米債券市場で2007年以来の逆イールドが発生

2019/03/29

▣ 逆イールド発生でリセッションを警戒

米債券市場で3月22日に、長期金利(10年物利回り)が3か月物を下回る、“逆イールド”が2007年以来で初めて発生しました(図表1)。“逆イールド”は将来的な利下げを債券市場が織り込む動きで(図表2)、利上げ局面の終了時~利下げ開始前後に発生しますが、過去の例では1年~2年後には景気後退(リセッション)入りしており、内外の株式市場などでは警戒感が広がっています。

▣ 例外も

もっとも、1995年7月~1996年1月の利下げ局面では、2年物利回りが3か月物を下回り、長短金利差(ここでは3か月物と10年物利回りの利回りスプレッド)もゼロに接近、また1998年9月~11月の利下げ局面では、利下げ直前に一時的に長短金利差がマイナスになりましたが、リセッション入りは免れました。

▣ ただ、金融引締め観測後退でも株安

これまで米金融市場は、経済指標の下振れなどで景気減速懸念が広がると、金融引締め観測が後退し、長期金利が低下するとともに株価が上昇してきましたが、“逆イールド”の発生で景気後退が意識される中、最近は金融引締め観測の後退が景気の先行き懸念を強め、株価が軟調な動きになる展開になっています。

▣ 3か月物金利と30年債利回りの逆転までには距離、景気後退はまだ先か

足元のイールドカーブ(利回り曲線)は、10年超では期間の長い債券の利回りがより高い右肩上がりの形状です(図表3)。直近3回の局面では、3か月物と30年物利回りのスプレッドがマイナスになると、景気後退入りしています(図表4)。今回はまだ、3か月物と30年物利回りのスプレッドが40bp(1bp=0.01%)程度開いており、期間が10年より長い債券の利回りについては、利上げ局面の終了、その後の利下げの織り込み度合いが低い状況です。このスプレッドがプラスの間は、景気後退までは距離がありそうです。

最近の米金融当局者の主な発言は、

  • 「現在の経済は好調」「さらなる調整が必要なのかデータを見ながら辛抱強く待機するのが適切な政策だ」(米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁)
  • 「利下げを検討するには、まず長短金利の逆転が“一定の規模や期間に及ぶこと”を確認する必要があるが、現時点ではいずれの状況もない」(米ダラス連銀のカプラン総裁)
  • 「英国の欧州連合(EU)離脱、世界経済の成長見通しの急減速、貿易摩擦などのリスクや落ち着いたインフレ圧力を踏まえ、FRBには忍耐強くなれる」(クラリダFRB副議長)

など。今は経済指標などのデータを確認しながら辛抱強く待つ時期で、まだ利下げを検討する時期ではないとの姿勢がうかがえます。

FRBが市場の織り込みどおり利下げに動くのか、そしていつ動くのかについて判断するのには、もう少し時間がかかりそうです。クラリダFRB副議長が挙げたリスクや今後のデータ次第ですが、FRBが景気後退への警戒から年内に利下げに動くとの市場の観測は、先走りの可能性も残ります。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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