ギリシャ問題の先行きは依然不透明

2015/07/13

市川レポート(No.110) ギリシャ問題の先行きは依然不透明

  • 週末協議も合意に至らず、ギリシャは財政改革措置を7月15日までに法制化へ。
  • ユーロ加盟国でギリシャのユーロ離脱容認の声も高まりチプラス首相は再び窮地に。
  • 支援協議の進展をにらみ、短期的に金融市場は神経質な動きがみられる場面も。

 
週末協議も合意に至らず、ギリシャは財政改革措置を7月15日までに法制化へ

 ギリシャ政府は7月9日、財政改革案を欧州連合(EU)側に提出しました。改革案は付加価値税(VAT)の引き上げや年金給付の抑制が盛り込まれており、EU側に譲歩した内容となりました(図表1)。しかしながら7月11日のユーロ圏財務相会合では、改革案の実現性について疑問視する声が相次ぎ、支援協議は合意に至りませんでした。そのため7月12日に予定されていたEU首脳会議は中止となり、代わりにユーロ圏首脳会議で協議が継続されました。現時点では、第3次金融支援の交渉を開始するために、ギリシャは財政改革の措置を7月15日までに法制化する必要があるとの方向で議論が進んでいます。  

ユーロ加盟国でギリシャのユーロ離脱容認の声も高まりチプラス首相は再び窮地に

 チプラス首相が6月27日に突然の国民投票実施を表明して以降、ギリシャに対するEUの不信感は相当強まっており、金融支援を巡る先行きは依然不透明なままとなっています。こうしたなかユーロ加盟国の間ではギリシャのユーロ離脱を容認する声が一段と高まっています。報道によれば、ドイツはギリシャに関し二者択一のシナリオを提起しており、具体的にはギリシャが一段と踏み込んだ財政改革を実施するか、あるいは単一通貨同盟を5年間離脱してその間に債務減免を受けるかというものです。またフィンランドのストゥブ財務相は、チプラス首相が15日の法制化期限を守れない場合、ギリシャは通貨同盟を離れることになると述べています。

 ギリシャのチプラス首相は再び厳しい立場に追い込まれつつあります。7月5日の国民投票における緊縮反対多数という結果を受けてEUとの交渉に臨み、EU側に譲歩する財政改革案を示す代わりに債務減免という成果を勝ち取るという思惑は、EU側の戦略により阻まれた格好となっています。EUとしても、他国に反緊縮の動きが広がる恐れがあることや国内の世論を勘案すれば、安易に債務減免を受け入れることはできません。今後のスケジュールとしては、7月15日までにギリシャが財政改革措置を法制化できれば、その後ユーロ圏財務相会合で改めて支援交渉が行われる見通しです。7月20日に欧州中央銀行(ECB)が保有する約35億ユーロのギリシャ国債の償還が控えているため、時間的余裕はなくなりつつあります。

支援協議の進展をにらみ、短期的に金融市場は神経質な動きがみられる場面も

 ギリシャが第3次支援を受けられなければ、7月20日のギリシャ国債の債務不履行(デフォルト)、欧州中央銀行(ECB)による緊急流動性支援(ELA)の打ち切り、ギリシャ政府による並行通貨の発行、政局の流動化という展開が予想されます。ただ週明け7月13日の東京市場では、株式、為替、債券、いずれも比較的落ち着いた動きとなっており、協議の行方を見守っている状況です。ギリシャ問題については、最終的に金融支援の枠組みは維持されるとみており、仮に深刻化した場合でも世界的な金融危機や信用収縮が発生する恐れは極めて小さいと考えます。ただ支援協議の進展をにらみ、短期的に金融市場は神経質な動きがみられる場面も予想されます。

 

150713 図表1150713 図表2

(2015年7月13日)

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