日銀の追加緩和は後ずれか

2016/06/03

▣日銀の追加緩和のタイミングを予想するのは難しい

4月の日銀金融政策決定会合(27、28 日)では、予想外に追加緩和が見送られました。5月12日に公表された「金融政策決定会合における主な意見」(4 月開催分)をみると、経済情勢については「わが国経済は、緩やかな回復基調を維持している」との意見が主流。また、物価については「エネルギー価格のマイナス寄与が残る」ものの、「企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていく」としており、市場の期待をよそに、追加緩和への前向きな姿勢は窺えない内容でした。市場の期待通りには日銀は動かない、また、いつ追加緩和に踏み切るかが予想しにくいことをあらためて市場に印象付けました。

日銀は、金融政策の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」としています。この理念の下、2013年1月には、消費者物価の前年比上昇率2%とする「物価安定の目標」を定めました。2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際には、2年程度の期間を念頭に置いて、この物価目標をできるだけ早期に実現すると表明しました。以降、経済・物価見通しを公表するとともに、物価目標の達成時期の目安を示してきました。

追加緩和のタイミングを予想する上で、“日銀が見通す物価目標の達成時期”、“日銀の経済・物価見通し”が大きな材料になるはずです。ただ、日銀は当初見込んだ時期に達成できない可能性が高まった場合には、追加緩和ではなく達成時期を先送りしてきました。また、経済・物価見通しについても下方修正されるケースが多いものの、先行きの見通しについては強気の姿勢を維持しており、追加緩和のタイミングを占う上で、どちらも決め手に欠ける状況です。

▣ 6月の追加緩和の必要性は後退

低インフレが継続する中(図表1)、政府の経済対策とあわせ、6月に追加緩和に踏み切るとの見方が広がっていましたが、ここにきて6月会合(15、16日)のタイミングでの追加緩和の可能性がやや後退してきています。主な理由としては、

  • 6月23日に予定されている英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票に関し、一部の世論調査で離脱支持が残留を上回る結果が出てきており、結果を確認するまでは動きにくいこと
  • 6月もしくは7月の米利上げ観測が強まっており、ドル高が意識され、円高が一服していること
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)は6月14、15日開催で、英国の国民投票の前に利上げを決定しにくく、利上げするとしても7月にずれ込む可能性が高いこと
  • 消費増税が延期されたことで、増税に向けた景気テコ入れのための追加緩和の必要性が後退したこと
  • マイナス金利政策の影響を見極める時間がもう少し必要なこと

などが挙げられます。

▣効果的なタイミングは

金融政策の限界がささやかれる中、日銀はできるだけ効果的な追加緩和のタイミングを見計らう必要があります。

安倍首相は6月1日、2017年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期する方針を正式に表明しました。もうひとつ期待されていた経済対策については、「総合的かつ大胆な経済対策」を秋に講じる方針を示したものの、詳細な説明はなく、市場の失望を誘いました。しかし、秋に政府が「総合的かつ大胆な経済対策」に動くのであれば、そのタイミングに合わせて日銀が追加緩和に動き、“財政政策+金融政策”で景気浮揚を図ることも考えられます。

6月の会合でのサプライズ緩和の可能性は残りますが、会合前後に大イベントが予定されていることから、早期の追加緩和に対する過度の期待は禁物といえそうです。

20160603

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