ドル円が110円を回復するための条件

2019/07/08

 

市川レポート ドル円が110円を回復するための条件

  • 6月米雇用統計で、過度な利下げ期待が後退、ドル円は108円台後半までドル高・円安が進行。
  • 米中首脳会談後105円の円高リスクは後退も、年内2回の利下げ織り込みが続き110円も遠い。
  • 制裁関税リスク後退の間、強い米経済指標が続き、長期金利、株価とも上昇なら110円回復も。

6月米雇用統計で、過度な利下げ期待が後退、ドル円は108円台後半までドル高・円安が進行

米労働省が7月5日に発表した6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比22万4,000人増加しました。増加幅は前月の7万2,000人から大きく回復し、市場予想(約16万人)も上回りました。今回の結果を受け、同日の米金融市場では、米労働市場の底堅さが改めて確認されたとの見方から、米連邦準備制度理事会(FRB)に対する過度な利下げ期待が後退しました。

フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、年内3回の利下げを織り込む動きが弱まるなか、米10年国債利回りは上昇し、2%台を回復して週末の取引を終了しました(図表1)。また、為替市場では、米利下げ期待の後退と米長期金利の上昇を背景に、米ドルが対主要通貨でほぼ全面高となり、ドル円は一時1ドル=108円64銭水準までドル高・円安が進行しました。

米中首脳会談後105円の円高リスクは後退も、年内2回の利下げ織り込みが続き110円も遠い

ドル円相場について、6月5日付けレポート「パウエル発言を受けたドル円相場の行方」では、目先105円~110円程度のレンジで、振れ幅を伴う展開を想定していました。ただ、その後、6月29日に開催された米中首脳会談において、貿易協議の再開が決まり、米国は対中制裁関税第4弾(3,000億ドル分の中国製品に対する制裁関税)の発動を当面見送る方針を明らかにしました。

そのため、105円水準までドル安・円高が進むリスクは、いったん後退したと考えています。一方、ドル高・円安方向の動きについては、7月5日の米雇用統計発表後、ドル円は108円台後半をつけたものの、FF金利先物市場では、なお年内2回の利下げが織り込まれている状況です。したがって、米長期金利の上昇余地は乏しく、110円水準まで一気にドル高・円安が進む展開は、今のところ見込み難いと思われます。

制裁関税リスク後退の間、強い米経済指標が続き、長期金利、株価とも上昇なら110円回復も

ドル円相場の動きを振り返ると、5月以降、ドル安・円高が進行していますが、5月は米中貿易摩擦問題の再燃が、6月は米早期利下げ観測の浮上が、それぞれ主因と推測されます(図表2)。為替市場は、「米中の対立継続→米国景気の先行きに不透明感が増す→FRBが予防的利下げを実施」、というシナリオを想定しているとみられます。そのため、ドル円が110円台を回復するためには、このシナリオに修正を迫るような材料が必要です。

例えば、①制裁関税第4弾の発動リスクが後退している間に、②米経済の底堅さを示す経済指標の発表が相次ぎ、③予防的利下げの必要性が低下する、という流れは、シナリオ修正の材料となり得ます。ただ、現状では利下げ期待が株価を支えている面もあるため、②は当初、株安を促す恐れもあります。それでも、基本的には株高要因ですので、①から③の流れのなか、米長期金利とともに株価が上昇する環境となれば、ドル円は110円を回復する公算が大きくなると考えています。

(2019年7月8日)

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