金利との連動性崩れ、ドル円は105円台

2018/02/16

▣ 円高要因、ドル安要因

米国の長期金利(10年債利回り)が2月15日には、一時2.94%と2014年1月以来の高水準をつけるなど、米金利が上昇しているにもかかわらず、ドル円は年初から下落基調が続いています(図表1)。ドル円は昨年12月下旬には112~113円で推移していましたが、2月16日には106円を割り込みました。

円高材料としては、日銀が今年後半にも現行の金融緩和政策を調整(長期金利の水準引き上げなど)するのではないかとの観測が根強いこと、また、先週から内外の株式市場が荒い展開になり、投資家のリスク回避姿勢が強まったことなどが挙げられます。

一方、ドル安材料としては、大型減税やインフラ投資計画を受けて米国の財政が大幅に悪化するとの観測に加え、貿易赤字の拡大が挙げられます。トランプ米政権が2月12日に議会に提出した予算教書は、財政赤字は9,840億ドルと、7年ぶりの水準に悪化する内容。財政が大幅に悪化することにより、長期的には基軸通貨ドルの信認が揺らぐとの懸念が広がっています。また、ムニューシン米財務長官が、「ドル安は米国の貿易にとって良いこと」と発言するなど、トランプ政権の保護主義的な通商政策への警戒もドルの押し下げ材料として挙げられます。

▣ 金利差との連動が崩れた局面

これまで、ドル円は日米の金利差とおおむね連動して動いてきました。過去、日米金利差が拡大しても、ドル円が上昇しなかった、もしくは下落した局面としては、以下が挙げられます。

①2009年4月中旬から6月上旬:株価が持ち直し、米長期金利が上昇する中、為替市場では中国の景気減速や米景気の先行き不透明感などが警戒されドル円の上昇は一服

②2010年12月:米景気の回復期待が高まり、米長期金利は上昇も、ドル円は欧州債務危機を背景に、逃避通貨とされる円買いが優勢となり下落

③2011年10月:欧州債務不安や投機筋の仕掛け的な円買いなどから、ドル円は75円台まで下落。欧州連合(EU)首脳会議で欧州債務問題に対する包括戦略で合意したことなどから、米金利が上昇

④2013年5月中旬から6月中旬、7月中旬から8月中旬:米労働市場の改善や、米国量的緩和策の早期縮小観測を手掛かりにしたドル買いから、ドル円が急伸した反動や、東京株式市場の大幅下落などを背景に、リスク回避の円買いから、ドル円が下落。その後は、一進一退の動き。米長期金利は量的緩和策の早期縮小観測(バーナンキショック)から大きく上昇

▣ ドル円は米長期金利にさや寄せするか

注目された日銀の次期総裁人事で、政府は16日に黒田総裁を再指名しました。当面は強力な緩和政策が維持されることが見込まれます。また、恐怖指数と呼ばれ投資家の不安心理を表すVIX指数は、15日には19.13まで低下し、平時の水準とされる10~20の範囲に戻ってきました。足元は、円高要因は後退しており、ドル安の局面といえそうです。

日米金利差とドル円の連動性が崩れる局面は、④の2013年はバーナンキショックの債券市場への影響が大きかったため、連動性の崩れがやや長引きましたが、①~③などは比較的短期で終了しました。

最近の米長期金利は米利上げペースの加速と、財政悪化を織り込みつつあり、3%を大きく超えて上昇するとの懸念は後退しています。早晩、日米金利差とドル円の連動性は戻ることが想定されます。

もっとも、ドル円が日米金利差にさや寄せし、120円といった水準まで上昇する可能性は低そうです。米長期金利が低下しにくくなっていることから、ドル円が若干さや寄せする可能性はあるものの、2017年よりも円高水準での推移になりそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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