FRB、金融政策の正常化に一歩踏み出す

2021/11/04

▣ テーパリング開始を決定

米連邦準備制度理事会(FRB)は11月2、3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置く一方、米国債などを買い入れる量的緩和(QE)の縮小(テーパリング)を11月に開始することを決めました。

FRBは新型コロナウイルスの危機対応として、毎月1,200億ドル(米国債800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドル)を買い入れる量的緩和政策を続けてきました(図表1)。11月以降は、米国債100億ドル、MBS50億ドルの合計150億ドルを買入れ額から毎月減額していき、来年6月にも量的緩和が終了することになります。

▣ インフレは「一時的」、早期利上げに慎重

懸念されているインフレについて声明文では、「一時的な要因を反映して高まっている」から「一時的と思われる要因を反映して高まっている」と、「一時的」という文言を微妙に残しました。

パウエルFRB議長は、「供給網の混乱が解消されれば、物価上昇率は長期的な政策目標の2%に戻る」との従来の見解を維持するとともに、「利上げの判断にはより厳しい条件の達成が必要」と利上げに慎重な姿勢を示したことを受け、早期利上げを警戒していた金融市場に安心感が広がりました。

▣ 米金融市場の反応は

3日の米株式市場は良好な企業決算も手伝い、NYダウが前日に続き過去最高値を更新しました。緩和マネーの供給鈍化への警戒感は広がりませんでした。米長期金利は前日の1.55%から1.60%まで若干上昇しました。今回の決定はほぼ織り込み済みも、インフレ圧力の長期化が意識されたことや、12月の可能性もあったテーパリング開始時期が11月になったことなどが影響した可能性があります。

ドル円については日米の金融政策の違いが意識され、ドル高・円安に振れましたが、パウエル議長が早期利上げ観測をけん制したことから、動きは限定的でした。

▣ パウエル議長の主な発言

パウエル議長の記者会見での主な発言は以下のとおりです。

  • 経済見通しの変化があれば、資産購入の削減ペースを調整する
  • 利上げにはより厳しい経済条件のテストを満たす必要がある
  • 最大雇用を達成するまで課題があり、まだ利上げする時期ではない
  • 最大雇用は来年後半までに達成できる可能がある
  • インフレ率が長期目標の2%に向けて下がっていく時期については非常に不確実
  • しかし、来年の4-6月期か7-9月期にはインフレは減速していくだろう
  • FRBは利上げに関して忍耐強くいることができる

▣ 今後は、利上げ開始時期や利上げペースに関心

米短期金融市場の利上げの織り込みは、2022年が2回、2023年も2回、2024年は2回弱となっています(図表2)。9月のFOMC参加者の政策金利見通し(2022年0.5回、2023年3回、2024年3回)よりも、早めに利上げが開始されるものの、その後の利上げペースはやや緩やかになるとの織り込みです。

市場は11月にテーパリング開始、来年半ば以降の2回の利上げをほぼ織り込んだ状況です。今後は、米国の物価関連指標や雇用・労働市場の動向、12月のFOMCで公表される政策金利見通し、また米金融当局者の発言などを確認しながら、利上げ開始時期や利上げペースを探ることになりそうです。

市場では来年1回の利上げを見込む向きもあり、2回の利上げの蓋然性が高まる、また2023年以降の利上げペースが速くなるとの見方が広がると、金融引き締めを一段と織り込む動きになる可能性があります。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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