朝鮮半島を巡る米中の思惑

2017/04/14

市川レポート(No.380)朝鮮半島を巡る米中の思惑

  • 米国、中国、北朝鮮にはそれぞれの思惑があり、これが朝鮮半島情勢の行方を読みにくくしている。
  • 米国は朝鮮半島の非核化、中国は対米関係の安定を望む、中国の北朝鮮への影響力に注目。
  • 北朝鮮が核実験強行なら事態は混迷化も、米中朝による平和的な協議の早期進展が望まれる。

米国、中国、北朝鮮にはそれぞれの思惑があり、これが朝鮮半島情勢の行方を読みにくくしている

市場は「不透明性」や「不確実性」を最も嫌います。先行きが読みにくい事象が発生した場合は、資産価格への影響も判断しにくくなるため、当然のことといえます。したがってそのような状況で、一時的に価格変動の大きい資産から小さい資産へ資金シフトが起こるのは合理的なことであり、実際の市場ではリスクオフ(回避)の株安、債券高という形で、それが顕在化します。

現在、朝鮮半島では軍事的な緊張が高まっていますが、このような「地政学リスク」は、「不透明性」や「不確実性」の典型例ですので、市場はその行方を注視している状況です。米国、中国、北朝鮮にはそれぞれの思惑があり、これが今後の展開を見極めにくくしています(図表1)。そこで今回は、すでに報道されている情報に基づいて各国の思惑を整理し、今後の注目点を考えます。

米国は朝鮮半島の非核化、中国は対米関係の安定を望む、中国の北朝鮮への影響力に注目

まず米国の目的は、朝鮮半島の非核化です。交渉の基本姿勢は、最初に強い姿勢を示し、相手から有利な条件を引き出すというものです。シリアへの攻撃、米空母の朝鮮半島への派遣、特殊爆弾によるアフガニスタンへの空爆は、北朝鮮や中国への強い牽制と解釈できます。中国には北朝鮮への原油供給停止など経済制裁の強化を求め、その見返りは貿易赤字問題に関する圧力の回避ということが考えられます。なお米国が北朝鮮に先制攻撃を仕掛けることはないというのが一般的な見方です。

次に中国の目的は、米国と対等かつ安定した関係を構築することです。北朝鮮に一定の影響力を持つことは米国との交渉上必要であるため、中国は北朝鮮の崩壊は望んでいないと推測されます。崩壊となれば多くの難民が押し寄せる恐れもあることから、中国にとって過度な経済制裁は躊躇される一方、米国の北朝鮮攻撃も回避すべき事態です。そのため中国が経済制裁というカードで北朝鮮に核実験をやめさせることができるか否かが、今後の注目点の1つとなります。

北朝鮮が核実験強行なら事態は混迷化も、米中朝による平和的な協議の早期進展が望まれる

最後に北朝鮮の目的は、支配体制の維持と核保有の継続です。したがって結局のところ、米国は非核化を譲らず、北朝鮮も核保有を譲らず、という構図になるため、やはり中国が米朝対話による解決のカギを握ることになります。仮に今回、北朝鮮が核実験やミサイル実験を強行した場合、米国と中国はこれを北朝鮮の核保有継続・対話拒否の意思表示と認識し、事態が混迷化する恐れがあります。

以上は、すでに報道されている情報に基づいて注目点を整理したものであり、見通しではありません。そもそも軍事に関わる重要情報は開示されないため、この点も踏まえておく必要があります。なお北朝鮮は4月11日の最高人民会議で19年ぶりに外交委員会を設置することを決めました。これは対外関係の改善に向けた動きとも解釈することができますので、米中朝による平和的な協議の早期進展が望まれます。

170414図表1

 

(2017年4月14日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ