ドル円相場と日本株の関係

2016/08/30

市川レポート(No.293)ドル円相場と日本株の関係

  • ドル円レートと日経平均株価の関係について、回帰分析という手法を使って改めて検証してみる。
  • 2011年11月からのデータによれば、ドル円の動きで日経平均株価の動きを96.33%説明可能。
  • ただ回帰分析の推計式で算出する日経平均株価は、必ずしも実勢水準に一致するとは限らない。

ドル円レートと日経平均株価の関係について、回帰分析という手法を使って改めて検証してみる

今回は改めてドル円相場と日本株の関係について考えてみます。一般に、円高は日本株の売り材料、円安は買い材料とされており、実際の相場でも、円高が進行して日本株が下落し、円安が進行して日本株が上昇するという動きはよくみられます。そこで両者にはどのような関係があるのか、そして関係があるとしたらどの程度の強さなのか、それぞれ具体的に検証してみます。

アベノミクスへの期待から円安・株高の動きが顕著になったのは、2012年11月の衆議院解散辺りからでした(図表1)。より長期でみるため、1年前の2011年11月を起点とし、直近までのドル円レートと日経平均株価の日次データを抽出します。次に回帰分析という手法で、ドル円レートと日経平均株価の関係を数式で表します。数式は「Y=aX+b」の形をとり、説明変数であるXがドル円レート、被説明変数であるYが日経平均株価です。

2011年11月からのデータによれば、ドル円の動きで日経平均株価の動きを96.33%説明可能

回帰分析の結果は図表2の通りです。両者の関係は「Y=241.15X-10,027」であることが示されました。ここで241.15は、前述の「Y=aX+b 」でいうところのaにあたり、これを「傾き」といいます。同様に-10,027はbにあたり、これを「切片」といいます。つまり、日経平均株価(Y)は、ドル円レート(X)に傾き(a)の241.15を掛けて、切片(b)の10,027を引くことで説明できるということになります。

「Y=241.15X-10,027」という数式をみれば、ドル安・円高が進行するとXの値が小さくなり、その結果Yの値も小さくなって株安になることが分かります。逆にドル高・円安が進行するとXの値が大きくなり、その結果Yの値も大きくなって株高になることが分かります。なお図表2の数式の下に「?^2」とありますが、これは決定係数といい、説明変数Xで被説明変数Yをどの程度説明できるかを表すものです。決定係数は0.9633ですので、ドル円の動きで日経平均株価の動きを96.33%説明できることになります。

ただ回帰分析の推計式で算出する日経平均株価は、必ずしも実勢水準に一致するとは限らない

回帰分析から、ドル円レートと日経平均株価の間には、やはり円高で株安、円安で株高という関係があり、またドル円レートの動きで日経平均株価の動きをかなりの部分説明できることが明らかになりました。ところで、現在のドル円は1ドル=102円近くで推移しており、数式に代入すると241.15×102-10,027=14,570となります。これは日経平均株価の14,570円水準を示唆しますが、現状から2,000円以上乖離しています。これについては次のように解釈できます。

そもそも回帰分析で推計される数式は、図表2で示される全ての点(ドット)の線形近似に過ぎません。そのため実際に図表2をよくみると、直線上に位置しないドットが多数存在します。したがって、回帰分析によってドル円レートと日経平均株価の関係は検証できても、数式で算出された株価が必ずしも実勢水準に一致するとは限らないということになります。

160830図表1160830図表2

 

 (2016年8月30日)

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