遠い出口

2017/06/23

▣ 日銀は出口戦略は時期尚早との立場を堅持

6月14、15日の日銀金融政策決定会合では、(1)出口戦略について説明があるか、(2)保有残高の増加額年間約80 兆円をめどとしている国債の買入れペースを変更するかに、注目が集まりました。

各国の金融当局は、リーマンショック後の金融危機やギリシャの財政問題に端を発する欧州債務危機に対処すべく、伝統的な金融政策の手段である政策金利の引き下げに加え、資産買入れなどの非伝統的な金融政策を導入しました。

(1)の異例の金融政策を終わらせる出口戦略については、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2014年10月に量的緩和第3弾(QE3)を終了させた後、保有する米国債などについては償還金を再投資し残高を維持してきましたが、先日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、年内に再投資の縮小を開始する方針を示しました。FRBは着々と出口戦略を進めています。欧州中央銀行(ECB)についても、資産の買入れ額を4月から減額し、来年以降、段階的に買入れ額を縮小していくとの観測が強まっています。

日銀についても、「時期尚早」としてきた出口戦略について、対話路線に姿勢を変更し、異例の金融政策の終了までの道筋や日銀財務への影響などを説明するとの期待が広がっていました。ただ結局、黒田日銀総裁は、「2%の物価安定の目標に向けての道は、まだかなりある。今から具体的に出口がどのようになるのか、そのもとで日銀の収益がどうなるかということは、まだ道半ばの状況で、現時点で具体的なシミュレーションを示すことは、却って混乱を招くおそれがあるために難しいし、また、あまり適当ではない」と、時期尚早との立場を崩しませんでした。

また、(2)の 「80兆円めど」についても、実際は60兆円を下回るペースになっていますが、黒田総裁は、月々で買入額に変動があるため、変える必要はないとしました。岩田副総裁も22日、80兆円のめどを残した方が市場に余計な混乱を招かないと、80兆円のめどを維持する姿勢を示しました。

▣ 日銀の見通しでは出口は近いものの

4月に日銀が公表した展望レポートでは、物価目標である2%に達する時期は、見通し期間の中盤である2018年度頃になる可能性が高いとしています。2017年度の物価上昇率の見通しを1.4%としていることについて、現状の物価動向とだいぶ離れているとの指摘に対し、岩田副総裁は、「今年は実体経済が良い。足元が弱くてもだんだん物価は2%に近づく軌道に入っていくと思っている」と、強気の姿勢を示しました。日銀の見通しが実現するのであれば、出口が相当近付いていることになり、市場は急いで出口に備える必要があります。

もっとも、日銀の物価見通しは民間の見通しと大きくかけ離れています(図表1)。黒田総裁も「日本は出口が非常に遠い、全くみえていないような状況にある」と述べています。日銀の見通しどおりにはいかないとみている模様です。

ESPフォーキャスト調査(6月)では長期予測についても調査していますが、19-23年度の平均物価上昇率(消費増税の影響を除く)は1.12%、24-28年度は1.22%。2%の物価目標の達成を見通すのは難しい状況です。出口は見えず、逆に将来的には一段の追加緩和を余儀なくされる可能性すらあります。日銀の出口論で債券市場が不安定になる局面は、押し目買いの機会との見方もできそうです。

※「ESPフォーキャスト調査」とは

 この調査は日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40名から、日本経済の株価・円相場を含む重要な指標の予測値や総合景気判断等についての質問票に毎月回答頂き、その集計結果から、今後の経済動向、景気の持続性などについてのコンセンサスを明らかにするものです。(日本経済研究センターより)

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