DUPの下院議員は現状10人です。

英国の下院定数は650人ですが、議長、副議長や採決に加わらない議員を除くと、639人になります。そのため、離脱協定案と政治宣言案の可決には、その過半数の320人の賛成が必要です。保守党の全下院議員は315人で、DUPの10人とあわせて与党は325人ですが、前述の通り、保守党内の強硬離脱派40~50人とDUPの10人は現行案に強く反対しているため、可決は難しい状況です。

最終的には採決され合意ありの離脱を予想するが、内閣不信任案の流れとなった場合は要注意

市場でも、12月11日に離脱協定案と政治宣言案が可決されることは難しいとの見方が優勢です。仮に否決となった場合、英国政府は21日以内に新提案を提出しなければなりません。ただ、離脱協定案には法的拘束力があるため、修正は困難です。しかしながら、政治宣言案には法的拘束力がないため、こちらにどの程度、強硬離脱派やDUPの要求を反映させられるかが、ポイントになります。

弊社では、離脱協定案と政治宣言案は最終的に採決され、英国とEUは合意ありの離脱に向かうとみています。しかしながら、図表1の通り、内閣不信任投票の流れとなった場合は注意が必要です。可決されれば総選挙となり、否決されても再国民投票やEUとの再交渉、合意なしの離脱という展開が想定されます。いずれにせよ、英国の政局不安が強まるため、欧州中心に金融市場が大きくリスクオフに傾く恐れがあります。

181127

(2018年11月27日)

 

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ