割安感、出遅れ感が強まるJリート市場

2017/10/13

欧米株が過去最高値を更新、国内株も日経平均株価が2000年4月のITバブル時の高値を抜き、2015年の高値を上回るなど、堅調な動きとなっている一方、Jリート市場はやや元気のない動きが続いています。その主な要因としては、毎月分配型の投資信託からの資金流出が重しになったことに加え、一時マイナス圏に沈んだ長期金利がプラス圏に戻っていること、景況感の改善を背景に先高観が根強い株式市場に資金が流入しやすくなっていることなどが挙げられます。

▣ 長い目で見ると、分配利回りの高いJリートのパフォーマンスは悪くない

とはいえ、国内株とJリートのパフォーマンスをみると、東証REIT指数はTOPIXに逆転されてしまいましたが、配当込みの指数についてはまだTOPIXを大きく引き離しています(図表1、2)。長い目で見ると、Jリートの相対的に高い分配利回りが指数を押し上げてきた格好です。

▣ 足元の分配利回りは、平時では最も高い水準

Jリートの分配利回り(ここではBloombergの配当利回り)については、足元では4%程度まで上昇しています(図表3)。2008年~2012年の世界金融危機、欧州債務危機で、株価とともにJリートも大きく値を下げた局面を除くと、2004年以降の分配利回りは3%台中心で、平均は3.3%程度。足元の4%程度の分配利回りは、平時では最も高い水準にあるといえます。

2008年~2012年を除く2004年以降のJリート分配利回りの長期金利からのかい離(分配利回りスプレッド)の平均は2.4%程度。足元の分配利回りスプレッドは長期金利がほぼゼロ%に近いので、4%程度(図表4)。こちらも平時では最も高い水準です。

▣ オフィス市況は順調に回復

9月末の東京都心のオフィス空室率は、2008年4月以来、9年5か月ぶりの低い水準まで低下しています(図表5)。また、オフィス平均賃料は、45か月連続で上昇し、2009年11月以来、7年10か月ぶりの高水準まで上昇するなど、東京都心のオフィス市況が順調に回復する中、Jリートの分配金も増加傾向が続いています。分配利回りを一定とするならば、東証REIT指数は分配金の増加により押し上げられることになります。

▣ 株価対比で強まる出遅れ感

他方、これまで国内株とJリートは連動する傾向がありましたが、2015年以降、逆の動きが目立っています。これまでの、東証REIT指数とTOPIXの水準を比較すると、東証REIT指数がTOPIXを上回り、東証REIT指数のTOPIXに対する比率が1.4倍程度まで拡大するとJリートが国内株と比べ買われ過ぎ(あるいは国内株が出遅れ)、1倍を下回るとJリートが国内株と比べ売られ過ぎ(あるいはJリートが出遅れ)といえそうです(図表6)。2015年のJリートの下落局面では、この比率が1.01倍で反転し、Jリート市場が持ち直しました。10月12日時点のこの比率は0.96倍。2008年のリーマンショック時には0.8倍台まで低下しましたが、この局面を除いた平時では、0.95倍が最も低い水準。Jリートの出遅れ感が強まっています。

▣ 投信は売り越しが継続、海外投資家は買い越しに

投資家別売買状況では、4月以降、投資信託の売り越しが継続していますが、相場を大きく動かすことが多い海外投資家は9月には買い越しに転じました(図表7、8)。分配利回りの高さや出遅れ感が見直されてきている証左かもしれません。

▣ 欧米の金融緩和縮小の国内金利への影響は限定的、自社株買いの動きは安心感

米国では12月に追加利上げする可能性が高まっています。また、欧州中央銀行(ECB)は10月26日の理事会で来年以降のテーパリング(資産買入れプログラムの段階的縮小)を決定する可能性が高いとみられます。もっとも、年内の米利上げについては、市場はほぼ織り込み済みの状況。米連邦準備制度理事会(FRB)は来年以降についても慎重に政策金利を引き上げていくことが見込まれます。  ECBについてもマイナス金利政策は続くとみられ、国内金利への上昇圧力は限定的と考えられます。日銀は低インフレが続く中、強力な金融緩和政策を継続することが見込まれることも、長期金利上昇を抑制するとみられます。また、Jリートの分配利回りは4%程度と相対的に高く、10bp(1bp=0.01%)、20bp程度の長期金利の上昇では、利回り面での魅力が大きく後退することはなさそうです。

Jリートの価格が割安な水準にあることから、投資主への還元や価格向上などを目的に、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人に続き、10月10日にはいちごホテルリート投資法人が自社株買い(自己投資口の取得)を発表しました。

自社株買いの動きが出てきたことや、海外投資家が買い越しに転じたことは安心感。国内株の高値警戒感がくすぶる中、毎月分配型投信からの売りが一巡すると、Jリート市場は戻りを探る動きが期待されます。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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