トルコ・ショックの異常な事情

2018/08/21

なぜトルコがショックを与えたのか?

今月前半、トルコの通貨リラが暴落し、ほかの新興国通貨(図表1)や日本株も一時急落しました。

トルコの経済はさほど大きくありません(世界全体の輸入額のうち、トルコのシェアは1%強)。よって、その景気が悪化しても世界経済への打撃は小さいはずです。それでも「トルコ・ショック」が金融市場を襲ったのは、第一に、トルコの企業や政府に投融資を行っている欧州の銀行への悪影響が懸念されるためです。第二に、構造的な弱点をかかえるほかの新興国に危機が波及する可能性があるからです。

欧州の銀行に対する影響は、現時点では限られる

しかし結論を言えば、トルコの危機が世界的な金融危機につながることは恐らくない、と思われます。

欧州の銀行経営への影響については、スペインやイタリアなどの大手銀行が、現地子会社などを通じトルコで融資を行っています。ユーロ圏の銀行全体で約1,500億ドルという規模です。ただ、不良債権比率が大きく高まったとしても、ユーロ圏の金融危機をもたらすほどの融資額ではないと言えます。実際、域内の銀行を監督する欧州中央銀行(ECB)も、現時点では深刻な状況とみていない模様です。

通貨危機が生じる条件

通貨危機(通貨急落と景気後退の悪循環)が広範に伝染する可能性も、それほど高くはないでしょう。

通貨危機の条件は、「経常収支(貿易赤字など)の大幅な赤字」と「外貨(米ドル、ユーロなど)建て債務の膨張」の共存です。経常赤字は、他国からの投資資金に依存していることを意味します。それが外貨建ての場合、通貨の暴落で自国通貨建ての債務額が膨らみます。これに伴い返済不能が続出すると、企業と金融機関の破たんが相互に連鎖します。また、インフレ率も重要です。極端なインフレは貨幣の信用度が低いということなので、それ自体が通貨安要因だからです(トルコのインフレ率は直近約16%)。

「独裁者」が危機を助長

これらをみれば、トルコほど通貨危機の条件がそろった国はほとんどない、とわかります(図表2)。

さらにトルコに対する投資家の不信を増幅しているのが、エルドアン大統領の独裁です。本来、通貨安やインフレを抑えるには大幅な利上げが必要です(アルゼンチンやインドネシアは最近、何度も利上げ)。しかしトルコの経済成長は、低金利を利用した建設などに頼っています。そのため同大統領は、利上げをしないよう中央銀行に圧力をかけています。また、アルゼンチンが6月、国際通貨基金(IMF)による融資枠を取りつけたのに対し、トルコはこれを拒否しています(財政再建などが課されるため)。

トルコは特殊であり、世界的な危機につながる可能性は低い

強権的なエルドアン氏のもとで、対米関係も悪化しています。リラ暴落に拍車をかけたのは、米政権による経済制裁(トルコに対する輸入関税引上げなど)でした。その背後に潜む事情も、実に特殊です。

トルコでは現在、キリスト教福音派の米国人牧師が拘束されています(クーデター未遂事件に関与した疑い)。それらへの報復として、トランプ米政権が制裁を発動したのです。これは、福音派が米国の選挙を左右する存在であることと無関係でないでしょう。以上のように、経済面に加え政治・外交面においてもトルコの事情はあまりにも特殊なので、ほかの国が同じような危機に陥るとは考えにくいのです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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