米10年債と2年債の利回り逆転は景気後退の予兆か

2019/08/20

▣ 8月に入り様相が一変

米連邦準備制度理事会(FRB)が7月の米連邦公開市場委員会(FOMC、30-31日)で、予防的な利下げに踏み切ったのは予想通りでしたが、翌日の8月1日にはトランプ米大統領が、先送りしていた対中の制裁関税「第4 弾」を9月1日に発動すると突如表明したことに加え、5日には中国を経済制裁の対象となる「為替操作国」に指定したことから、内外の金融市場の様相は一変しました。

▣ 米長期金利は大きく低下、一時10年債利回りと2年債利回りが逆転

米中貿易摩擦の激化で世界経済や米景気の減速懸念が一段と広がり、投資家がリスク回避姿勢を強めたことや、FRBが利下げを継続するとの見方が一段と強まったことから、米長期金利は7月末の2.0%強から一時1.4%台まで低下しました(図表1)。14日には、米国債券市場で一時10年債利回りが2年債利回りを12年ぶりに下回り、景気後退(リセッション)入りの前兆とされる「逆イールド」が発生しました(図表2)。

満期までの期間が長い債券の利回りの方が短い債券の利回りを下回る逆イールドについては、すでに10年債利回りと3か月物短期証券(Tビル)利回りでは発生していました。さらに10年債利回りが2年債利回りを一時下回ったことから、景気後退への警戒が一段と強まりました。

▣ 4回の逆イールド発生で、3回の景気後退

1980年代後半以降、10年債利回りが2年債利回りを下回ったのは、1988年12月、1998年5月、2000年2月、2005年12月の4回。1988年、2000年、2005年については、14~24か月後にリセッション入りしました。ただ、予防的な利下げ局面であった1998年はリセッション入りを免れました。

また、長期にわたる利下げ局面を織り込む30年債利回りについても、一時2.0%を割れるなど利回り低下が進行しましたが、依然として3か月物利回りや2年債利回りを上回っており、逆イールド状態は発生していません。

▣ リスク回避などから、米長期金利は利下げの織り込み以上に低下

米国金融市場が織り込む今年(7月の1回を含む)と来年の利下げ回数は、8月に入り4回前後から5.5回程度へと1.5回程度増えました(1回の利下げ幅は0.25%と仮定)(図表3)。一方、10年債利回りは1.6%前後に若干戻していますが、7月末から0.4%強低下しており、利下げ回数の増加以上に大きく低下している格好です。

7月末時点では、市場が織り込む利下げ回数が1回増えた場合の10年債利回りの水準は1.9%前後、1.5回なら1.8%程度までの低下が目安でした(図表4)。しかし、景気や相場の先行き不透明感の高まりを受けて、国債への資金逃避が強まったことに加え、日本や欧州の長期金利が軒並みマイナス圏に沈む中、信用力も高く相対的に利回りが高い米国債を選好する動きが米長期金利を一段と押し下げ、逆イールドが発生したとみられます。

▣ 米中の落ち着き待ち

FRBは景気後退や非常に厳しい経済停滞があるときにとる長期的な利下げではなく、それぞれ3回の利下げにとどめた95年や98年の予防的な利下げ局面を念頭に置いている模様です。市場はすでに今年から来年にかけて5回(7月の利上げを除くとあと4回)を超える利下げを織り込んできており、利下げ観測からの一段の米金利低下は限定的とみられます。

今後、米中の対立が沈静化してくると、10年債利回りの過度な低下が修正され、10年債利回りが2年債利回りを上回る「順イールド」が常態化し、リセッションへの警戒も後退することが見込まれます。それまでは、景気後退懸念がくすぶりそうです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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