FOMCメンバーの政策金利見通しを考える

2015/10/02

市川レポート(No.152)FOMCメンバーの政策金利見通しを考える

  • 政策金利見通しでは公表されないメンバーの名前を、金融政策スタンスから推測する。
  • 年内の利下げ予想はコチャラコタ総裁、年内3回の利上げ予想はラッカー総裁とみられる。
  • 利上げは12月に1回の可能性が高いとみるが、FRBの市場との対話手法に改善点がある。

政策金利見通しでは公表されないメンバーの名前を、金融政策スタンスから推測する

 米連邦準備制度理事会(FRB)は毎年3、6、9、12月に、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる米国経済と政策金利の見通しを公表しています。現在、FRBの金融政策に対する不透明感が金融市場の動揺につながっており、FOMCメンバーの政策金利見通しへの注目度が極めて高くなっています。そこで今回は改めてこの政策金利見通しについて考えてみたいと思います。

 政策金利の見通しではFOMCメンバーの名前が示されないため、誰がどういう予想をしたのかについては明らかではありません。そこで各メンバーの金融政策スタンスをもとに、予想者の名前を推測してみます。金融政策スタンスに基づくメンバーの分類は図表1の通りになります。2015年のFOMCで投票権を持つメンバーは、議長と副議長、そして現時点で3名の理事に、ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの地区連銀総裁を加えた、合計10名です。  

年内の利下げ予想はコチャラコタ総裁、年内3回の利上げ予想はラッカー総裁とみられる

 政策金利については2つの見通しが示されます。1つは適切な利上げの時期です。9月の見通しでは、投票権を持たないメンバー7名を含む17名のうち、2015年が適切と考えるメンバーは13名、2016年が3名、2017年が1名でした。もう1つは適切な利上げのペースです。具体的には2015年末、2016年末、2017年末、長期におけるフェデラルファンド(FF)金利の予想水準がそれぞれ「点(ドット)」の分布で示されます。 

 利上げ開始は2017年が適切とみるメンバーと、2015年末のFF金利を-0.125%(年内利下げ)と予想したメンバーは同一人物と考えられ、これは8月に利下げの可能性も示唆したコチャラコタ総裁と推測されます(図表2)。また対照的に、2015年末のFF金利を0.875%(年内3回利上げ)と予想した極めてタカ派的なメンバーは、9月FOMCで政策金利の据え置きに反対票を投じ、利上げを主張したラッカー総裁とみられます。 

利上げは12月に1回の可能性が高いとみるが、FRBの市場との対話手法に改善点がある

 また2015年末のFF金利を0.625%(年内2回利上げ)と予想した5名のうち、3名はタカ派であるブラード総裁、ジョージ総裁、メスター総裁と思われ、0.125%(年内据え置き)と予想した3名のうち、2名はハト派のエバンス総裁、ローゼングレン総裁と推測されます。これによってまだ名前が判明していないメンバーは、年内2回の利上げを予想する5名のうちの2名、年内据え置き予想の3名のうちの1名、そして年内1回の利上げ、つまりFF金利の0.375%を予想する7名となります。 

 イエレン議長をはじめ投票権を持つ主要ハト派メンバーは年内1回の予想とみられることから、利上げはおそらく年内1回、12月に行われる可能性が高いと思われます。ただFRBは、政策意図を示す基本手段はFOMC声明であり、メンバーの見通しではないとしています。それでもこのような見通しが公表される以上、市場はそれに基づき政策判断を予想します。その結果、現時点で明確な政策見通しが定まらず、不安定な相場が続いていることを踏まえれば、FRBの市場との対話手法には改善点があるように思われます。

151002 図表1151002 図表2

 

 (2015年10月2日)

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