FOMC声明の読み方

2015/11/02

市川レポート(No.168)FOMC声明の読み方

  • 声明は5~6段落で構成され内容は非常に簡潔、最近は文字数や情報量が顕著に増加。
  • 第1段落は景気と物価の現状判断、第2段落は先行き判断を示し、リスク要因にも注目。
  • 第3段落は金融政策の運営方針を示し、利上げ時期を見通す上で最も重要な段落。

声明は5~6段落で構成され内容は非常に簡潔、最近は文字数や情報量が顕著に増加

 米国の金融政策の基本方針は、年8回、約6週間ごとに開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定されます。そしてその内容は声明(Statement)という形式で即日公表されます。声明には景気、物価、政策運営に関するFRBの考え方が示され、将来の金融政策の方向性を予測する上で極めて重要な材料となります。現在、市場の関心事は米利上げ時期であり、10月28日公表のFOMC声明でも、それに関連する文言に注目が集まりました。

 FOMC声明は5~6段落で構成され、非常に簡潔な内容となっています。なお最近の声明は過去のものに比べ、文字数や情報量が顕著に増加しています。これはFRBが非伝統的金融政策の導入と、その後の出口戦略という前例のない舵取りを行っているためであり、市場との対話に苦慮している様子が窺えます。この先も米利上げ時期をにらみ、FOMC声明の注目度はますます高まると思われため、今回は声明の段落構成と注目ポイントについて解説します(図表1)。  

第1段落は景気と物価の現状判断、第2段落は先行き判断を示し、リスク要因にも注目

 第1段落は「景気と物価の現状判断」です。冒頭で経済活動が総括され、続いて家計支出、設備投資、住宅、純輸出、雇用、失業率、労働力の活用不足の度合いなどについての見解が示されます。また物価については足元の動向と長期の物価予想について、それぞれ述べられます。ここでのポイントは前回声明と比較し、判断の変化を確認することです。下方修正が顕著なら利上げは先送り、逆ならば前倒しという見方に市場は傾きやすくなります。 

第2段落は「景気と物価の先行き判断」です。FRBは金融政策の目標である最大雇用と物価の安定を目指して政策運営を行っています。ここでは経済活動や労働市場、そして物価の先行きが、政策目標に沿った軌道にあるかについて検証が行われます。ポイントはやはり前回声明と比較し、先行き判断に大きな変更があるか否かを確認することです。また先行きに関するリスク要因が示されることがあり、10月声明では「世界の経済・金融の動向」とされました。 

 第3段落は金融政策の運営方針を示し、利上げ時期を見通す上で最も重要な段落

 第3段落は「金融政策の運営方針」で、最も重要な段落となります。ここでは①FOMCでの決定事項、②今後の運営方針、③金融政策の先行きを示すフォワードガイダンスが記載されます。10月声明では②に関して「次の会合」という文言が新たに追記されたため、声明はタカ派的だったとの解釈もみられました。また③についても今後僅かな修正で市場に大きな影響を与える可能性があります。 

 第4段落は「再投資維持の方針」、第5段落は「低金利維持の方針」です。FRBは保有国債などの償還金を再投資し続け、雇用と物価が政策目標と一致する水準に近づいても低金利を維持するとしており、これらの方針は当面変更されないと思われます。そして最後の第6段落は「投票結果」です。決定事項に関する賛成票、反対票を投じたメンバーの名前が明らかになるので、ハト派やタカ派などの政策スタンスを確認する上で有効です。以上、FOMC声明の段落構成や注目ポイントについて解説しましたが、この先の利上げ時期を見通す上では、第1段落から第3段落、特に第3段落を慎重に読み解く必要があると思われます。

151102 図表1

 (2015年11月2日)

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